Category Archives: 井上卓也 - Page 38

デンオン SC-306

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

端正にまとまった音をもつSC106をベースにフレッシュアップした新製品。コーン型3ウェイの使用ユニットはデンマークのピアレス製で定評が高く、聴かせどころを捕えたシステムアップで表現力は新鮮で豊か。

KEF Model 303

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

新しいシリーズに置き換えられたKEFのスピーカーシステムのなかでは、もっとも小型な製品である。20cmウーファーとドーム型トゥイーターの2ウェイで、柔らかく伸びやかな低音と透明な高音だ。

サンスイ SP-511

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

オーソドックスに30cm低音ベースにコーンがたでまとめた3ウェイ。バッフルボードは低音の振動で中高音の汚れを防ぐ特殊構造設計。分散配置でJBL的手法を駆使したネットワークで音は新鮮。

トリオ LS-202

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

振動分割型バッフル構造、独立配置型ネットワーク、新ホモゲン材エンクロージュアで優れた音場再生能力をもつ製品。

ヤマハ NS-100M

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

ブックシェルフ型の原点に戻って開発された完全密閉型アコースティックサスペンション方式3ウェイシステム。活気がある低域と滑らかで透明なソフトドームの音が特長。

ダイヤトーン DS-32B

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

優れたバスレフ型の設計では定評がある伝統的な技術を活かし、コーン型3ウェイとしてまとめた製品。クリアーでフラットに伸びたレスポンスと明解な音像定位が特徴。

ソニー SS-R5

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

この価格帯では数少ない大口径30cmウーファーにアコースティックレンズ付きバランスドライブ型トゥイーターの組合せによる2ウェイシステム。スケール感が十分にあるパワフルで明るいサウンドだ。

パイオニア PL-L5

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 世界初のリニアモータードライブのリニアトラッキングアーム採用のマニュアルプレーヤーシステムPL−L1の開発に代表されるように、パイオニアは、一般的なオフセット型アームに比べて基本性能が一段と高いリニアトラッキング型アームを採用したプレーヤーに意欲的であるが、今回発売されたPL−L5は、リニアモータードライブ、リニアトラッキングアーム採用の電子制御フルオートプレーヤーシステムである。
 ターンテーブルは、独自のクォーツPLL・DCホール素子切替型で、モーター軸受を重心に近づけたSHローター方式のモーターで駆動される。
 トーンアームは、リニアモーター駆動でSN比が高く、ショートアームのため等価質量が少なくトラッカビリティが高い特長がある。オート機構はIC制御型でリピートは盤面上で再リードインするクイックリピート型。モーターとアームはサブシャーシーに固定され、これをスプリングとダンパーゴムでダイキャストベースからフローティングしたコアキシャルサスペンション方式だ。

ヤマハ PX-2

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 リニアトラッキングアーム採用の超高級プレーヤーPX1に続く第2弾製品で、オート機構の整理、アームドライブ方式の変更で、リニアトラッキングプレーヤーとしての完成度は一段と高まった。プレーヤーベースは、PX1同様に5mm厚音響用アルミダイキャスト製で、重量17kgの防振設計。重量1・3kgの厚いアクリルダストカバー付である。
 トーンアームはPX1のギア駆動からベルト駆動に変更され、水平トラッキングエラーは±0・15度以内の高精度を誇る。高さ調整、パイプ部にスライドリング型針圧調整付。モーターはクォーツロックDCコアレスホール型。正逆両方向サーボ、電子ブレーキ付で大容量定電圧電源採用である。
 オート機構は、新開発ロジックIC制御のフルオート型で、マニュアル時のアーム送りはボタンの押し方の強弱で速度が変化する2スピード型で動作は軽快。
 PX2は引締まった低域ベースのシャープでクッキリとコントラストをつける明快な音が特長である。リニア型のメリットで輪郭がシャープだ。

サンスイ XR-Q9

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 好評のXR−Q5の上級機種として開発されたマイコン制御、サンスイ独自のダイナオプティマム・バランスド・トーンアームを採用したフルオート機である。
 フォノモーターは、負荷変動に対する応答速度を重視した磁気検出ヘッド採用のクォーツロックサーボDD型で、正逆両方向サーボ付である。
 トーンアームはストレート型で、カートリッジはサブシェルを利用して交換可能。針先が拾った振動がアーム軸受部に伝わらない独自のダイナオプティマム・バランス方式と、軸受部分に質量を集中した設計が特長。
 プレーヤーベースは、国内製品には珍しく3本の重量級亜鉛ダイキャスト脚部で支持するフローティングベースにモーターとアームを固定する構造を採用し、重心を低くした独自の吊り下げ方式としている。オート機構はコンピューター制御のフルオート型で、リピートは盤面上で再リードインするタイプである。
 聴感上のレスポンスは広く、活気のあるダイナミックな音が特長で軽質量カートリッジの魅力を十分に引出す。

マイクロ BL-71

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 専業メーカーらしく、ベルトドライブ型や糸ドライブ型の高級機を意欲的に開発しているマイクロのベルトドライブ・マニュアルプレーヤーである。
 ターンテーブルは、外周部の肉厚を十分にとり慣性質量を上げたオーソドックスな設計で重量3・2kg。シャフトは、BL91で採用した直径16mmのステンレス鋼製で、シャフトと軸受メタル間は0・02mmのラッピング鏡面仕上げでオイルバス方式の潤滑系採用である。駆動ベルトはカーボン材配合で経年変化を抑え、駆動モーターはFGサーボ型で、±3%の回転数可変型である。
 トーンアームは、軸受部分の剛性をとくに高めたスタティックバランス型、一体削り出し加工のヘッドシェル付だ。プレーヤーベースは、振動モードの異なる材質を配合した防振構造採用で、表面は黒檀突板仕上げである。
 BL71は音色が明るく伸びやかな音が特長だ。音の輪郭をクッキリと浮び上らせ、緻密さも適度にあるため実体感がある。こだわらぬ自然さが魅力。

デンオン DP-70M

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 二重構造ターンテーブル採用のマニュアルプレーヤーである。上下に二分割されたターンテーブルは、板バネとダンパーで結合され、上部は質量とバネでハイカットフィルターを構成し、レコードを外部振動から遮断して音質劣化を防止する。フィルター効果により数十Hz〜数百Hzの帯域で10〜30dBの振動低減効果があり、クロストークをも含めた音質改善がいちじるしいとのこと。駆動モーターはACアウトローター型で、磁気記録検出クォーツロック方式を採用、正逆両方向サーボと電子ブレーキ付。トーンアームは、独自のダイナミックダンプ機構付スタティックバランス型で、DA401軽量アームと交換可能である。前面に自照式ボタンを配したプレーヤーベースは、70mm厚ソリッドボード積層型で、表面は天然木ブビンガ仕上げの防振設計である。
 音はスッキリとしたワイドレンジ型で、整理して音を聴かせるタイプだが、表情も適度で軽快さが特長。音の粒子は細かく、ナチュラルなプレゼンスがある。高級カートリッジに適した製品だ。

ビクター QL-Y7

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクター初の電子制御トーンアームを採用したセミオートプレーヤーシステムである。トーンアームは、軸受部の右側面に垂直方向のセンサーとリニアモーター、水平軸受の延長部にセンサーとリニアモーターを備えた純電子制御型で、アームの上昇、下降、盤面上の左右送り、オートリターン、リジェクトの他、ゼロバランス調整後は針圧調整、インサイドフォースとダンピング量が独立した3個のツマミで針圧対応型で調整できるが、当然、任意の個別調整も可能だ。
 プレーヤーベースはローズウッド仕上げの無共振ソリッド材積層構造で、高さ調整可能なドーム型インシュレーター付。モーターは、コッギングがなく滑らかな回転が得られる高トルク・コアレス構造の偏平型DCモーターで、サーボ系全体の信頼性を従来の約30倍向上させたダブル・クォーツロック方式と、コアレスモーターのトルクの低いデメリットを改善するプッシュプルドライブ方式に特長がある。ターンテーブルは重量2kgのアルミダイキャスト製で、ターンテーブルのつり鐘振動と固有共振を抑える目的で亜鉛ダイキャストを複合した無共振構造を採用している。演奏中に単独コントロールできる針圧、ダンピング調整は、聴感上の最適値を求める場合に有効に動作をする。情報量が多く、表情も豊かで高品位な音である。

ソニー PS-X75

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トーンアームにエレクトロニクスの技術を初めて導入し、バランス、針圧などの全てを電子的にコントロールする電子制御トーンアーム(バイオトレーサー)を搭載したプレーヤーシステム、PS−B80は、ソニーの技術水準の高さを世界に示す優れた製品であるが、この優れた再生能力を実用価格帯の製品に実現したものが、このPS−X75である。
 トーンアームは、垂直と水平方向に、独立した速度センサーとリニアモーターを備え、速度型フィードバックにより低域共振を従来より約3dB以上抑え、低域共振による混変調歪と低域のクロストークを改善している。また、バランス調整は手動であるが、光学式レコードサイズ選択、盤面上の部分送りを含むアーム操作を含めたオート機構、針圧調整、自動インサイドフォース調整などは完全に電子制御化され、フロントパネルで任意にコントロールできる。
 プレーヤーベースは、独自のSBMC複合成形材と特殊ゲル状粘弾性体インシュレーター使用。モーターはクォーツロック高トルク型リニアBSLモーターの、マグネディスク回転数検出型で、電磁ブレーキが付属する。トーンアーム軸受はロングスパン構造、高さ調整付。亜鉛ダイキャスト合金製の強固なアームベース付で、内線材はリッツ線使用。滑らかで自然なバランスが音の特長。

ケンウッド L-07D

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ディスクに刻まれた信号を100%確実に、正確に電気信号に高忠実変換することを開発の最重要事項として造られた高性能プレーヤーシステムである。
 プレーヤーベースは、高剛性防振を実現する目的で、新素材マホガニーコンプライトと剛性が高い素材を複合密着させた基礎部分に、硬質アルミフレーム、新ARCB材を重ねた異種材複合防振構造であり、ターンテーブルもアルミダイキャストにジュラルミンを圧入し、上面にステンレスプレートを加えた重量5・5kgの複合防線型である。
 モーターは、軸受オイルなどの温度変化や粘性変化による負荷変動に対し自動的に位相補償値を調整するダイナミックコンペンセーター内蔵のスロットレス・クォーツロックPLLサーボ型で、シャフト直径は12mm、軸受部はマグネフロート方式で荷重を軽減している。
 トーンアームは、航空機用硬質アルミラミネートパイプに炭素繊維とボロンファイバーを複合した6層構造、軸受部は超硬合金ピボット、ステンレス鋼軸、大型ベアリング採用で、アームベースは大型のコレットチャック式1回転0・1mmの高精度ヘリコイド高さ調整機構付。内線材は特殊純銅リッツ線使用、出力コードのコネクターはロックネジ付の新型で、従来の数倍の接触面横をもつ。Lシリーズ共通の緻密で整理された音だ。

マランツ Model Sm1000

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 マランツのハイパワーアンプは、管球時代の♯9をはじめ、ソリッドステート化された以後も、♯15、♯16などがつねにその時代のトップランクのパワーを誇るモデルであったが、やはり、超弩級アンプといえるものは、非常に見事なコンストラクションと伝統を受継いだデザインをもつ♯500であろう。
 この流れを継承した現在の♯510は、開発以後かなりの歳月が経過したが、依然として、現時点でもハイパワーアンプのティピカルな製品として、その性能、音質の高さにおいて高い評価を得ているが、基本的に、物量を惜しみなく投入して開発された♯500とは異なり、非常に合理化された効率の高い設計とパワーに比較してコンパクトさに魅力がある製品であること、急速に進展するエレクトロニクスの技術や各種デバイスの進歩を併せ考えると、現時点ではいささか、性能、音質共に、古典的という印象は避けられないということである。
 そろそろ、新モデルの登場が期待されている現実の声を反映して、現時点でのトップランクのパワーアンプとして開発されたのが今回登場したSm1000である。
 この新製品は、マランツの回路設計技術者マイク・キャスターの考える現代の理想のハイパワーアンプ像に基いて設計された、400W+400Wのハイパワーアンプであり、回路構成上は、全段完全プッシュプルDC構成とし、パワー段にはコレクター損失200Wのパワートランジスターを片チャンネル18個使用し、リニアリティの優れた部分のみを使うとともに、現代アンプの動向を採用した、低TIM歪設計により、裸利得を56〜57dBと抑え、NF量を減らし、ハイパワーアンプの音質上の問題点とされた、中域から高域の音の粗さを解消している。また、従来まではパワーアンプに不可欠のスピーカープロテクター回路に、独自のSCRクローバーサーキットを新開発し、機械的な接点をもつプロテクターリレーを完全に取除き、接点での音質劣化を解消したことも注目すべきポイントである。この回路は、事故によりDC成分がスピーカー端子に発生すると、瞬間的にSCRクローバーサーキットが動作をし、電源とランス一次側のフューズを切るとともに、電源コンデンサーに蓄えられた巨大なエネルギーをディスチャージするタイプである。
 また、伝統的に強力な電源部をそなえるポリシーどおりに、左右独立型の800VAの容量をもつカットコアトランスと音質重視型の20000μFの特注オーディオ用コンデンサーを片チャンネル2個使用している。これは、♯510の両チャンネル共通電源で10000μF×2の電解コンデンサー使用と比較すれば、その充実ぶりが判るというものである。
 コンストラクションは、パワーアンプでは巨大な電流を扱うだけに、結果としての性能や音質に決定的な影響力をもつ重要な部分である。ここでは、非常にコンパクトで放熱効果が高い、♯500以来の風洞型、フィンガーヒートデシペーターによる強制空冷システムを採用し、5種の長さの異なったフィンを、ドライバー段のトランジスターを含み、それぞれのパワートランジスターに取り付け、均一な放熱効果を得ている。冷却ファンの回転は、サーミスターによるヒートシンクの温度を一定に保つようにする可変型で、筐体が慰撫から取り外し可能なエアフィルターを備える。
 クーリングシステムで、パワーアンプ本体はコンパクトに構成できたが、奥行55cm、重量42kg
筐体のほとんどは、左右独立ツインモノ構成の強力電源部で占められ、余分の空間のまったく存在しない非常に密度の濃いコンストラクションである。
 19型ラックサイズのフロントパネルは、2個の対数圧縮型ピーク動作で、rms表示の大型パワーメーターがあり、8Ω負荷時の出力が直読できる。下側は、ヒンジ付サブパネルがあり、レベル調整、スイッチ経由の2系統のサブスピーカー切替え、AC/DC入力切替えがある。なお入力は、RCAとキャノン。
 歪感がなく、スムーズに伸びた広帯域感と、情報量豊かな音場感再現は抜群の製品である。

オーレックス SR-M99

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 外観から受ける印象は比較的にコンパクトにまとまったマニュアルプレーヤーであるが、非常に高度に凝縮された徹底的な無共振構造に基づいたオーレックス初の高級プレーヤーシステムである。
 まず、最初に驚かされることは、小型でもあるために気軽に持上げようとしたときのことだ。指をプレーヤーベースに掛けたとたんに、強固な金属のみがもつ独特の感触があり、重いなと予想しながら持上げてもビクともしない、42kgの超重量級である。
 ベース部分は、アルミダイキャストの約3倍の比重をもつ銅合金製で、巨大なマスと小さな外形寸法のため耐ハウリング性が非常に高く、優れたシステムの土台となっている。駆動モーターは、ローター磁石を上下のステーターコイルでサンドイッチ構造とし、上下方向の振動を2個のステーターコイルの逆相振動でキャンセルする独自のダイレクト・ダブルドライブ型で、起動トルクが従来の約2倍あり、シャフト径は15mmと太い。ターンテーブルは重量7・5kg、裏面に2種のダンプ層をもつ3層構造。マットもブチルゴム・鋼板・ブチルゴムの3層構造だ。アームは強いS字型カーブのスタティックバランス型。軸受はジンバル方式、独自のダイナミックダンピング機構付ウェイト使用。土台の安定した高品位の音は高級機の世界。

ヤマハ A-9

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ヤマハのプリメインアンプの存在を急激にクローズアップしたかつてのCA1000以来、常に各時代を代表するトップランクのプリメインアンプをそのラインアップに持つことがヤマハのポリシーであるが、CA2000以来新しいAシリーズのプリメインアンプに力を注いでいたため、新しいトップランクのプリメインアンプの登場を期待する声が高まっていた。これに応えるべく登場した製品が、CAシリーズではなくAシリーズ最高ランクに位置するA9で、これによりヤマハのプリメインアンプは、全面的に第2世代の顔をもつAシリーズに発展したことになる。
 ピュアカレントサーボ方式は、アンプ部と電源部との相関性を遮断するという正統派の構想であり、現代アンプ設計のいわば盲点をついたクリーンヒットだ。
 A9ではイコライザーとフラットアンプにピュアカレントサーボ方式を採用し、パワーアンプは、B5で初採用のリニアトランスファー回路を改良したニューリニアトランスファー回路採用のB級120W+120Wと純A級30W+30Wが切替使用可能の他、独自のNF型トーンコントロール、Roコントロールなどの機能と最新部品の採用が特長だ。
 音はしなやかで鮮度が高く、B級動作の余裕のある響きとA級動作の緻密で彫りの深い音が絶妙な対比を聴かせる。

サンスイ AU-D907 Limited

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 高級プリメインアンプの分野でひとつのリファレンスアンプ的な存在であるAU−D907をベースに、同一規格、同一コンストラクション、同一な回路構成のまま一段と性能、音質の向上を図った限定数販売の新製品である。従来からオーディオ製品、とくにアンプでは、タテ方向は価格帯ごとに分けたシリーズ的な製品展開が一般的であるが、車では既に以前からおこなわれている、ヨコ方向のスタンダードに対するデラックスに相当するワイドバリエーションタイプの製品展開をアンプに導入した点が大変にこの製品のユニークな点であろう。
 基本的にはAU−DシリーズのトップモデルであるAU−D907の潜在的な余剰能力を完全に引き出す目的で開発されているだけに限定販売のリミテッドの名称が与えられているのは妥当なことと受け取れる。
 変更点は、非磁性体化のため木製ボンネット、電源コンデンサー取付部の真鍮板採用のほか、シャーシーの銅メッキ化、パワートランジスターに非鉄構造の高速型LAPTの採用、高速ダイオードや新しいシャント型定電圧回路が目立つ。
 周波数レスポンスは広く、情報量の多い音で、ディスクに刻まれた音の細部を素直に引き出す好ましさがある。特に個性を強調する傾向は少なく、音場感も自然で、その熟成度は非常に高い。

ラックス LX33

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックス独自の製品である管球式のプリメインアンプである。独自の発想であるパワーアンプにプリアンプを組込むという基本構想に基づいて開発されているため、これを象徴するようなオリジナリティのあるパネルフェイスとなっている。
 設計方針は、音質改善の裏付けとなる各種歪の低減を目標とし、新しい時代の管球アンプのメリットを活かしたものである。出力トランスは新設計のOY15−5KF型で、巻線径が太く、遊休コイルのないシンプルな巻線構造で、ロスが少なく音質が優れたタイプであり、出力管は、定評がある6CA7をウルトラリニア接続PPとして使用。ドライバー回路は、低域時定数が少なく利得の高い、安定な特長があるムラード型だ。
 プリアンプ部は、中高域の耐入力を増すために、出力段の電流を多くとった動作点に設定した12AX7の2段P−K NF型で、3段型と比べ安定度の高いメリットがある。トーンコントロール回路は、ボリュウムの機械的な中点でフラットな周波数特性が得られる伝統的なLUX方式NF型である。
 LX33は価格的にも魅力のある製品であり、従来の豊かで柔らかな音という伝説的な管球アンプの音を脱した、スムースで爽やかな音であり、ナチュラルな音場感の拡がりが管球アンプらしい。

ティアック PA-7, MA-7

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 久し振りにティアックからアンプが発売された。今回の製品は、イタリア語の調和を意味するアルモニアをシリーズ名とし、開発目的を、MC型カートリッジでタンノイのスピーカーシステムを再生するためという、対象を極めて狭い範囲に絞っている点が最大の特長だ。従って開発プロセスではタンノイのシステムをモニタースピーカーとし、コンピューターを使った回路設計もすべてタンノイの設計哲学である〝音楽再現〟、〝音場再現〟のためにおこなわれ、試作段階で英タンノイ社に送り、試聴テストを繰り返し理想のアンプとして完成した。このアルモニアシリーズのアンプは、タンノイ社製品の重要な試聴テスト用のシステムとして使用されているとのこと。
 PA7コントロールアンプは、2重積分サーボ回路を採用したDCアンプで、MCヘッドアンプとヘッドフォン専用アンプを内蔵、18dB/oct型サブソニックフィルター、録音音質補正が可能というトーンコントロール装備が特長。
 MA7ステレオDCパワー・アンプは、相互干渉を避けるダブルモノーラル構成のコンストラクションを採用した150W+150Wのパワーをもつ。保護回路は、負荷ショート保護回路をはじめ、5Hz以下をシャープにカットする新開発保護回路の採用が目立ち、回路面のフィードフォワード回路採用も特長。

ヤマハ FX-3

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 バスレフ型エンクロージュア採用のベリリウムドーム型ユニットと新開発36cmウーファーで3ウェイ構成としたフロアー型システムである。基本構成はブックシェルフ型のトップモデルとして定評が高いNS1000Mと同等であるが、各ユニットは全て新設計で共通性はない。
 36cmウーファーは、銅リボン・エッジワイズ巻ボイスコイルとコルゲーション入りコニカルコーン使用で、磁気回路は低歪型φ20cmの大型フェライト磁石使用。口径66mmのベリリウムドーム型中音は、銅リボン・エッジワイズ巻ボイスコイル使用で、φ156mmフェライト磁石の磁気回路採用で、磁束密度16000ガウスの強力型、センターポールは空気穴付でf0は300Hzと低く、10kHzまでのレスポンスをもつ。口径23mmのベリリウムドーム型高音は、2種の樹脂をコーティングした特殊繊維のタンジェンシャルエッジ付、銅クラッドアルミリボン線エッジワイズ巻ボイスコイルとφ100mmフェライト磁石使用で磁束密度18500ガウスである。ネットワークは、低損失の音質重視型で連続可変型の中音・高音用レベルコントロール付だ。
 FX3は、音の芯が強く、重厚で力強い低域をベースとした安定感のあるバランスで、スケールが大きく緻密で分解能が優れ、パワフルな中域、鮮明な高域が見事にバランスした充実した音だ。

ハルアンプ Independence III

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 さきに発売されたインデペンデンスIIコントロールアンプと組み合わせるパワーアンプとして開発された製品である。
 構成は管球式モノーラルタイプで、出力管は、KT88に相当する6550のウルトラリニア接続PP。スイッチ切替で3極管結合としても使用可能だ。初段はECC88/6DJ8、カソード結合型位相反転段に6CG7/6FQ7で、オーバーオールのNF量が6dBと低いため利得は34dBと高く、入力系には−6dBのローゲイン入力を別系統にもつ。
 電源部は、電圧増幅段用にソリッドステート化した定電圧電源を備えている。本機の最大の特長は、出力管のバイアス電流をつねに一定に保ち、出力トランスに対して有害な数Hzの極めて低い周波数成分を出力回路から除去するオートマチック・バイアス・コントロール・システムABCSを採用していることだ。これにより出力管の経時変化、交換時及び相当する他の出力管に変更するときも調整不要としている。また、これによりプッシュプルの平衡性についても、直流バランスは完全に保たれ、出力トランスのアンバランスによるインダクタンスの低下を防止することができる。
 音質は素直で伸びやかな印象である。基本的にはやや寒色系の明るい音色をもち、3結使用では、特に彫りが深く、豊かで活々とした音を聴かせる。

ビクター Zero-7

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 昨年、ビクター音響技術研究所で技術発表された回転楕円体エンクロージュア採用でマルチアンプ駆動、平面振動板ユニットの3ウェイ構成の標準スピーカーシステムの開発技術を導入し開発された、ビクター初の平面振動板ユニット採用の4ウェイシステムである。
 32cmウーファーは、円錐型の発泡レジンを振動板とするタイプで、外観上はエッジが見えず、細いスリットの奥にロール型のエッジがあるのが特長。スコーカー、トゥイーターも同じ構造の平面振動板採用であり、スーパートゥイーターは新設計のダイナフラット・リボン型で、ダイアフラム前方にサマリウムコバルト磁石があり、後方に閉回路のストロンチウム・フェライト磁石を配した強力な磁気回路採用で、100kHzまでのレスポンスがあり、ダイアフラム前面には能率向上のため、指向性が優れた短いホーンが付いている。
 エンクロージュアはバスレフ型、低歪高耐入力設計で、70μ厚基板使用のネットワーク、無酸素銅線使用の内部配線、新開発の接点や端子の異種金属を排除した6ステップL型音質重視のアッテネーター、フェイズモアレ法によりmm単位で検討されたユニット配置などに特長がある。
 表情豊かな低域ベースのスッキリとワイドレンジ型のバランスで、音色は明るく軽く整理された音場感が特長。

Lo-D HMA-9500MKII

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 パワーMOS−FET採用のパワーアンプとして定評が高いHM9500を、現時点での回路設計と部品を導入してグレイドアップを図った新製品である。
 外観上の変更点は、外形寸法、重量の変化はなく、電源スイッチが形状変更され角型となったこと、電源コードを一段と電流容量の大きな太い線材を使用していること、及びネームプレートの小変更が主だ。
 回路面での変化は、パワー段のドライブ用に新しくエミッターフォロア一回路を追加し、低インピーダンス駆動としたこと、無信号時にもパワー段がカットオフしないようにバイアスコントロール回路が加えられ、スイッチング歪を解消したことがあげられる。
 部品関係は、新しい音質対策済みの部品が全面的に採用され、内容は一新された。その主な項目は、ガラスエポキシ基枚の新採用、パワートランスの一次巻線を海外仕様の直並列切替型から100V専用にシングル巻線化、電源部の電解コンデンサーのグレイドアップ、整流用ダイオードを高速型に変更し高域特性の向上を図っていることなどである。
 MKIIとなって音の反応は一段と速くなり、鮮度が高くなったために音場感的な前後方向のパースペクティブをナチュラルに表現するようになった。質的にも高い立派な音だ。