Category Archives: 海外ブランド - Page 55

QUAD 33

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パワーアンプの405が発売されたあと、いずれ新型のコントロールアンプが発表されると誰もが思った。だがいつまでも出てこない。しびれを切らしてロス・ウォーカー(QUAD社長)に質問したら、「33でどこか不満か?」と聞き返された、という話は有名になっている。これに象徴されるように、33の音を最新のソリッドステートと比較すれば、不満はいくらも指摘できるが、反面、ボリュウムを上げてレコードから鳴ってくる音楽に耳を傾けるとき、この、たしかに音像は小造りだしひとを驚かす切れこみの良さも鮮度の高さもないが、聴くにつれて底に流れる暖かい響きの美しさとバランスの良さに気づけば、これはこれで完結したひとつの小世界なのだと納得せざるをえない。

マッキントッシュ C32

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音のひと粒ひと粒が、一種豪華な味わいのブリリアントな力に支えられているという感じがする。旧マッキントッシュでは、音をおおづかみにとらえて細部にこだわらないこせこせしない良さの反面、ディテールをいくらか塗りつぶして不鮮明にする弱点があったが、C32はさすがにこんにちの最新のソリッドステートらしく、反応がシャープでディテールもよく再現する。いかにも血色の良い享楽的でゴージャスな音で、これを耳にした後ではマーク・レビンソンがどこか禁欲的で貧血症にすら聴こえかねない。ただ個人的にはこういう音を毎日の常用として身辺に置こうという気持にならない。あまりにも積極的に音を彩るので、おそらく飽食してしまいそうだから。

マークレビンソン LNP-2L

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 LNP2が2Lと改称されたのは、新しく採用されたスイスLEMO社のコネクターの頭文字をとったのだそうだが、旧型とは別のアンプのように改良された音は、別にコネクターのせいではなく、まず別筐体の電源回路が強化されたことが第一。それに加えて2Lになる少し前から、増幅素子その他の回路素子、部分品類の小改良の積重ねが実って、最新型で聴くことのできるおそろしく透明で繊細で、緻密で優雅、そして音の奥行きとひろがりの素晴らしさを満喫させる音に仕上った。自宅でも常用しているが、できればオプション(別売)のバッファーアンプを回路に追加してもらう方が音質が向上する。本誌試聴機もそうなっている方を使っている。

マークレビンソン ML-1L

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前のJC2と基本的には同じ製品だが、型番がML1Lと変る以前から、内容にはかなり大幅の改修が加えられて、音質は旧型と一変している。旧JC2の一聴していわゆるハイ・ディフィニション(明瞭度が高い=高解像力)という印象の音よりも、大づかみにはLNP2Lのおだやかな音質に近づいた。というより、音の深味あるいは奥行きの深さと幅の広さではLNPにほんの一息及ばないが、基本的な性格はLNPと紙一重というところにせまって、あくまでも透明ですっきりと品位の高い音質は、両者を比較しないかぎりその差に気がつきにくいだろうと思わせるほど完成度が上っている。ゲインが高いためDL103Sクラスはトランスなしで実用になる。

スレッショルド CAS1 Custom

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 兄貴分の400Aのかちっちりと引き締った音と較べると、CAS1の音はスケール感や密度の点では多少聴き劣るが、反面、しなやかさが増してきて、音のひびきにゆとりがあって、そのためかニュアンスの再現はこちらの方が好ましく聴こえるところがある。むろんそれは同じメーカーのカラーの中での話で、本質的にはスレシュオールドというメーカーの音には、どこか生真面目な面があって、ひとつひとつの音をやや慎重につみ上げてゆくような、したがってそこにもう少し自在さが出て欲しいと思わせるような感じが残るが、公称出力よりも実感としてはよく音が伸びて、中域から低域にかけてのほどよい充実感もあって、総合的になかなかいいアンプだという印象を受けた。

ハーマンカードン Citation 17

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前のセパレートアンプ特集号で旧型の♯11と♯16の組合せを聴いたときの印象では、低音域に独特の厚みと力が感じられて、下半身肥大のようなプロポーションで、しかもかなり厚着したような音だと思ったが、改良型にあたる♯17と♯16Aでは、そうした動きの鈍さあるいは重さがすっかり取除かれて、シャープで反応の早い現代ふうの音に変ってきている──と、一聴したときは思ったのだが、どうも基本的には解像力がもうひと息ともなわないところにそれを補うかのようにかなり鋭い音をちりばめたというように、いささかちぐはぐな鳴り方をする。かなり細い感じなので、イコライザーの150Hzのポジションをわずかに増強してみると、バランス的にはこの方が安定した。

ハフラー DH101

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 輸入品としてはかなりローコストの普及品的作り方であることを一応頭に置いて聴く必要があるが、その前提で聴くかぎり、これはとても素晴らしいコントロールアンプのひとつといってさしつかえない。さすがにこの分野ではベテランのハフラーの設計らしく、カンどころをしっかりおさえた上で、いかにも鮮度の高い音を鳴らす。おそらく回路に凝りすぎてないためだろう。音楽の表情がよく生かされて音の微妙な色あいの変化もほどよく再現される。高級プリのような磨かれた質感の良さや密度の高さにはわずかに及ばないが、価格の違いほどの音の差はない。ただマランツ510Mの系統よりはアムクロン300Aなどの穏やかな音の方がよく合うのではないかと思った。

ルボックス A740

ルボックスのパワーアンプA740のサービスマニュアル
Revox_A740_Serv

ルボックス B740

ルボックスのパワーアンプB740のサービスマニュアル
Revox_B740_Serv

GAS Thaedra II

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 いわゆる腰の坐りのよい堂々と安定感のある音が鳴ってきて、プログラムソースが変ってもその印象は一貫している。たしかにこの音は現代のアメリカのソリッドステートアンプのひとつの尺度となりうる見事な出来ばえだ。ただ「アメリカの」と断ったように、しばらく聴き込むうちに、元気のよいエネルギーをそのままぽんとこちらにぶつけてくるような、あまりにも率直な、その意味では強引ささえ感じさせる音は、私などは少々へきえきさせられる。むしろII型でない初期の製品の方が、もう少しおさえた説得力があって好ましかった。内蔵ヘッドアンプの出来ばえはなかなかの水準で、MC20とDL103Sのそれぞれ、フレッシュな魅力で鳴らし分けた。

GAS Thoebe

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 テァドラの鷹揚な力づよさとタレイア(サリア)のひかえめなやさしい音のあいだに挟まって、それらとはまたかなり傾向の違うやや硬調のハイコントラスト型というか、いわゆる目鼻立ちのくっきりした音の輪郭の鮮明さを狙って作った音、と聴きとれる。試聴で組み合わせた510Mとの相性はGASの中ではこれが最も良いようで、マランツの力と高域の質感に支えられて、よく張った硬質の音だがポピュラー系の音に対してはなかなか特徴のある音を聴かせる。ただ、クラシック系の弦合奏やヴォーカルでは、それぞれの音の特質をよくとらえてはいるが本来の硬い傾向の音が、永く聴くにつれて少々気になってくる。だがこういうふうに三機種の性格をはっきりと分ける作り方は賛成だ。

GAS Thalia

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 テァドラがその本質的に持っている力をややあからさまに(と私には聴きとれるが)押し出すのに対して、孫のタレイア(サリアと呼ばれているようだが、本来ギリシャ神話からその名を取っていると思うので、)の方は、中〜高音域でえてして張りすぎやすい音域をしまくコントロールしてあるようで、それに加えてハイエンドにかけて軽い強調感が聴きとれることもあいまって、総体にやや細身に仕上っているが、音に繊細なやさしさと、よくひろがってゆく奥行き感とがあって、ややひかえめな感じだが、クラシックの弦合奏や、ヴォーカルでもキングズ・シンガーズのような響きの美しさやハーモニィを重視した曲の場合には、GAS三機種の中ではこれが私には最も好ましかった。

DBシステムズ DB-1

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 アメリカのソリッドステートアンプのごく新しい傾向の良さの素直に出た、とてもフレッシュで生き生きとした音。総じて音のぜい肉をおさえて繊細にどこまでも細かく分析してゆく傾向があるが、しかし細身一方のたよりない弱々しさではなく、十分に緻密に練り上げられて底力を感じさせ、それが一種凄みを感じさせることさえある。力を誇示するタイプでなく、プログラムソースの多様さにどこまでもしなやかに反応してゆくので、音楽の表情をとてもみごとに聴き手に伝える。弦の響きもとてもよく、アメリカのアンプにしてはどこかウェットな音に思えるほどだ。ハイエンドに一種キラッとした音色があって、そこが好みの分れるところかもしれない。

スチューダー A68

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 本格的なスタジオ仕様で、ローインピーダンスの平衡型インプットなので、入力回路に不平衡→平衡の変換アダプターを使って試聴したときと、不平衡のままで入力を入れたときとで、音の傾向が少し違う。まず平衡入力では、いかにもヨーロッパのプロ用らしく節度のあるバランスの良い音がする。かなり芯の硬いところがあるが、それは表面的な硬さではなく音像をしっかり支える力として、ひよわなところのない緻密な音を形造る。細部を目立たせるのではなく、やや大づかみに輪郭をかちっとくまどってゆく。不平衡入力にかえると、いくらかコントラストが増してクリアーな音になり、レインジの広がった感じになるが、本質的には抑制の利いた渋い良い音質だ。

デイトンライト SPS MK3

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 耳あたりの柔らかさを狙ったというか、あるいはいわゆるソリッドステートの最新型にありがちな鮮鋭な鳴り方を嫌ったというべきか、ことさらに解像力を誇示するようなところがなく、そのせいか、なんとなく周波数レインジのあまり広くない感じの音に聴こえる。オーケストラのトゥッティでもギラついたり硬くなったりしないが、どこか伸びきらない印象があるが、いわゆる入力に対する反応があまり早くないためか、それともダイナミックレインジがそれほど広くないのか。耳当りの柔らかい割には底力を感じさせる音だが、ことに低音に一種独特の粘りのある音があって、それが全体の音色の傾向をかなり支配しているように聴きとれた。

スペクトロ・アコースティック Model 202

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 輸入品の100Wクラスのアンプとしては、価格もそれほど高くない。外観の造りをみれば贅を尽くした高級品ではなく、実質本位に徹した製品らしいことは容易に想像できるが、出てくる音を聴くかぎりは、ローコスト化のために手を抜いたというような感じはなくて、ローレベルでも滑らかによく磨かれて質感も悪くないし、切れこみのよい新鮮な印象で、音の密度にも不満はなく、ハイレベルでやかましくなったりもせず、要するにかなり良くできたパワーアンプであることがわかる。たとえば「オテロ」冒頭のオルガンの低い持続音も振動的な感じがよく出ている。価格の割に内容のしっかりした製品といってよさそうだ。

BGW Model 203

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 アンプ自体がことさら固有の音の傾向を持つことを意図的に避けた、という印象で、どのプログラムソースに対しても、いくぶん素気ない感じで音を聴かせる。ただそれが、技術一辺倒のアンプにありがちの、表面は整っているが音楽の生き生きした表情まで抑えこんでしまうようなアンプとは違って、伸び伸びとこだわりのない上質の音に仕上っているため、ことさらの魅力という部分が乏しいけれど音楽の表情を殺してしまわないだけの良さは十分に持っている。本質的には乾いた質感を感じさせるが音のバランスはどんな場合にもくずれることがない。強いていえば、ごく薄い幕を引いたような感じがあって、もうひと息刻み込みが深くなればすばらしい音になると思った。

SAE Mark 2600

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音の透明感と表現力のずば抜けて優れたアンプだと思う。透明感という点でこれに勝るのは、マーク・レビンソンのML2Lぐらいのものだから、SAE♯2600はその点でわずかに負けても、どこか凄みのある底力を感じさせるダイナミックなスケール感と音の肉づきのよさで勝る。旧モデルの♯2500も含めて、低音の量感がこれほどよく出るパワーアンプは少ないし、ハイパワーでいながら高域のキメの細かいこと、ことに音量をどこまで絞っても音像がボケず、濁りもないこと、まさに現代の最上級のパワーアンプだろう。♯2500にくらべると、低域がややひきしまり、中〜高域の音色がわずかに冷たく硬質な肌ざわりになったところが、多少の相違点といえる。

ルボックス A740

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たとえば「オテロ」の冒頭のトゥッティを相当な音量で鳴らしても、それぞれのパートのあるべき姿で展開しながら決してわめいたり騒々しくなったりせず、一瞬のピアニシモではどこかひっそりした感じさえ与える。少しもギラつかないでしっとりと、どちらかといえば渋い感じのするところはヨーロッパ製品でなくては決して聴くことのできない音色で、そうした性格はことに弦やヴォーカルに長所を発揮してとても滑らかで品位の高い自然な音が楽しめる。といって、シェフィールドのパーカッシヴなエネルギー感や、テルマ・ヒューストンの黒人特有の声の艶とバックのコーラスを含めて聴きごたえのある音を出す。これはとても素晴らしいパワーアンプだ。

QUAD 405

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 単体のテストでは、オリジナルのQUAD33との組合せ(その項参照)のときの、節度のある、渋い、しかし聴きようによってはどこか燻んだ感じの音と違って、一種清々しい新鮮な艶と、彫りの深い立体感が増してくる。いかにも清潔で余韻の美しい響きで、音像がスピーカーの奥に展開し、こちらに出しゃばるようなことがない。ただ、荒々しさやスケール感を要求するようなタイプの音楽の場合でも、そこをやや小造りに上品にまとめてしまうようなところがあるので、やはりクラシック中心に聴く人のためのアンプだろう。最近入荷した製品は、入力感度を調整できるようにしてあるため、従来のようにノイズを拡大するようなことがなくなって、使いやすくなった。

QUAD 303

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 海外のパワーアンプでも、たとえばDBシステムズのDB6や、GASの Grandson のように、40W×2という公称出力から予想されるよりもはるかに力感のある音を鳴らすアンプにくらべると、QUAD303は、公称の45W×2の出力がまさに額面どおりという感じの、音の力という点ではいささか小造りな音がする。それは単に出力の問題ばかりでなく、周波数レインジやダイナミックレインジという点からみても、こんにちの最新のアンプと比較すれば、いささか古さを感じさせる。けれど、このアンプの鳴らす小造りでひかえめな音の世界は、最近のいかにも音をみせびらかすようなアンプの中に混じると何とエレガントに聴こえることか。

オーディオ・オブ・オレゴン BT2

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スピーカーでいえばアルテックのような、アメリカの製品だけが鳴らすことのできる音の支えの力強さと明るさがある。たいそう密度の高いしっかりした音で、ことに中〜高域がよく張っているので、相対的には輝かしい音色と聴きとれる。いわゆる目鼻立ちのかっちり整った引締った硬質な音。したがって弦楽四重奏やアメリンクの声などでは、ときとして少し音が張り出しすぎるように、私には受けとれた。反面、「サイド・バイ・サイド3」でのピアノの音では豊かな丸みが楽しめるし、アメリンクのレコードでも伴奏のピアノの音の方は、クリアーな中に適度の丸みも感じさせてなかなか好ましい。ハードかつブライトという性質をプラスに聴かせる良さを持っている。

アムクロン IC-150A

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 第一印象はとてもおだやかな音だ。ことに、コントロールアンプ単体のテストで組み合わせるマランツ510M自体の内包している、ときとしてケバ立ちぎみのいくぶん冷たい傾向の高音域をみごとにおさえて、少しの粗さもない十分にこなれた音に仕上げる。そのためにうっかりしていると解像力の甘いアンプであるかに聴きあやまりやすいが、こういうふうに抑制を利かせながら、音楽のディテールを失うようなことはないし、音の表情をほどよく生き生きと伝えながら、ハメを外したり神経質になったりすることが少しもなく、非常によく練り上げられたアンプであることを思わせる。ただ、基本的な質感がやや乾いた傾向であることが、私には少しものたりない部分だ。

マッキントッシュ MC2205

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音のたっぷりして豪華な味わいのあるところはいかにもマッキントッシュだが、新シリーズになってからは、高域の聴感上のレインジを広げ、解像力を上げようとしていることが聴きとれて、音に新鮮な輝きが加わったが、反面、以前から持っていた性格でもある音の掴み方がやや粗い面が、解像力の増した分だけ表面に露出してきたという印象があって、旧シリーズの方が適当に脂肪太りしているところへうまく化粧していたため小皺もうまく隠れていたことがいまになって想像できる。また、今回の新シリーズの方が内在する力をストレートに表面に出すが、力を底に抑制して露に出さなかった旧シリーズの方に、むしろ好ましさを感じさせる部分もある。

マークレビンソン ML-2L

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

「オテロ」冒頭のトゥッティの持続の分厚いハーモニィのからみあいの中から、弱音の微妙な色あいの美しさがキラリと浮かぶ解像力の素晴らしさに思わずハッとさせられる。弦楽四重奏では四つの声部の、というより各楽器の四本の弦の表情の変化まで聴き分けさせ、アメリンクの声、その伴奏のピアノの心理表現まで感じとれる。ベーゼンドルファーの強靭な中にも丸みと艶のあるタッチも満足できるし、シェフィールドではかなりの音量まで上げても、表示出力の信じ難い凄い底力がある。キングズ・シンガーズなどまさにかくあるべき理想が鳴ったという印象。一見引締ったクールなやせ形の音。およそ極限まで磨き込まれた質感の高さ、緻密な力と滑らかさの絶妙なバランス。