Category Archives: アンプ関係 - Page 58

ヤマハ A-1

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ヤマハのプリメインアンプは、すでに定評が高いCA2000をトップモデルとして、充実したラインナップを持っている。
 今回発表されたプリメインアンプは、型番が従来モデルと区別されていることからもわかるように、やや現在では特殊なタイプとも考えられるディスク優先型のユニークな構想に基づく新製品である。
 ディスク優先の考え方は、デザインに強く表現され、フロントパネルにはボリュウムと使用時のみ照明される3個の角型のプッシュスイッチがあるのみだ。他のトーンコントロール、テープ関係のスイッチなどの機能は、ヒンジにより下方向に開くサブパネル内部に収納されている。プッシュスイッチは、左から電源、スピーカー、ディスクの順で、ディスクスイッチは、内部のセレクタースイッチがどの位置にあっても、フォノ優先の切替が可能である。この場合には、回路的にはトーンコントロールアンプぺはジャンプされ、イコライザーアンプは直接パワーアンプに接続される。
 構成は、ヤマハの超低雑音ICによるMCヘッドアンプ、初段に同様に自社製の超低雑音デュアルFETを使い終段がSEPPのイコライザー、利得が0dBのヤマハ独自のCR−NF型トーンコントロール、入力感度が200mVに設計され一般よりも約20dB高利得型のDCパワーアンプからなる。ディスクスイッチON時には、MM型カートリッジを使用するとすれば、信号系にはイコライザー出力部にフィルムコンデンサー1個のみということになる。
 機能は、バランス調整がないだけで他はトーンコントロールを含むベーシックな装備を備えるが、カートリッジ負荷抵抗切替は、リアパネルの専用ジャックに附属の47kΩ、68kΩの表示があるプラグを差込んでおこなう方式が採用され、プラグなしでは100kΩとなっている。
 A1は、他のヤマハのプリメインアンプとは異なるフレッシュで伸びやかな明るい音が印象的である。音のクォリティが高く、十分な表現力があり、セパレート型アンプの魅力をインテグレート化したといえるユニークな製品である。

テクニクス SE-A1 (Technics A1), SU-A2 (Technics A2)

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 すでにオーディオアンプのジャンルでは、量的に世界最大の生産量を誇るにいたっているわが国において、超高級機を象徴するセパレートアンプの分野では、いまだに海外製品、ことに米国の製品には一歩を譲る感が深いのが現状である。
 テクニクスでは、数年前にパワーアンプの出力段をも含めた完全定電圧化電源を採用したSE10000パワーアンプと、これとペアになるSU10000コントロールアンプを発表し、質的には世界のトップランクの製品として認められ、その高価格な面をも含めて脚光を浴びたが、今回久し振りに沈黙を破ったかのように、、まさにスーパーアンプの名称に応わしいような、質的にも量的にも、名実ともに現時点での究極のセパレートアンプともいえる超弩級製品が発売されることになった。
 パワーアンプのテクニクスA1は、小出力のAクラスアンプの電源の中央をフローティングし、別個の電源アンプで出力振幅にフォローするようにAクラスアンプの電源中点を駆動するというユニークな発想を実用化したA+クラス動作による、350W+350Wのパワーを誇る製品である。
 この方式の採用により、質的には優れるも、量的にはハイパワー化が至難であったAクラスアンプの問題点を一挙に解決し、従来の100W足す100W級のAクラスアンプの外形寸法のなかで、空冷用のファンを使用せずに高出力化に成功している点は特筆すべきものがある。
 構成は、2モノーラル型で1チャンネル当り4電源、系8電源をもった完全なDCアンプであり、アクティブ・サーマル・サーボ方式によりDCドリフト対策は万全である。機能面は、高分解能ピークメーター、ベル可変の4系統スピーカー端子、フェードイン・アウト回路を持つクリックのないファンクションスイッチなどを備える。また、高出力アンプとしては例外的に高域のレスポンスが伸び、歪率が低く抑えられている点が見逃せない。
 コントロールアンプのテクニクスA2は、驚くべき多機能を装備した超大型コントロールアンプである。イコライザーを含み完全なDCアンプ構成をとり、段間のコンデンサーは皆無であり、動作は全段Aクラスである。この完全DCアンプ化は、世界最初のものであり、パワーアンプにも採用されたアクティブ・サーマル・サーボ方式により実現されたものだ。機能面では、リレー制御のフェード回路付タッチスイッチによるファンクション切替、4バンドの周波数、Q可変イコライザー兼一般型の高音、低音調整、可変型ラウドネス調整、多用途切替型高分解能メーター、4種の波形が選択可能な発振器内蔵、ミキシング可能なマイク入力など現時点で考えられる限りの機能はほぼ完全に装備している。発表された規格は測定器の限界に迫る驚異的な値である。

トリオ KT-8000

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最高級機種KT9700の内容を中級機で実現した注目すべき新製品である。7連バリコン使用のフロントエンド、IF帯域の2段切替とダブルコンバージョン方式によるパルスカウント方式の超低歪FM検波回路の採用が最大のポイントである。MPX部は、クリーンサブキャリアー方式によるパイロットキャンセラー付。

テクニクス ST-9038T (Technics 38T), SH-9038P (Technics 38P), SH-9038R (Technics 38R)

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 クォーツシンセサイザーFMチューナーST9038T、マイコン・プログラマブルユニットSH9038P、クォーツシンセサイザーFM受信コントローラーSH9038Rの3モデルで構成するセパレート型の驚くべき機能と性能を備えたシステムチューナーである。
 基本となるST9038Tは、プッシュボタンで自動、手動で選局できるチューナーで、ミューティングスイッチは、ステレオ歪率0・2%以下、0・2〜1%、OFFの3段切替で設定した歪率未満の弱い局はミューティングされる。選局ボタンを自動とし、0・2%以下のミューティングとすれば、東京では、選局ボタンのワンタッチでNHK東京とFM東京を交互に受信可能というすばらしい使用法が、この機能により得られる。
 マイコン・プログラマブルユニットSH9038Pは、単独使用も可能であるが、ST9038Tと専用16
ピンコードで結合して使用する。本機は、マイクロコンピューターを内蔵し、1週間の単位で曜日、時間、放送局(8局まで)、ACラインのON−OFF指定(4系統のACアウトレット)を33回自由に設定できる他に、電源同期型の時計、加算可能なストップウォッチとしても使用できる。
 クォーツシンセサイザーFM受信コントローラーSH9038Rは、前者の組合せにさらに加えることにより、電界強度表示、マルチパスレベル表示、付属のアンテナ回転機構と組み合わせたアンテナ角度の表示とメモリー付アンテナ自動回転機能などができる。本機自身にもクォーツシンセサイザーを内蔵し、ST9038Tと組んで、ブースター、アッテネーター、さらに同調ツマミにより、従来感覚のフライホイールによるマニュアル同調さえも可能としている。

トリオ L-05M

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 前回発表されたパワーアンプL07Mは、スピーカーとパワーアンプ間のコードを短縮し、業務用に見られるスピーカーとパワーアンプの一体化がテーマであったが、今回のL05Mでは、過渡応答の徹底的改善をテーマとし、いわゆるハイスピード化を狙った製品である。出力段に高域特性が優れたEBTを採用し、モノ構成のDCアンプとしているため、DC領域までの動特性を含めた低域特性に見合う高域特性を得ている。単なる広帯域化でなくアンプの音質改善を主眼としたトランジェント特性を重視した結果とのことだ。

オーレックス SY-88

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 SY77につづく、オーレックス第2弾のステレオプリアンプである。
 機能面は、単純でクォリティ優先型のプリアンプで、MCヘッドアンプを内蔵している。構成部品は、最近の製品では徹底して性能面、音質面から追求される重要なポイントであるが、ここではV型無誘導メタライズド・ポリエステルフィルムコンデンサー、高音質電源用電界コンデンサー、対数パターンPBボリュウムの採用など十分に検討されている。コンストラクションは、電源トランスからアンプ系を前後に分離独立したタイプである。

ヤマハ T-2

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 待望久しいC2とペアになる超薄型のFM専用チューナーである。
 構成は、マニュアル選局をする従来型で、シンセサイザー方式を避け、高SN比を得ようとする設計方針である。フロントエンドは7連バリコン使用で、動作状態を高感度と高選択度に切替可能だ。IF段は、妨害を受けると選択度を狭く切替えるオートDX回路付、MPX部にはDC・NFBスイッチング回路、トラッキング型パイロットピュアキャンセル回路、アンチ・インターフェアレンスPLLシステムなど最新の技術を活かした低歪率、高セパレーションを誇る。なお、メーターは信号強度を3mV〜1mVの範囲で指示し、マルチパスなどの妨害は指針の変化で示す妨害検出型で、選局中に局と同調すると、その局の周波数はデジタル表示され、ツマミから指を離すと自動的に、その局にロックされる。また、弱電界受信では、ノイズによりオートブレンド回路が動作をし、ステレオ表示ランプはブレンド量に応じて暗くなり、モノでは消灯する。
 T2は、地元局の強力な電波に隣接した遠距離の弱い局を受信するフィールドテストにおいても妨害波排除能力が優れた結果を示し、数少ない民放FMの実質的なサービスエリアを広げるメリットが大きいように思う。

「上杉プリアンプ試聴記」

黒田恭一
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「マイ・ハンディクラフト 最新テクノロジーによる真空管式ディスク中心型プリアンプをつくる」より

 幾分ひかえめなところがあるとしても、いうべきことを正確に、しかもいささかもいいよどむことなくいう人をまのあたりにするというのは、きわめて心地よいことだ。このプリアンプをきいての印象を、もし言葉にするとすれば、そういう人に会った時の感じとでもいうべきかもしれない。
 決してでしゃばらない。決してあざとくおのれの存在を主張しない。どうです、このヴァイオリンの音、きれいでしょう(試聴したレコードのひとつに、ジュリーニがシカゴ交響楽団を指揮してのマーラーの第九交響曲の終楽章があったのだが)、きいてごらんなさいよ、こんなにつややかで──などと、おしつけがましくなったりしない。
 しかし、ここからが肝腎なところだが、このプリアンプの音は、決して消極的ではない。すべての音は、ついにねころんだり、すわりこんだりすることなく、すっきりと立って、ききての方向に、確実な歩みで、近づいてくる。そういう折目正しさは、このプリアンプの魅力といえよう。
 ただ、このプリアンプの、そういうこのましさを十全にいかそうとしたら、積極性を身上とする、つまり音のくまどりを充分につけてくれるパワーアンプを、相手にえらんだ方がいいということは、いえるにちがいない。しかし、この場合にも、スギタルハオヨバザルガゴトシという、正論があてはまる。
 さまざまなひびきに、実に素直に、無理をせず、しなやかに、対応する。それはもちろん、大変な魅力だ。無駄口をたたく軽薄さからは、遠くへだたったところにある。ただ、相手の選択をひとつまちがうと、そういう魅力は、優柔不断という欠点になってしまう危険もなくはない。すっきりと立ちあがった音を、手前に歩かせるのは、むしろ、パワーアンプの役割というべきだろう。だとすれば、音をすっきりと立ちあがらせるこのプリアンの特徴は、そのままにこのプリアンプの美点となる。

パイオニア F-007

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 F007は、基本性能をF26におき、シンセサイザー方式を導入したモデルだ。100kHzおきに受信局を選択するこのタイプのダイアル精度をゼロとする目的で、本機には、ダイアルスケールにコード版がセットされ、これを光で検出する方式が採用されているのが、ユニークで大変に素晴らしい。

パイオニア A-0012

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 パイオニアの新シリーズのプリメインアンプは、4モデルあり、A0012は、トップ機種でその外形寸法が他のモデルより1サイズ大きい。フロントパネルは、主機能を上部に、他の副次的な機能は下側のスモークグラスのヒンジ付サブパネル内に配置した使いやすさを狙った構成が特長である。
 内容的には、パワーアンプ部に、セパレート型のM25でおこなった超高域でも十分パワーを獲得し、可聴周波数帯域内のクォリティを向上するマグニワイドパワーレンジの構想と、小音量時の音質を改善する目的で3W以下の出力では純Aクラス動作、それ以上は徐々に定格出力までBクラス動作に近づくABクラス動作が採用されている点があげられるが、これはシリーズ共通の特長である。また、MCヘッドアンプイコライザーのSN比は、カートリッジ実装時の値を重視して追求されている点も見逃せない。
 機能的には、1dBステップのパイオニア方式ツインコントロール、DC構成のイコライザー部とパワーアンプ部を直接結合して使うためのオーディオミューティングスイッチ、ファンクション表示インジケーターなどが目立った点である。
 このモデルは、豊かに響くやわらかいスケール感がある低域から中低域をベースとし、粒立ちが細かく滑らかに磨かれた中域から高域の音が印象的だ。トータルの雰囲気がかなり洗練され、安定した大人の魅力を十分に感じさせる。反応は適度といえる。

ラックス T-12

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 T12は、クォーツロックFM専用チューナーで、最適同調点でツマミは機械的にロックするユニークな機構を採用している。

ラックス C-12, M-12

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新世代のラックスを意味する技術志向が前面に出たラボラトリー・リファレンスシリーズのセパレートアンプをベースとして、より入手しやすいコストのモデルとして開発されたのが、この一連のセパレートアンプである。趣味としてのオーディオを熟知したラックスの製品であるだけに、最近の動向である薄型アンプの形態を採用し、キュートで、洗練されたデザインにまとめられている魅力は、むしろ兄貴分のラボラトリー・リファレンスシリーズに勝るとも劣らないものがある。
 C12は、単純機能のクォリティ優先型のモデルであるが、独得のリニアイコライザー、ツインT型サブソニックフィルターを備え、2系統のテープ入出力端子をもつ。回路は、すべてDC構成である。
 M12は、ブラックボックス風のユニークなデザインである。とくに、メッシュを通して、管球アンプ的な灯りが仄かに見えるのが楽しい。構成は、完全左右独立型のDCパワーアンプである。
 C12、M12の組合せは、クォリティの高い、外観とマッチしたキュートなスッキリとした音だ。リニアイコライザーで低域を補正するとスケール感が豊かな予想以上の余裕ある音を響かせる。

ダイヤトーン DA-P15, DA-A15DC

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ダイヤトーンのセパレート型アンプには、DA−P100/A100をはじめ、コントロールアンプとパワーアンプを機械的に結合すれば、プリメイン型化が可能な大変ユニークなコンストラクションを採用したDA−P10/A15に代表される一連のシリーズがあるが、今回発表された製品は、コントロールアンプは完全な新モデルであり、パワーアンプは従来の機種に改良をくわえたモデルである。また、コントロールアンプが19型ラックマウントタイプとなったために、パワーアンプとのドッキングはできない。実用上では問題はないがやや、残念な感がないでもない。
 DA−P15は、DA−P7/P10の上位に位置づけされるコントロールアンプである。
 フロントパネルは、スッキリとしてシンプルな19型ラックマウントタイプであり、最近の動向を反映したものだ。外観からは一般的なコンストラクションと受け取れるが、内部は、前シリーズで採用した2台のモーラルアンプを機械的に結合した、2モノーラル構造を踏襲している。
 機能的には、コントロールアンプらしくMCヘッドアンプ内蔵、テープデュプリケート、ターンオーバー可変型の左右独立したトーンコントロール、スピーカー切替など、現在の標準装備といってよい。
 DA−A15DCは、基本的には従来のDA−A15をDCアンプ化し、高域特性を改善したモデルである。ダイヤトーンのパワーアンプは、DA−A100以来、機能を象徴したユニークなデザインを採用している点に大きな特長があり、フロントパネルを持たないために、本来のセパレート型アンプの楽しみである任意のコントロールアンプとの組合せが、デザイン的な制約なしに可能なメリットがある。コンストラクションは、左右独立した2モノーラル構成であり、スピーカー切替はリレーを使い、コントロールアンプ側でリモートコントロールする方法を採用している。なお、シリーズ製品としてDA−A10DCとチューナーのDA−F15がある。
 この組合せは、コントロールアンプの性能が従来のDA−P7より一段と向上しているために、スッキリとした聴感上のf特が広く、歪感が少ない粒立ちの細やかな現代的なサウンドで、パワーアンプの150W+150Wのゆとりが、より十分に感じられ、スケール感も大きい。

アキュフェーズ C-200S, P-300S

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 アキュフェーズのコントロールアンプC200とパワーアンプP300は、同社の第1弾製品として、すでに4年間にわたりセパレート型アンプのトップランクの製品として定評を得ている。今回の新製品は、これをベースとして現時点での最高水準の性能を実現するために改良、変更が加えられたものであり、それぞれ型番末尾にSをつけた新モデルに発展している。なお、同社では従来モデルを愛用しているファンのために、Sタイプ仕様の改造を引き受けており、これにより、主にフロントパネル関係を除いてSタイプと同等の性能にグレイドアップすることができる。最近では、とかく新製品発表が多くなっているが、高級アンプほど新製品に買換えることは至難であり、メーカーへの信頼感が薄らぐことが多いが、今回のSタイプの発表に際して採用された従来品を改造するプランは高級ファンをつかんでいるアキュフェーズらしい細やかな配慮である。
 C200Sは、各ユニットアンプのICL化、ミューティングスイッチ、プリアンプ出力ON−OFFスイッチ、ヘッドフォン利得の向上、フィルター関係の整理などをはじめ、パネルの色調が一段と濃くなった点が主な変更点である。
 P300Sは、DCアンプ化された他に、1dBステップの入力調整、高域フィルターの除去、メーター目盛にW表示の追加、オーバーロードにも強い保護回路、M60などと共通化された増幅度、出力端子の変更などがある。
 Sタイプとなって、この両機種の組合せの音は、今までの力強く緻密な音を保ちながら、性能の向上により、その物理的特性に裏付けられたような、一段とクリアでスッキリと抜けた、リファインされたものとなり、現代高級アンプらしさを身につけている。

ヤマハ B-3

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ヤマハのセパレート型パワーアンプは、全段V−FET構成のBIが最初の製品として、バイポーラトランジスターとV−FETの長所を活かして開発されたB2は第2弾の製品としてすでに発売されている。今回発表されたB3は、形態的にもパワーアンプ本来の機能をシンボライズするような個性的なデザインとパワー段に静電誘導トランジスター(SIT)を純コンプリメンタリー方式に使ったDCパワーアンプである。
 デザイン的には、左右側面の長手方向に放熱版を配し、電源関係を含む入出力端子は残った2面の1面に集中しているが、入力レベル調整ボリュウムの軸は本体を貫通して対向面に伸長され、この面にもツマミがついているために、どちらが前面ともいえないユニークな設計である。この構造をもつため実用上での場所の制約は少なく、場合によれば立てても使用可能である。機能的にはパワーアンプだけにシンプルなタイプだが、スイッチによりBTL接続して140Wのモノーラルパワーアンプとして使用でき、今後とも増加すると思われるマルチアンプ化にもふさわしい製品である。
 すでに定評を得ているコントロールアンプC2は、発表時期からすれば、B2がペアになるが、細部の仕上げの異なった面を考えれば、むしろこのB3が本来のペアとなるパワーアンプのように思われる。この点は、組み合わせたときの音にも現われているようで、同じヤマハのサウンドではあるが、フレッシュで伸びやかであり、Cの2の魅力がより効果的に音に活きてくるように思われる。

ソニー TA-F6B

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 TA−F6Bは、プリメインアンプの電源に最初にパルスロック電源を採用した注目の製品である。MCヘッドアンプ、DC帰還付イコライザー、新開発のドライバー用IC採用のDCパワーアンプなどに特長があり、対数圧縮型の大型パワーメーターを装備している。

ソニー TA-N88, TA-E88

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 一般にオーディオ用パワーアンプには、Aクラス動作、Bクラス動作といったアナログ増幅法が採用され、電力増幅素子の出力側がスピーカーと電源の間に置かれ、素子の内部抵抗を変化させて負荷であるスピーカーに流れる電力をコントロールしている。この場合、電源からの電力はスピーカーのなかだけではなく、増幅素子によっても消費され電力の損失になるが、PWMアンプのようなデジタル増幅器では、扱う信号はパルスであるため、増幅素子は単純にオンかオフの動作しかない。つまり、デジタル増幅器では、増幅素子はスイッチの役目を果たすことになり、オンのときには抵抗値がゼロ、オフのときには無限大であれば、すべての電力が負荷であるスピーカーに供給されることになる。したがって、アンプの効率は100%になるはずだが、実際にはオンのときに抵抗値がゼロにならないため、効率は80〜90%になる。
 オーディオ信号をデジタル変換するためには、500kHzの搬送波をオーディオ信号で変調し、PWM波としておこない、これをデジタルアンプで電力増幅をし、フィルターで搬送波を除去し、もとのオーディオ信号を取出している。このタイプを採用した製品としては、米インフィニティのしプがある以外はなく、国内では、数年前からソニーで研究され、試作品として発表されたことがある。
 TA−N88は、これをベースとして製品化された国内最初の製品であり、電源にも高能率のパルスロック方式のスイッチングレギュレーターを採用しているため、画期的な超小型で160W+160Wのパワーを得ている。
 TA−E88は、PWNステレオパワーアンプ、TA−N88と組み合わせるプリアンプとして開発された製品である。本機のコンストラクションは、完全に2台のモノアンプを前後に並べ、入力端子から出力端子までの信号経路は最短距離を一直線にとおるように配置されている。機能は単純型でクォリティ重視の設計であり、各ユニットアンプは入力コンデンサーのないダイレクトカップリングのDCアンプ構成で、低雑音LECトランジスター採用のMC用ヘッドアンプを内蔵している。各使用部品は物理的にも聴感上でも厳選されている。
 この組合せの音は、従来のソニーのアンプとは一線を画した、滑らかで、明るく、伸び伸びとしたものであり、デジタルアンプ然とした冷たさがないのが好ましい。適度の暖かさがあるのは特筆すべき点である。

マランツ Model 510M

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのアンプ・メーカーとしてのマランツの歴史は古い。現在は総合メーカーとしてスーパースコープ傘下にあり、企業の規模も大きくなったが、さすがに、往年のマランツの技術とクラフトマンシップの生きる高級品も意欲的に作り続けている。この510Mは現役マランツ・アンプの代表的な高級パワーアンプで、方チャンネル250Wオーバーの強力なパワーを誇る。音質も抜群のリニアリティで明晰である。

ギャラクトロン MK16

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イタリアのギャラクトロンは、世界で珍しい存在だ。イタリアの専門メーカーというユニークさに恥じないオリジナリティをもった製品を作っている。MK16は5インプットのステレオ・ミキサーと10素子のグラフィック・イコライザーを内蔵するプリアンプであるが、ミキサーのインプットのカードを入れ換えてフォノ、テープ・ヘッド、マイクロフォン、ライン入力などの仕様を構成できる。コンセプションも外観も内容も独特だ。

SAE Mark 2400L

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 200W+200Wの2400パワーアンプのいわゆるMARKIIだが、LEDパワー・ディスプレイを採用し、MARK Lと名づけられた。全回路に完全コンプリメンタリー・プッシュプル回路、A級動作を採用。その極めて優秀な特性をもつ大出力のパワーアンプである。SAEらしい高度なテクノロジーは、優れたコンストラクションとデザインにより完成度の高いアンプに仕上げられ、音は透明で輝きのある高品位のものだ。

ギャラクトロン MK160

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イタリアのユニークなオーディオ・メーカー、ギャラクトロンの作る大出力パワーアンプで、200W+200Wのパワーをもっている。スイッチの切換により、100W×4、つまり4チャンネルのパワーアンプとしても動作するというユニークなものだ。見るからに、ギャラクトロンらしい斬新なデザインで、視覚的にエレクトロニクスの世界をイメージ・アップさせるモダニズムに溢れた魅力的なフェイスである。

SAE Mark IB

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカSAE社は、同国のアンプ界のヤングパワーとして台頭し、優れた製品を世に送り出した。MARK IBは同社のプリアンプの最高級品で、きわめて豊富なコントロール機能を持ちながら優れた伝送特性を両立させたプリアンプである。7分割のイコライザーを中心に配したシンメトリックなパネルデザインも仕上げも高級機にふさわしく美しい。これにMCヘッドアンプとフィルターが加わればオールマイティである。

ダイナコ Stereo 400MA

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのアンプ・メーカーとして、すでに長い間馴染みのあるダイナコの現役シリーズの最高製品が、この400MAであり、これからパワー・インディケイターを取り除いた400Aというモデルと共に、ダイナコ製品群の旗艦だ。200W+200Wの出力を持つ。ドライバー段はA級動作で、スイッチング歪の少ない小レベル時の音質を重視した設計だ。大型ヒートシンクにより放熱効果をあげているが、オプションでファンもつく。

ジェニングス・リサーチ The Amp

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカの新生メーカー、ジェニングス・リサーチは、スピーカー・システムにおいても注目に価する製品を我々の前に見聴きさせてくれた。このザ・アンプと名づけられた製品も、一見して魅力のあるパワーアンプである。200W+200Wの大出力をもつパワーアンプとは思えぬコンパクトなもので、詳細は不明だが短時間の試聴の限りでも、きわめてタッチの明確な明るい音であった。華麗なサウンドという印象である。

アナログ ANALOGUE 520

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのエレクトロニクス・エンジニアリングのひとつの顔といってよい。きわめてモダーンでドライなテクノロジーにより開発されたプリアンプ。その名前からも伺えるように、コンピューター・テクノロジーのオーディオへの導入により、徹底的にアナライズされたデータにもとずき開発された製品。ほとんどのパーツはプラグ・イン・モジュール化され、ワイアリングは最少限に押えられている。