Category Archives: アンプ関係 - Page 38

オーレックス ST-550

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 AM6局、FM4局のプリセット機構、同調点で停止するオートチューニングとマニュアルのステップチューニングを備えたFM多局化対応機である。周波数シンセサイザーではキャリアを誇るオーレックスの製品だけに操作性が優れ、受信周波数表示、信号強度表示、ステレオ表示が少しのタイムラグを置いて表示されるマニュアルチューナー的感覚は使って楽しい。

トリオ L-07C II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
特集・「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 こんにちの精度の高い各種の測定器及びそれを駆使しての測定技術の範囲内で、特性を良くするというだけではもはや現代のアンプを作るには不充分だということは、第一線のエンジニアの等しく認めるところだ。測定技術ではもはや追うことのできなくなったところから先で、回路構成や部品の配置やパーツ自体を変更して、聴いてみると明らかに音が違ってきこえる。耳ではその違いが聴き分けられるのに、測定器ではその差が掴めない。アンプの入力端子から出力端子までの何十、何百という箇所で、どこひとつ変えても、その差はきわめて微妙であるにしろ音が変る。どちらがよいのか測定データには出てこないのだから、もはや客観的にきめる方法はない。
 日本の凝り性のマニアだけがこんなことを言っているわけでは決してない。たとえばマーク・レビンソンも、彼のプリアンプは測定で差の掴めなくなってからあと、約二年以上は聴感を頼りに音質に磨きをかけて市場に送り出した、と言っている。しかもなおその後も、彼は着々と小改良を怠らない。
 そういうプロセスを終るのだから、アンプの音の仕上げには、その音を判定するヒアリングテスターのセンスが反映される。しかしまた、聴いた結果さらにこういう方向に音質を向上させたいという要求、回路技術で正しく応えられなくては、良いアンプは生み出せない。感覚と技術の絶妙にバランスしたポイントでこそ、優れたアンプが生み出される。
 トリオというメーカーが、そうした意味でほんとうに聴感と技術のバランスポイントを探りあてたのは、プリメインアンプのKA7300D以後だと私は思う。それ以前のKA9300にすでにその芽生えはあったが、まだ完成の域に達していない。やはり7300D以後、真の意味で音楽を愛好する人々の心をとらえる音で鳴りはじめたといってよいだろう。
 セパレートタイプでは、L05Mからようやく、KA7300Dの延長線上にあるナイーヴでバランスがよく、音楽の表情をとても生き生きと聴き手に伝える音が鳴りはじめた。05M以前に作られた07シリーズの改良が強く望まれた。
 しかし07シリーズは、音質ばかりでなくデザイン、ことにコントロールアンプのそれが、どうにも野暮で薄汚かった。音質ばかりでなく、と書いたがその音質の方は、デザインにくらべてはるかに良かったし、そのために私個人も多くの愛好家に奨めたくらいだが、ユーザーの答えは、いくら音が良くてもあの顔じゃねえ……ときまっていた。そのことを本誌にも書いたのがトリオのある重役の目にとまって、音質について褒めてくれたのは嬉しいが、デザインのことをああもくそみそに露骨に書かれては、あなたを殴りたいほど口惜しいよ。それほどあのデザインはひどいか、と問いつめられた。私は、ひどいと思う、と答えた。
 その07シリーズがマークIIに改良された。パワーアンプの外観の印象は変らないが、コントロールアンプは、ツマミなど基本の配置は大幅に変っていないのに、イメージは大幅に一新されたと思う。まだ満点とはゆかないが、これなら、レコード愛好家も手もとに置く気に十分になれることだろう。
 音質については、この価格帯では一頭地を抜いて、音の量感や力強さと、繊細でナイーヴな印象とが巧みにバランスしていて、何よりも音楽を生き生きと蘇らせる点が素晴らしい。なお、今回の選定では惜しくも入賞を逸したが、パワーアンプ07M/IIも、むしろ07C/IIを上廻る出来栄えだと私個人は信じている。
 07C、07Mとも、鳴らしはじめて時間のたつにつれて、いっそう滑らかな音に仕上ってくる点は、SAEなどによく似ている。

ヤマハ C-2a

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 セパレート型アンプのジャンルで例外的に数多くのファンに愛用されているヤマハのC2は、現時点での技術、素材をベースとして完全に設計変更されて、今回C2aとして発売された。
 基本的な回路構成面での特長は、MCヘッドアンプを含めて全てのアンプは平衡形全段プッシュプル構成で、原理的に歪の発生が少なく、しかもDCアンプ構成となっている。MCヘッドアンプは低雑音トランジスターを4個パラレル接続とし、さらに一石のカスコード段をもつプッシュプル構成。イコライザーアンプは超低雑音高利得デュアルFET差動増幅回路にカスコードブートストラップを組み合わせた初段、カレントミラープリドライブ、2段エミッターフォロアー出力段をもつプッシュプルDC構成である。トーンコントロール段には、イコライザー段とほぼ同様なNF型を使い機械的中点で完全ディフィートできる特殊カーブのコンダクティブプラスティックボリュウムを採用している。機能面ではサブソニックフィルター、入力系と独立した信号を選べる録音出力セレクター、ミューティングスイッチを備える。
 C2aとなり、特に感じられるのは、中域以上の解像力が一段とシャープとなりキビキビとした反応の鋭い音を聴かせる点である。

アキュフェーズ C-240

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 全面的にパネル面の操作をプッシュボタンスイッチでコントロールする非常にユニークなデザインをもつ、アキュフェーズの第2世代を意味する高級コントロールアンプで、アキュフェーズの技術の集大成として完成されたのがC240である。内容的にはMCカートリッジ用ヘッドアンプ、A級ピュアコンプリメンタリー方式のヘッドフォンアンプを備えたトータルゲイン86dBのハイゲインコントロールセンターである。
 機能面では周波数特性可変機能が充実し、カートリッジ高域特性を調整するHFトリミング、高音・低音各2段に湾曲点切替可能な8ステップトーンコントロール、3段切替型ラウドネスコントロール、17Hz・12dB/octのサブソニックフィルターなどがある。パネル面は回転ツマミ4個、レバースイッチ1個、プッシュボタンスイッチが実に57個というユニークな構成が採用され、機能別に配置されている。プッシュボタンスイッチ独特の不要なポジションを飛び越して任意のポジションが選択できるフィーリングは、このタイプの最大の魅力だ。とくに、入力セレクターは電子制御のリレーを使うリモート切替型で、音質や耐久性を左右するプッシュスイッチやリレーは全て2回路並列使用で安定度を向上している。回路面はアキュフェーズオリジナルの全増幅段プッシュプル駆動をA級DC方式構成とした特長があり、MCヘッドアンプはモジュール化し安定度を向上している。

アキュフェーズ C-240

菅野沖彦

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 ケンソニック社は決して歴史の長い会社とはいえないが、しかし、そのバックグラウンドを知る人にとっては、その歴史は古くトリオ、春日無線にまでさかのぼることになる。こうした歴史の重みに支えられてケンソニック社が誕生したわけだが、この会社は創業以来、あるレベル以上の高級品しかつくらないという体質に徹しているところに、一つの明確なポリシーが伺える。そして、やたらに新製品は発表せず、むしろ基本モデルの改良という形で、一つの製品を煮詰めていこうという姿勢で貫かれているのである。その姿勢が最も顕著に現れている例は、先頃発表されたC200S、P300Sのセパレートアンプである。このセパレートアンプシリーズは、同社の第一号機C200、P300のマイナーチェンジモデルだが、その第一号製品を買った人にも、サーキットボードを交換することによって この最新製品とほとんど同じ性能にまでしてあげるというサービスも怠らなかったのである。これはメーカーにとって大変な企業努力だと思うのだが、やはり製品のロングライフを旗頭にしている会社の体質を如実に示している例だろう。マスプロ、マスセールということは考えず、自分たちのできる量の中で追求し、それを理解していただけるお客様だけに買ってもらおうという、「質」を重視したオーディオメーカーなのである。
 そのケンソニック社がつくり上げた最新のコントロールアンプがC240で、従来の製品に見られない、いくつかの新しさが盛り込まれた意欲的な製品である。たとえば、操作スイッチ類を、ボリュウム、バランス、カートリッジの高域特性コントロール以外はすべてプッシュボタンスイッチにしたことである。決して小規模とはいえないメーカーが、ここまで徹底的にプッシュボタンスイッチ化に踏みきった英断をまず買いたいと思う。そして内部を見ても、最新のディバイスと最新のテクノロジーが駆使されているわけだが、同社の初期からのポリシーである全段パラプッシュプルという方式はここでも踏襲されているのである。つまり、同社で自信のあるエレクトロニクス回路技術を豹変させることなく、常に基本的なものは踏襲しながらリファインさせているところに、信頼性のもてる一因があると思う。個人的なことをいえば、プッシュボタンにもう少し質感のいい、色のいいものを使ってくれれば、このユニークなパネルレイアウトがもっと生きてきたのではないかと思う部分もあるのだが、しかし、現在手の届く範囲でメーカーが最もハイエストなパフォーマンスを追求した製品として、十分納得できるものをもっていることは確かである。
 ところで、このC240の音質についてだが、一言でいえば同社の従来のコントロールアンプの音に、最新製品にふさわしい洗練度を加えた音ということができる。従来の同社のアンプはたくましい音で、透明という表現よりも、むしろ輝かしい、磨きぬかれたスムーズさをもっていたのであるが、このアンプにもそれは一貫して感じられる。非常にたくましい音であり、磨きぬかれていて力もある豊かな響きの中に、都会的な洗練された音が加わったという感じなのである。おそらくこのアンプの音は、現在のコンポーネントの中でも最高の音質に属するのではないかと思う。プラスアルファをもつこのクラスの海外製品はたくさんあり、確かにそれらは一種独特の雰囲気がある、説得力のある音色を感じさせるが、このC240はそういう領域に達しているように思えるのである。ただ単にドライに無機的にフィデリティを追求していくということだけではなく、あらゆるソースに対して音楽的なエフェクトを聴かせてくれる。
 ただ、もっと繊細で、もっと乾いた音が好きだという人ももちろんいるかもしれないと思う。このC240は決して乾いた音ではなく、グラマラスであり、脂の乗った音だからだ。しかし私は、やはり音楽は生命感が躍動しているような、グラマラスで、豊かで、薄っぺらでない底光りのする輝きをもっていてほしい。その意味で、このC240は音質のよさからいっでも、現在のコントロールアンプの中で〝ステート・オブ・ジ・アート〟に選ばれるに値する製品だと思う。

Lo-D FT-8000

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デジタル・クォーツロックシンセサイザーFM専用チューナーである。プリセットメモリーは6局、自動同調、ステップ同調の3種類の選局機能、時計兼用の周波数デジタルディスプレイ、LED使用の5段階信号強度表示、録音レベルセット発振器、音によるマルチパスチェックスイッチなどの機能が特長だ。内容的には5連バリキャップ電子式フロントエンドにTVトラップを備えTVの影響を抑えている。

ソニー ST-J60

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 クリスタルロック・デジタル周波数シンセサイザー方式のAM/FMステレオチューナーである。FM/AM8局をランダムにプリセット可能で、自動的に同調点をさがすオートチューニング、ステップチューンとクイックチューンに切替わるマニュアルチューニング、電源スイッチOFF直前とFM/AM切替前に選局した局をメモリーするラストステーションメモリー、5段階の信号強度表示、マルチパス表示、キャリブレーショントーン、部屋の明かるさでディスプレイ照度が変わるオートディマーなどを備えている。

サンスイ TU-D607

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 従来AU607には専用チューナーはなく、上級機AU707用のTU707を共用していたが、このモデルは新製品AU−D607のペアチューナーとして開発されている。
 外観はTU707と同等だがダイアル面の通常ではメーターのある位置に信号強度、ダイアル回転方向と同調点表示、それに受信周波数をデジタル表示するディスプレイが備わったのが目立つ特長である。
 主な特長は、同調選局中はOFFとなり放送局に同調するとツマミに触れていても動作する独自の自動ON−OFFクォーツロック、新開発パイロットキヤンセラー付PLL・MPX部、AMステレオ放送の方式を開発したサンスイらしい優れた音質をもつAMチューナー部などがある。

マランツ St-8

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 FM専用の高級チューナーにオシロスコープを採用するのはマランツの♯10B以来♯20、♯150と続く伝統であるが、今回の新シリーズのセパレート型アンプ、プリメインアンプ用に開発されたモデルがこのSt8である。これも伝統的なジャイロタッチチューニングツマミは、クォーツロックスイッチを兼用し、同調点で指を離せば以後は水晶精度で同調点はロックされる。デュアルゲートMOS型FETと5連バリコン使用のフロントエンド、リニアフェイズLCフィルターとSAWフィルターを併用するIF増幅部は更に独特のアンチバーディーフィルターを加え、帯域幅は2段切替、PLLパイロットキヤンセラー、パラメトリックミューティング回路、多用途のオシロスコープなどが特長だ。なお、ジュニアタイプに同様にスコープ内蔵の♯2110がある。

トリオ KT-8300

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 2年前にKT9700に使用されたパルスカウント検波方式を採用したKA8300のペアチューナーである。パルスカウント方式の特長を活かすためIF段は第1IF10・7MHz、第2IF1・96MHzのダブルコンバート方式を採用。FM専用5連バリコンとデュアルゲートMOS型FET使用でサーボロック付のフロントエンド、IF帯域幅2段切替、パイロットキャンセラー付MPX部などに特長がある。

ラックス T-4

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 同調ツマミが正確な同調点で機械的にロックされるアキュタッチ機構を備えたAM・FMチューナー。同調の精度と安定度を向上するラックス独自のCLL方式同調システム、IF帯域幅2段切替、オペレーショナルアンプ使用のオーディオ部などを備えている。アキュタッチ機構のフィーリングも格段に改善され、受信性能、音質は充分に高級機に匹敵するものがある。

デンオン TU-630

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 PMA630のFM専用ペアチューナー。5連バリコンと新開発デュアルゲートMOS型FET使用のサーボロック付フロントエンド、帯域2段切替のIF増幅、新FM検波用IC採用、パイロットキャンセラー付新IC使用のMPX部の他、パーソナル使用のために3W+3Wのパワーアンプを内蔵した点が最大の特長で、机の上に載せたミニスピーカーなどは充分以上にドライブできるのが魅力である。

ヤマハ T-4

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 既に同等のクラスにT3が発売されているが、新製品T4では、画期的なユニレゾナンスフィルター、高性能オーディオ専用MPX・IC、DC・NFB・PLL・MPX回路、トラッキング型パイロット信号キャンセル回路、AUTO・DX回路などを採用し、チューナー内部で発生する諸歪の新測定法による解析、解決をするなど、高価格帯のチューナーの水準を抜いた新製品ならではの内容をもつ製品である。AM部では低雑音ループアンテナを新開発し採用しているため、AM放送のクォリティが格段に高いのが見逃せない点だ。

パイオニア F-8800X

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 A8800Xのペアチューナーとして開発されたモデルである。低価格で高性能を目標としたためSN比で利点のあるバリコン使用のフロントエンドを採用し、選局は一般的な同調ツマミによるタイプとなっている。機能は標準型で、PLLシンセサイザー方式ほどの華やかさはないが、安定度、信頼性の高さが特長である。

ソニー TA-P7F, ST-P7J

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ソニーの超小型コンポーネントは、PRECISEコンポと名付けられ、プレーヤーシステムPS−P7Xを含めてシリーズを形成することになる。
 プリメインアンプTA−P7Fは、50W+50Wの出力をもつ。ヒートパイプを使ったパワー段、パルス型電源、入力及びテープスイッチをソリッドステートスイッチ使用でリモートコントロール化、MCカートリッジ使用可能な高利得イコライザー、ピーク出力表示灯、小型スピーカーの低域補正用の2段切替アコースティックコンペンセーター、ラウドネススイッチ付などの多くの特長をもつ。FMステレオ/AMチューナーST−P7Jは、クリスタルロック・デジタル周波数シンセサイザー方式で、アップとダウンの自動選局、AM/FM局ランダムプリセットメモリー8局、プリセットした局をその局順に約3・5秒間隔で自動的に呼び出すメモリースキャンなどが可能である。MOS型FETを使うRF増幅、4段相当バリキャップ使用のFM純電子同調フロントエンド、ユニフェイズフィルターとIC使用のIF増幅、リードリレー使用のミューティング5ステップ信号強度表示などの特長がある。

ビクター A-M1H, T-M1H

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 今年の話題のひとつに、超小型サイズのコンポーネントが各社から競って発売されたことがあげられるが、ビクターでは既に昭和41年に超小型のマイクロ・アンプ、チューナー♯103シリーズを商品化し、その後も♯200シリーズの一段と高級なセパレート型アンプを発売して数多くの愛用者を獲得した実績がある。
 今回発売されたマイクロコンポーネントは、従来の経験を活かし現代的にアレンジした高次元の高密度設計によるものである。アンプはセパレート型ではなくプリメイン構成としサブ操作系をヒンジ付サブパネル内部に収納し、メイン操作系は全てフェザータッチのプッシュボタンとしたユニークなパネルフェイスをもち、なお、シルバー仕上げの横型デザインとブラック仕上げの縦型デザインの2種類を用意し、あらゆる使用条件にも適合できるように企画されている点が特長である。
 プリメインアンプA−M1Hは横型タイプで、フロントパネルには5段切替の音量調整、入力切替、テープスイッチとパワースイッチがあり、サブパネル内部に一般型の音量調整、トーンコントロール、バランス調整、ラウドネス、SP切替とヘッドフォンジャックがある。回路構成は、ICLイコライザー段とトーンコントロール付ICL・DCパワーアンプの2ブロックで出力は50W+50W、電源部はDクラスのスイッチング型である。
 FMチューナーT−M1Hは、マニュアル同調と5局のプリセット選局、さらにデジタル時計付である。角型の表示窓内部には、信号強度を5段表示、ステレオ表示受信周波数と時間を表示するディスプレイがある。構成は水晶発振器を基準入力とするPLLシンセサイザー方式のフロントエンドと入力追尾方式PTL検波方式を採用し、MPX部以降はDCアンプ構成。本機の特長は、停電時にも内蔵の電池がプリセット受信周波数、時間をメモリーバックアップし、さらにメモリーバックアップ用電源アダプター端子をもつことだ。

オーディオライフ C-2500S

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ムラード社製のECC83を六本使用した性能、音質重視設計の管球プリアンプである。機能はシンプル・イズ・ベストの方針で単純化されているが、使用部品は厳選された特註品が多く、例えば配線材はすべて純銀線といった徹底ぶりが見られる。

ローテル RC-5000, RB-5000

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 19型ラックマウントサイズの分厚い黒色仕上げのパネルをもった大型のコントロールアンプとパワーアンプである。
 RC5000は、機能面で3系統のテープ入出力端子、同じく3系統で1系統はMC専用入力となるフォノ入力、各2段切替の高音、低音フィルター各3段切替のミューティングとラウドネスコントロールをはじめ、10素子のオクターブイコライザー、左右独立したマイクミキシング回路など、まったくのフル装備であり、AUX1の入力と出力は600Ωバランス型でキャノン端子を使用している。各アンプユニットはすべてDC構成で、電源部は3電源方式を採用している。
 RB5000は、定格出力500W+500Wの超弩級パワーを誇る大型のパワーアンプである。内部のコンストラクションは、左右対称に2個のDC構成パワーアンプを置くタイプで左右チャンネル間の干渉が動的にも静的にも無視できるほど少なくした設計である。パワー段はハイパワートランジスターを各チャンネル4個パラレルで使用し、特性の対称性が優れたダイアモンド回路応用のパーフェクトコンプリメンタリー方式と呼ばれるタイプで、AB級動作である。電源部は、超大型トロイダルトランスと22、000μFの電解コンデンサーが2組左右チャンネル用に使用されており、重量は53kg。機能面では、感度3段切替の対数圧縮型パワーメーターと各チャンネル8個のLEDを使用したピーク表示ランプ、アンプの電源投入後ウォームアップ完了を指示するスタンバイインジケーター、3系統のスピーカー端子、キャノン端子とRCA型ピン端子が切替使用できる入力端子がある。

テクニクス ST-8077 (77T)

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ST8077は新シリーズプリメインアンプの各モデルのペアとして使えるAM/FMステレオチューナーで、選局動作は指針にセットされた3個のLED表示のアクティブセンサーとアクティブサーボロックで確実におこなえるタイプ。機能は、電波の質を新ミューティングシステム、録音レベルチェック用発振器などがある。

テクニクス SU-8099 (Technics 99A), SU-8088 (Technics 88A)

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 テクニクスのプリメインアンプの新世代は、インテグレーテッドDCシリーズのSU8080と8075の2機種の開発から始まったと考えられる。
 今回発売されたSU8099/8088/8077の3機種の新プリメインアンプは、インテグレーテッドDC&3DAシリーズと名付けられているように、インテグレーテッドDCシリーズを一段と発展させた内容をもつ製品である。ここでは、新シリーズ中SU8099/8088についてリポートすることにしたい。
 インテグレーテッドDC&3DAシリーズの名称のなかで3DAという文字の意味は、アンプの音質を決定づける3要素──歪、周波数特性、ダイナミックレンジを互いに関連づけて解析する3DA(3次元解析法)の意味である。これと音楽信号を使ってアンプの歪分析を可能としたI/Oディストーションアナライザーを使用し、ヒアリングテストの結果を科学的に裏付けながら理想の音質を追求して開発されたものが、この新シリーズのプリメインアンプとのことである。
 テクニクスによれば、先に述べたアンプの3要素と、最近話題になっているスルーレートの関連性では、まずスルーレートについては、いかに高い周波数まで歪なく出力が取り出せるかの意味からは、最大出力対周波数特性というデーターそのものがスルーレートを表現していることになり、ライズタイムでは、信号の立上がりの速さを示すことから、周波数特性が高域まで伸びていればライズタイムが良好ということになる。また、話題のTIM歪については、現在発生の要因が明確にされておらず、アンプという伝送系には高い周波数での伝送時間の遅れ(位相の遅れ)があるために、過度的な入力にたいしてNFが追いつかず、それが原因でTIM歪が発生するという理論では説明ができない。結論として、TIM歪こそ動的歪の代表といわれるが、実はアンプ内部でのクリップによる歪と判断せざるをえず、これを解決するためには、アンプの最大出力対周波数特性と再生周波数特性の両方をある条件に設定する必要がある。したがって動的歪の代表といわれるTIM歪も、周波数特性と出力という静特性を関連づけ管理すればその発生を防止できる、というが、その論旨の骨子である。このアンプの3要素を関連づけて管理する方法が3DAということになる。
 SU8099は、パワーアンプ部には高周波トランジスターの技術を活かして開発されたSLPT(スーパー・リニア・パワートランジスター)を採用し、大電流が配線中を流れるときに発生する磁界に起因する高域歪を防止するため、パワー段と電源をブロック化した新方式を採用している。出力は、120W+120Wで、テクニクスA2で開発したアクティブサーマルサーボ回路を採用している。
 機能面では、MCカートリッジ用プリプリアンプ、録音信号系をインプットセレクターから独立させたレコーディングセレクター、純電子式で応答性の速いFLパワーメーターなどがあり、入力セレクター、レコーディング、スピーカースイッチなどは配線の引廻しを短くするリモートアクションスイッチを採用している。
 なお、SU8088は基本構想をSU8099に置いたモデルで、出力は78W+78W。

Lo-D HA-8700, HA-7700

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 日立では、音質のよい再生をめざし、ワイドレンジ・低歪再生を目標に新しいパワーディバイスとしてパワーMOS・FETを開発し、すでにパワーアンプHMA9500に採用して高い評価を得ている。
 今回発表された2機種のプリメインアンプHA7700/8700にも、一般のバイポーラトランジスターにくらべて、周波数特性、電力利得が優れたパワーMOS・FETが採用された。
 HA8700は、90W+90Wの出力をもち、初段にローノイズ型ジャンクションFETを使った3段直結型MCヘッドアンプからイコライザー段、トーンコントロール段、パワーアンプまでを前代DCアンプ構成としている。電源部は、左右独立の電源トランスと大容量電解コンデンサーを使った左右セパレート電源方式である。機能面では、ターンオーバー周波数2段切替可能な高音と低音トーンコントロール、サブソニックフィルターミューティングスイッチをはじめ、ほぼフル機能であり、イコライザー出力をトーンコントロール段を通さずにパワーアンプに直結するメインダイレクトスイッチがある。また、使用頻度の少ないスイッチはフロントパネルの下部の扉内部に収納してある。
 HA7700は、出力70W+70Wでターンオーバー周波数切替とメインダイレクトスイッチを省略したジュニアモデル。

パーフェクション DA-5000

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

3D方式専用フィルターDF3000の機能をもつフィルターとモノーラルパワーアンプを組み合わせたモデルである。パワーアンプは、ダイナミックパワー40W(8Ω)の定格であり、リアパネルのフィルター出力端子とパワーアンプ入力端子間のジャンパー線を取外せば、フィルターとパワーアンプは分離し、それぞれ単体として使用できる。なお、フロントパネルの入力端子は、リアパネルのPRE・INPUTと並列接続されている。

パーフェクション DF-3000

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 3D方式のサブ・ウーファーシステムに使う専用のフィルターアンプである。
 機能的には、①超低音用ウーファーの高域をカットする、−10dBで55Hz、70Hz、95Hzとなる3段切替18dB/oct型のフィルター、②超低音を25Hz・−18dB/octでカットするサブソニックフィルター、③レベルコントローラー、④入力をメインシステムのスピーカー端子、コントロールアンプ出力端子に切替えられるインプットセレクター、⑤入力をコントロールアンプから受けた場合のみに動作し、メインスピーカーの100Hz以下を−18dB/octでカットするL・Rローカットスイッチ、⑥超低音用ウーファーの位相切替スイッチがある。

オーレックス ST-F15

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 同調操作がマニュアル、オート、10局のプリセットの3種類が選択できるデジタル・シンセサイザーチューナーである。同調用回路素子には、1チップに1、700素子を納めたPLLシンセサイザー用LSIを開発し、オートチューニングを可能とし、チューナー制御用には記憶機能をもつ専用LSIを開発してFM局10局のプリセットができるようになった。中間周波増幅段には、波形伝送、群遅延特性の優れた新開発セラミックフィルターを採用している。

オーレックス SY-C15, SC-M15

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のオーディオの話題となる新しいジャンルの製品に、超小型のコントロールアンプ、パワーアンプ、それに、チューナーをベースとした、いわゆるマイクロコンポーネントシステムがある。すでに、このクォータリー欄でも、テクニクス、ダイヤトーンの超小型コンポーネントを取上げたが、今回紹介するオーレックスの製品は、この種のものではもっとも早く発表された製品である。
 オーレックスのマイクロコンポーネントは、ステレオシステムにその名称をもつように、超小型で横幅が257mmに統一されたコントロールアンプSY−C15、パワーアンプSC−M15、AM・FMステレオチューナーST−F15を中心として、カセットデッキPC−D15、小型スピーカーシステムSS−S12W、さらに、スーパーウーファーで45Wパワーアンプを内蔵のSS−W51Sでシリーズを構成する、独立したコンポーネントシステムである。このなかで今回試聴できたのは、ベースとなるアンプとチューナーである。
 SY−C15は、超小型ながらコントロールアンプと呼ぶにふさわしい機能をもった製品である。機能面では、2系統のフォノ入力とコントロールアンプ出力を備え、高音と低音のトーンコントロール、サブソニックフィルター、ミューティング時にはイコライザー出力が直接コントロールアンプ出力となる特殊なミューティングスイッチをもつ。各ユニットアンプは、すべてA級動作の全段直結DC構成で、イコライザー許容入力は300mVである。
 SC−M15は、定格出力が45W+45Wで、BTL接続により90Wのモノーラルパワーアンプとしても使用できるDC構成のパワーアンプである。超小型パワーアンプのポイントである放熱効果を解決する目的で、いわゆるケース部分にアルミ合金を一体成型した接合部分のないアルミダイキャスト・モノコックボディを採用し、両側には羽根型の放熱フィンを一体化している。このボディのスペースファクターの良さを活かし、大型の電源用電解コンデンサーや増幅段用のタテ型フィルムコンデンサー、さらに厚さ70ミクロンのプリント基板などの大型部品の高密度実装を実現している。
 SY−C15、SC−M15のペアは、平均的な聴取レベルではまったく不満のないパワー感をもち、一連のオーレックスコンポーネントシリーズに共通する細やかさと滑らかさがあり、ニュートラルな色付けの少ない音をもっている。