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ジェニングス・リサーチ The Amp

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 明るく元気のよい、身のこなしの軽やかでよく伸びる音がする。音像のひろがりもわるくない。反応がいかにもシャープで、その意味では聴いていて決して不快な音ではないが、いろいろなプログラムソースを通して聴くと、曲によって印象が少しずつ変ってゆくようなところがある。弦楽四重奏ではヴィオラの音域の支えが弱く四声のハモりかたがもうひと息。ピアノのタッチも丸みのある質感がもう少し欲しい。どちらかというと聴き手の注意力が高音域の輪郭の方にゆく傾向で、中低域から低域にかけては意外に反応がゆっくりしているように思える。LNP2Lとの相性があまり良くなかったようにも思えた。

ハーマンカードン Citation 16A

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 かなり積極的な音を持ったパワーアンプだ。中域以上高域にかけて華やかな光沢があって、明るいライトで照らしたようにディテールに至るまでキラキラと輝いて浮き出してくるようだ。低音のかなり低いところには意外に重量感もある。やや重く、力にまかせるように思えるが、それは、中低音域でいくぶん音の引っ込むような傾向があるのでよけいにそんなふうに聴きとれるのかもしれない。したがっていわゆる低次倍音の音域がバランス上薄手なので、中〜高域の華やぎは、ときとしてかなり派手にはしゃぎすぎる傾向を聴かせる。饒舌気味、説明過剰の傾向といえようか。これなりに得がたい個性で、国産でいえばビクターのアンプに概してこの傾向が聴きとれる。

ガリエン=クルーガー 1000-1S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 このメーカーについては詳しいことを知らないが、外観はいわゆるコンシュマー用でなくいかにもプロ用、それもPAあるいはモニター用などの用途を思わせるコンストラクションで、見た目にはなかなか信頼感を抱かせる。そのことは音を聴いてもうなずける面がある。総体に神経質なところが少しもなく、やや重い感じの独特の低音の力に支えられて、中音から最高音域に至るまでどちらかといえば反応が鈍い印象。ディテールを照らし出すのでなく全体をくすんだモノトーンに仕上げるような音色といえる。かなりの音量で鳴らし続ける目的には、シャープすぎなくていいのかもしれないが、ふつうの鑑賞用としては、もう少し鮮度の高さやニュアンスが欲しく思える。

GAS Ampzilla II

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 中庸であることをの良さを十分にわきまえた音というべきか。実に見事に堂々とした安定感があって、どんなプログラムソースにも破綻をみせず、いわゆるヒステリックなところのない本当の底力のあるとてもいいパワーアンプだ。大地にどっしりと足をふんばってたっているかのように腰の坐りのよい音。よく鍛えたぜい肉のない筋肉質の肉づきの良さを思わせる、いかにも男性的な自信にあふれた魅力といえようか。ただ、前回のセパレート特集でも発言したように、私自身は、同じ音でももう少し女性的なやさしさや艶っぽさがなくては嬉しくなれない。いずれにしてもコントロールアンプのLNP2Lとは相容れにくい性格をもっていて、GAS同志の組合せの方がいい。

GAS Son of Ampzilla

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 アンプジラIIとグランドサンとのあいだにあって、まさにその中間的な音に仕上げてあるあたり、実力のある設計にが余裕しゃくしゃくで遊んでいるようで、これは並の手腕ではない。アンプジラのようなパワーに支えられた底力には欠けるという面を補う意図か、いくぶんコントラストの強い硬調ぎみの音に作ってあり、親父のようなおっとりした音でなく目鼻立ちをくっきりさせて、音の輪郭を鮮明にさせる。そういう傾向の割にはクラシックの弦合奏も案外楽しませるが、ただ本質的にはポップス系のプログラムソースの方を生かすようだ。親父の威光に負けまいといくらか突っぱって生きている、という感じで私にはグランドサンの素直さの方が好ましいが。

GAS Grandson

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 アンプジラの孫ならさしずめ「マゴジラ」か。いかにも孫らしく、小造りで可愛らしさの感じられる音で、「オテロ」の冒頭の部分など、かなり精一杯がんばっているとでもいう鳴り方をする。ただそれはよほどの音量でのことで、ふつうの聴き方をするかぎり、表示パワー(40W×2)が信じがたく思える点はDB6と同様。コントロールアンプのサリアとも共通の性格だが祖父(アンプジラ)のあの堂々とした押し出しのないかわりに、プログラムソースにしなやかに順応する率直さがあって、弦や声もほどよく柔らかく溶けあう響きが美しい。いくぶん硬質ぎみの音といえるが、自己主張が強烈でなく、ぜい肉を抑えて細身に表現するところが私には好ましい音だった。

ダイナコ Mark VI

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 弦あるいは声がとてもいい。血の通った暖かさがあって、ふくよかでやさしい音がいつのまにか聴き手の心を和ませる。ボリュウムをかなり上げてもやかましい感じ、金属的な感じが少しもない。最新のTRアンプのどこまでも切れ込んでゆくもの凄い解像力を聴いた耳には、このいささか甘口の音は物足りないともいえる。音の響きの部分のデリケートな繊細さ、弦の倍音の漂う感じ、など、ディテールがTRほどは見通しにくかったり、ピアノなど打音がもうひとつ切れ込まないなど、不満がなくはないが、まろやかで豊かなこの音には十分の魅力を感じる。ただ、組み合わせたLNP2Lの解像力の良さに助けられた面がかなりあることは書き添えておく必要がありそうだ。

DBシステムズ DB-6

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 第一にびっくりしたのは表示パワーが40W×2と小さいのに、鳴らしているかぎりとうてい信じられない力があることだ。国産のパワーアンプの多くが、80Wクラスではまだもうひと息、力あるいは密度の不満を感じさせるのだが、DB6にはそうした不満が、全くないとはいえないが少なくとも百W旧のアンプのような充実感があって、かなりの音量でも危なげがない。低音の支えもしっかりしているし、高音域にも音楽の表情を生かすような適度の艶が感じられて、かなり楽しませてる。中音域、というより中低音域をやや抑えた感じがあり、ディテールを繊細に形造ってゆくやや硬調ぎみの音だが、たいそう質の良い音のアンプだと感じた。

BGW Model 410

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプの♯203とよく似て、いくらか乾いた傾向でどこ素気ないというか、アンプ固有のカラーをできるだけ抑えて作ったという印象がある。リファレンスのマランツ510Mには、高音域にいくぶん線の細いキラッと輝く音があってそれが音の切れこみの良さを感じさせる要素にもなっているがこのBGW410の高域にはそうした色あいまたは光沢を抑えて作ってあるために、一見ソフトな音に聴こえるが、音楽のディテールも一応過不足なく描写するし、反応の鋭敏さもあらわにしないが底力も十分にある。以前のBGWは小出力時にどこかザラついた音があったが、410では歪も十分に除かれているらしく、粗い音は全く感じさせない。

スレッショルド NS10 Custom

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、CAS1との場合よりも一段とクォリティが高まり、活気があり、反応が早く安定感が向上する。
 音色は軽くフワッと明るいタイプで、表情の細やかさが適度にあり、クォリティ的に充分に高さがわかる音である。バランスコントロールを+8dBにすると、高域がスッキリと伸びて、かなりクリアーで透明度が高い音になる。独得の細かいニュアンスの表現は、セパレート型アンプらしいユニークさである。「サイド・バイ・サイド3」のような、独得の細やかなプレゼンスのある音には、シャープな反応を示し、このアンプならではの他では求められない素晴らしい音を聴かせる。

スペクトロ・アコースティック Model 217

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 屈託なく、活気のある音をもっている。
 聴感上での周波数レンジは、現在の水準からすれば少しナローレンジ型に感じられるが、ナチュラルに伸びており、とくに不足を感じることはない。バランス的には、低域はやや軟調傾向があり、中低域にかけてある種の粘った印象に特長がある。中域は、量的には充分あるが密度が少し薄く、高域は粗粒子型と面があるが、ほどよく磨き込まれている。
 音の表彰はかなりアクティブで、表面的に感じられる面がなくはないが、価格的に考えれば充分のクォリティがある。なお、ボリュウムの回転角度により、キャラクターが変化する点は注意したいところである。

SAE Mark 2100L

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 マクロ的に音や音楽を外側から、枠取りを大きく掴んで聴かせるコントロールアンプである。聴感上での周波数レンジは、現在の水準からすれば少しナローレンジ型で、バランス的には低域に厚みがあり、中域も量的にタップリあるが、少し粒立ちが甘くなる。音の表情はかなり豊かで伸びやかさはあるが、細部をクリアーに引き出せず、ある種の力で押し切るタイプで、音楽と対峙して聴き込むファンには、大柄で反応が鈍い面があり、不満を感じるかもしれない。いわば、音楽ファン用というよりは、高級PA的なキャラクターともいえよう。音場感は左右には充分広がるが、パースペクティブは抑え気味で、音像は前に出るタイプである。

QUAD 33

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 現在の水準からしても、かなりオーソドックスにまとまった音である。
 聴感上での周波数レンジは、さしてナローレンジ型を意識させない程度に伸びており、バランス的にはローエンドが抑えられ、低域はやや厚み不足ではあるが、芯のしっかりした適度のソリッドさがある。中域は安定し、高域は少し粗粒子型で硬質さがあり、立ち上がりは甘く、ハイエンドがなだらかに下降している。
 音の表情はおっとりしているが落ちつきがあり、ほどよくプログラムソースをまとめる特長があるが、反応は遅いタイプで機敏さはない。音場感はやや狭く、音像はふくらみ気味で、輪郭の線が甘い。

マッキントッシュ C32

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、♯510Mのソリッドでやや硬質なキャラクターを巧みにカバーして、豊かでしなやかなクォリティの高い音になる。
 聴感上での周波数レンジはナチュラルに伸びきっており、充分にローエンドまでのびた低域をベースとして、緻密で粒立ちが適度にクッキリとして芯がある中域、ハイエンドが少し抑えられた高域と、安定感のあるバランスを保っている。音色は明るく、好ましい重さがあり、音への反応もアクティブで、活気が充分にある。ストレートな音の表現力も見事で、エネルギー感はタップリとある。ステレオフォニックな音場感の広がりは、従来より一段と優れ、音像もシャープである。

マークレビンソン LNP-2L

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンス用コントロールアンプとして数多くのパワーアンプの試聴用に使用して、その役目をほぼ完全に果したこと自体だけでも、このLNP2Lの群を抜く優れた性能と音質を物語るに充分なものがある。
 スッキリと伸びた周波数レンジをもち、全帯域にわたり、音色が明るく適度の重さがあり、音の密度が濃く、格調の高い都会的に洗練された音である。バランス的には中高域が少し硬質であるが、これはこのモデルがユニークな発想のデッキ用録音・再生アンプとして開発されたという、コンセプトの違いが、独得の硬質さをもつディスクをプログラムソースとすると相乗的に働くためで、アンプとしての正確さを示していると思う。

マークレビンソン ML-1L

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lと比較をすると、全体に軽くやや薄い音であり、低域の緻密さ、厚みも少し不足する。しかし、中域が量的に充分あり、音の密度が薄くないのは大きな特長である。
 ゲイン切替をハイとすると音は全体に引き締り、シャープさが出てくる。また、左右チャンネル独立のバランスコントロールの位置によっても音が変化し、マキシマムの+5dBの位置がもっともクリアーに抜けた、緻密で爽やかな音になる。ゲイン切替をローとし、バランスを0dBとすると、もっともLNP2Lの音に近くなるが、低域はより柔らかく、軟調気味である。音場感的には空間がよく広がり、音像もクリアーに立つタイプだ。

ハーマンカードン Citation 17

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、オリジナルの♯16Aとの場合よりもマッチングが良いとはいえない。聴感上での周波数レンジはナローレンジ型で、バランス的には低域の量感は出るも、軟調で音色が重く暗くなり、ダンピングがかなり甘い。中域は粒立ちが甘く、中高域は予想よりも高質さが出てくる。
 全体におだやかでゆとりはあるが、反応が遅く、音楽のテンポが遅くなったように感じられる。今一歩、反応のシャープさが欲しい。
 ステレオフォニックな音場感は、標準的には広がるが、空間の広がりが少し狭く感じられ、音像は甘いタイプである。

ハフラー DH101

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプとしては、いわゆるセパレート型アンプらしい性能とクォリティを狙った製品ではなく、限定された範囲内での性能、クォリティをベースとして、音楽を楽しむためのアンプとして開発されたアンプという印象の音である。
 聴感上での周波数レンジはナローレンジ型であるが、聴きやすく、柔らかく適度に活気が感じられる、大変に巧妙なバランスが保たれている。「サイド・バイ・サイド3」は、正確さはないがムード的に楽しく聴かせ、テルマ・ヒューストンでは、ヴォーカルを中心として、ダイレクトカッティングとしてではなく、中域ベースの安定した再生をする。この適度に楽しめる音が最大のメリットと思う。

GAS Thaedra II

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、オリジナルなペアよりも音の表情が素気なくなり、押出しはよいのだが、力にまかせて音を出すような印象となる。とくに中域から中高域にかけての帯域が硬調となり、厚さが感じられない、やや細い、薄い印象となる。
 聴感上での周波数レンジは、オリジナルなペアよりもフラット型となり、音色もソリッドとなるために、オーディオ的にはかなりクォリティが高く、エネルギー感もタップリとあるが、音の表現が単調となり、独得の陰影の色濃い、ダイナミックな魅力はもはや感じられない。結果としてはマッチングの悪さが感じられるペアである。

GAS Thoebe

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 トータルの音のキャラクターは、かなりテァドラIIとよく似ているが、バランス的には、低域の量感が少し抑えられてソリッドな印象となり、全体にスッキリとし、音の反応が少し早くなったように感じられる。
 聴感上での周波数レンジは、割合にフラットレスポンスのナチュラルに伸びたタイプで、音色は明るく、適度のクリアーさがあり、クォリティは高く、やはりこの音はセパレート型アンプならではのものだ。
 音の表情は特に豊かなタイプではないが、国内製品の優等生的なキャラクターから比較すれば、伸びやかで活気があり、ダイナミックである。また、色彩感の豊かな表現力はGASの製品らしい特長であろう。

GAS Thalia

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 クリアーで反応の早い音をもつコントロールアンプである。
 聴感上での周波数レンジはかなりフラットレスポンス型で、バランス的にはローエンドが抑えられており、中域は米国系のアンプとしてはやや薄いタイプである。音色は明るく軽く、音の粒子は細かく充分に磨かれている。
 音の表情はフレッシュでみずみずしく、キメの細かい鮮鋭さでは、上級機種のテァドラIIやセータよりも明らかに一枚上手である。基本的なクォリティは充分に高く、音の緻密さがあり、この価格帯の国内製品と比較すれば、いきいきとした伸びやかな音をもつ点で出色のコントロールアンプと思う。

DBシステムズ DB-1

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スッキリとしたシャープな音をもつコントロールアンプである。
 このタイプの音は、とかく小柄でエネルギー感がなくなりがちであるが、DB1では、柔らかさと適度の粘りのある弾力性があるために、抑えの効いたグイッと伸びる力感があり、独得の音に抑揚をつけて聴かせる。
 DB6との組合せのときのキャラクターは、コントロールアンプ側にその要素が多くあるようで、中低域あたりの甘さと、粘りのある弾力的なキャラクターは独得のものである。音の伸びは、リファレンスパワーアンプ♯510Mのほうが格段に優れ、鋭角的に、適度のしなやかさをもち、ストレートでエネルギッシュである。

スレッショルド 400A Custom

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おだやかで細かく、大人っぽい熟成された、クォリティが高く安定した音である。
 聴感上での周波数レンジはナチュラルに伸びており、バランス的には、低域が柔らかく豊かで適度の芯があり、まろやかさは非常に素晴らしい。音色は、軽く明るく清らかなタイプで、音の粒子は、全帯域にわたり細かく磨き込まれている。
 CAS1カスタムと比較すると、低域は、エネルギー感として感じられる帯域が少し高く、腰高の印象があるが、エネルギー感は格段に異なり、中域の緻密さも一枚上手である。高域もハイパワーアンプとしては粒子が細かく滑らかで、スッキリとしており、この面でもグレイドが一段と勝っている。

スレッショルド CAS1 Custom

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lとの組合せでは、NS10カスタムの場合よりも、中域の緻密さが一段と向上し、音像が引き締り、標準以上にクリアーな定位感となる。
 聴感上の周波数レンジはかなりナチュラルに伸びた印象があり、バランス的には、低域の量感は豊かであるが、やや軟調傾向があり、ウォームトーン系の音色である。中域は量的に充分あり、クォリティが高く、高域は予想よりも粒子が細かくはない。
 音の表情は、伸びやかさがあり、定格出力以上のエネルギー感があって、かなりシャープで活き活きとした、鮮度の高い音を聴かせる。米国系としてはユニークな音である。

スチューダー A68

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 業務用のパワーアンプであるだけに、コンシュマー用のルボックスA740とはやや異なった音である。聴感上での周波数レンジは、ローエンドとハイエンドをカットしたフラットレスポンス型で、中域は緻密さがあり、かなりクッキリと粒立つ。
 音の表情は、ややスタティックな面があり、一種独得のリファインされたような端正さがあり、冷たさが感じられるが、表現力はかなりナチュラルで、プログラムソースに対して正確さがある。音色は、フワッと明るく軽いタイプでキメ細かい。
 ステレオフォニックな音場感は、空間がやや狭く感じられるが、クッキリと箱庭的に広がり、一種の精緻さがある。