Category Archives: デンオン/コロムビア - Page 2

デンオン POA-1500

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 少し線が細いが、キメの細かい爽やかで、ワイドレンジで反応の速い音を聴かせるアンプで、カーヴァーM200tとの対比が非常におもしろい。聴感上の帯域バランスはワイドレンジ型の通例で、やや中域の密度に薄さがあり、プログラムソースにより少しキャラクターが変化をするようだ。農民カンタータは細身のスッキリ型で音を整理して聴かせるが、幻想は全体に線が太く中高域にクセがあり、少し逆相的なプレゼンスになり、音源が遠く、抜け悪し。スピーカーコードのクセか。

音質:8.2
価格を考慮した魅力度:8.2

デンオン PRA-2000Z

菅野沖彦

ステレオサウンド 76号(1985年9月発行)
特集・「CD/AD 104通りの試聴テストで探る最新プリアンプの実力」より

 全体にやや痩身な感じの音だが、それだけに、繊細で、さわやかな美しさがある。中低域に厚味が不足するような印象を受けるアンプ。それだけに、パワーアンプやスピーカーとのマッチングが決め手となるだろう。試聴したパワーアンプもSA4のほうがよく合う。スピーカーは、JBLがいい。曖昧さや、鈍さのないアンプだが、かといって、神経質すぎることもないし、高域のしなやかさも不満のないものだ。品位の高いプリアンプである。
[AD試聴]レーグナーのマーラーは大変美しい高域が生きて一段と洗練された演奏に聴こえる。B&Wだとやや神経質になる傾向だが、JBLでは小骨っぽさは残るものの、細かい分解能のため、オーケストラのテクスチュアーが鮮かに再現される。ローズマリー・クルーニーのハスキーさと艶っぽさがほどよくバランスした声が魅力的だし、ベースも、抑制されてボンボン野放図にならない、締まった質感の音だ。リラックスした雰囲気には欠けるが端正な音。
[CD試聴]分解能力の高い音はADへの対応と同じ性格であるが、このアンプの質感はCDでより生かされるようだ。ジークフリートのマーチにおける木管と金管の重奏部での音色の鳴らし分けは、クリアーな点、他の追従を許さない。ただ、中域の厚味が少々不足気味のためffへの盛り上りの迫力に物足りなさはある。アメリンクの声が大変明るく美しかったが、ややニュアンスが若過ぎる傾向だ。ジャズは、明解なタッチ、音色の妙の濃やかな再現だが、力が不足。

デンオン DL-1000A

井上卓也

ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)
特集・「いま話題のカートリッジ30機種のベストチューニングを探る徹底試聴」より

●本質を見きわめる使いこなし試聴
 使用アームは、SME3009SIIIである。標準針圧では、素直な帯域バランスをもつ、柔らかく細やかで、滑らかな音だ。スクラッチノイズは安定しているが、表情が表面的に流れ、奥に拡がる音場感だ。
 0・9gで音に焦点が合ってくる。粒立ちが細やかで、軽く柔らかい低域と少しメタリックな中高域がバランスした、デジタル的なイメージをも持つ近代的な音だ。
 0・7gにする。スクラッチは少し浮くが、予想よりも爽やかで0・9gと対照的なバランスだ。フワッと奥に拡がる音場感は独特で面白いが、実用的ではない音。
 0・85gで、0・8gよりも僅かに穏やかで安定した一応のバランスが得られる。音場感も標準的で針圧はこれに決める。
 IFC量を変え1・0とすると、音が少し硬質となり、レコードらしい印象にはなるが、少し古い音に聴こえる。0・9に減らすと、穏やかさが加わり、好ましいが、IFCを調整する糸吊りの錘のフラツキが定位感、音場感に悪影響を与えることが確認できる。これは、いわゆるSME型で、軽針圧動作時に気になる点である。
 逆に、IFC量を0・7に下げる。スクラッチノイズの質、量ともにかなり優れた水準にあり、広帯域型で、やや中高域にメタリックさがある。軽量級ならではのクリアーさ、プレゼンスの良さが活かされた極めて水準の高い音である。
 このメタリックさは、トーンアーム側のヘッドシェル部、指かけ、パイプ材料とも関係があるが、現状ではこれがベスト。

●照準を一枚に絞ったチューンアップ
[ハイドン:六つの三重奏曲/クイケン]
大村 軽くて、細身で、すっきりと見通しのいい音ですが、この曲だと、ちょっと軽すぎるように思います。イタリアン・バロックといえるくらいに軽い。少しひなびた感じが欲しいです。
井上 スタビライザーを試してみたわけですが、その効果がPL7Lの場合と多少異なります。スタビライザーをのせることでフローティングベースの重量が変わるため、スタビライザーの材質の音の他にスタビライザーの重量が大きく効いてきます。
大村 いろいろと試した中では、いちばん重量のあるマイクロがよかった。安定感がぐっと増して、軽すぎるところが気にならなくなりました。ただ、マイクロのメタリックな音がやや気になりますけど……。
井上 メタリックな感じは、カートリッジとシェルの間にブチルゴムをひとかけらはさんでやれば、消えるでしょう。TD226で注意してほしいのは、フローティング型だからといっていいかげんな台に置かないでください。フローティングの効果はすべての周波数に対してあるわけではありませんから。今回は、試してみませんでしたが、ヤマハの台の上に3mm厚くらいのフェルトや5mm厚くらいのコルクを敷いてやれば、相当効果はあるはずです。

デンオン DL-1000A

井上卓也

ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)

特集・「いま話題のカートリッジ30機種のベストチューニングを探る徹底試聴」より

 標準針圧ではスクラッチノイズの量が少なく、質的にも非常に高いのが特徴。広帯域型でナチュラルに伸びきった帯域感と歪み感のない音色、少し奥に距離感を伴って拡がる音場感など軽量級独自の音の世界だ。表情は抑制が利き、線を細く、キレイに聴かせるが、ダイナミックさと見通しの良さは、今一歩不足だ。
 針圧上限では、音の焦点が合い、安定さ、分解能が明らかに向上し、音場感もナチュラルで奥行きのタップリした点は特筆に催する。音色は軽く、反応も適度で、力不足もなく、オルトフォンSPU GOLD/GEの対比的な音だが、リアリティのみ不足気味であるのが残念だ。
 針圧下限では、軽やかなプレゼンスをもつ、独特の雰囲気のある音が魅力的だが、低域の質感が軟調となり、音源が遠く、見通しが悪いのは、組み合せたトーンアームの慣性モーメントが、このカートリッジの要求する針圧に対して過大なためだ。

デンオン DL-304

井上卓也

ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)
特集・「いま話題のカートリッジ30機種のベストチューニングを探る徹底試聴」より

 標準針圧では中域が少し引込み、高域が少し上昇した広帯域型らしいバランスだ。柔らかい雰囲気が好ましく、低域は軟調気味だが、分解能は水準以上だ。針圧上限ではシャープで抜けが長く、最新のMC型らしい、CDに対比できるシャープさ、SN比を持つ音で、音場感、定位も長い。
 針圧下限では音場感型に変わり、爽やかで拡がる音だが、Dレンジは狭く、聴きやすいが少し不満が残る。
 針圧を上限近くで探してみる。1・3gにすると、安定感があり、ややソフトフォーカス気味だが一応のまとまりを示す。上限に上げると急激に焦点が合った印象で、現代MC型カートリッジのスタンダードといえる音になり、この針圧変化は、かなり大だ。
 ファンタジアを聴く。ピアノのスケール感が感じられ、アタックは少し甘いが、プレゼンスに優れる。低域はややソフトだが、十分楽しめる。
 アル・ジャロウは暖色系にまとまり、力不足の音だ。

デンオン PMA-960

菅野沖彦

ステレオサウンド 70号(1984年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 デンオンのプリメインアンプの新製品として昨年暮に市場に出たPMA960は、プリメインアンプとしては10万円を超える価格からして、明らかに高級製品といえるものだろう。たしかに、内容の充実は目を見張るものがあり、物量面と、ハイテクノロジーがふんだんに盛り込まれた力作であることが解る。しかし、残念ながら、そのデザインやフィニッシュに、新鮮味が欠けるため、うっかりすると、旧製品として見過してしまうような雰囲気のアンプである。反面、オーソドックスで、おとなしい外観のもつ地味な容姿は嫌味のなさともいえるかもしれないが……。のっけからこんな苦情をいいたくなったのも、このアンプの技術的な斬新性と、その音のもつ大人の風格に大きな魅力を感じさせられたからであって、そこそこの仕上りではある。
 このアンプの技術的特徴は、同社のデュアル・スーパー無帰還回路と称する伝送増幅方式と、それをバックアップする余裕のある電源部であろう。ピュアー・ダイナミック・パワーアンプという名称とは印象の異なる、おだやかで、ウォームな音のするアンプだが、優れた特性のアンプというものは、決して形容詞的に使われるダイナミズムやパンチが表に出てくるものではないようだ。このアンプのように、別にどうということのない、自然な鳴り方にこそ、アンプの特性の優秀な点が見出されるように感じられるのである。このアンプのメーカー資料に書かれている一言一句は、すべて力と迫力を感じさせるものであるのが不思議な気がする。もっとも、これは、このアンプだけではなく、アンプというものが、スピーカーをドライブするパワーの役割を担うところから、こういうアピールをするメーカーがほとんどだが……。
 6Ω負何で170W+170Wというパワーは、プリメインアンプとしては大出力アンプといってよいが、試聴感としては、むしろ、ローレベルのリニアリティ、つまり、小出力時のSN比のよさ、繊細な響き分けといった面に印象が強く、魅力が感じられた。大型スピーカー(JBL4344)を手玉にとって、これ見よがしの迫力を聴かせるような荒々しさや雄々しさといった面はこのアンプの得意とするところではなさそうだ。初めに、大人の風格と書いたのはこの辺のニュアンスである。しかし、どちらかというと、ややナローレンジの感じさえする柔らかい質感が捨て難い魅力のアンプであって、音が大きくても、うるささは感じられないといった自然な音の質感に近い鳴り方をする。色に例えればオレンジ系の暖色である。とげとげしく、冷徹なメカトロニクスのフィーリングが氾濫する中で、こういう雰囲気のアンプは貴重な存在といえるだろう。欲をいえば、低域の実在感、深々とした奥深い響きが望まれる。

デンオン DCD-1800

井上卓也

ステレオサウンド 70号(1984年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 一昨年、脚光を浴びて新登場したCDプレーヤーも、大勢としては、ローコスト化の方向に向いながらも、すでに、第二、第三の世代に発展しているが、今回、デンオンから、第二弾製品として、同社独自の開発によるDCD1800が発売された。
 価格的にも、標準と思われるクラスの製品で、デザイン的にも、左右にウッドパネルを配した、同社の高級モデルに採用されるポリシーを受継いだ落着いた雰囲気を備えており、機能面でも、ダイレクト選曲、プログラム選曲、インデックス選曲、イントロサーチ、スキップモニター、2点間リピートを含むリピート、タイマー再生など、リモコン機能を除き、フル装備というに相応しい充実ぶりである。
 ブラックにブルーの文字が鮮やかに輝やく集中ディスプレイは、トラック、インデックス、演奏経過時間とプログラムされた曲番と次の演奏曲番表示をはじめ、プレイ、ポーズ、リピートなどの各機能が3色に色分けされて表示される。
 本棟の注目すべき点は、レーザーピックアップ駆動に業務用仕様DN3000Fに採用された扇形トレースアームの外周をモーター駆動するリニアドライブトレーサー方式が導入され、トレースアーム軸とディスク用スピンドルの2軸が完全平行を保ちながら、厚手のダイキャストベースで支えられ、かつ、ダイキャストベースはシャーシからフローティングされ、外来の振動を防止して、高精度、耐久性、応答性の早さ、などを獲得している機構にある。それに加えて電気系の最重要部たるDAコンバーター個有の、アンプでいえばB級増幅のスイッチング歪に相当するゼロクロス歪を解消する新開発スーパーリニアコンバーターを採用し、特性上はもとより、聴感上での、いわゆるデジタルくさい音を抑え、飛躍的に音質を向上させたことがあげられる。
 聴感上では、本機は、ナチュラルな帯域バランスと細かく、滑らかに磨込まれた音の粒状性が特徴である。平均的にCDプレーヤーは、シャープで、音の輪郭をスッキリと聴かせる傾向が強いが、伸びやかさとか、しなやかさで不満を感じることが多い。DCD1800は、この部分での解決の糸口を感じさせてくれるのが好ましい。
 音像は比較的に小さくまとまり、音場感もスムーズに拡がり、水準以上の結果を示すが、もう少し改善できそうな印象がある。
 問題点の出力コードの影響は、比較的に少ないが、平均的なコントロールアンプ程度の影響は受けるため、細かい追込みには、各種のコードの用意が必要である。
 機能面は実用上充分であり、機能の動作、フィーリングも、ほぼ安定している。ただテスト機では、トレイのオープン時の反応が鈍かったが、個体差であろう。安定感が充分に感じられる手堅い新製品である。

デンオン PRA-2000Z, POA-3000Z

井上卓也

ステレオサウンド 70号(1984年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 デンオンのセパレート型アンプの新世代を意味する製品として、PRA2000とPOA3000が登場してすでに5年の歳月が経過している。今回、その安定した評価を一段と高めるために、最新のアンプ技術が投入され、新しく型番末尾にかつてのプリメインアンプPMA700Zで使われた、栄光のZの文字がついたPRA2000ZとPOA3000Zとして新登場することになった。
 デザイン的には、当然のことながら従来の製品イメージを受継いではいるが、操作性を向上するために細部の改良点は数多くある。たとえば、PRA2000Zでは、セレクタースイッチのパネル面の凹みへの移動、パネル下側の扉部分の開閉にロック機構が追加されたことなどだ。
 PRA2000Zは、パワーアンプに先行して発売されたモデルである。前作が発売以来5年というロングラン製品であり、その間に、PCMプロセッサー、CDプレーヤーなどのデジタルプログラムソースが登場したこともあって、アンプとしての内容は完全に一新され、現時点での最新のコントロールアンプに相応しいものがある。
 基本構成は、アナログ系のフォイコライザーにCR型を採用するデンオン独自のタイプであることは前作と同様だが、今回はフォノ入力系が3系統独立したタイプに発展し、スーパーアナログ対応型としている点に特徴がある。イコライザーの構成は、入力部に約1対7の昇圧比をもつステップアンプトランスを備えたヘッドアンプ①、MC型力−トリッジをダイレクトに使用できるヘッドアンプ②とMM型に代表される高出力型力−トリッジ用のヘッドアンプ③の後に切替えスイッチがあり、これに続いてCR型RIAAイコライザー・ネットワークとフラットアンプが置かれる。
 イコライザー出力と、チューナー、DAD、AUXの3系統のハイレベル入力は、電子スイッチと高精度リレーによるソフトタッチ作動方式により切り替えられ、この部分にはプリセット機能をもち留守録音などに対応可能である。
 ファンクション切替え、テープモニター、サブソニックフィルター、バランス調整、ボリュウム調整に続き、フラットアンプ兼リアルタイムトーンコントロール部と出力のバッファーアンプが信号系の通路となる。
 フラットアンプは、最高級機PRA6000で開発された無帰還技術を発展させたハイスルーレイトなダイレクトディストーションサーボ回路による無帰還型で、トーン使用時には、ディストーションサーボ回路内組込みの素子を使うリアルタイムトーンコントロールとして動作する。なお、出力部のバッファーアンプも無帰還型ハイスピードの低出力インピーダンス型だ。
 また、電源部は、従来の2倍の容量をもつ90VA級の大型トロイダルトランス採用。AC電源コードは、デンオン伝統のPMA500以来採用されている大容量型の新開発コードで、これらの部分はコントロールアンプの死命を決定する要点である。
 POA3000ZはPRA2000Zより根本的に設計変更が行なわれていることは、定格出力が250W+250W(8Ω)とハイパワー化されていることからも明瞭である。従来のPOA3000は、純Aクラスベースの高能率型アンプを特徴としていたが、今回は、その後のデンオンアンプに採用された、一般的なBクラスベースのノンスイッチング型に変わったとともに、独自の無帰還技術が全面的に新採用され、飛躍的に高度な性能を引出している。
 無帰還方式でNF技術を使わず歪みを除去するために、静的歪み除去のためのデュアルスーパー無帰還回路、信号のフィードバック、時間遅れ、スピーカーの逆起電力の影響などを排除するパワー段の新開発無帰還回路などが駆使されている。
 電源部は、左右独立トータル5電源型で、電源トランスは大型トロイダルクイブ採用。大型のピークレベルメーターは、0dBが200W(8Ω)表示で、内部に異状温度上昇と左右チャンネルの動作状態をチェックする自己診断ディスプレイを備える。なお、機能面には、CDプレーヤーをダイレクトに接続できるDAD IN端子を備える。
 PRA2000ZとPOA3000Zを組み合せて試聴をする。
 従来のペアが、柔らかく、滑らかで、美しい音を聴かせながらも、内側にかなり芯の強いキャラクターをもち、これが程よい音の芯を形成したり、ある場合には、音の傾向から予想するよりも、はるかに強く輝かしい個性を示したりする傾向をもち、柔らかく、穏やかだが、芯の強さのあるアンプという印象であった。それと比較すると、固有のキャラクターが大幅に弱められて、プログラムソースの内容に素直に対応し、柔らかくもシャープにも音を聴かせるナチュラルさが感じられる点と、音場感的なプレゼンスやディフィニッション、音像定位のナチュラルさなどが加わったことは大変に好ましい新製品らしい成果である。
 アナログディスクをプログラムソースとする場合、とくにMC型カートリッジには、PRA2000Zの独特の3系統のフォノ入力が、積極的に使いこなせるようだ。
 昇圧トランスをもつフォノ㈰は、トランスの昇圧比が低いため、あまり、カートリッジ側のインピーダンスの差に影響されず、トランス独特の程よく帯域コントロールされた密度の濃い、いわばアナログならではの豊かな音を聴かせてくれる。いわゆる低インピーダンス型MCや、軽針圧タイプの空芯高インピーダンス型MCで、広帯域型であるために、力強さや、音の厚みに欠ける場合などはこのフォノ①が好適であり、一般的な嗜好からはこのサウンドのほうが熱い支持をうけるにちがいない。
 ダイレクトにMC型が使用できるフォノ②は、①とは対照的に、広帯域でディフィニッションの優れた、現代型の軽量級空芯MC型の特徴を引出すに相応しい音である。CDを使うことが多くなると、このポジションで使う音が、アナログディスクでも標準となるであろうし、最新のアナログディスクの質的な内容を聴くためには、このクォリティがぜひとも必要になるであろう。フォノ③は、MC型なら外附けの昇圧トランスやヘッドアンプ用に使いたい。
 CDなどのハイレベル入力で音質が優れているのは、PRA2000Zの魅力だ。一般的に、ハイレベル入力からプリアンプ出力までのアンプで音の変化が大きいのが常だが、この部分の質的向上を望みたい。

デンオン PRA-1000, POA-1500

井上卓也

ステレオサウンド 68号(1983年9月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 安定感があり、信頼するにたる内容と音質で堅実なオーディオコンポーネントを開発しているデンオンから、新しく従来にないローコストなセパレートアンプ、PRA1000コントロールアンプとPOA1500パワーアンプが発売された。
 表面的に捉えれば、単に普及価格帯のセパレート型アンプで、セパレート型アンプの入門者用と評価されがちだ。しかし開発の基本コンセプトは、プリメインアンプの超高級機が数は少ないが存在する価格帯で、プリメインアンプに本質的に存在する、MCカートリッジ入力からスピーカー出力までを増幅する、ひじょうに高利得のアンプが単一筐体に組込まれているために起きる相互干渉による音質劣化の問題点を解決することだろう。電圧増幅機であるコントロールアンプと電力増幅機であるパワーアンプに分割し、現時点で高度に発達しているエレクトロニクス技術に基づく物理特性の良さを損うことなく、結果としての音質に、いかに引出すかにあると思われる。
 外観上の特徴は、上級機種PRA2000とPOA3000を受継いだ、いかにもデンオン製品らしいデザインにあり、仕上げも普及価格帯の製品といった印象が少ないのがメリットである。
 コントロールアンプPRA1000は、アナログディスクのハイクォリティ再生の重要な要素としてデンオンが主張しPRA2000、6000で実現したイコライザーアンプの超広帯域化を受継いでいる。一方、CD時代に対応して、高レベル入力のCDプレーヤーを受けるフラットアンプやバッファーアンプにも最新の技術を導入して、広帯域、高SN比化が図られ、ピュアフォーカスなサウンドが狙われている。ちなみに、現状のコントロールアンプでは、簡単に考えれば容易に見受けられる、高レベル入力からコントロールアンプ出力にいたるフラットアンプ、バッファーアンプ、トーンコントロールアンプだが、各社間、各モデル間の音質が相当に異なっていることを体験するのがつねである。
 イコライザーアンプは、低雑音、広帯域に加え、入力インピーダンスの変動による歪増加を抑える設計。これは内外各種のMCカートリッジとの対応性の幅を拡大した、MC/MM切替のCR−NFタイプで、RIAA偏差は±0・2dBで20Hz〜1100kHzを保証している。
 高レベル入力を受けるフラットアンプは、初段ボリュウムの影響による歪の増大を防ぎ、0・002%以下の低歪率が特徴だ。なお、トーンコントロールは、フラットアンプの帰還回路に素子を組み込み、音質上有害なコンデンサーを除去したリアルタイムトーンコントロールである。
  これにつづく、バッファーアンプは、動的歪の発生がなく、接続されるパワーアンプの入力特性の影響を受けずに信号を送り出す独自の無帰還バッファーアンプである。
 その他、高速応答強力電源回路、信号伝達ロスを極少に抑えた、超高周波機器用のポリエステル系基板採用などが目立つ。
 パワーアンプPOA1500は、デンオン独自の入力系への信号フィードバックや時間遅れがなく、動的歪が発生しない無帰還ハイパワー型で、最終段に採用したダイレクト・ディストーションサーボ回路は、出力側から得た信号と入力信号を比較して歪成分のみを検出し、これを入力側に位相反転をして加え歪を打消す本機の重要な回路である。
 電源部は、600VAのトロイダルトランスと6000μFのコンデンサー、強力なダイオードを採用し、8Ωで150W+150W、6Ωで200W+200W、4Ωでは、240W十240Wという優れたパワーリニアリティを確保している、なおフロントパネル中央部のディスプレイにはヒートシンク異常温度、左右チャンネルのパワー段の動作確認ができる自己診断機能を備え、入力系はノーマル入力と、CDプレーヤーダイレクト接続用に、CDサンプリング周波数に近い40kHz以上をカットするとともに−3dBのアッテネーターの入った、CDプレーヤーとのベストマッチを計ったハイカットフィルター付の2系統をもつ。なお、注目のアース関係の処理は、フローティング・ロード回路の採用で、小出力時のノイズと歪を低減している。
 新セパレートアンプを組み合わせた音はブックシェルフ型やフロアー型のスピーカーを問わず、従来のデンオン製品とは一線を画した広帯域でディフィニッションの優れた音を聴かせるのが新しい魅力だ。問題の低域特性も豊かに伸び、CD入力時でも質感の優れた活気のある低域を聴かせる。全体に安定度重視で少し音を抑えて聴かせるデンオンサウンドの傾向はなく、反応が早くナチュラルに拡がる音場感、定位感に加えて、活き活きとした音楽を聴く楽しみが味わえることが本機の大きな魅力だ。

デンオン AU-1000

井上卓也

ステレオサウンド 68号(1983年9月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 デンオンのDL1000Aは、振動系の軽量化を極限にまで追求して開発された現代的な空芯MC型の典型的な製品として既に高い評価を得ているが、今回、デンオンから発売された昇圧トランスAU1000は、DL1000Aの性能と音質をフルに発揮させるための専用トランスである。
 外観は、従来の昇圧トランスとは異なる剛体構造の筐体に特徴があり、その前半部分に、左右チャンネル独立のトランス本体が組込まれ、後半部分は、部厚いカバーをもった入出力端子部である。
 トランスのコア材は、特殊形状の大型パーマロイ鋼板を使用し、少ない巻線で低域特性を確保するために要求されるコアの透磁率は低域において従来の同社製品と比較して約1・5倍の値となっている。高域はオーソドックスに分割サンドイッチ巻線を採用して低域とのバランスをとったため周波数特性は、従来のAU310の、20Hz〜40kHzに対して5Hz〜200kHzと驚異的なワイドレンジ型になっている。
 また、左右独立型のトランス本体は、2重シールドおよび充てん材で固定され、砲金ケースに収納されており、重量級の筐体とあいまって振動防止は徹底して追求されている。なお、トランス巻線は、DL1000A専用設計のために、入力インピーダンスは固定、音質劣化の原因となるバイパススイッチなどは省略してある。
 入出力部のカバーは、太いネジで固定する振動防止を追求した設計である。付属の出力コードは、無酸素銅線採用の低容量・低雑音タイプのコードで、しっかりとした金メッキ処理が施されている。
 DL1000Aは、1g以下の針圧を標準とする超軽量級カートリッジであるために、併用するトーンアームの選択は、現状では困難といえよう。標準的な針圧で、しばらく、エージング的に音を出してから、細かい針圧調整、インサイドフォースのコントロールをしてから試聴をはじめる。
 従来の例では、適合性の良いトランスがなく、ヘッドアンプを使用する他はないため、その結果では、線が細く、音の細部を引出す特徴は認めながらも、やや、ダイナミックな表現を欠いていたのがDL1000Aの音である。AU1000との組合せでは、トランスにありがちなナローレンジ感が、皆無に近く、トランス独特の、いきいきとした音楽の躍動感が得られるのだ。
 表現を変えれば、この音は、鉄芯MC型の力強さと、空芯MC型の広帯域・高分解能を併せもつもので、まさに、MC型ならではの、非常に魅力的な音の世界である。なお、昇圧トランスの使用法として注意したいのは、剛性の高い、安定した台にのせて使うことが、優れたトランスの性能を引出す重要なポイントである。今回の試聴でも、ジュウタンの上にのせたり、机の端に置いたりした場合には、音は薄くなり、躍動感に欠け、大幅な質的低下が聴きとれた。

マッキントッシュ C33 + デンオン POA-8000

菅野沖彦

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
特集・「高級コントロールアンプVSパワーアンプ72通りの相性テスト」より

 やや肌ざわりの冷たい音だが、滑らかさはあるし、ワイドレンジにわたって締まった音。マーラーの響きとしては、もっと熱っぽい音がほしいと思ったが、これはこれで現代的な響きで決して悪くない。組合せとしては、少々異質であることが、ヴォーカルを聴くとよくわかり、どこといって欠点として指摘するほどのことではないのだが、声質にはやや不自然な感じが出る。中低域の力と量感に対して、高域が質的にうまくバランスしない感じだ。

デンオン SC-A3

デンオンのスピーカーシステムSC-A3の広告
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

SC-A3

デンオン PRA-6000 + POA-8000

黒田恭一

ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
特集・「スピーカーとの相性テストで探る最新セパレートアンプ44機種の実力」より

ヤマハ・NS1000Mへの対応度:★★
 たっぷりとして明るいひびきに魅力を感じる向きもあるであろう。よくみがきあげられた、しかも腰のすわった音である。⑤のレコードできけるようなひびきへの対応はかならずしもこのましいとはいいがたいが、①のレコードなどは堂々とひびかせて独自の迫力をうみだす。
タンノイ・Arden MKIIへの対応度:★
 このアンプのもちあじであるところのみがかれた音がここでもいかされている。ここできける嫌味のないおっとりしたひびきはそのためのものと考えていいであろう。ただ、できることならシャープなひびきへの対応でもう少し敏感なところがあれば、さらにはえたであろうと思わなくもない。
JBL・4343Bへの対応度:★★
 ②のレコードなどは独自の迫力を示す。腰のすわった見事なひびきというべきかもしれない。④のレコードできける声のなめらかさもこのましい。しかしながらここできける音は4343の音としてはいくぶん異色でル。迫力にとんではいるが、音場感の面で多少狭めである。

試聴レコード
①「マーラー/交響曲第6番」
レーグナー/ベルリン放送管弦楽団[ドイツ・シャルプラッテンET4017-18]
第1楽章を使用
②「ザ・ダイアローグ」
猪俣猛 (ds)、荒川康男(b)[オーディオラボALJ3359]
「ザ・ダイアローグ・ウィズ・ベース」を使用
③ジミー・ロウルズ/オン・ツアー」
ジミー・ロウルズ(P)、ウォルター・パーキンス(ds)、ジョージ・デュビビエ(b)[ポリドール28MJ3116]
A面1曲目「愛さずにはいられぬこの思い」を使用
④「キングズ・シンガーズ/フレンチ・コレクション」
キングズ・シンガーズ[ビクターVIC2164]
A面2曲目使用
⑤「ハイドン/6つの三重奏曲Op.38」
B.クイケン(fl)、S.クイケン(vn)、W.クイケン(vc)[コロムビア-アクサンOX1213]
第1番二長調の第1楽章を使用

デンオン PMA-950

黒田恭一

ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
特集・「スピーカーとの相性テストで探る最新プリメインアンプ11機種の実力」より

ヤマハ・NS1000Mへの対応度:★★★
 このスピーカーのきめのこまかさをいかしているAのレコードでのパヴァロッティの声がいくぶん細めに感じられ、Bのレコードでのピアノが充分な迫力を示しきれないきらいはあるものの、ごりおしにならない表現はこのましい。ひびきはあかるく一種の透明感がある。
タンノイ・Arden MKIIへの対応度:★
 全体に音像がふくれぎみである。このスピーカーの弱い部分をカヴァーしきれているとはいえない。とりわけCのレコードでのチェロのひびきのふくれが気になった。Aのレコードではひろがりが感じられ、パヴァロッティの声がゆたかにきこえたのはこのましかったが……。
JBL・4343Bへの対応度:★★
 総じてひびきが浅い。Aのレコードでのパヴァロッティの声はくっきりきこえるもののいくぶん硬質にすぎる。このスピーカーの反応としては意外なことにというべきであろうが、Bのレコードでのきこえ方がソフトであった。その辺にこのアンプの性格の一面をみるべきか。

試聴レコード
Ⓐ「パヴァロッティ/オペラ・アリア・リサイタル」
パヴァロッティ(T)、シャイー/ナショナルPO[ロンドンL25C8042]
Ⓑ「ジミー・ロウルズ/オン・ツアー」
A面1曲目「愛さずにはいられぬこの思い」を使用
ジミー・ロウルズ(P)、ウォルター・パーキンス(ds)、ジョージ・デュビビエ(b)[ポリドール28MJ3116]
B面1曲目「ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー」を使用
Ⓒ「ハイドン/6つの三重奏曲Op.38」
B.クイケン(fl)、S.クイケン(vn)、W.クイケン(vc)[コロムビア−アクサンOX1213]
第1番二長調の第1楽章を使用

デンオン PMA-950

デンオンのプリメインアンプPMA950の広告
(モダン・ジャズ読本 ’82掲載)

PMA950

デンオン DP-52F

デンオンのアナログプレーヤーDP52Fの広告
(モダン・ジャズ読本 ’82掲載)

DP52F

デンオン DP-100M

井上卓也

ステレオサウンド 61号(1981年12月発行)
「THE BIG SOUND」より

 業務用プレーヤーシステムでは最高の性能と信頼性を誇るデンオンの最高級大型プレーヤーシステムが、現実に姿を見せたのは昨年のオーディオフェアであったが、今回、ついに製品として発売されることになった。
 受註生産として発売されるこのモデルには、電子制御方式の標準型トーンアームが付属したコンプリートなプレーヤーシステムDP100Mと、アームレスタイプのDP100の2機種があるが、その基本型には変りはない。
 デンオンのフォノモーターは、回転系性能を向上させるために、DD型の最初期からいちはやく高精度磁気記録検出方式によるスピード制御を開発。ほかにも回転の滑らかなACサーボモーター、クォーツ位相制御をはじめ、アコースティックフィードバック対策として開発された2重構造ターンテーブルやアームフローティング機構、さらに水平・垂直両方向を電子的にダンピングする電子サーボアームなど、独自の技術内容をもつ開発がアクティブに行なわれており、すでにもっとも信頼すべきメーカーという高い評価を確立している。
 今回、DP100Mに採用されたモーターは、本来カッティングレーサーや放送局用プレーヤー用に開発されたアウターローターAC3相サーボ型で、AC3相駆動方式とすることにより、振動や逆転トルクとして働く回転磁界の3の倍数次高調波が打ち消し可能となった。また、ローターとステーターの間にギャップ差があっても磁束が自動的に均一となる特殊巻線方法、防振構造の採用とあいまって、SN比90dB(DIN−B)とワウ・フラッター0・003%WRMS(回転系)を実現している。
 ターンテーブルは、重量6・5kgの厚肉アルミ鋳物製。モーターのローターに固定された下部ターンテーブルとレコードを載せる上部ターンテーブルは、フルイドダンパーとスプリングによる2重構造で、音響的ハウリングに強く、固有振動が少ない独自の機構設計である。 
 モーターシャフトは直径14mm、SU304材を使用し熱処理、研磨、ラッピング仕上げが施されている。ラジアル軸受けは銅錫合金系材料を使用、スラスト軸受けはサファイア使用であり、ターンテーブルに8G以上の外力が加わると緩衝機構が動作して保護する設計だ。
 トーンアームは電子制御型で、トーンアームの低域共振による影響を最少値とする低域カットオフ周波数調整と、低域共振レベルを抑えるダンピング量の調整が可能である。針圧対応アンチスケーティング機構、アームリフターも電子的にコントロールされ、リフターの下降スピードも微調整が可能だ。機構的には、ストレートとS字型パイプアーム交換方式のスタティックバランス型。ストレートアームのヘッドシェルは、3層ラミネート構造による無共振型である。なお、高さ調整はヘリコイド式で、約8mmの範囲で可変することができる。トーンアーム取り付け部分は、ターンテーブルと同様、スプリングとオイルダンパーによりフレームは重量級の厚肉アルミ鋳物製で、スプリングとオイルダンパーにより固有振動を3・5Hzに設定したインシュレーターを装備する。このインシュレーターは、付属の6角レンチを用いて最大10mmの高さ調整が可能であるため、プレーヤーの水平をとることもたやすい。
 操作系では、15mm厚のガラスを使用した自照式パワースイッチとスタート/ストップスイッチ、回転数およびピッチのデジタル表示窓と並び、右端にはアームリフタースイッチを配している。ポケット内にはSPレコード用の78回転を含む3スピードの回転数切替、0・1%ピッチで±9・9%までクォーツロックのまま可変で切るシンセサイザーピッチコントロールのプッシュボタン・スイッチ、ダンピング、カットオフ周波数、リフター降下速度、アンチスケート調整の回転型ツマミが収納されている。
 DP100MにS字型パイプをマウントし、重量級MC型カートリッジから軽量級MM型カートリッジにいたるまで、数種類の製品を使って試聴をはじめる。基本的には、スムーズでキメ細かく滑らかな帯域レスポンスがナチュラルに伸びた、デンオンのサウンドポリシーを備えている。しかし、カッターレーサー用のモーターを備えた、全重量48kgという超重量級システムであるだけに、重心は低い。本来の意味での安定感が実感できる低域をベースとした、密度の濃い充実した再生音は、DD型はもちろん、ベルトや糸ドライブ型まで全製品を含めたシステム中でのリファレンスシステムという印象である。この表現は、このDP100Mのために用意されていた言葉である、といいたいほどの音質、信頼性、性能の高さをもつ。カートリッジによって低域カットオフ周波数調整はシャープな効果を示し、その最適値を聴感上で明瞭に検知することは、予想よりもはるかにたやすい。総合的に見事な製品である。

デンオン DP-32F, AVC-1

デンオンのアナログプレーヤーDP32F、スタイラスクリーナーAVC1の広告
(スイングジャーナル 1981年9月号掲載)

DP32F

デンオン DR-L1

デンオンのカセットデッキDR-L1の広告
(スイングジャーナル 1981年9月号掲載)

DR-L1

デンオン PMA-950

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 新製品PMA950は、既発売のPMA970の系統を受け継いだデンオンAクラス増幅方式採用のプリメインアンプ第2弾製品で、出力は80W+80WとPMA970の80%である。
 基本構成は、ハイゲインイコライザーアンプといいゲインパワーアンプの2アンプ構成である。イコライザーは、新開発の広帯域MC/MM切替型で、RIAA偏差は20Hz〜100kHzで±0・2dBのワイドレンジ設計で、CR・NF型が特長。さらにMM型使用時に高域での実装負荷による歪率増大を防ぐ特殊回路の開発で高域歪は十数分の1に低下している。トーンコントロールは、信号系路からコンデンサーを除去したリアルタイムトーンコントロールで、パワーアンプ部にある。
 パワーアンプは、将来プログラムソースとして登場してくるPCMプログラムをも考慮して、広帯域化、ハイスピード化がテーマとなったデンオンAクラス増幅採用。スピーカー実装時の歪増加を避けるリアルドライブ回路の開発で、純抵抗負荷時の歪率と実装時の差を少なくしている点に注目したい。ちなみに、純抵抗負荷時に比べ実装時の歪みは、スピーカーによって数十倍にまで増加することがあるとのことだ。
 フォノ入力を含むAUX、TUNERなどの入力信号は、トーンコントロール使用時を含み、スピーカー端子まで信号系にはコンデンサーがない完全DC構成である。
 電源部は大型トロイダル電源トランスと22000μFかける2の電解コンデンサー使用で、4Ω負荷100W+100W時のA級パワーアンプを充分にドライブできる能力を備える。なお、電源部はパワーアンプ部の中心部に配置され、ワイアリングは左右チャンネル等距離、最短距離とするパワー・カレント・ピュア・ラジェーション構造を採用しているのも構造上の注目点である。
 マイクロSX8000にMC20とAC3000MC及びDL305とDA401を使いPMA950を聴く。MC20では適度に広帯域で、反応が早くキビキビした音だ。音像は小さく、少し距離をおいて並ぶ。DL305にすると表情の伸びやかさと分解能が高くなる。PMA970より反応が早く、プレゼンスも優れた印象である。全体に軽量級の印象はあるが、鮮度が高く分解能が優れた現代アンプらしい魅力作だ。

デンオン HA-1000

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 DL103Dの発売とほぼ同時に開発されたセパレート型電源採用のヘッドアンプで、利得切替は24dBと32dBの2段切替型だ。
 MC20IIは、ローエンドを少し抑えたワイドレンジ型で、ハイエンドはやや上昇ぎみのバランスとなる。いわゆるスッキリとした細身のバランスで、音の表情は淡泊でサッパリとし、音を整理し凝縮して小さく聴かせる傾向がある。音場感はナチュラルでプレゼンスはかなりのものだ。
 DL305は情報量も多く、滑らかに伸びたレスポンスと、トータルバランスの優れたクォリティの高さ、やや抑制の効いた素直な表情が特徴である。全体に音楽を凝縮して聴かせる傾向は24dBの利得の方にもあるようで、一般的にはもう一段とスケール感が欲しい。

デンオン AU-340

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 広帯域、低歪をテーマに開発されたデンオン昇圧トランス中で最新の製品である。入力は、3Ωと40Ωの2種類が切替使用可能。
 MC20IIは、安定感のある低域をベースに、少しハイエンドを抑えた帯域バランスである。全体の線はクッキリと太く、楽器の基音成分をクッキリと聴かせるが、倍音の豊かさは今一歩という印象である。各プログラムには平均して対応しディスクのキャラクターを素直に引出す性能がある。
 DL305では、やや硬質でスッキリとナチュラルに伸びた帯域バランスと、細やかな粒だち、軽く明るい音色が特徴となる。全体に音を美しくキレイに聴かせる傾向があり、クォリティは充分に高いが、押し出しのよいパワー感とリアリティの面では少し不満が残る。

デンオン HA-500

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 HA1000に続いて開発された製品で、利得は24/32dBの2段切替だ。
 聴感上の帯域バランスはあまりワイドレンジを意識させないナチュラルなタイプで、適度に分解能がよく爽やかな、,軽く明るい音が特徴で、使いやすい音の傾向と思われる。
 MC20IIを32dBで使う。クッキリと粒立つシャープで整然としたやや硬質な音である。全体に力があり、音像がグッと前にせり出す傾向があり、各プログラムソースをコントラストをつけて明解に聴かせる。
 DL305を24dBで使うと、安定した低域をベースに滑らかでスムーズな音である。音場感は32dBとは逆に少し奥に拡がるタイプに変わる。試みにFR2を32dBで使う。滑らかさとメリハリが両立した快適な音だ。

デンオン AU-320

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 AU310の細身で素直な音と比較すると、低域の量感が一段と増加したことと、中高域に少し輝かしいクッキリとコントラストを付けるキャラクターがあり、トータルバランスを形成しているのが異なる点だ。
 MC20IIは、やや薄くシャープでクッキリとした音で、音場感の拡がりも一応の水準にある。しかし本来の音と比べると、中低域の豊かさが減り、中高域が硬質になっているのが判る。
 40Ωに切換えDL305にすると、全体に線が太い絵のように細部が見えず、音場の拡がりも狭くなる。DL103に替えると、低域の力強さと中高域の輝きが巧みにDL103の音にアクセントをつけて効果的に聴かせる。やはり、カートリッジとトランスの製作年代のマッチングの成果であろう。

デンオン AU-310

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 高インピーダンス専用トランスでDL103、103S用に開発された製品。
 DL305では、ナチュラルな帯域バランスと、少し細身のスッキリとしたシャープな音となる。音場感はやや後方に拡がるタイプだが、ホールのプレゼンスは一応の水準で聴かれる。
 ロッシーニは適度に軽快さがあり安心して聴けるが、気をつけて聴くと分解能が不足気味で、反応も少し遅い。ドボルザークとなると中高域に少しキャラクターがあり、ホールの後の席の音だ。峰純子はやや硬めで、小柄なボーカルながらまとまりはよく、カシオペアもそれなりに聴かせる。
 DL103にすると帯域バランスがピタリと決まり、これなら納得という音だ。この変化は大変におもしろい。