デンオン PRA-2000Z, POA-3000Z

井上卓也

ステレオサウンド 70号(1984年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 デンオンのセパレート型アンプの新世代を意味する製品として、PRA2000とPOA3000が登場してすでに5年の歳月が経過している。今回、その安定した評価を一段と高めるために、最新のアンプ技術が投入され、新しく型番末尾にかつてのプリメインアンプPMA700Zで使われた、栄光のZの文字がついたPRA2000ZとPOA3000Zとして新登場することになった。
 デザイン的には、当然のことながら従来の製品イメージを受継いではいるが、操作性を向上するために細部の改良点は数多くある。たとえば、PRA2000Zでは、セレクタースイッチのパネル面の凹みへの移動、パネル下側の扉部分の開閉にロック機構が追加されたことなどだ。
 PRA2000Zは、パワーアンプに先行して発売されたモデルである。前作が発売以来5年というロングラン製品であり、その間に、PCMプロセッサー、CDプレーヤーなどのデジタルプログラムソースが登場したこともあって、アンプとしての内容は完全に一新され、現時点での最新のコントロールアンプに相応しいものがある。
 基本構成は、アナログ系のフォイコライザーにCR型を採用するデンオン独自のタイプであることは前作と同様だが、今回はフォノ入力系が3系統独立したタイプに発展し、スーパーアナログ対応型としている点に特徴がある。イコライザーの構成は、入力部に約1対7の昇圧比をもつステップアンプトランスを備えたヘッドアンプ①、MC型力−トリッジをダイレクトに使用できるヘッドアンプ②とMM型に代表される高出力型力−トリッジ用のヘッドアンプ③の後に切替えスイッチがあり、これに続いてCR型RIAAイコライザー・ネットワークとフラットアンプが置かれる。
 イコライザー出力と、チューナー、DAD、AUXの3系統のハイレベル入力は、電子スイッチと高精度リレーによるソフトタッチ作動方式により切り替えられ、この部分にはプリセット機能をもち留守録音などに対応可能である。
 ファンクション切替え、テープモニター、サブソニックフィルター、バランス調整、ボリュウム調整に続き、フラットアンプ兼リアルタイムトーンコントロール部と出力のバッファーアンプが信号系の通路となる。
 フラットアンプは、最高級機PRA6000で開発された無帰還技術を発展させたハイスルーレイトなダイレクトディストーションサーボ回路による無帰還型で、トーン使用時には、ディストーションサーボ回路内組込みの素子を使うリアルタイムトーンコントロールとして動作する。なお、出力部のバッファーアンプも無帰還型ハイスピードの低出力インピーダンス型だ。
 また、電源部は、従来の2倍の容量をもつ90VA級の大型トロイダルトランス採用。AC電源コードは、デンオン伝統のPMA500以来採用されている大容量型の新開発コードで、これらの部分はコントロールアンプの死命を決定する要点である。
 POA3000ZはPRA2000Zより根本的に設計変更が行なわれていることは、定格出力が250W+250W(8Ω)とハイパワー化されていることからも明瞭である。従来のPOA3000は、純Aクラスベースの高能率型アンプを特徴としていたが、今回は、その後のデンオンアンプに採用された、一般的なBクラスベースのノンスイッチング型に変わったとともに、独自の無帰還技術が全面的に新採用され、飛躍的に高度な性能を引出している。
 無帰還方式でNF技術を使わず歪みを除去するために、静的歪み除去のためのデュアルスーパー無帰還回路、信号のフィードバック、時間遅れ、スピーカーの逆起電力の影響などを排除するパワー段の新開発無帰還回路などが駆使されている。
 電源部は、左右独立トータル5電源型で、電源トランスは大型トロイダルクイブ採用。大型のピークレベルメーターは、0dBが200W(8Ω)表示で、内部に異状温度上昇と左右チャンネルの動作状態をチェックする自己診断ディスプレイを備える。なお、機能面には、CDプレーヤーをダイレクトに接続できるDAD IN端子を備える。
 PRA2000ZとPOA3000Zを組み合せて試聴をする。
 従来のペアが、柔らかく、滑らかで、美しい音を聴かせながらも、内側にかなり芯の強いキャラクターをもち、これが程よい音の芯を形成したり、ある場合には、音の傾向から予想するよりも、はるかに強く輝かしい個性を示したりする傾向をもち、柔らかく、穏やかだが、芯の強さのあるアンプという印象であった。それと比較すると、固有のキャラクターが大幅に弱められて、プログラムソースの内容に素直に対応し、柔らかくもシャープにも音を聴かせるナチュラルさが感じられる点と、音場感的なプレゼンスやディフィニッション、音像定位のナチュラルさなどが加わったことは大変に好ましい新製品らしい成果である。
 アナログディスクをプログラムソースとする場合、とくにMC型カートリッジには、PRA2000Zの独特の3系統のフォノ入力が、積極的に使いこなせるようだ。
 昇圧トランスをもつフォノ㈰は、トランスの昇圧比が低いため、あまり、カートリッジ側のインピーダンスの差に影響されず、トランス独特の程よく帯域コントロールされた密度の濃い、いわばアナログならではの豊かな音を聴かせてくれる。いわゆる低インピーダンス型MCや、軽針圧タイプの空芯高インピーダンス型MCで、広帯域型であるために、力強さや、音の厚みに欠ける場合などはこのフォノ①が好適であり、一般的な嗜好からはこのサウンドのほうが熱い支持をうけるにちがいない。
 ダイレクトにMC型が使用できるフォノ②は、①とは対照的に、広帯域でディフィニッションの優れた、現代型の軽量級空芯MC型の特徴を引出すに相応しい音である。CDを使うことが多くなると、このポジションで使う音が、アナログディスクでも標準となるであろうし、最新のアナログディスクの質的な内容を聴くためには、このクォリティがぜひとも必要になるであろう。フォノ③は、MC型なら外附けの昇圧トランスやヘッドアンプ用に使いたい。
 CDなどのハイレベル入力で音質が優れているのは、PRA2000Zの魅力だ。一般的に、ハイレベル入力からプリアンプ出力までのアンプで音の変化が大きいのが常だが、この部分の質的向上を望みたい。

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