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マランツ CD-16D

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CD16Dは、モデルナンバーから考えると従来のCD16SE系のモデルと思われやすいが、基本的にはCD17Dの上級機として開発されたモデルだ。CDドライブメカニズムも、リニアトラッキング型ディジタルサーボ採用のCDM12・1が採用されており、かつてのCD16の価格帯に位置づけられるモデルである。
 気宇面では、モデルナンバーの末尾にDのイニシャルがあるように、CD17D、CD23D LTDに続く、第3番目のディジタル入出力端子を採用したマランツの一体型CDプレーヤーになる。
 このモデルの特徴は、アナログ出力部にタスキ掛けにNFがかけられた新構成のHDAMを採用しているため、本質的にバランス出力を優先する設計になっていることだ。従来の同社のNF巻線付出力トランスによるバランス出力部とは、完全に異なる点に注意されたい。
 アンバランス出力は、バランス出力部の片側を使うが、音質的にはアンバランス出力の方がナチュラルで穏やかな音を聴かせる。これに対して新設計のバランス出力では、反応が素早くシャープで、分解能の高い音が聴かれ、安定度重視の重厚な音を特徴とした従来同社の出力トランス採用バランス出力とは歴然たる違いがある。
 どちらを好むかといえば、それぞれに魅力的な部分があり、判断に迷うが、世界的に中高級機の入出力がバランス型優先になっている時代背景を考えれば、本機のバランス回路のほうを現時点はスタンダードと考えたい。
 低域レスポンスが十分に伸びていながら分解能が高く、エネルギー感に満ちた低音が楽しめる。これに、従来モデルに比べて一段とスムーズにハイエンドに向かって伸びた高域がバランスした音は、すでに事実上ディスコンになっているCD15と比べても、いかにも新製品らしい。この爽やかさと反応の素早さは、価格を超えて新鮮な音の魅力として浮上してくる。試聴したモデルは最終仕様ではなく、さらに追い込んだ状態で生産されるということだ。

ダイヤトーン DS-A3

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS−Aシリーズは、従来までの同社のブックシェルフ型やフロアー型システムとはひと味違ったエンクロージュアづくりを最大の特徴とした、大変に興味深いシリーズである。
 DS−A3は、2S3003系の両サイド・ラウンド形状バスレフ型エンクロージュアを採用。コーン型の振動板として、高域・低域ともにアラミド(ケヴラー)を使用し、物理値的な等音速の利点を活かして音色的な統一性を狙った、ハイクォリティな小型システムだ。バスレフ開口部は楕円型で断面積が大きく、最低音がいかにも開口部から放射されるような、つまりバスレフ開口部が第三のユニット的に動作しているのがわかるような、弾力的で、明るく伸びやかな低音が、このシステムの最大の魅力であろう。

ダイヤトーン DS-600ZX

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS600ZXは、DS900EXを信頼感のある安定した兄貴分とすれば、のびのびと陽気で楽しい性格の弟分といった存在だ。基本のユニット構成は高域を除き相似しているが、エンクロージュアがバスレフ型であるため、反応が速く活気のある豊かな低音は、明らかな性格の違いである。27cm低域は、16cm径と比べて約2・8灰の振動板面積があり、空気を確実に捉えて駆動する低音の力強さ、豊かさ、迫力は、とても小口径型では味わえない、いかにも振動板面積の大きいウーファーならではのものだ。

ダイヤトーン DS-900EX

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS900EXは、DSシリーズ当初から中核を形成してきた30cm低域ベースの3ウェイブックシェルフ型の系譜を受け継ぐモデルだ。現在の小口径低域全盛時代にあって30cm低域はさすがに大口径だが、小口径型の低音感とは別次元の、本物の低音再生ができることが最大の魅力だ。ソリッドなモニター的性格は皆無に等しく、この程よい開放感と明るい音色は、幅広いプログラムソースに対応可能で大変に使いやすい。

ダイヤトーン DS-1000ZX

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS1000ZXは、磁気回路のプレート部でユニットを取り付けるダイレクトマウント方式の中・高域、磁気回路とフレームを強固に結合するDMM構造の低域というように、メカニズム的に従来のユニット構造を大幅に改善したユニットを採用し、’83年登場したDS1000系の最新モデルだ。同じユニット構成で改良に改良を加え、メカニズムとして十分な熟成期間を経ているだけに、一段と豊かさを増した印象だ。3ウェイならではの緻密さとエネルギー感のある中域を中心にした音のクォリティの高さが魅力。聴感上でのSN比も高く、音のディテールの優れた再生能力と奥深く見通しの良い音場感情報の豊かさは、このクラスとしては例外的なパフォーマンスを備えている。華やかさは少ないが、ダイヤトーンらしい信頼性が高いという印象は、まさにベストセラーモデル中のベストセラーと確信させられる。

マランツ CD-23D LTD

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CD23D LTDは、CDM9PROの生産中止に伴う200台限定モデルで、CD23のチューンナップ機として発売される。
 もともとCD23はミュージックリンク・システムのために開発されたCDプレーヤーではあるが、キュービックでオリジナリティ豊かなユニークなデザインをもつ高級機である。最近のように管球式アンプが増えてくると、平均的なコンポーネント型CDプレーヤーではデザイン的に違和感があり、音質的にもナチュラルな帯域バランスとアナログライクな音の魅力が活きてくる。
 このLTDモデルは、筐体正面のメーター部の照明色が、濃いブルー系からかなり淡いブルー系に変更され、トップカバーの色調も濃くなった。機能的には、ディジタル入力部が新しく設けられ、汎用性が高められている。従来のCD23と比べて、サラッとした感覚のリファインされた音に変った印象を受けるが、現時点ではまだ最終仕様の状態ではなく、さらに一段と追い込まれることになるだろう。

ダイヤトーン DS-205

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS205は、当初Aシリーズの高級機と聞いていたが、型名は伝統的な放送用モニターに準じたものに変った。側面は大きく弧を描く積層合板製で、これをバッフルと裏板で結合し、これに天板と底板を嵌めこむ構造は、簡潔だがかなり高度な木工技術の成果であろう。20cmアラミドコーン型ウーファーは、DS−A3系の振動板とアルニコ・ツボ型磁気回路を採用したもので、明快なサウンドを志向した低域として同社初の設計だ。高域は2S3003系のDS8000出使われた5cmB4Cコーン型。2S3003系を、より豊かに柔らかくパワフルにした印象の音は、清澄な印象もあり、非常に興味深い意欲作だ。

マランツ CD-16SE

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CD16SEは、CD16のスペシャルエディションで、CD15ほどの重厚さ、密度感はないが、広帯域型のfレンジと、粒立ちがよくシャープに反応するスピード感は、このモデル独自の魅力。また、本機に採用のCDM4MDをはじめ、CDM9PROなどメカニズムが製造中止になり、独自のスイングアーム方式1ビーム・メカニズムの在庫分も残り少なく、次第にCDM12/14などリニアトラッキング方式3ビーム型に移行されようとしている。その意味でも貴重なモデルだ。

ダイヤトーン DS-2000ZX

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS2000ZXも、従来のZモデルから全面的にフレッシュアップされた新製品だ。ユニット構成は、伝統的なアラミドハニカムコーン採用の30cm低域、6cmB4C・DUDハードドーム型の中域、2・3cmB4C・DUDドーム型高域と変更はないが、各ユニットは基本的な部分から見直され、かなり大幅にクォリティアップされたようだ。低域は、ややタイトなアラミドハニカム振動板特有の音から、最低域までスローダウンして伸びる密閉型独自の性質がより聴きとれるようになった。特に低域ユニットのネットワークではカット不可能な中域〜中高域成分が巧みに処理され、クリアーさが一段と増しているため、鮮やかで歪みの少ない低域に力が増して、いかにも高級機らしい貫禄のある低音再生となった。
 中域は、低域とのつながりが厚くなり、B4C・DUD型の威力が一段と明瞭に発揮されている。特に分解能に優れ、シャープに付帯音なく伸びるダイナミックレンジ的な余裕度は、前作にないものだろう。中域ユニットとチューニングのリフレッシュで、高域ユニットも細部が改良されているらしく、やや硬質な面があった前作と比べ、しなやかさ、伸びやかさが加わり、固有の鳴きが低減されている点に注意したい。全体的に格段に内容が濃く、音的にもリファインされて完成度が向上。仕上げも美しくなりながら、予想に反して価格は大幅に低減されているのも異例のことで、このモデルに対する想い入れの深さの証であろう。

マランツ SC-23, MA-23

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SC23プリアンプとMA23モノーラルパワーアンプは、DAC1でスタートした他に類例の少ない小型・高密度のモデルで、シリーズ化された同社独自のミュージックリンク・シリーズのモデルである。SC23は、パッシヴアッテネーターSL1の筐体に本格派プリアンプを組み込んだライン入力専用機で、出力段にはフィリップスLHH2000で初採用されたNF専用巻線付のバランス型出力トランスを備えたモデルだ。MA23は、AB級50W定格の超小型パワーアンプ。シリーズ製品には、SPレコード用の3種類のEQを備えた、MC昇圧トランス内蔵、NF−CR型フォノEQのPH1、トップローディングの小型高級CDプレーヤーCD23D LTDがあり、さり気なく高いクォリティの音を楽しむには好適なラインナップだ。
 シリーズ共通の音の特徴は、あまりにオーディオ、オーディオせずに安心して音楽が楽しめるだけのコントロールされたfレンジと、伝統的に電源を重視するマランツらしく、十分に広いダイナミックレンジをもち、質感に優れたサウンドが、大人のテイストを感じさせる。

ダイヤトーン DS-200ZX

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ’96年の最新注目モデルは3機種。まずDS200ZXは、DS1000ZX以来、従来モデルに改良を加え、DVDに代表される将来のハイサンプリング・ハイビットのプログラムソースに対応できるようリファインされてきたZXヴァージョン化が、同社のベーシックシステムDS200ZAに及んだ新製品だ。
 全体のデザインは、従来の安定感はあるが地味な存在といった印象が薄らぎ、新鮮な印象が加わったが、基本構成は変らず、ややエンクロージュアの奥行きが伸びただけだ。使用ユニットは、16cm低域、2・5cmDUD型ともに大幅に手が入れられている。特に高域のDUD型は、振動板材料がボロン化チタン材に変更され、その音色は見事な変化を遂げている。エンクロージュアは、前作を受け継ぐバスレフ型だが、木組み構造が変更され、全体に剛性感が高く、響きが明るくなっていることに注目したい。
 また、バスレフ型のチューニングにも手が加えられた。とかくこの種の小型システムは狭い場所に押し込められやすく、予想以上にブーミーでカブリ気味な低音となる点に注意が払われている。これがエンクロージュアの響きと相乗効果的に働き、明るくダイナミックになる低域が、この新モデル固有の美点だ。比較的明るくのびのびとは鳴るが、国内版ポップスなどでは、ややもすると騒々しくなりがちなシステムが多い中にあって、価格を超えた正統派の小型高級システムといった性格は実に小気味がよい。

ダイヤトーン DS-A5

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS−A5は、Aシリーズ本来のエンクロージュア構造と材料に凝った魅力の小型高級システムだ。低域13cm、高域4cmの2ウェイ方式バスレフ型で、小粋な音とでも表現できる独特のサウンドが新鮮な味わいだ。

マランツ CD-17D

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CDプレーヤーのCD17Dは、一体型モデルとしては初のディジタル入力をフロントパネルに備えた製品で、最近急速に需要が増したMDポータブル型やDATにも対応したことに特徴がある。ディジタル入力系は光2系統(フロント/リア)、出力は光と同軸の2系統あり、ディジタルボリュウムコントロール機能も備える。
 CD駆動ユニットは、新リニア型CDM12・1と新サーボ/デコーダーIC・CD7採用のディジタルサーボが特徴。DAC部はデュアルビットストリームDAC7、ディジタルフィルター部はSM5841Dの20ビット8fs型だ。
 アナログ部は新HDAM採用で、数MHzまで高周波ノイズは差動増幅でキャンセルされ、22・05kHz以上はアクティヴフィルターで十分に抑圧される。すっきりとよく伸びたfレンジとシャープで反応の速いフレッシュな音は、この価格帯としてユニークな存在といえよう。

マランツ PM-16

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 PM16プリメインアンプは、回路的にはSC5+SM5の成果を導入した新HDAM+FETバッファーによる4連アクティヴボリュウム、新設計の超高速OPアンプを使った1段電圧増幅+3段ダーリントン電流増幅と高周波用Trのシングルプッシュプル出力段という構成で、マルチフィードバックに対応可能な高域時定数が少ないメリットをもつ。
 また、音質上問題となる出力部の補償コイルを削除し、広いパターンエリアと最小のエミッター抵抗で優れたパワーリニアリティを実現している。大型Rコア・トロイダルとランスと定箔倍率電解コンデンサーによる低インピーダンス電源部には、ダイオードノイズを抑える独自のノイズキラー素子を採用。他に、MM/MC対応フォノEQ、アクティヴフィルター式NFBトーンコントロールなどを備える。注目点は、リモコン対応でのマイコンのディジタルのイズによる音質劣化の問題がクリアーされ、本格派のプリメインアンプとして同社初のリモコン対応化が図られたことだ。
 PM16の音は、十分に伸び切った広帯域型のfレンジと、聴感上でのSN比の高さが特徴だ。特に奥行き方向に見通しのよいパースペクティヴとナチュラルに立つ音像定位感は、基本的特性に優れ、さらにオーディオ的にリファインされたアンプのみが聴かせる、わかりやすい音質上のメリットである。

テクニクス SB-M1000, SB-M500

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 最新のSB−M1000/500は、トップモデルSB−M10000の構想を中堅機に導入した製品で、既発売のSB−M300を含め、フルラインナップがDDD方式低域採用の超広帯域、省設置面積のシステムになった。
 上級のM1000は4ウェイ7スピーカー4パッシヴラジエーター構成、M500は3ウェイ4スピーカー2パッシヴラジエーター型のトールボーイフロアー型である。

テクニクス SB-M300

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SB−M300は、SB−M10000の新重低音再生方式を驚異的低価格で実現した、同社ならではの思い切りの良い力作だ。

テクニクス SL-P860

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SL−P860プレーヤーも、上級機SL−P2000の特徴を受け継いだベーシック版で、内容の濃い高CP機。

テクニクス SU-C2000, SE-A2000

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 同社の中核モデルは、まずセパレートアンプでは、プリアンプはSU−C2000とパワーアンプSE−A2000で、ともに上級機の構想を受け継いでいるが、注目点はともにヴァーチャル・バッテリー電源を採用していることだ。

テクニクス SU-A900

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SU−A900は、MOSクラスAA回路、Rコア電源トランス、THCB防振構造筐体、ヴァーチャル・バッテリー電源など、上級機の成果を集大成したプリメインアンプだ。

テクニクス SL-P2000

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SL−P2000CDプレーヤーは、SアドヴァンストMASH・1ビットDAC、インストゥルメンテーション差動回路、クラスAA出力アンプバッテリー駆動と同等にクリーンなヴァーチャル・バッテリー方式電源、ディジタル光学系サーボなど、同社が全ジャンルの製品に提唱するサイレント・テクノロジーに基づいて開発された製品だ。

テクニクス SE-A7000

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SE−A7000パワーアンプは、A級電圧制御アンプとスピーカー駆動電流源となるB級アンプを組み合わせたMOSクラスAAパワーアンプ、新開発高音質マスターシリーズ電解コンデンサー、新無誘導抵抗、高剛性重量級で磁気輻射・機械振動の少ない筐体などが特徴だ。

テクニクス SU-C7000

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SU−C7000プリアンプは、伝送経路に混入する雑音を排除する鉛電池電源の採用が注目点。音量調整はカーボン抵抗体回転型の同社独自の高音質型。回路はクラスAA構成、筐体はTHCB防振構造採用である。

テクニクス SB-M10000

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 テクニクスの第1作「テクニクス1」スピーカーシステム以来、連綿として開発されてきた同社のスピーカーシステム。最近のDDD方式重低音再生を柱にした一連の新スピーカー群は、継続は力なりを具現化した同社の意欲作だ。
 その頂点に位置するSB−M10000は、超広帯域再生の実現に挑戦し、約5年の歳月をかけて完成させた、国難異性品ではヤマハのGF1以外にあまり類例のない、超弩級・超高価格なフロアー型スピーカーシステムだ。
 基礎研究は同社の技術研究所で始まり、目標とした電気・音響トランスデューサーとして完成させてから、次に音楽を聴くためのオーディオ用スピーカーシステムとして音響事業部が製品化するといった、日本の超大型企業ならではのプロセスを経て完成されたことでは、国内製品唯一といってよいビッグプロジェクトと成果だ。
 現在のCDソフトでは、低域は5Hzまで収音されており、これを再生するためには超大型システムとするか、アンプで低域を増強するかの二者択一となるが、同社では新重低音再生方式を開発することで、これをクリアーしている。一方、超高域側は、100kHzの再生を可能とした独自のリーフ型トゥイーターがすでにあるが、本機ではスーパーグラファイト振動板のドーム型で挑戦している。また、超広帯域化により聴感上で歪みが多く感じられることもあるが、エンクロージュア時代の低振動化、振動系各部の改良や駆動源の磁気回路にも新技術が導入されている。
 構成は4ウェイ型で、低域用のパッシヴラジエーター付ケルトン型ウーファーがキーポイントになる。口径は低域22cm、中低域18cmと異なるが、共通の特徴は低歪率型リニア磁気回路、エッジ前後非対称空気排除量を低減する6分割の凹凸プッシュプルエッジ、高域にも採用された振動板外周部に高内部損失材を配したピークレス振動板などの搭載だ。
 注目の新重低音再生方式とは、一個の密閉型エンクロージュアの前面と背面に駆動ユニットを置き、そのまた前後の前面と背面にパッシヴラジエーターを取り付けた密閉型エンクロージュアを設け、同相駆動するという構造を採用。これを同社ではデュアルダイナミックドライブ(DDD)方式と呼んでいるが、この方式は振動の打ち消し能力があり、エンクロージュアの振動を大幅に低減させながら重低音再生を可能としている。この方式により、超広帯域型システムとしては予想外に台形寸法は抑えられているが、さすがに重量は155kgと物凄いスピーカーシステムだ。ただし、運送を考慮し、上下2分割が可能となっている。
 柔らかくゆったりした、しなやかな低域は、重低音という表現とは異質だが十分に伸び切る。この低域と質感が揃った中低域以上はナチュラルで、スムーズなバランスだ。特に中域のエネルギーが十分にある点は素晴らしい。

ダイヤトーン 2S-1601

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 2S1601は、ダイヤトーン50周年を記念して登場した、低域と高域にアラミドコーン採用の等音速2ウェイDS−A3をベースに、ユニットとエンクロージュアを極限までチューンナップし、小スタジオや放送局用小型モニターとして現場の信頼に応えるだけの性能にまで追い込んだ、一種のニアフィールドモニターである。したがって、サウンドキャラクターは、DS−A3の芳醇な音とは異なり、ソリッドで引き締まった質的な高さが特徴だ。

ダイヤトーン DS-8000N

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS8000Nは、クロスオーバー特性可変の独立ネットワーク方式を採用したモデルで、同社初の38cm径紙コーンによる低域と、Aシリーズで開発された新アラミドクロスコーンの中域、2S3003直系のB4Cコーン型高域の3ウェイフロアー型システム。内容は非常に濃く、モニター的にも、家庭内での定音量再生でもバランスを崩さず、伸びやかに鳴る鳴りっぷりの良さは格別だ。なお、クロスオーバー固定型のベーシックモデルも用意されている。