Category Archives: 国内ブランド - Page 88

オーレックス SB-730

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 各ユニットアンプをはじめ、電源部、各種の構成部品を徹底的に低歪化してつくられたオーレックスの新プリメインアンプである。
 このモデルは、音色が軽く明るいタイプで、粒立ちが細かい音をもつが、中高域に適度の輝きがあり効果的にシャープさを感じさせる魅力となっている。低域の反応はおだやかで中高域は早いタイプといえるだろ。

ヤマハ A-1

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ヤマハのプリメインアンプは、すでに定評が高いCA2000をトップモデルとして、充実したラインナップを持っている。
 今回発表されたプリメインアンプは、型番が従来モデルと区別されていることからもわかるように、やや現在では特殊なタイプとも考えられるディスク優先型のユニークな構想に基づく新製品である。
 ディスク優先の考え方は、デザインに強く表現され、フロントパネルにはボリュウムと使用時のみ照明される3個の角型のプッシュスイッチがあるのみだ。他のトーンコントロール、テープ関係のスイッチなどの機能は、ヒンジにより下方向に開くサブパネル内部に収納されている。プッシュスイッチは、左から電源、スピーカー、ディスクの順で、ディスクスイッチは、内部のセレクタースイッチがどの位置にあっても、フォノ優先の切替が可能である。この場合には、回路的にはトーンコントロールアンプぺはジャンプされ、イコライザーアンプは直接パワーアンプに接続される。
 構成は、ヤマハの超低雑音ICによるMCヘッドアンプ、初段に同様に自社製の超低雑音デュアルFETを使い終段がSEPPのイコライザー、利得が0dBのヤマハ独自のCR−NF型トーンコントロール、入力感度が200mVに設計され一般よりも約20dB高利得型のDCパワーアンプからなる。ディスクスイッチON時には、MM型カートリッジを使用するとすれば、信号系にはイコライザー出力部にフィルムコンデンサー1個のみということになる。
 機能は、バランス調整がないだけで他はトーンコントロールを含むベーシックな装備を備えるが、カートリッジ負荷抵抗切替は、リアパネルの専用ジャックに附属の47kΩ、68kΩの表示があるプラグを差込んでおこなう方式が採用され、プラグなしでは100kΩとなっている。
 A1は、他のヤマハのプリメインアンプとは異なるフレッシュで伸びやかな明るい音が印象的である。音のクォリティが高く、十分な表現力があり、セパレート型アンプの魅力をインテグレート化したといえるユニークな製品である。

テクニクス SE-A1 (Technics A1), SU-A2 (Technics A2)

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 すでにオーディオアンプのジャンルでは、量的に世界最大の生産量を誇るにいたっているわが国において、超高級機を象徴するセパレートアンプの分野では、いまだに海外製品、ことに米国の製品には一歩を譲る感が深いのが現状である。
 テクニクスでは、数年前にパワーアンプの出力段をも含めた完全定電圧化電源を採用したSE10000パワーアンプと、これとペアになるSU10000コントロールアンプを発表し、質的には世界のトップランクの製品として認められ、その高価格な面をも含めて脚光を浴びたが、今回久し振りに沈黙を破ったかのように、、まさにスーパーアンプの名称に応わしいような、質的にも量的にも、名実ともに現時点での究極のセパレートアンプともいえる超弩級製品が発売されることになった。
 パワーアンプのテクニクスA1は、小出力のAクラスアンプの電源の中央をフローティングし、別個の電源アンプで出力振幅にフォローするようにAクラスアンプの電源中点を駆動するというユニークな発想を実用化したA+クラス動作による、350W+350Wのパワーを誇る製品である。
 この方式の採用により、質的には優れるも、量的にはハイパワー化が至難であったAクラスアンプの問題点を一挙に解決し、従来の100W足す100W級のAクラスアンプの外形寸法のなかで、空冷用のファンを使用せずに高出力化に成功している点は特筆すべきものがある。
 構成は、2モノーラル型で1チャンネル当り4電源、系8電源をもった完全なDCアンプであり、アクティブ・サーマル・サーボ方式によりDCドリフト対策は万全である。機能面は、高分解能ピークメーター、ベル可変の4系統スピーカー端子、フェードイン・アウト回路を持つクリックのないファンクションスイッチなどを備える。また、高出力アンプとしては例外的に高域のレスポンスが伸び、歪率が低く抑えられている点が見逃せない。
 コントロールアンプのテクニクスA2は、驚くべき多機能を装備した超大型コントロールアンプである。イコライザーを含み完全なDCアンプ構成をとり、段間のコンデンサーは皆無であり、動作は全段Aクラスである。この完全DCアンプ化は、世界最初のものであり、パワーアンプにも採用されたアクティブ・サーマル・サーボ方式により実現されたものだ。機能面では、リレー制御のフェード回路付タッチスイッチによるファンクション切替、4バンドの周波数、Q可変イコライザー兼一般型の高音、低音調整、可変型ラウドネス調整、多用途切替型高分解能メーター、4種の波形が選択可能な発振器内蔵、ミキシング可能なマイク入力など現時点で考えられる限りの機能はほぼ完全に装備している。発表された規格は測定器の限界に迫る驚異的な値である。

トリオ KT-8000

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最高級機種KT9700の内容を中級機で実現した注目すべき新製品である。7連バリコン使用のフロントエンド、IF帯域の2段切替とダブルコンバージョン方式によるパルスカウント方式の超低歪FM検波回路の採用が最大のポイントである。MPX部は、クリーンサブキャリアー方式によるパイロットキャンセラー付。

テクニクス ST-9038T (Technics 38T), SH-9038P (Technics 38P), SH-9038R (Technics 38R)

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 クォーツシンセサイザーFMチューナーST9038T、マイコン・プログラマブルユニットSH9038P、クォーツシンセサイザーFM受信コントローラーSH9038Rの3モデルで構成するセパレート型の驚くべき機能と性能を備えたシステムチューナーである。
 基本となるST9038Tは、プッシュボタンで自動、手動で選局できるチューナーで、ミューティングスイッチは、ステレオ歪率0・2%以下、0・2〜1%、OFFの3段切替で設定した歪率未満の弱い局はミューティングされる。選局ボタンを自動とし、0・2%以下のミューティングとすれば、東京では、選局ボタンのワンタッチでNHK東京とFM東京を交互に受信可能というすばらしい使用法が、この機能により得られる。
 マイコン・プログラマブルユニットSH9038Pは、単独使用も可能であるが、ST9038Tと専用16
ピンコードで結合して使用する。本機は、マイクロコンピューターを内蔵し、1週間の単位で曜日、時間、放送局(8局まで)、ACラインのON−OFF指定(4系統のACアウトレット)を33回自由に設定できる他に、電源同期型の時計、加算可能なストップウォッチとしても使用できる。
 クォーツシンセサイザーFM受信コントローラーSH9038Rは、前者の組合せにさらに加えることにより、電界強度表示、マルチパスレベル表示、付属のアンテナ回転機構と組み合わせたアンテナ角度の表示とメモリー付アンテナ自動回転機能などができる。本機自身にもクォーツシンセサイザーを内蔵し、ST9038Tと組んで、ブースター、アッテネーター、さらに同調ツマミにより、従来感覚のフライホイールによるマニュアル同調さえも可能としている。

トリオ L-05M

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 前回発表されたパワーアンプL07Mは、スピーカーとパワーアンプ間のコードを短縮し、業務用に見られるスピーカーとパワーアンプの一体化がテーマであったが、今回のL05Mでは、過渡応答の徹底的改善をテーマとし、いわゆるハイスピード化を狙った製品である。出力段に高域特性が優れたEBTを採用し、モノ構成のDCアンプとしているため、DC領域までの動特性を含めた低域特性に見合う高域特性を得ている。単なる広帯域化でなくアンプの音質改善を主眼としたトランジェント特性を重視した結果とのことだ。

トリオ LS-707

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 弟分のLS505も、正攻法でまでめに作られた佳作だったが、さすがにフロアータイプになると音のスケール感がずっと豊かになり、質感も上等になってくる。すべてのプログラムソースを通じて、505よりも帯域内での出しゃばりがよくおさえられ、完成度が上っていることを納得させられる。興味深かったのは、いろいろと設置条件を変えてテストしているあいだに、約20分ほど鳴らし込んでから本調子が出てくることに気がついた。鳴らしはじめはどうにも表情が硬くバランスも悪い。どのスピーカーにもそうした傾向はあるのだが、LS707はことにそれが顕著だった。単純な切り換え比較では見落とすところだろう。もうひとつ補足の必要のあるのは部屋の音響条件のととのえかただ。本誌の試聴室は、前回のテストから改装されて以前より残響時間が短めになったものの、いわゆるデッドではないが、LS707は、この部屋にウレタンフォームの大きなロールを数巻入れてデッドに仕上げた上で、ブロックの台の上に乗せ、背面は壁に近づけるが左右になるべく開いて設置するという方法で、前記の試聴結果を得た。ライブな部屋では音がこもる傾向があった。アンプはあまり選り好みしないが、カートリッジは455Eの傾向よりも4000DIIIの系統で、プログラムソースはポップス系の方が納得できた。

オーレックス SY-88

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 SY77につづく、オーレックス第2弾のステレオプリアンプである。
 機能面は、単純でクォリティ優先型のプリアンプで、MCヘッドアンプを内蔵している。構成部品は、最近の製品では徹底して性能面、音質面から追求される重要なポイントであるが、ここではV型無誘導メタライズド・ポリエステルフィルムコンデンサー、高音質電源用電界コンデンサー、対数パターンPBボリュウムの採用など十分に検討されている。コンストラクションは、電源トランスからアンプ系を前後に分離独立したタイプである。

ヤマハ T-2

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 待望久しいC2とペアになる超薄型のFM専用チューナーである。
 構成は、マニュアル選局をする従来型で、シンセサイザー方式を避け、高SN比を得ようとする設計方針である。フロントエンドは7連バリコン使用で、動作状態を高感度と高選択度に切替可能だ。IF段は、妨害を受けると選択度を狭く切替えるオートDX回路付、MPX部にはDC・NFBスイッチング回路、トラッキング型パイロットピュアキャンセル回路、アンチ・インターフェアレンスPLLシステムなど最新の技術を活かした低歪率、高セパレーションを誇る。なお、メーターは信号強度を3mV〜1mVの範囲で指示し、マルチパスなどの妨害は指針の変化で示す妨害検出型で、選局中に局と同調すると、その局の周波数はデジタル表示され、ツマミから指を離すと自動的に、その局にロックされる。また、弱電界受信では、ノイズによりオートブレンド回路が動作をし、ステレオ表示ランプはブレンド量に応じて暗くなり、モノでは消灯する。
 T2は、地元局の強力な電波に隣接した遠距離の弱い局を受信するフィールドテストにおいても妨害波排除能力が優れた結果を示し、数少ない民放FMの実質的なサービスエリアを広げるメリットが大きいように思う。

ビクター S-3000

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶くっきりと示されるピッチカート。木管のひびきにもう少し繊細さがほしい。
❷あいまいにならず、輪郭がしっかり示されるところがいい。音に力がある。
❸特にデリケートとはいえないが、ひびきの特徴によく対応できている。
❹第1ヴァイオリンのたっぷりしたひびきがいい。低音弦もふくらまず。
❺もりあがりに力があり、迫力をよく示す。アタックも充分だ。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶音像的なまとまりがよく、ひびきに力のあるのがいい。
❷これみよがしにならずに、くっきりと示すこのましさがある。
❸「室内オーケストラ」としてのまとまりのよさがある。
❹対応が自然で、誇張のないのがこのましい。
❺とりわけ繊細というわけではないが、さわやかさがある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶定位がいい。人間関係の鮮明な提示はなかなかだ。
❷接近感には多少誇張が感じられるが、不自然ではない。
❸声は硬めながら、オーケストラとバランスは悪くない。
❹セリフでの声も、うたってはった声も、硬くなりがちだ。
❺きわだって鮮明とはいいがたいが、必要充分に各ひびきを示す。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶余分なひびきをひきずっていないために、すっきりしている。
❷奥の方でのひびきが、くっきりと、たちあがる。
❸ひびきの細部にあいまいさがない。
❹ソット・ヴォーチェでは、声のキメ細かさの不足が感じられる。
❺のびにしなやかさが不足するものの、誇張がない。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンというひびきの硬質な性格がよく示されている。
❷声のまろやかさがもう少し示されることが望まれる。
❸浮遊感ということではもう一歩だ。ひびきがくっきりしすぎる。
❹ひびきの輪郭がつきすぎている。狭くるしさは感じないが。
❺力のある音がもりあがり、迫力のあるクライマックスとなる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひっそりとした気配にいくぶん不足している。
❷この音はもう少しなにげなくひびいてもいいだろう。
❸下の方でひろがっているひびきで、実在感に多少欠ける。
❹かなりきわだつ。ひびきの光り方としては、もう一歩だ。
❺うめこまれているとはいえないが、ききとりにくい。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶あいまいにならない。くっきりした提示はこのましい。
❷ひびきの上でのアクセントを充分に示して効果的だ。
❸ひびきはじゅうぶんに乾いている。すっきりしたところがいい。
❹ドラムスのひびきも、言葉のたち方もこのましい。
❺バック・コーラスの効果は充分に発揮されている。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像は、ふくらみすぎず、ひびきに力があっていい。
❷オンでとったなまなましさを示し、しかし過剰にはなっていない。
❸消える音の尻尾もよく示し、スケール感をもたらすのに有効だ。
❹細かい音の動きに対しての対応はシャープで、迫力がある。
❺音像的な対比に不自然さがなくていい。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびきが横にひろがりすぎないので、アタックの強さを感じやすい。
❷つっこみは力があるが、ひびきが刺激的にはなっていない。
❸ひびきが積極的に前にはりだして、効果的である。
❹後方へのひきは充分だ。広々とはしないが、音の見通しはいい。
❺音のエネルギー感をよく示すので、めりはりがつく。

座鬼太鼓座
❶くっきりと左奥から、なまなましさをもってきこえてくる。
❷尺八のひびきに脂っぽさがなくて、すっきり示される。
❸きこえ方はかすかだが、ひびきに輪郭がある。
❹スケール感ということでは、いま一歩だが、力感は充分だ。
❺このひびきの硬質なところがよく示されて、有効だ。

オーレックス SS-930S

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶まろやかな、力の感じられるピッチカートは、悪くない。
❷くっきりした輪郭をもった低音弦のスタッカートはいい。
❸音色対比に、誇張感がなくていい。低音弦のまとまりがいい。
❹たっぷりひびく第1ヴァイオリンのフレーズに魅力がある。
❺力をもったクレッシェンドは迫力にとむ。クライマックスも効果的だ。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶音像的にはほどよくまとまり、ピアノのひびきのゆたかさがいい。
❷音色対比は、自然で、きまじめなところがある。
❸「室内オーケストラ」のひびきとしてはいくぶんふくらみすぎか。
❹もう少ししなやかでもいいかもしれない。
❺木管楽器のひびきに対しての反応はいい。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶このまろやかさをあきらかにし、言葉をきわめて鮮明に示す。
❷アイゼンシュタインの声の質は、なかなかいい。
❸たっぷりしたオーケストラのひびきと声との対比は自然だ。
❹歌のこまかい表情をわざとしらくしないのがいいが、はった声は幾分硬い。
❺オーケストラと声とのバランスに無理がない。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶ひびきに肉がつきすぎて、低い方の声がせりだしがちだ。
❷声量をおとしたところでの、鮮明さがほしい。
❸言葉の細部の提示ということでは、いま一歩だ。
❹各声部のからみはさらに明瞭であってほしい。
❺「ラー」はのびるが、いくぶん誇張気味だ。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンというひびきの硬質な性格をよく示す。
❷奥出のひびきは、弱音ながら、積極性がある。
❸広さを感じさせはするが、音の飛び方はたりない。
❹前後のへだたりはとれるが、さらにひびきの敏捷さがほしい。
❺ピークは力をもったひびきで大きくもりあがり、迫力にとむ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶暖色系だが、粒のこまかいひびきが、すっきりひろがる。
❷中央から、くっきりたちあがってくるギターの音はいい。
❸このひびきはもっとくっきり提示されるべきだろう。
❹このひびきの輝き方は、不足ぎみである。
❺うめこまれはしないが、効果的とはいいがたい。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ベースの音がはりだしすぎのように感じられる。
❷ひびきの厚みを示すが、さらに切れが鋭くてもいいだろう。
❸さらにからっとしたひびきで示されることが望ましい。
❹ドラムスの音にエネルギーは感じられるが、重い。
❺バック・コーラスの言葉のたか方は、ものたりない。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶力は示すが、音像的に大きすぎるようだ。
❷オンのなまなましさはあるが、誇張感がなくもない。
❸消える音の尻尾を拡大して示す傾向がある。
❹必ずしもシャープに対応しきれているとはいえない。
❺音像対比は十全とはいいがたく、不自然さがある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびきが総じて重く、力はあるが、鈍さがついてまわる。
❷ブラスのひびきは、力をもってせりだす。
❸フルートによるひびきは、力にみちているが、横にはひろがらない。
❹後へのひきはかなりとれている。しかし、見通しは充分とはいいがたい。
❺リズムの刻みがさらに積極的に前にでてほしい。

座鬼太鼓座
❶尺八の位置は、比較的近くに感じられる。
❷尺八固有のひびきに対応するためには、より一層肉がおちてもいいだろう。
❸ひびきの輪郭はあいまいになるが、きこえる。
❹消える音の尻尾を示し、一応のスケールゆたかな感じもわかる。
❺ききとれなくはないが、アクセントとして充分な働きをしていない。

サンスイ SP-G200

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶幾分乾いた音だが、すっきりと示すところはいい。
❷へだたったところでひびいているようにきこえるが、くまどりはつく。
❸木管群とヴァイオリンのフラジオレットの対比にもう少し鮮明さがほしい。
❹第1ヴァイオリンのひびきに艶が不足し、低音弦がふくらみすぎる。
❺クライマックスでの高音弦は硬質になる。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像がいくぶん大きくふくれるのが気になる。
❷音色的な対比はつくものの、ひびきにキメ細かさがほしい。
❸「室内オーケストラ」らしい繊細さと軽やかさが不足ぎみだ。
❹ここでのひびきの特徴は示すが、粗い。
❺木管楽器特有のしなやかなひびきがききとりにくい。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶特にアデーレの方の声が硬くはって、耳ざわりだ。
❷接近感を誇張ぎみに示す。声に反響がついている。
❸声が硬くなってはりだす。木管にひびきの丸やかさがたりない。
❹かなり硬い。声のしなやかさがききとりにくい。
❺さまざまなひびきがもう少しとけあってきこえてもいいだろう。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶凹凸がなく横一列に並んでいるのがわかるのはこのましい。
❷声量をおとした分だけ言葉が不明瞭になる。
❸残響をひきずりがちなため、もうひとつくっきりしない。
❹重くひきずりはしないが、声本来のしなやかさがたりない。
❺もう少し自然に、やわらかいひびきでのびてもいい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的な対比は一応つくが、硬軟の差が示されにくい。
❷後方からしのびこむひびきのキメが粗い。
❸横にはひろがるが、奥へのひきはたりない。
❹横長の音場だ。そのために音の飛びかい方が充分でない。
❺積極的に前にはりだしてくるものの、ピークのひびきは硬い。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひびきがもう少しキメこまかいと、さらにはえるだろうが。
❷ギターの音像がもともと横に大きくひろがっている。
❸積極的にひびくが、そのひびきの実在感が不足する。
❹ひびきの光り方がさらに積極的でもいいだろう。
❺他のひびきにうめこまれがちで、はえない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターのひびきだったら、もう少し輝いてもいい。
❷ひびきがとけあって厚みを感じさせるようになっていない。
❸ハットシンバルのひびきはもう少し乾いていてもいいだろう。
❹ひきずらないのはいいが、きりっとした力がほしい。
❺バック・コーラスの効果はさほどでもない。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像はかなり大きい。入れものの中でひびいているかのようだ。
❷クローズアップ感を強調する傾向がある。
❸消える音の尻尾をゆたかにひびかせる。
❹細かい音に対しての反応は、もう少し敏捷であってほしい。
❺音像的な対比の面で少なからず不自然なところがある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ある種のはなやかさはあるが、アタックは甘い。
❷積極性はあるが、ひびきが刺激的になりがちだ。
❸横へのひろがりは充分だが、前へのせりだし方がたりない。
❹前後のへだたりが不足しているので、ここでの効果は不充分だ。
❺一応のめりはりはつけるものの、ひびきははずみがほしい。

座鬼太鼓座
❶尺八の位置はかなり近い。へだたりがない。
❷尺八の音色的な特徴の提示ということではもう一歩だ。
❸かすかな音できこえるものの、輪郭はさだかでない。
❹スケール感は示すが、ひびきに力がほしい。
❺かなり効果的にきこえる。ひびきのアクセントたりえている。

パイオニア Exclusive Model 3301

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートのひびきに、さわやかな力がある。
❷くっきりと、くまどりたしかな低音弦のひびきはなかなかいい。
❸誇張感なく、それぞれのひびきの特徴を示す。
❹第1ヴァイオリンは、たっぷりと、ゆたかにひびく。
❺力をもってのもりあがりはいいが、高音弦が少し硬い。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音は、ゆたかでまろやかだが、音楽的にはふくらみすぎない。
❷積極的に、あかるく、音色の対比をあきらかにする。
❸腰が重い音ながら、「室内オーケストラ」らしいひびきを示す。
❹わざとらしくなることなく、このひびきの特徴を伝える。
❺ひびきのキメ細かさがいい。わざとらしくなっていない。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声のなまなましさを粒の細かいひびきであきらかにする。
❷誇張感のない接近感はいい。定位もわるくない。
❸クラリネットと声との対比に不自然さがない。
❹声のまろやかさと艶やかさがもう少し感じられてもいいだろう。
❺バランスよく、わざとらしくないのがいい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶凹凸のないのはいいが、定位の点でもうひとつくっきりしてほしい。
❷腰のすわったひびきがここではマイナスに作用している。
❸残響の強調はないが、鮮明さの点でもう一歩だ。
❹吸う息がかなりなまなましくきこえる。
❺のびは自然でわざとらしさがなく、ひろがりを感じさせる。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的対比も、音場的対比も、充分についている。
❷後方からのしのびこみは自然で、クレッシェンドも確実だ。
❸ひびきそのものがもう少し軽くてもいいだろう。
❹前後のへだたりが充分なので、広々と感じられる。
❺ひっそりとしのびこんで、たくましくクレッシェンドする。音が前に出る。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶横へのひろがりは、確実だ。あやふやさがない。音質的にはこのましい。
❷❶との音色的対比は充分について、積極的に前にせりだしている。
❸わざとらしくならず、確実にその存在を主張する。
❹他のひびきとのバランスがいいので、効果的だ。
❺不自然にきわだつことなく、充分に効果をあげる。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶高い音と低い音とのバランスがとてもいい。
❷ひびきに力が感じられるので、厚みをよく示す。
❸ひびきに確実さがあり、あやふやにならないのがいい。
❹ベース・ドラムが示す力感は、大変にいい。言葉のたち方も充分だ。
❺バック・コーラスの効果がよく示されている。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶力強くひかれたダブルベースならではの迫力を感じさせる。
❷オンでとったなまなましさがあるが、誇張感はない。
❸音の尻尾をきわだたせはしないが、充分だ。
❹シャープに、力強く反応していて、このましい。
❺音色的、音像的、音場的対比の点で充分だ。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶歯切れのいい、はずみをもった、明るいひびきだ。
❷充分な力感をもって、中央をきりひらいてくる。
❸積極的で、力をもって、前にはりだしてくる。
❹前後のへだたりは充分にとれていて、見通しもいい。
❺ひびきに確実さがあり、めりはりがついている。

座鬼太鼓座
❶距離感も充分で、しかもすっきりきこえる。
❷音色的な点での問題点はほとんどない。
❸不自然にならずきこえて、ひびきの輪郭もわかる。
❹大太鼓ならではのスケール感をつつがなく示す。
❺ほどよくきこえて,わざとらしさがない。

パイオニア Exclusive Model 2301

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶あかるく、くっきりピッチカートが示される。あいまいでないよさがある。
❷力をもった、低音弦のスタッカートならではのひびきがきかれる。
❸自然な、無理のないバランスで、それぞれのひびき特徴を示す。
❹たっぷりひびく第1ヴァイオリンはなかなかいい。
❺次第に迫力をましていく音楽の流れにうまく対応できている。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノのたっぷりしたひびきがこのましい。音像もほどほどだ。
❷音色的な対比は自然で、誇張感がまったくない。
❸ひびきに力があり、しかもまとまりもいい。
❹しなやかに対応できていて、充分に効果的だ。
❺木管楽器のキャラクターをよく示している。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶アデーレを呼ぶ声の強さを、硬くならずによく示している。
❷表情のくまどりをたしかに、しかし誇張感なく、よく示す。
❸手前のクラリネットと声の対比があざやかだ。
❹はった声が、もう少しまろやかでもいいように思う。
❺オーケストラと声とのバランスははなはだいい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の声がふくれがちだ。もっとこりっとしてもいいだろう。
❷声に肉がつきすぎて、言葉のたち方が弱くなる。
❸残響をひきずっているというわけではないが、言葉はたちにくい。
❹特にソット・ヴォーチェでは、ひびきの軽さの不足が気になる。
❺のびていて、ポツンと切れるようなことはない。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶特にピンという音の硬質な性格をよく示している。
❷後方からのひびきは、しゃっきりたって、その後クレッシェンドする。
❸浮き方に力がある。もうひとつ軽くてもいいだろう。
❹前後のへだたりは充分で、ひびきの飛びかい方もいい。
❺ピークで示される力にみちたひびきは圧倒的といっていい。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひびきそのものの性格は暖色系だが、粒はこまかく、さわやかだ。
❷くっきり、力をもったひびきで、中央から前に進んでくる。
❸このましいバランスで、実在感たしかに示される。
❹ことさらきわだつわけではないが、充分に光って有効だ。
❺うめこまれることなく、キラリと光って、ひびきのアクセントたりうる。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶低い音がせりだしすぎないよさがある。
❷ひびきの厚みを腰のすわった音でよく示す。
❸ハットシンバルの金属的なひびきの提示はみごとだ。
❹ドラムスのアタックは、シャープで、力があってこのましい。
❺バック・コーラスによる言葉のたち方も申し分ない。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像的にまとまりがよく、力にみちたひびきがいい。
❷オンのなまなましさが顕著で、誇張した嫌味はない。
❸消え方の提示もあぶなげがなく、効果的だ。
❹シャープな反応はこのましく、迫力にとんでいる。
❺音色的、音像的、音量的対比に不自然さはない。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶横へのひろがりもあり、アタックは強い。
❷金管ならではの輝きのあるひびきをよく示す。
❸力にみたちひびきで、積極的に前にはりだす。
❹後方からきこえるトランペットがひろがりを暗示する。
❺鋭く刻まれるリズムは、めりはりをつけて、有効だ。

座鬼太鼓座
❶充分な距離感を示す。しかもなまなましさを失わない。
❷くっきり示されるが、尺八の音色的特徴をあいまいにしない。
❸きこえて、しかもひびきの輪郭をぼかさない。
❹大太鼓のスケール豊かなひびきによく対応できている。
❺有効な働きをしている。しかしわざとらしくなっていない。

サンスイ SP-L150

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 DS30Bと同じ価格なので、どうしても比較の対象になる。全体の鳴り方は、ダイヤトーンよりも軽快で、入力に対する反応が敏捷だ。中〜高域が張り出し気味のところはDS30Bとかなり似ている。というよりもこの作り方が、国産のスピーカーには一般的だ。ダイヤトーンの場合には本誌標準の、約50センチの高めの台で、背面を壁からかなり離す方がよかったが、サンスイの場合には、まず標準台では低域が不足して、そのまま背面を壁につけてもまだ少々物足りなかったので、20センチほどの低い台で背面を壁につけるようにしてちょうどよかった。このことからも低域の特性はDS30Bとかなり違うことがわかるが、たとえばキングズ・シンガーズのコーラスのバランスの音域で、DS30Bがブレストの音がやや人工的に重く聴こえたのに対して、L150の音は自然で軽やかによく動く。高域は、30Bのところでももうひと息ハイエンドの延びが欲しいと書いたが、L150のハイエンドはよく延びて爽やかで自然によくひろがり、したがって楽器のデリケートなニュアンスをよく再現する。アンプの組合せでは、トリオ7300Dのような味の濃い音よりも、ヤマハCA2000のようなさらりとした音の方がよく生かすと感じた。カートリッジはしたがって455EやVMS20E/IIよりはエンパイア系統の方がよく合った。

ダイヤトーン DS-30B

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 たとえばシェフィールドのダイレクトカッティングのシリーズを、思い切ってハイパワーでドライブしたときにも、音がくずれたり腰くだけになったりせずに、男性的とでもいいたいような、いくらかハードながら力強い緻密さで鳴る。表面的な小細工を感じさせずに、全音域に亘って正攻法で押してくるような音はまさにダイヤトーンの面目躍如たるものがある。ただそれでいて、クラシックのオーケストラを聴いても、従来の製品のどこか強情な感じか抑えられて、硬質の傾向ながらバランス的には一応納得のゆく音で聴かせるところが、いくらか変ったように思える。とくに本誌標準台のような(約50センチの)高めの台に乗せて左右にかなり開いて置くと、空間への広がりの感じもよく出るようになるが、弦合奏のデリケートなニュアンスを聴きとるには、ハイエンドの延びが(以前の製品よりもかなり延びてはきたもののまだ)もうひと息という感じだ。また、高い台ではクラシックの場合に低音の量感がやや物足りないが、といって台を低くするとごく低い周波数でどこか一ヵ所、重く鈍くひきずるような共鳴音が出てくるので、やはり台は高くしたままターンオーバーを低くとったトーンコントロール等で重低音を補いたい。総体にいくらか人工的な味わいのある音色なで、本質的にはポップス系が得意なスピーカーだと思う。

ダイヤトーン DS-90C

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶幾分しめりけのある音ながら、ピッチカートはすっきりとこえる。
❷もうすこしくまどりがついてもいいだろうが、力のあるひびきでいい。
❸誇張感のないひびきで、しなやかにそれぞれの音色の特徴を示す。
❹第1ヴァイオリンのフレーズは艶があってこのましい。
❺もりあがりには、余裕がある。たっぷりひびくクライマックスはいい。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノはたっぷりひびくが、音像的には多少大きい。
❷暖色系のひびき故に、木管楽器のひびきの特徴をよく示す。
❸キメ駒かなひびきはこのましいが、いくぶんふくれすぎている。
❹しなやかだが、もう少しすっきりしてもいいだろう。
❺木管のひびきへの対応がよく、ここでも効果的だ。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声のしなやかさ、まろやかさをよく示す。
❷アイゼンシュタインの近づく感じを誇張感なく示す。
❸オーケストラと声との、ひびき方の点でのバランスは大変いい。
❹はった声が幾分硬くなって、ニュアンスに欠ける。
❺オーケストラのひびきの特徴を鮮明に示している。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の声がふくらみがちで、定位の点が問題がある。
❷声量をおとした分だけ、言葉のたち方が鈍くなる。
❸残響をひきずりがちで、言葉の角がみえにくい。
❹ソット・ヴォーチェの声は、さらに軽やかでもいいだろう。
❺声のまろやかさは示すが、さらに敏捷であってほしい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的、音場的対比は充分についている。
❷シンセサイザーのひびきが独特の湿りけをおびている。
❸ひびきの湿りが歩く働いてはいないが、もう少し浮遊感がほしい。
❹前後のへだたりは充分で、提示される音場はかなり広い。
❺音に力があるので、ピークでのもりあげは圧倒的だ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶クォリティの高い音の後方でのひろがりは魅力的だ。
❷❶との対比の上でのここでのひびきの質がよく示されている。
❸実在感たしかに、くっきりとした音で提示される。
❹キメ細かいひびきで、効果的に輝いている。
❺うめこまれることなく、充分に自己主張しえている。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ベースの音のはりだし方が特徴的だが、12弦ギターのひびきをよく示す。
❷ツイン・ギターによるひびきの厚みは、このましく示される。
❸すっきりしたひびきで、しかも薄味にならず示される。
❹ドラムスによる力感あるひびきはいい。
❺バック・コーラスでの声の重なりをよく示す。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像はかなり大きい。低い方の音にエネルギーがかたよりすぎていないか。
❷オンでとられた音のなまなましさを伝えきれていない。
❹細かい音に対しての反応は、さらにシャープであってほしい。
❺両ベーシストの音像的な差のないのが、このスピーカーのよさだろう。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびき全体に切れ味が不足し、重くなっている。
❷ブラスの中央からのつっこみは、力があっていい。
❸申し分なくひろがるが、さらに前にはりだすべきだろう。
❹前後のへだたりはとれているが、音の見通しということでいま一歩だ。
❺めりはりは一応つけているが、音のつきはなしが弱い。

座鬼太鼓座
❶尺八の位置までのへだたりが聴感上感じとれるのがいい。
❷キメ細かいひびきで、尺八の音色をよく示す。
❸きこえるが、ひびきの輪郭を充分に示すとはいいがたい。
❹大太鼓のスケールゆたかなひびきはすばらしい。
❺ここで求められるひびきの特徴を十全に示しえている。

ビクター SX-11

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 NS10Mを聴いたあとでこれが鳴りはじめると、やはり音のスケールがぐんと違ってきて、そのことから逆にNS10Mが、ああやっぱり小さなスピーカーだったのだと思えてくる。ただ、ヤマハの全域に抑制の利いた音の音のあとでこれを聴くせいばかりでなく、ビクターのスピーカーが概して持っている(ことに、これと兄弟のSX55N=前号283ページ参照)音をことさらよく響かせるという傾向を、このSX11も持っていて、まず、とても良くなるスピーカー、という感じを抱かせるが、反面、箱の共鳴音のような響きが、長く聴くにつれて少々耳につく傾向がある。中〜高域でややハスキーな音になるが、しかしテストソースのすべてを通じて、レベルコントロールを修整する必要はそれほど感じられない。というよりも、トゥイーターのレベルを絞ると、高域が曇ってしまうので、このままのバランスで聴くべきスピーカーだと思う。ただ、SX55Nのところでもふれたと同じようにこのスピーカーも、低域でどこか粘るような音と、その反面中〜高域ではときとしてはしゃぐ傾向の声質をあわせ持っている。アンプやカートリッジを替えてみると、ラックスやトリオの系統より、ヤマハの淡泊な傾向が合うようで、とうぜんカートリッジもシュアーやアンパイアの系統がよかった。置き方は本誌標準台のままでよかった。

「上杉プリアンプ試聴記」

黒田恭一
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「マイ・ハンディクラフト 最新テクノロジーによる真空管式ディスク中心型プリアンプをつくる」より

 幾分ひかえめなところがあるとしても、いうべきことを正確に、しかもいささかもいいよどむことなくいう人をまのあたりにするというのは、きわめて心地よいことだ。このプリアンプをきいての印象を、もし言葉にするとすれば、そういう人に会った時の感じとでもいうべきかもしれない。
 決してでしゃばらない。決してあざとくおのれの存在を主張しない。どうです、このヴァイオリンの音、きれいでしょう(試聴したレコードのひとつに、ジュリーニがシカゴ交響楽団を指揮してのマーラーの第九交響曲の終楽章があったのだが)、きいてごらんなさいよ、こんなにつややかで──などと、おしつけがましくなったりしない。
 しかし、ここからが肝腎なところだが、このプリアンプの音は、決して消極的ではない。すべての音は、ついにねころんだり、すわりこんだりすることなく、すっきりと立って、ききての方向に、確実な歩みで、近づいてくる。そういう折目正しさは、このプリアンプの魅力といえよう。
 ただ、このプリアンプの、そういうこのましさを十全にいかそうとしたら、積極性を身上とする、つまり音のくまどりを充分につけてくれるパワーアンプを、相手にえらんだ方がいいということは、いえるにちがいない。しかし、この場合にも、スギタルハオヨバザルガゴトシという、正論があてはまる。
 さまざまなひびきに、実に素直に、無理をせず、しなやかに、対応する。それはもちろん、大変な魅力だ。無駄口をたたく軽薄さからは、遠くへだたったところにある。ただ、相手の選択をひとつまちがうと、そういう魅力は、優柔不断という欠点になってしまう危険もなくはない。すっきりと立ちあがった音を、手前に歩かせるのは、むしろ、パワーアンプの役割というべきだろう。だとすれば、音をすっきりと立ちあがらせるこのプリアンの特徴は、そのままにこのプリアンプの美点となる。

ヤマハ FX-1

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 プレス発表用の資料の中に「絢爛たるラグジュリアスなキャラクタ(原文のまま)」とあったが、なるほどまさにそういう感じの音。あるいは、かつてNS1000Mが登場したころの一種ショッキングな音をフロアータイプで表現した、とでもいう感じの、全く独特の音だ。鳴ってくる音のすべてに、人工的なまばゆいばかりの光線、それもストロボフラッシュでくまなく照らし出した印象の輝かしい光沢がついてくる。はじめフロアーにじかに、背面を壁に近づけて置いてみると、ベースは箱の中でぶんぶん唸るし、それをブロックに乗せたぐらいではまだ生彩を欠いて音離れがよくないので、壁からどんどん離して、左右に思い切り開き、ブロック二段ほど高く上げて右のような音になった。音像はこれですばらしくくっきりとよく浮かぶ。ただ少々くっきりしすぎのようなところもある。バルバラの声など、おそらくウーファー領域だろうが肉がこそげ落ちすぎて暖かさがない。オーケストラの弦の音もかなり金属的だ。トゥイーターのレベルをしぼるとバランスをくずすが、おそらくエイジング不足なのだろう。かなりチリチリした音が耳についた。どうも作りたてのホヤホヤといった感じだった。もう少しエイジングの進んだ製品を聴けば、あるいは印象が変るのかもしれないが、ともかくユニークなスピーカーだ。

オンキョー Scepter 500

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 すべてのスピーカーに共通の、全体のバランスをみるために必ずかけるカラヤンのベートーヴェンの「コリオラン」をまず鳴らす。やや重いが荘重で、トゥッティでもやかましさのない、適度にしなやかな音が鳴ってくる。ブラームスのピアノ協奏曲(一番、ギレリス/ヨッフム)では、オーケストラのバランスにはほとんど破綻がなく、ピアノの音像はやや大きくなるが十分にたのしめる。ベートーヴェンの「七重奏曲」でも、4個の各ユニットが有機的に帯域を補いあってバランスよく、しかも広いレインジで各楽器の音色の特徴をよく鳴らし分ける。独奏楽器の十分にしなやかな表情を聴かせる。音の色あいにもうひと息、生き生きした弾みが出れば満点に近い。菅野録音の「SIDE BY SIDE 3」では、ベーゼンドルファーの特色ある音色の再現がもうひと息。ベースもいくらか粘って重い。ただしギターのサイド面としてのバランスは非常に良い。……ひとつひとつをこまかくあげるスペースがないが、総じて、いくらか重く粘る傾向はあるものの、国産の大型スピーカーとしては、レインジも十分に広くバランスもよく、非常によくこなれているしワイドレインジでありながら音に冷たさのない点も立派だ。価格やデザインを頭に置くと百点満点というわけにはゆかないが、それにしてもよくここまで仕上げたものだと感心させられた。

パイオニア F-007

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 F007は、基本性能をF26におき、シンセサイザー方式を導入したモデルだ。100kHzおきに受信局を選択するこのタイプのダイアル精度をゼロとする目的で、本機には、ダイアルスケールにコード版がセットされ、これを光で検出する方式が採用されているのが、ユニークで大変に素晴らしい。

パイオニア A-0012

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 パイオニアの新シリーズのプリメインアンプは、4モデルあり、A0012は、トップ機種でその外形寸法が他のモデルより1サイズ大きい。フロントパネルは、主機能を上部に、他の副次的な機能は下側のスモークグラスのヒンジ付サブパネル内に配置した使いやすさを狙った構成が特長である。
 内容的には、パワーアンプ部に、セパレート型のM25でおこなった超高域でも十分パワーを獲得し、可聴周波数帯域内のクォリティを向上するマグニワイドパワーレンジの構想と、小音量時の音質を改善する目的で3W以下の出力では純Aクラス動作、それ以上は徐々に定格出力までBクラス動作に近づくABクラス動作が採用されている点があげられるが、これはシリーズ共通の特長である。また、MCヘッドアンプイコライザーのSN比は、カートリッジ実装時の値を重視して追求されている点も見逃せない。
 機能的には、1dBステップのパイオニア方式ツインコントロール、DC構成のイコライザー部とパワーアンプ部を直接結合して使うためのオーディオミューティングスイッチ、ファンクション表示インジケーターなどが目立った点である。
 このモデルは、豊かに響くやわらかいスケール感がある低域から中低域をベースとし、粒立ちが細かく滑らかに磨かれた中域から高域の音が印象的だ。トータルの雰囲気がかなり洗練され、安定した大人の魅力を十分に感じさせる。反応は適度といえる。

トリオ LS-707

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートのひびきは薄く、遠くにきこえる。音に力がほしい。
❷もう少しくっきりひびきのりんかくがついてもいいだろう。
❸ひろがりをたっぷりと感じさせて、それぞれの音色を明示する。
❹低音弦のピッチカートがふくらみすぎる
❺一応迫力ははやかに示すが、もう少しひびきに力がほしい。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は、きわめて大きくふくらむ。
❷音色的な対比はなされているが、不自然なところがある。
❸ひびきそのものにキメ細かさがほしい。
❹特徴をきわだたせはするが、誇張感がある。
❺右とほぼ同じことがいえる。ひびきにしなやかさがほしい。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶残響の非常に多い部屋ではなしているようにきこえる。
❷接近感がもう少しあきらかになってもいいだろう。
❸クラリネットの音像がかなり大きい。声も前にはりだす。
❹はった声はニュアンスにとぼしいものとなる。
❺くっきり提示するがいくぶんこれみよがしだ。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶右端のバスがせりだしがちで、定位があいまいになる。
❷ひびきが全体にひきずりだかちで、言葉のたち方が弱い。
❸残響を拡大するため、鮮明さの点で不足だ。
❹吸う息を誇張ぎみに示す傾向がなくもない。
❺一応はのびているが、自然なのびとはいいがたい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンという高い音はいいが、ポンという低い音に力がほしい。
❷ひっそりとしのびこむべきところが、そうはなっていない。
❸音がバラバラにきこえる傾向がなくもない。
❹シンセサイザーの特徴的なひびきが示されにくい。
❺ひびきは横にひろがり、ピークはメタリックになる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶このひびきは、もう少し透明に、ひっそりとひびいてほしい。
❷ギターの音像は大きく、横にひろがりつつ、前にせりだす。
❸ひびきそのものに力が不足ぎみなので、実在感がとぼしい。
❹くっきりとひびき、ききのがしようがないほどだ。
❺これもまた、かなりきわだってきこえる。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ベースのひびきが強調されて、12減ギターの特徴をききとりにくい。
❷音の厚みということでいえば、いくぶんものたりない。
❸ひびきが湿っていないのは、このましい。
❹ドラムスの音像はかなり大きく、ひびきはひきずりがちだ。
❺バック・コーラスがもう少しとけあってきこえてもいいだろう。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶ダブルベースの大きさを感じさせる。
❷指を弦の上をはしらせている音には誇張感がある。
❸弦をはじいた後の音の尻尾は示すものの、ひびきの力がもうひとつだ。
❹細かい音に対しての反応がもう少しシャープでもいい。
❺音像差の点でいくぶん不自然なところがある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびきが横にひろがり、リズムの切れが甘い。
❷ブラスの中央からのつっこみは、刺激的なひびきになりがちだ。
❸ひびきとして拡大されがちだが、前にせりださない。
❹後方へのひきは充分だが、見通しはつきにくい。
❺もう少し軽いひびきで、鋭く反応してもいいだろう。

座鬼太鼓座
❶尺八は奥の方でひびくものの、入れものの中でひびいているかのようだ。
❷ひびきに乾きがあり、尺八らしさが感じられる。
❸ききとることができるが、音の輪郭ははっきりしにくい。
❹大太鼓の音の消え方を伝えるが、スケールゆたかとはいいがたい。
❺ききとれる。ここで求められる一応の効果はあげる。

ラックス T-12

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 T12は、クォーツロックFM専用チューナーで、最適同調点でツマミは機械的にロックするユニークな機構を採用している。