Category Archives: アンプ関係 - Page 52

パイオニア C-21

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パイオニアのアンプは、エクスクルーシヴ・シリーズを含めて総体にどちらかといえばソフトでウェットな音を聴かせるタイプが多いが、このC21はその中ではむしろ例外的に、かなり乾いた感じの、わりあい素気ない音がする。音の表情が硬いというか、音をひとつの鋳型に押し込んだように、練り固めたような骨っぽい感じに聴こえる。6万円という価格は今日とりあげたコントロールアンプの中でも最もローコストの部類だから多くを望むのは無理かと思うが──。サブソニック・フィルターをONにすると音の硬い傾向がわずかとはいえさらに増す。ゲインコントロールは0のところよりも一杯に上げた方が、音の伸びとしなやかさが出てきてこの方がよかった。

オンキョー Integra P-303

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスのLNP2Lとくらべれば、むろん価格が違うのだから比較するのは酷であるにしても、しかしLNP2Lとは別の魅力で十分に聴き惚れさせるだけの良さを聴かせるコントロールアンプは少ない。細部での解像力ではLNPに及ばないが、少しのやかましさもないバランスの良く質の高い音質は相当の水準で、たとえば「オテロ」冒頭のトゥッティでもソノリティの良さを失わず弦や管の調和の美しいこと、声のニュアンスの良く出ること、得がたいコントロールアンプといえる。本質的にはウェット型の音。だが8万円としては破格のできばえといっていい。ヘッドアアンプは、MC20ではやや鈍く、103Sではトランスの場合よりかなり良かった。

ヤマハ C-2

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ソリッドで引締った硬質の魅力をもつコントロールアンプである。
 聴感上の周波数レンジは、ナチュラルに伸びており、バランス的には中低域が少し薄めであり、音色では、低域がやや甘く、柔らかく、中域から高域は粒立ちがカッチリと引締った硬質な魅力がある。音の表情はややマジメ型で、音を整理して聴かせる傾向がありながら、音の表現力はかなりのものがある。
 付属のMC型用ヘッドアンプは、MC20では柔らかい低域をベースとした、細やかな表情を感じさせる音であり、103Sでは、ナチュラルにレスポンスが伸びた、滑らかで細かいおとなしい響きのキレイな音である。

デンオン POA-1003

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 85W×2という出力はそれ自体では決して小さなパワーではないが、100Wを超えるアンプが居並ぶ中に混ぜて聴くと、やや小ぶりで可愛らしい音に聴こえる。その点は価格等とにくみあわせて多少割引くとすれば、音質そのものは、クラシック・ポピュラーを通じてかなりの水準をゆく。ことに、演奏のデリケートなニュアンスがかなりよく出てくることに感心させられる。決して積極的な音ではないが、プログラムソースのディテールに素直に順応してゆく良さを持っていて、音楽を楽しむ気持をしぼませることがない。だたシェフィールドのダイレクトカッティングのようなレコードでは、もっは張りのある力が出てくれないと不十分だが、総じてよくできたアンプといえる。

ラックス 5C50

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスのLNP2Lとくらべてそう聴き劣りしなかったコントロールアンプは少ない。強いていえばLNP2Lがどんなプログラムソースにもどこまでもしなやかに反応してゆくのにくらべると、いくらか真面目で姿勢が固く、音の脂こさが少ないので、たとえばシェフィールドのテルマ・ヒューストンの声など、多少おもしろみを欠くことはあるが、総じて音のバランス、密度、質感、どこをとっても極上のできばえといえる。発売以後、数回に亘って内部が小改良されていると公表されているが、今回のサンプルについていえば、現在入手可能なコントロールアンプの中でもかなり上位にランクされるだろう。個人的にはトーンコントロールアンプの5F50と組み合わせて使いたい。

ビクター EQ-7070

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 反応が早い、シャープで細やかな音をもつアンプである。聴感上での周波数レンジは、かなりワイドレンジ型で伸び切っており、バランス的には、低域が柔らかく少し重いタイプで、中域は少し密度が薄く、中高域には硬質な面が潜在的にあるようだ。表情は、豊かで活気があり、音場感はやや奥に引っ込んでナチュラルに広がり、パースペクティブをもかなり聴かせる。音像はかなりよくまとまり、定位はクリアーである。
 付属のMC型用ヘッドアンプは、MC20では低域から中低域が豊かで余裕があり、中高域から高域もナチュラルで細やかである。103Sでは、キャラクターが少ない、伸びやかで細部を充分に引き出す音が気持よい。

オーレックス SC-77

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パワーアンプ単体のテストには、コントロールアンプにマークレビンソンのLNP2Lを組み合わせているわけだが、ときに必要以上に音をこまかく浮き上らせるとさえ思えるLNPの音が、SC77と組み合わせると意外に起伏のおさえられて一様に均されたような音になる。そのことからSC77自体の持っている方向は、かなり客観的でおとなしい、ややスタティックな音質であることが想像できる。バランス的には重低音域がおさえぎみ。またステレオの音像は、奥行きを感じさせるよりも平面状にひろがるタイプだ。「オテロ」冒頭でも歪感はなくクリアーで混濁しない点は立派だが、総じて音は淡泊な傾向で、いわゆる音の深味や充実感をことさら聴かせるというアンプではない。

ビクター P-3030

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 活気がある,華やいだ雰囲気の音をもつコントロールアンプである。聴感上での周波数レンジは、あまりワイドレンジ型でないが、かなりナチュラルに伸びており、バランス的には、低域は豊かで柔らかく、少し軟調であり、重さが感じられる。中域は硬質な面があり、低域とバランスしてこのアンプのキャラクターとなっている。
 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せは、やや相乗効果的なミスマッチが感じられ、予想よりも中域が粒立たず、低域が尾を引いたように、鈍く大味で散漫な印象となってしまう。むしろM3030とのペアのほうが、音が決まり、一種の個性的な音となるようである。

トリオ L-07C

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 クリアーで硬質な明快さをもつ音である。聴感上の周波数レンジは、かなり充分に伸びているが、ソリッドな音であり、爽やかに抜けたワイドレンジ感とはならない。バランス的には、低域が甘くかなり軟調傾向があり、豊かさはあるが、中域以上の音のキャラクターからすれば、一段と引締ったダンピングの効いた音が必要と思う。中域は、量的には問題はないが緻密さが不足気味で、中高域にかけての帯域は、クリアーで硬質な輝きをもっているために、弦楽器はやや金属的な響きとなり、オーバートーンが過剰気味となる。このあたりは、リファレンスパワーアンプ♯510Mとの相乗効果でもあろう。もう少し柔らかさ、滑らかさが欲しい。

ラックス CL32

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 薄刃のカミソリのようなシャープな切れ味はトランジスターアンプでなくては聴けないが、中には刃こぼれしたように切れ味の印象のよくないアンプも少なくない。その意味ではCL32は、あまり鋭く歯を立てない身の厚い刃物でやわらかく削り出してゆくようなところがあって、いわゆる解像力をことさら目立たせないが、鳴らすべき音はすべてきちんとバランスよく整える。ただ、単体の評価ではマランツ510Mとの組合せでは、MB3045との場合のようなあの素敵に暖かく心を包み込む世界にまでは至らず、互いに個性を殺し合うかのように、どこか目づまりしたというか音楽の流れのせきをとめられたようで素気なく表情がおさえられて私には楽しめなかった。

テクニクス SU-A2

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ナチュラルで端正な音をもつコントロールアンプである。聴感上の帯域は充分に伸びきっており、リファレンスパワーアンプ♯510Mの硬質さを抑え、滑らかなクォリティの高い音とする。バランス的には、やや中域の緻密さが必要と感じるが、全体に音を引締め、粒立ちがクリアーなタイトな音にする点では、A1よりも♯510Mのほうが一段と優れているようだ。しかし、音のディテールの再現性や情報量の多さでは、A1のほうが一段と優れている。音のクォリティは非常に高く、反応もかなり早く、シャープで豊かな余裕たっぷりの音は素晴らしいが、実態感のある活き活きとしたダイナミックな表現では、もう一歩のもどかしさがある。

テクニクス SU-9070II (Technics 70AII)

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せのほうが、9060IIパワーアンプとの場合よりも伸びやかさが減り、スケールも小さく感じられて、何とはなしにつまらない音になる。聴感上の周波数レンジは、平均的よりもむしろナローレンジ型であり、バランス的には中域の低い部分でエネルギー感が不足し、安定度の悪さが出てくる。音の表情でも、やや消極的で伸びやかさが不足し、フレッシュな鮮度の高さがあまり出てこない。やや中域が粗粒子型で硬い部分があるのは、♯510Mとのマッチングが悪いためであろう。スケール感は小さく、小型ながらせい一杯に頑張って音を出している印象である。

アキュフェーズ M-60

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 露(あらわ)とか、あからさま、といった感じをことさら避けて、潜在的に持っている力をさえ一見それとわからないほどさりげなく感じさせるところまで練り上げたとでもいうような、いわば日本に古くから伝わる美徳とでもいった雰囲気を漂わせる音、といったらほめすぎになるだろうか。ほどよく潤いのあるしっとりした肌ざわりで、どんなハイレベルでも荒々しい音をとろりとくるみこんで上品に鳴らすところは「M60の音」とでも呼びたくなりそうになる。反面、すべての音を音源からやや遠くに持ってゆく傾向があり、曲によってはもっと荒くとも演奏に肉迫した感じ、もっと生々しい躍動感を求めたいという気持にもさせる。だが良いアンプであることは確かだ。

スタックス SRA-12S

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 帯域バランスが、かなり低域側に偏った独得なレスポンスをもっている。本来のDA80Mパワーアンプよりも、リファレンスパワーアンプ♯510Mのほうが、引締った力強さが感じられる音になるが、バランス的には、やはり高域が伸び不足で、細やかさや粒立ちのよさは求められず、ウォームトーン系のソフトで大柄な音であり、表情が鈍く、反応が遅いために絞らず、散漫で、クリアーな音にならない。
 ステレオフォニックな音場感は、DA80Mよりもナチュラルさがあり、左右には広がるが、パースペクティブが抑えられ、音像定位のシャープさはあまり感じられない。

ラックス C-12

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たいへん美しい音がする。その美しさは、単に歪が少ないというようなものではなく、磨き抜かれたとまで言ってはオーバーかもしれないが、そう言いたいほど美しい。ただ、すべてのプログラムソースに対して、やや小造りというか、スケールの大きさが出にくい傾向がある。ことに低音の量感がかなり物足りない。そしてハイエンドの方もそれとバランスをとっておさえた感じで、総体にレインジのあまり広くない音にきこえる。エリー・アメリンクやキングズ・シンガーズの声はとてもみごとな反面、ピアノの丸みのある脂こい艶が出にくく、テルマ・ヒューストンの声もどこか可愛らしくきこえる……というように、ややミニチュアール的な世界を表現するコントロールアンプだ。

ソニー TA-E88

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 オーソドックスにまとめられた、かなりマジメな音をもつコントロールアンプである。聴感上での帯域バランスはかなりワイドレンジ型で、バランス的には、低域がおだやかであり、中域はやや薄く、中高域から高域では硬質な面があるようだ。この硬さは♯510Mのキャラクターかもしれない。
 付属のMC型ヘッドアンプは、MC20ではMCA76よりも全体にソフトで甘い音となり、トータルバランスはこの方が安定感があり好ましいが、表現が少しパッシブな傾向となる。103Sでは、高域がスッキリと伸び、中域がカッチリと引締り、音の表情もMC20よりは明らかに一段と伸びやかとなり、情報量の増した音となる。

アキュフェーズ P-300S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ロングセラーに改良を加えて事実上のニューモデルに変身したが、改良の成果はコントロールアンプよりもこちらに顕著のように思える。旧型のP300は(というより従前までのアキュフェーズの目ざしていた音は)、どちらかというと穏健型のおだやかな、音の丸みを大切にした作り方だったが、Sタイプになってそれが一変して、現代の新型アンプに共通の入力に対する反応(レスポンス)の鋭敏な、とても新鮮な音のするいいパワーアンプに生れ変ったと思う。ただそれがしいていえばもうひとつ熟成を待ちたい感じとでもいうか、C220やM60の鳴らす解像力の優れているがそれをあらわに出さないといういわば大人の雰囲気にくらべて、むしろ若さを感じさせるところがある。

Lo-D HCA-7500

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 やわらかく繊細で、一聴した印象ではどこか女性的ともいえる音がする。コントロールアンプ単体の試聴の際には、パワーアンプにはリファレンスのマランツ510Mを組み合わせている。その510Mは、どちらかといえば硬質で腰の強い音がするのだが、それをここまで耳あたりを柔らかく、線を細く鳴らしてしまうのだからかなり個性的なコントロールアンプだ。そういう音だから、音の密度あるいは実態感といった面が弱く、いくらか輪郭で聴かせる傾向がある。また表面のやわらかさに反して意外に芯の硬いところがある。欲をいえば音のひろがりももうひと息だ。が、6万円のコントロールアンプとしてみるとかなりのできばえといえるかもしれない。ただツマミの形やデザインはいささか大味すぎる。

ソニー TA-E86

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、中域の充実感とエネルギー感ではリファレンスの組合せ(LNP2L+510M)に一歩を譲るが、細やかさと滑らかさでは、むしろこのコントロールアンプとのほうが優れた面を聴かせる。聴感上での周波数レンジはワイドレンジ型で、バランス的に中域が薄い傾向をもち、ステレオフォニックな音場感はスッキリと広がるが、音源は遠く感じられるタイプである。付属のMC型ヘッドアンプは、MC20でMCA76よりも全体にバランスが低域側に偏った安定型となり、低域の分離も向上する、やや硬質な音だ。103Sでは、かなりダイレクトな音源に近い音となり、一種のドライさがある音になる。

サンスイ CA-2000

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ソフトで滑らかな音をもつアンプである。聴感上での周波数レンジは、素直に伸びており、バランス的には、低域が柔らかく豊かであり、中域は少し薄く、高域はスッキリと伸びている。音色は、基本的にはウォームトーン系で、音の粒子は細かく磨かれており、適度に粒立つため、表情が甘くならず、一種の爽やかさがある。
 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、BA2000の場合よりも中域の充実感は一段と加わり、粒立ちがクリアーになる。ステレオフォニックな音場感は、左右方向によく広がるタイプで、スッキリとしたプレゼンスを聴かせる。音源は少し距離感のあるタイプである。

パイオニア Exclusive C3

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 かなりクリアーで引締った音をもち、初期の製品に比較して、音のクォリティは相当に高く、表現力が加わっているようだ。
 聴感上での周波数レンジは、現在の水準からは少しナローレンジ型で、バランス的には、低域が軟調であり、高域が少し粗粒子型の、やや硬調さがある。ステレオフォニックな音場感は、左右によく広がるが、音の粒立ちがクッキリとしない面があるためか、前後方向のパースペクティブが少し抑えられ、音像の立ちかたが少し甘くなる傾向がある。このあたりが、最新のアンプと比較するとC3のマイナス面となるが、音楽を聴くアンプとしては、非常にまとまりがよくクォリティが高く、出色の製品である。

スレッショルド NS10 Custom

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、CAS1との場合よりも一段とクォリティが高まり、活気があり、反応が早く安定感が向上する。
 音色は軽くフワッと明るいタイプで、表情の細やかさが適度にあり、クォリティ的に充分に高さがわかる音である。バランスコントロールを+8dBにすると、高域がスッキリと伸びて、かなりクリアーで透明度が高い音になる。独得の細かいニュアンスの表現は、セパレート型アンプらしいユニークさである。「サイド・バイ・サイド3」のような、独得の細やかなプレゼンスのある音には、シャープな反応を示し、このアンプならではの他では求められない素晴らしい音を聴かせる。

パイオニア C-77

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 マクロ的に音を外側からゆったりと掴み、響きを豊かに、あまり細部にこだわらず音を聴かせるコントロールアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、ローエンドとハイエンドを抑えた、いわゆるカマボコ型のレスポンスを感じさせるタイプで、全体にウォームトーン系の音色をもち、音の粒子は粗粒子型で基本的にはソフトである。
 リファレンスパワーアンプの♯510Mとの組合せでは、ややマッチングが悪いようで、スケールは大きいが、エネルギーが加わるだけに、ややまとまりに欠け、音が素直に伸びきらない面が感じられる。積極的にトーンコントロールを活用して、効果的な音として使うべきアンプのように受け取れる。

スペクトロ・アコースティック Model 217

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 屈託なく、活気のある音をもっている。
 聴感上での周波数レンジは、現在の水準からすれば少しナローレンジ型に感じられるが、ナチュラルに伸びており、とくに不足を感じることはない。バランス的には、低域はやや軟調傾向があり、中低域にかけてある種の粘った印象に特長がある。中域は、量的には充分あるが密度が少し薄く、高域は粗粒子型と面があるが、ほどよく磨き込まれている。
 音の表彰はかなりアクティブで、表面的に感じられる面がなくはないが、価格的に考えれば充分のクォリティがある。なお、ボリュウムの回転角度により、キャラクターが変化する点は注意したいところである。

パイオニア C-21

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おだやかで聴きやすい音のコントロールアンプである。聴感上の周波数レンジは、やや狭く感じられ、音の粒子が粗く、クリアーに粒立たないために、シャープにフォーカスが合った音にならず、表情が抑えられた、マットな印象になってしまう。
 バランスコントロール用のボリュウムをマキシマムとして、カートリッジ負荷抵抗を75kΩか100kΩとすると、かなりスッキリとした感じが出てくるが、低域は軟調で、音の姿・型が不明瞭であるために、力感が充分に再生できず、組み合わせるパワーアンプの♯510Mの250W+250Wのパワー感がダイレクトに感じられない。表情に活気があればまとまる音である。