Category Archives: デンオン/コロムビア - Page 4

デンオン SC-101

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 このサイズではいわゆる重低音を望むのは無理であるのは当然だが、リスナーの目よりやや低めで廃品を固い壁に近寄せて設置すれば、低音の量感も一応補われる。中〜高域にわずかに張りがあって、それは一見線の細いようにも感じさせるが、反面、高域端(ハイエンド)にかけてくせが少なく素直で、レインジも十分広いため、質の良い艶が感じられ、実況録音(ライヴレコーディング)などの雰囲気もなかなかよく出る。アンプとの適応性はあまり神経質でなく、価格相応のローコストアンプでもよさは一応抽き出せる。ただ、カートリッジはエラックのようにやや個性の強い音の場合、中〜高域が少し張りすぎる傾向もある。
 同価格帯のライバル機種の中では、オンキョーM55ほどの重量感は出ないがヤマハNS10Mよりはもう少しこってりした味わいがある。反面、ヤマハやビクターのあの明るい軽やかさと比較すると、いくぶんほの暗い感じも受ける。音楽はポップスからクラシックまで、広い傾向に適応できる。

総合採点:9

●9項目採点表
❶音域の広さ:6
❷バランス:7
❸質感:6
❹スケール感:5
❺ステレオエフェクト:6
❻耐入力・ダイナミックレンジ:6
❼音の魅力度:7
❽組合せ:普通
❾設置・調整:やさしい

デンオン SC-304

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 国産のスピーカー、ことにヤマハのようなサラッとした音と比較すると、いくぶんこってりと艶が乗る感じで、音の重心もやや低く、たとえばヴァイオリンの胴の鳴る音などもヤマハ(NS100M)より実感をもってきこえる。ポップス系の実況(ライヴ)録音などでも、会場のひろがりがとてもよく出て雰囲気感の描写も暖かいが、反面、鳴っている音自体の力あるいは実体感という点では、ダイヤトーン(DS32B)のあパワフルな充実感には及ばない。それはおそらく三菱よりも中音域が張っているためだろう。加えてトゥイーターの上限がスッとよく伸びているため、音の味の濃い割には爽やかな印象もあり、総じてなかなか良いスピーカーだと思う。背面は壁に近寄せぎみ。あまり低い位置に置かない方がよかった。カートリッジはDL303のようにくせの少ない音がよく合うのは当然かもしれないが、アンプにも同様のことがいえそうで、あまりアクの強くない音のアンプ──たとえばL01A等──が合うように思った。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:7
バランス:7
質感:7
スケール感:6
ステレオエフェクト:7
耐入力・ダイナミックレンジ:7
音の魅力度:7
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:やさしい

デンオン SC-304

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 一口にいえば大変端正な響きということになる。つまり、品位の高い音だ。質的にも帯域バランス的にもバランスがよくとれていて、比較的スリムな全帯域のエネルギーバランスとなっている。そのため、決して豊満な響きではないし、それほど色艶の濃厚なものでもない。トゥイーター領域の倍音成分の再生がよく、そのために弦楽器はリアリティのある響きだ。決して刺激的にならずに、十分しっかりと鋭く高域を聴かせてくれる。人によってはやや冷たいと感じるかもしれないし、事実私も、音楽によってはもう少しウォームなふくらみのある音が欲しかった。オーケストラで云うと、LSOのようなイギリスのオーケストラにある響きのような雰囲気で、ベルリン・フィルのような重厚さや、ウィーン・フィルのような艶麗さとは異質のものだ。これは、鳴らし方である程度コントロールでき、100Hz以下を少々持ち上げてやれば、このシステムの細身な癖がとれるだろう。本質的な肉付きの薄さは救いきれないだろうが……。

総合採点:8

デンオン SC-304

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 基本的には、従来のSC104IIをベースにシステムとしての完成度を一段と高めた新製品で、SC106に対する現在のSC306に相当する位置づけにあたる。
 デンマーク、ピアレス社製ユニット採用の3ウェイであることは従来と同様である。25cmウーファーは、デンオン独自のサウンドラチチュード特性を従来の測定法に加え、振動系と支持系をより追求して、ピアレス社と共同開発した新ユニットだ。コーンはノンプレス系でエアドライ方式の新乾燥法を採用。表面はアクリル系樹脂でスプレー含浸処理され、ボイスコイルボビンはアルミ製で高耐入力設計としてある。10cmコーン型スコーカーは、SC306同様、バックチャンバーとフレームを軽合金ダイキャスト一体構造とし、ウーファーからの振動を遮断する特長をもつ。3・2cmドーム型トゥイーターは、特殊布成型振動板を採用し100Wの耐入力をもつ。エンクロージュアは密閉型で、低音は独特のサンドイッチ方式マウントを採用。裏板部の一部は、アルミラミネートブチル系ゴムを貼り合せて振動モードを調整している。
 SC304は、サランネットを外した状態で高域レベル−2でウェルバランスとなる。SC104IIとの比較では、音色が明るくなり、活気のある表現力が加わった。重く力強い低域と明快な中域、独特の華やかさのある高域がバランスしている。

デンオン SC-101

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 何の変哲もないオーソドックスなスピーカーシステムだが、小型ブックシェルフとしては大変よくまとまったシステムだ。まとまりだけでなく、一つの魅力をも備えている。鋭さと柔らかさが、ほどよくバランスしているところが強みで、楽音によって、時として鋭さが難となる場合があるが、オーケストラなどを聴いても実感のある雰囲気が楽しめる。全体の音色としては明るく、プレゼンスの豊かなもので、2ウェイらしい自然な音場感が楽しめる。ヴァイオリン・ソロではもう一つ弦特有のしなやかさが欲しかったが、ピアノは粒立ちのよい輝きのあるものだった。小型スピーカーだから圧倒的なスケール感を味わうには、低域の量感、出し得る最大音圧レベルからいって無理があるが、一般家庭での平均的な音圧レベルで聴くには不足はないだろう。トゥイーターがもう一つスムーズになると一層素晴らしいシステムとなるように思うが、かといって、それがこのシステムの味の素として、重要な因子なのかもしれない。

総合採点:9

デンオン SC-304

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 音像の力感を示すとか、低い方のひびきのゆたかさを示すとかいった点では、かならずしも十全とはいいがたい。ただ、このスピーカーのきかせる音には、あかるさとさわやかさがあり、ききてをたのしい気分にさせる。それにもうひとついい忘れてはならないのは、個々の音への反応の敏感さだ。それがあるために、このスピーカーの音をきいて、ききては、軽快さを感じるのだろう。むろん、オーケストラのフォルテによる総奏の迫力を充分に示すとはいいがたい。本当の力強さ、あるいはスケール感を示すことはできない。そうしたことをこのランクのスピーカーに望んだら、多分、望んだ方が欲ばりすぎということになるだろう。だが、たとえば❸のレコードでの、アグネス・バルツァの強く鋭くはりのある声のシャープな提示などは、なかなかこのましい。つかいやすいスピーカーといえるかもしれない。

総合採点:8

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

デンオン POA-3000

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

純A級動作をベースに独得なバイアス方式を採用して高能率A級動作とした設計は、国内製品として唯一のものだ。余裕あるパワーを土台として、ゆとりがあり、力強い音をスムーズに聴かせる製品。

デンオン PRA-2000

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

別系統のサーボ専用アンプをもたないダイレクトDCサーボ回路を全増幅弾に採用。2段のリニアアンプ段間にCR素子を入れたイコライザーとフラットアンプの単純構成。MCヘッドアンプ内蔵。

デンオン PMA-530

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

新開発のダイレクトA・ノンスイッチングA級動作をパワーアンプに採用した第1弾製品。プリアンプはMC型使用可能な高利得イコライザーのみで、パワーアンプと2ブロック構成のDCサーボ型。

デンオン SC-306

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

端正にまとまった音をもつSC106をベースにフレッシュアップした新製品。コーン型3ウェイの使用ユニットはデンマークのピアレス製で定評が高く、聴かせどころを捕えたシステムアップで表現力は新鮮で豊か。

デンオン DP-70M

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 二重構造ターンテーブル採用のマニュアルプレーヤーである。上下に二分割されたターンテーブルは、板バネとダンパーで結合され、上部は質量とバネでハイカットフィルターを構成し、レコードを外部振動から遮断して音質劣化を防止する。フィルター効果により数十Hz〜数百Hzの帯域で10〜30dBの振動低減効果があり、クロストークをも含めた音質改善がいちじるしいとのこと。駆動モーターはACアウトローター型で、磁気記録検出クォーツロック方式を採用、正逆両方向サーボと電子ブレーキ付。トーンアームは、独自のダイナミックダンプ機構付スタティックバランス型で、DA401軽量アームと交換可能である。前面に自照式ボタンを配したプレーヤーベースは、70mm厚ソリッドボード積層型で、表面は天然木ブビンガ仕上げの防振設計である。
 音はスッキリとしたワイドレンジ型で、整理して音を聴かせるタイプだが、表情も適度で軽快さが特長。音の粒子は細かく、ナチュラルなプレゼンスがある。高級カートリッジに適した製品だ。

デンオン POA-3000

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「第2回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント17機種の紹介」より

 昨年末、パワーアンプの大きな動向として目立つものに、一般的に多用されるBクラス増幅固有の歪みである、スイッチング歪とクロスオーバー歪の解消への、各社各様のアプローチがある。
 この種の歪みの解決方法としては、従来からも純粋なAクラス増幅の採用があったが、この方式は、直流的にアンプに与える電力とアンプから得られるオーディオ出力の比率、つまり、電力効率が非常に悪く、このロス分が発熱となるため、強力なパワーを得ようとすると、巨大な電力消費量と巨大な筐体を必要とするために、100W+100Wクラス以上のパワーを要求するとなれば、すくなくとも、コンシュマーユースとしては、非現実的なものとなり、その製品化は考えられないといってよい。
 そこで、一般的なBクラス増幅の効率の高さと、Aクラス増幅の性能・音質の高さを併せ備えたアンプの開発が考えられるようになるのは当然の結果である。この第一歩を示したのが、米スレッショルド社の開発した特殊なAクラス増幅方式である。それに続きテクニクスで開発した、Aクラス増幅とBクラス増幅を組み合わせて独自なAクラス増幅とするA級動作のパワーアンプが製品化され、性能の高さと音質に注目を集めた。
 昨年末、各社から続々と発表された新しいパワー段の動作方式は、基本的には、Bクラス増幅からの発展型であり、Bクラス増幅でプッシュプル構成のパワートランジスターが交互にON/OFFを繰り返すときに生じるスイッチング歪を解消するために、OFFにならないように各種の方法でバイアスを与え、つねに最低限のONの状態を保つタイプである。
 これに比較すると、デンオンで開発したデンオン・クラスA方式は、Aクラス増幅を出発点として発展させたタイプであることが、他とは異なる最大の特徴である。したがって、プッシュプル構成のパワー段は、対称的に接続されているパワートランジスターはそれぞれつねに入力信号のプラス方向とマイナス方向を増幅し、Bクラス増幅のようにON/OFFは基本的に繰り返さないために、スイッチング歪を発生する要因がないわけだ。しかし、このタイプはAクラス増幅ベースであるために、電力効率の面では、最大出力に近いパワー時に純粋Aクラス増幅と等しく、最大出力時の1/10付近でもっとも効率が高い特徴をもつ。このために結果としては、Bクラス増幅ベースのノンスイッチングタイプよりは効率は低くなる。
 回路構成上は、パワー段には高域特性が優れ、100kHzでも高出力時に低歪率で、リニアリティが優れた、高速型パワートランジスターを片チャンネル10個使い、リニアリティの向上と、広帯域にわたる低歪率を獲得している。これをAクラス増幅とするのが、新開発のリアルバイアスサーキットで、つねにA級動作を保つために信号波形に応じた最適バイアスを与えることと、信号電流よりもバイアス電流を速く立上がらせる役目をする。この回路が、デンオン・クラスAのもとも重要な部分である。
 ドライバー段は、FET差動増幅2段並列回路により、プリドライバー段のツインコンプリメンタリー差動回路をバランスドライブし、次いで、カスコード差動増幅回路がパワーステージをドライブする構成である。初段の2並列回路は、新開発のダイレクトDCサーボ方式のためで、サーボ帰還回路は受動素子で構成されているのが特徴である。これにより、入力部の結合コンデンサーを除き、帰還系にサーボアンプをもたないため、SN比および歪率は従来のサーボ方式よりも一段と改善できる特徴がある。
 電源部は、パワー段とその他を分離した別電源トランス方式で、180W+180Wのパワー段は左右独立巻線で、25000μF×4の大容量コンデンサー使用である。なお、電源トランスは1000VAのトロイダル型、初段からドライブ段用にはEI型を別に設けて、出力段の激しい負荷変動を避け、定電圧回路で低インピーダンス化している。

デンオン PRA-2000, POA-3000

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

 デンオンが、その技術を結集して完成したセパレートアンプの最新作である。このところ、セパレートアンプの分野において、デンオンには特に注目されるモデルがなかっただけに、今度の製品にかけた情熱と執念は相当なもので、内容・外観共に入念の作品が出来上ったことは喜ばしい。どの角度から見ても、現時点での最高級アンプと呼ぶにふさわしいものだと思う。
PRA2000の特徴
 PRA2000は、コントロールアンプの心臓部ともいえるイコライザーアンプに、現在最も一般的なNF型を採用せず、CR型を基本とした無帰還式の回路を用いているのが技術的特徴である。リアルタイム・イコライザーと同社が称するようにNFループをもたないから、過渡歪の発生が少なく、高域の特性の安定性が確保され、イコライザー偏差は20Hz~100kHzが±9・2dBという好特性を得ている。従来からのNF型に対してCR型イコライザーのよさは認められてはいたが、SN比や許容入力、歪率などの点で難しさがあった。しかし、今度、PRA2000に採用された回路は、ディバイスの見直しと選択によって、CR型イコライザーの特性を飛躍的に発展させている。構成は新開発のローノイズFETによるDCリニアアンプ2段を採り、初段のFETはパラレル差動させSN比を大幅に改善、カスコード・ブートストラップ回路により高域における特性を確保し、電源の強化とハイパワー・ハイスピード・トランジスターと相まって広いダイナミックレンジを得ているのである。イコライザーアンプの出力はバッファーアンプを介さず直接、DCサーボ方式のフラットアンプに送られるが、このフラットアンプのローインピーダンス化によりSN比の改善、スルーレイトの悪化等による特性劣化も防いでいる。10kΩという低いインピーダンスのボリュウムが使われ、フラットアンプの出力インピーダンスは、100Ωという低い値である。独自のサーボ帰還回路により専用サーボアンプを持たせることなく、安定したDC回路と高いSN比を得ているのである。電源部は、五重シールドの大型トロイダルトランスで50VAの容量をもつものだ。シンメトリカルの内部コンストラクションは、細かいところにも入念な構成がとられ磁気歪や相互干渉の害を避けている。22石構成のローノイズ・トランジスターによるMCヘッドアンプも安定化電源をヘッドアンプ基板内に備え電源インピーダンスを小さくおさえるなど、専用の独立型ヘッドアンプ並みの手のかかったものである。
 フォノ入力3回路、チューナー、AUXなどの入力ファンクション切替えスイッチなどはソフトタッチの電子式リードリレーであるが、プリセット機構と連動し、パワー・オンの時には優先選択機能を果すし、スイッチ切替え時はワンショット・トリガー回路の働きで、一時的に出力が遮断されるので、きわめてスムーズで安定した操作が楽しめる。これらのスイッチ類は、すべて開閉式のサブパネルに装備され、常時パネル状に露出しているのは、パワースイッチとボリュウムコントローラーだけである。そのため、使い易さもさることながら、デザイン上も、きわめてシンプルな美しさをもち、木製キャビネットの仕上げの高さと共に、普遍的な美観をもっていると思う。
PRA2000の音質
 音質は明晰で、鮮度の高いもので、大変自然で屈託のない再生音の感触が快い。POA3000との組合せでの試聴感は後で記すが、このコントロールアンプ単体で聴いた感じではやや低域の力強さに欠ける嫌いもなくはない。しかし、これはパワーアンプやスピーカーとのバランスで容易に変化し、補える範囲のもので特に問題とするにはあたらない。
POA3000の特徴
 パワーアンプPOA3000は定格出力180W/チャンネルの高効率A級アンプである。スイッチング歪を発生しないA級アンプ動作であるが、その無信号時に最大となる電力ロスを独自の方式で改善を計り、高効率としたものだ。パワートランジスターのアイドリング電流を入力信号に応じてコントロールするもので、動作としては、きわめて合理的なA級アンプである。最大出力時には純A級アンプと同じ電力ロスだが、無信号時のロスはゼロとなるようになっているので、変動の大きい音楽の出力状態においては、大変合理的なパワーロスとなる。アイドリング時にも若干の固定バイアス電流を流し、バイアス電流を常に信号電流より先行させるようにコントロールして、トランジスターのカットオフを生じさせないというものだ。1000VA容量の大型トロイダル電源トランスと10000μFの大容量コンデンサーの電源とあるがこのトランスのLチャンネル/Rチャンネルは別巻で前段にはEI形のトランスを持っている。大型ピークメーターをフロントパネルの顔としたデザインは特に新味のあるものとはいえないが、その作り、材質の高さから、高級アンプにふさわしいイメージを生んでいる。
POA3000の音質
 POA3000は低域の豊かで力感溢れるパワーアンプで、PRA2000との組合せにより、きわめて優れたバランスのよい品位の高い音質が聴かれた。透明な空間のプレゼンス、リアルな音像の質感は自然で見事だ。ヴァイオリンの音色は精緻で、基音と倍音のバランスが美しく保たれる。ピアノの粒立ちも明快で、輝かしい質感の再現がよかった。演奏の個性がよく生かされ、私が理解している各レコードの個性的音色は違和感なく再現されたと思う。ハイパワー・ドライブも安定し、ジャズやフュージョンの再生は迫力充分だし、小レベルでの繊細感も不満がなかった。
 MCヘッドアンプは、やや細身になるが、SN比、質感は大変よい。

デンオン SC-306

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 穏やかな表情と、これにマッチしたデザインが巧みなバランスを保った優れたスピーカーシステムSC106を基本に一段とパーサタイルな現代的サウンドにリフレッシュした新製品である。
 使用ユニットは、全てデンマークのピアレス社製で、ウーファー口径がSC106同様に、SCシリーズでは例外的な30cm型であるのが特長。スコーカーは、一見してピアレスユニットとわかる10cmコーン型。トゥイーターは、5cmコーン型のパラレル駆動である。バッフル板への取付方法は、高音と低音用が独自のアルミダイキャストプレートとリングでフレーム全体をバッフル板にサンドイッチ状に締付ける新マウント法を採用し、左右対称型のユニット配置採用で、音場感的、音像定位的なフィデリティが高い。
 音色は、 SC106に比べ、一段と明るく滑らかで、細やかな音である。各ユニットのつながりもスムーズで調和感があり、とくにボーカルの発声や発音のナチュラルさに、海外製ユニット採用のメリットが如実に感じられる。

デンオン PMA-530

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 デンオンのアンプはセパレートアンプの2000、3000というシリーズで、独特のAクラス・オペレーションを打ち出しているが、この530という新しいプリメインアンプにも、基本的には同じ考えが取り入れられているようで、ボンネットの上にダイレクトAというシールが貼ってある。価格の割に見た目が薄形にできており、外観からは、ローコストで手抜きをしたアンプかなという印象を受けかねないが、実際に持ってみると、このアンプは意外にずっしりと重い。かなり中身の濃さそうなアンプという気がする。
 比較的ファンクションも充実している。MシートMMの切り替えも付いており、スピーカーもA、Bが使える。そしてもう一つ、ダイレクト・カップルのボタンが付いている。これはヤマハのA3や、トリオのKA80と同じようにトーン・コントロール、その他のファンクションを飛び越してダイレクトで使えるという機能だ。
音質 このアンプの音質だが、一つ一つの音が、大変コントラストを強く、力を持って出てくる割には、全体の音域を通してのバランスというものが、どうもこの値段にしては、物足りないという気がした(理由はあとでわかった)。
 例えば『サンチマスの子供たち』のオーバーチュアの部分。この部分は非常に音域が広く、音の強弱も激しいところだが、ドラムスの低音の音がかなり力と重量感を持って聴こえてくるのに加えて、シンバルの音は、割合に鋭くシャープに出てくる。にもかかわらずいわゆる中低域のところのエネルギーがちょっと薄くなるような感じだ。
 少し細かい物の言い方をしすぎるかもしれないが、強いて説明しようとするとそういうことになる。
MCヘッドアンプ オルトフォンおよびデンオン、両方のタイプのカートリッジをつないでみたところが、やっぱりオルトフォンでは、少しゲインが足りない。音質が割合にいいから、比較的激しい曲ではオルトフォンでもSNが比較的いいのでフルボリューム近くでも、使えなくない。デンオン103Dの方は、これはもうデンオンのアンプだから当然とはいうものの、実に103Dをよく生かす音がする。ゲインも非常にうまく配分されており、手ごろなボリュームできちんとした音がする。最初のうちあまり音質についていいことを言わなかったのは、エラックの794Eをつないだ時の話で、実はこの103Dを、このMCヘッドアンプを通して鳴らした時の、このアンプの音というのは、最初に言ったような、気になる部分がかなりうまく抑えられて快適な音がした。ということは、当然のことかもしれないが、このアンプは、デンオンのカートリッジで相当音が練り上げられているという感じだ。
トーン&ラウドネス ダイレクト・カップルのボタンをオフにして、トーン・コントロールを動作させると、注意深く聴かなくてはわからない程度だが、音質はほんのわずか変化する。
 心もち音の伸びが損なわれるかな、という感じだ。トーン・コントロールを動作させた時の効き方というのは、ごく普通だ。ラウドネス・コントロールはトーンと無関係に動作させるものだが、これはごく軽く効くというタイプ。
ヘッドホン ヘッドホン端子での出力は、ごく標準的でヘッドホンで聴いた音量感と、スピーカーを鳴らした時の音量感がだいたい同じボリュームの位置で聴ける。ヘッドホン端子がやや低いかなという程度。このアンプはヘッドホン・ジャックを差し込んだ時にスピーカーが切れるタイプで、スピーカーのオフがない。スピーカーのAB切り替えがボタンのオン、オフで行われているので、このアンプに関しては、スピーカーのA+ビートいう使い方はできない。

デンオン DX3, DX5, DX7

デンオンのカセットテープDX3、DX5、DX7の広告
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

Denon

最新セパレートアンプの魅力をたずねて(その17)

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか」より

 デンオンは、数年以前に、プリメイン型のPMA500、700でその技術のたしかさを強く印象づけて以後、いつまにか方向を転換してしまったのか、最近までの製品は、どことなくかつてのあのぐいぐいと聴き手の心をとらえる音がしなくなってしまっていた。
 それが、今回の新型セパレート、PRA2000とPOA3000との登場で、一挙に飛躍をはかったと聴きとれた。PRA2000のほうがひと足先に完成しているが、試作初期の段階では、どちらかといえば今どきこんな音のプリじゃどうしようもない、というような印象だった。ところが、二度めに聴かされたプリプロ(量産直前の生産モデル)機では、一転して、音の質の良さ、鮮度の高さ、解像力と立体感の表現のよさ、あらゆる点からみて、第一級のプリアンプに仕上っていた。
 POA3000は、試聴時の製品はプリプロ機なので、量産に移った製品がこの音質を保つかどうかは、いましばらく確認の時間と機会を待たなくてはならないが、しかし現時点での音をひとことでいうと、きわめて上質のウエルバランス、とでも言ったらいいのだろうか。
 国産アンプの性能が一様に高い水準に達した現在でも、その音色、音の質(品位、クォリティ)、そしてバランス、音の鮮度(フレッシュネス)、そして音の生きている感じ、などといったいろいろの角度からみるかぎり、満点のつけられる製品は決して多くはない。概して国産アンプの音色は湿り加減、というよりも湿気を含みすぎているようだ。それだからときとしてアムクロンのような、乾いた音の快さを感じるのかもしれない。音の質はよく磨きあげられて粗さはほとんどおさえられているが、それと同時に音の生命感までも抑え込んでしまって、音楽の躍動感、実在感が希薄になってしまうようなアンプも少なくない。バランスという点では、これも概して低音の量感、ほんとうの意味での量感が不足している例が多い。ニセの量感で鳴るアンプはある。けれど音楽を確かに形造る腰の坐りのよい、しかし重くならないで、生き生きとよく反応する機敏さを保ちながら、十分の量感で土台を支える音は、アンプばかりでなく国産の音の最もニガ手の部分だろう。
 デンオンがそうした面のすべてをうまく鳴らす、などとオーバーなことはこの際言わないけれど、まず鳴りはじめから、国産らしからぬ、嫌な湿度を感じさせない快く乾いた質感にオヤ? と思わせられる。十分にひずみ感の取除かれた美しい音質だが、某社のようにどこか作りもの的な、まるでノイズストレッチャーを通したかのような人工的な白痴美の音でもないし、反対に血の通わないメカニックな正確さでもない。また、これぞ解像力といったような音の鮮度をことさら誇示するわけでもなく、要するにそれらが過不足なくよくバランスしている。つまり鳴っている音の部分部分に気をとられることなく音楽そのもの、または楽器自体の持っている美しさとその美しさを形造っている音色の特質を、十分にとまではゆかないまでも、こんにちの最高クラスのアンプと比較してもなお、相当の水準で鳴らし分ける。ことさらの作為を感じさせない。音のまとめ方──というより聴かせ方は、アムクロンとも一脈通じるかもしれないが、アムクロンほど即物的でなく、力感と繊細さ、男性的な堂々とした印象と女性的な色艶とが、くどいようだが十分とまではゆかないにしても、対比されつつ鳴ってくる。必要な音が必要なだけ出てくるという感じで、むろんボリュウムを思い切りあげてみても、たとえば「ダイアログ」のバスドラムの音の力感もまず不足はない。たまたま、IVIEの簡易アナライザーで某氏が測定していたところ、バスドラムの低音で、32Hzの目盛が109dB/SPLまで振れた。そういうパワーを鳴らし続けても、聴き手に不安を与えない点もまたみごとといえる。
 少しほめすぎになってしまっただろうか。ともかく、パワーアンプがプリプロ機であったから、前述のように量産に入ってからぜひもう一度聴き直してみたいアンプであった。

デンオン SC-104/II

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 ピアレスのユニットを採用した最初の製品のマイナーチェンジモデルである。25cmウーファーをベースにした3ウェイモデルだが、ロングライフを続けているだけあってまとまりやバランスが一層よくなって、実にナチュラルな音の出方をする。

デンオン SC-106

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 5cmコーン型トゥイーターを2個使う3ウェイ4スピーカーのシステムで、ナチュラルな音の感触が魅力のワイドレンジ型。ソースは選ばない。

デンオン SC-101

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社の最新モデルで、小型ローコストにまとめられているが、再生音には癖がなく、それでいて決して物足りなくないという点で、いろいろなプログラムソースでも満足感が味わえる製品だ。

デンオン SC-107

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 3ウェイ5スピーカーシステムながら、明確な音像の輪郭と豊かな肉づき、バランスのいい自然な音を再現する本格派スピーカーである。

デンオン DP-40F, DP-50F, DL-103/TII

デンオンのアナログプレーヤーDP40F、DP50F、カートリッジDL103/TIIの広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

DP40F

デンオン PMA-850/II

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 全段に独自の対称型プッシュプル回路を採用した特長のあるPMA850が、MCヘッドアンプとEBTパラレル接続のDCパワーアンプ部に22W+22WのA級動作と100W+100WのB級動作の切替機能を加えてMKIIに発展した。
 機能面では、PMA700以来のイコライザー出力を直接パワーアンプに送り込むダイレクトカップルスイッチの他に、機械的中点で完全にディフィートとなるトーンコントロール、主回路に任意に挿入可能なフィルター回路、REC・OUT切替などを備える。
 PMA850IIは、音色が明るく響きの美しい柔かさと、充分なスケール感が両立した安定した音である。音場感的な拡がり定位もナチュラルで、かなり遠近感をスッキリと見せるタイプだ。

デンオン PMA-630

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 イコライザー段と高利得パワーアンプの2段構成とし、質的、量的な両立を単純化により達成した高出力型の新製品だ。各段は全段対称型プッシュプル構成でPMA850II系の安定したスケール感豊かな、このクラスのアンプとしてはクォリティの高さが目立つ立派な音をもつ。

デンオン DP-50F, DP-40F

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ターンテーブル内側に磁気記録したパルスを磁気ヘッド検出するサーボ方式、クォーツ導入の位相制御方式に独自の開発を見せたデンオンから初めてフルオートモデルが2機種発売された。
 DP50Fは、マニュアル機DP50Mをベースとし無接触型電子制御サーボトーンアームを開発し、任意のレコード盤面上にアームをセットするロケートツマミ、これを利用したオートリピート機構、アーム水平駆動モーターを制御するインサイドフォースキャンセラーツマミなど従来のフルオートになりユニークな機能を備えている。フォノモーターは、デンオン独自のクォーツロックPLL・AC型で信頼感のある充分に大型のサイズをもち快適に動作するブレーキ機構を備えているのは従来からの特長である。DP40Fは、同様な思想で開発されたシリーズ製品で電子制御サポートアーム、クォーツロックPLL・AC型モーターの採用は同じだが、機能の一部が簡略化された実用機で新方式の魅力が充分に楽しめるのが特長である。