Category Archives: コントロールアンプ - Page 16

オーレックス SY-88

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 マランツ♯510Mとの組合せでは、SC77の場合よりも、聴感上で低域の量感が豊かになり、スケールの大きな音になる。バランス的には、ローエンドは抑え気味で、中域の薄さが感じられる。中高域あたりはかなりシャープで、音の分離が一段と向上した印象があるが、反面、少し硬質さが感じられる。おそらくこの部分は、♯510Mのキャラクターが出ていると思う。
 内蔵のMC型カートリッジ用ヘッドアンプは、MC20ではスケール感が小さく、柔らかいが、伸び不足であり、103Sのほうが音のキャラクターもマッチし、かなり聴感上の帯域が広いスッキリと伸びた音になる。このアンプにはこの音がもっとも応わしい。

アキュフェーズ C-220A

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 マランツ♯510Mとの組合せでは、かなり聴感上の周波数レンジが広く、伸びたバランスであり、音の粒子の細やかさや、音の柔らかさ、伸びやかさでは、セパレート型アンプとして第一級のものがある。低域は、暖色系の柔らかい音であり、中域はM60の場合よりも、コントラストは薄くなるが、粒立ちは一段とナチュラルで細かい。
 音像定位は、まず標準的で、音場感はスピーカーの奥に広がるタイプだ。
 内蔵のMCカートリッジ用ヘッドアンプは、MC20よりも103Sのほうがマッチするようで、柔らかく、粒子の細やかな、かなりナチュラルで伸びきった音であり、音場感もスッキリと広がるタイプだ。

アキュフェーズ C-200S

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 マランツ♯510Mとの組合せでは、かなりスッキリとした、いわゆる細身のクリアーな音である。バランスとしては、少し低域が抑え気味で、音を整然と聴かせる傾向があるため、ストレートでソリッドな音という印象となる。
 ステレオフォニックな音場感は、左右のスピーカー間の奥に広がり、音像は、かなりクリアーに定位をする。音楽に対しての働きかけは、少し表情を抑える傾向があり、いわゆるマジメ型のアンプである。
 音をソリッドに、くっきりと聴かせる点がこのコントロールアンプの特長であり、基本的な音のクォリティでも、このクラスのセパレート型に応わしいものがある。

デイトンライト SPS MK3

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 滑らかで伸びやかな音をもつコントロールアンプである。
 聴感上の周波数レンジは、ローエンドとハイエンドを少し抑えたナチュラルなバランスをもち、低域は豊かで柔らかいが、かなりソリッドな面をもち、中域は硬質なタイプだがやや密度が薄く、前に張り出してくるだけのエネルギー感がないようだ。トータルバランスは、低域から中低域にエネルギー感が集まるため、充分に安定感があるタイプだ。
 音の表情はおだやかだが、適度の伸びやかさがあり、潜在的な力感がある。反応は標準的で、基本的なクォリティはかなり高い。音場感はナチュラルに広がり、音像はスピーカー間の少し奥に定位をする。

BGW Model 203

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ウォームトーン系の柔らかく豊かな音をもった、かなりオーソドックスな音をもつコントロールアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、ローエンドとハイエンドを少し抑えた印象はあるが、ナローレンジと感じるほどのものではない。
 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、全体に音が一段と引締り、音の鮮度が高くなる。低域は適度のエネルギー感があり、中域は粒子が少し粗いが、滑らかに磨かれており、中高域から高域は、410との組合せから予想するよりも、かなりスッキリしている。音場感は標準的に広がるが、空間の広がりがスッキリとは抜け切れず、やや濁る面がある。

オーディオ・オブ・オレゴン BT2

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 独特の厚みがあり、緻密で濃縮された味わいの濃い音をもつ、ユニークなコントロールアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、ローエンドとハイエンドを少し抑えた安定バランスであり、バランス的には中域にタップリとした量感をもち、音色はウォームトーン系の、豊かで密度が濃いタイプである。
 表情はおおらかで伸びやかさがあり、細やかさもかなりあるが、細部にこだわらず、余裕タップリに音を出す性格は、かなり大陸的な印象である。ステレオフォニックな音場感はよく広がるが、モワーッと広がる感じで、ホールトーンは充分にあるが、爽やかな空間の広がりとはいえない。

アムクロン IC-150A

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おおらかでスケール感の大きな音をもつコントロールアンプである。
 聴感上での周波数レンジはややナローレンジ型で、ローエンドとハイエンドはかなり抑えているようだ。
 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、全体に音が一段と引き締り、反応の早さが感じられるようになるのは、♯510Mのキャラクターが出ていると思う。低域は柔らかく豊かであり、中域以上でも音の粒子は粗粒子型だが、滑らかに磨かれており、予想よりも高質さは感じられない。高域は少しラフな傾向があり、弦楽器がメタリックになるが、トータルとしては低域とバランスを保ち、ある水準を維持する。

AGI Model 511

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 初期のソリッドでタイトな音にくらべると、かなり音の粒子が細やかで、表情がナチュラルで、洗練された滑らかな音を持つようになった。聴感上での周波数レンジは、かなりワイドレンジ型で、バランス的には中域がやや薄く、音色は明るく滑らかなタイプである。
 ステレオフォニックな音場感は、左右方向・前後方向のパースペクティブともに充分に広がり、スッキリとした広い空間の再現性がある。音像はかなり小さくまとまり、輪郭は細くシャープである。音像はスピーカー間のやや奥に定位をする。表情はナチュラルで活き活きとし、オーケストラのトゥッティでの音の分離は素晴らしい。

スレッショルド NS10 Custom

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 静かな水面を覗き込む感じの、肌ざわりの冷たい透明感、とでも言ったらいいたろうか。非常に滑らかで緻密にぴしりと埋めつくされたようで粗さが少しもない。マッキントッシュC32のあの享楽的な鳴り方とは正反対の意味の、とても慎重な鳴り方をする。ぜい肉をおさえこむタイプで、素性はとてもいいがときとしてもう少しふっくらと開花したような色っぽさが欲しく思われたりする。また、音の余韻の繊細な響きが、空間のどこまでも広がって漂い消えてゆく感じまでは十全に鳴らし切れない感じなので、楽器のまわりに漂う雰囲気まで感じさせるというところまではゆかなかった。しかし質的にはきわめて高度で、清潔感のあるクールな音色が特色となっている。

スペクトロ・アコースティック Model 217

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 全体の構成やコントロールのしかたに、ふつう使いなれた一般的なコントロールアンプと考え方の異なる部分が多く多少とまどったが、コントロールのピントが合うと、たいへんクリアーで切れこみの良い、夾雑物のないディテールまで見通しの良い音が楽しめる。ただし、ボリュウムコントロールを時計の針で10時あたりの角度以上に上げたところで使わないとそういう明るく切れ味の良い音にはならない。フォノ・ゲインが30dBと40dBに切換えられるので、ゲインを30dBに下げてボリュウムを上げるようにした方がいい。絞った場合はやや反応が鈍く曇ってそれでいてどこか硬質の音になってしまう。極上とはいえないが輸入品としての価格を考えると一応の水準の製品か。

パイオニア Exclusive C3

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 寿命の長い製品だが、当初から良くできたコントロールアンプのひとつとして印象が良かった。どちらかといえばウェットな感じの音色だが、ふつう国産アンプの多くに不満を感じやすい重低音域の支えも十分にしっかりしていて、音に重量感もあるし、中域から高域にかけて適度にしなやかなので弦のニュアンスもよく出るし、ステレオの音像の空間へのひろがりもとてもいい。ただ、ハイエンドにいくらか強調感があって、それがプログラムソースによっては多少気になることがある。そのためもあってか音の密度がもうひと息欲しいという気もする。しかし以前の製品よりも一段とクォリティの高い音に仕上っていて、今の時点でも十分に優秀なコントロールアンプのひとつと感じた。

SAE Mark 2100L

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音に抑揚がつくというか、どちらかといえば味の濃い、身ぶりの大きい、コントラストの強い音を聴かせる。「オテロ」の冒頭など、かなりドラマティックなおもむきに鳴る。ダイナミックな音の伸びがいい。切れこみもよく細部をあきらかに聴きとらせる。ただ、弦合奏では倍音がいくらか目タックになる傾向があり、少々表情過多というか、どこか説明過剰のような印象だ。ただ、組み合わせたマランツ510Mの音と性格的に一脈通じる部分があるのか相性は悪くなく、ひとつのカラーに徹底したおもしろさがあった。ヘッドアンプは内蔵していないが、ゲインをかなり高くできるのでフルゲインではデンオン103Sなら実用になり、音に適度の魅力をつけ加えて生かす。

QUAD 33

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パワーアンプの405が発売されたあと、いずれ新型のコントロールアンプが発表されると誰もが思った。だがいつまでも出てこない。しびれを切らしてロス・ウォーカー(QUAD社長)に質問したら、「33でどこか不満か?」と聞き返された、という話は有名になっている。これに象徴されるように、33の音を最新のソリッドステートと比較すれば、不満はいくらも指摘できるが、反面、ボリュウムを上げてレコードから鳴ってくる音楽に耳を傾けるとき、この、たしかに音像は小造りだしひとを驚かす切れこみの良さも鮮度の高さもないが、聴くにつれて底に流れる暖かい響きの美しさとバランスの良さに気づけば、これはこれで完結したひとつの小世界なのだと納得せざるをえない。

ダイヤトーン DA-P15S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音の切れこみのよさ。シャープな表現。一聴していかにも解像力の高いという感じの音がする。バランス的にも低音域から中低音域にかけての支えがやや弱く中〜高音域にかけてキラキラした輝きがあるため、かなり硬質で金属的に聴こえる。したがって打楽器の切れ味の鋭さなどには特徴を出す反面、弦やヴォーカルは骨ばった冷たい音になる。もう少し音に暖かさや響きのしなやかさが欲しい。内蔵のヘッドアンプは、MC20では高域が鈍く音が細くなり情報量の減る感じになる。DL103Sでは専用のトランスよりは解像力が上るが中〜高域が張ってくる。ローフィルターやトーンコントロールをONにしたときの音質の変化はやや大きい。

マッキントッシュ C32

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音のひと粒ひと粒が、一種豪華な味わいのブリリアントな力に支えられているという感じがする。旧マッキントッシュでは、音をおおづかみにとらえて細部にこだわらないこせこせしない良さの反面、ディテールをいくらか塗りつぶして不鮮明にする弱点があったが、C32はさすがにこんにちの最新のソリッドステートらしく、反応がシャープでディテールもよく再現する。いかにも血色の良い享楽的でゴージャスな音で、これを耳にした後ではマーク・レビンソンがどこか禁欲的で貧血症にすら聴こえかねない。ただ個人的にはこういう音を毎日の常用として身辺に置こうという気持にならない。あまりにも積極的に音を彩るので、おそらく飽食してしまいそうだから。

デンオン PRA-1001

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 弟分の1003のところでも書いたと同じように、相対的にはバランスのよくとれた音で、ことさらにこのコントロールアンプでなくてはという音の特徴もないかわりに目立った弱点もない製品で、その点が安心できるともいえるし、しかしこの価格になればもう少し何かプラス・アルファも欲しい気もする。1003との比較では、こちらの方が音の艶があり密度も増して、聴きごたえの出てくる反面、中〜高域で、表面はおとなしくコントロールされているようで気づきにくいが、プログラムソースによってはときとしてかなり張り出してくるエネルギーがある。それをもう少しおさえることと、ハイエンドではもう少し目の前が開けたような透明感も望みたくなる。

マークレビンソン LNP-2L

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 LNP2が2Lと改称されたのは、新しく採用されたスイスLEMO社のコネクターの頭文字をとったのだそうだが、旧型とは別のアンプのように改良された音は、別にコネクターのせいではなく、まず別筐体の電源回路が強化されたことが第一。それに加えて2Lになる少し前から、増幅素子その他の回路素子、部分品類の小改良の積重ねが実って、最新型で聴くことのできるおそろしく透明で繊細で、緻密で優雅、そして音の奥行きとひろがりの素晴らしさを満喫させる音に仕上った。自宅でも常用しているが、できればオプション(別売)のバッファーアンプを回路に追加してもらう方が音質が向上する。本誌試聴機もそうなっている方を使っている。

デンオン PRA-1003

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たいへんバランスのよく整った音で、こういう音は言葉で言い表そうとするとかえってむずかしい。要するにこれといった際立った特徴があるわけでなく、たとえば難しい「オテロ」冒頭のトゥッティでも音のつみ重なりや各声部の表情を、曲の内容をいちおう聴きとるに不足しない程度には鳴らし分ける。この価格ということを頭に置いて言えば、これはかなり出来の良いコントロールアンプといえる。ただ、価格を別とすれば、低音での支えがもうひと息欲しいし、また中〜高音域では、わずかながら表情に硬さもある。音の密度という点でも、もう少し充実感も欲しく思われる。コントロールアンプ単体として10万円以下のローコスト機という前提でのおすすめ品ということになる。

オーレックス SY-88

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 アンプにとって難物のテストソースである「オテロ」冒頭のトゥッティの持続の部分でも、音の混濁するようなことがなく、いかにも歪の少ないことを感じさせる透明感の高い音を聴かせる。ただ、冒頭からのオルガンの低音の持続音が弱く、また〝SIDE BY SIDE 3〟でもベースの豊かさが出にくいことから、中低域から重低音域にかけてエネルギーが少々不足する傾向があるようだ。また同じソースでもピアノの丸みのある艶が出にくく、弦や声でも音がどうも素気なくなる傾向がある。総体に中〜高域重視のバランスだがトーンコントロール無しなので補正は不可能だ。物理特性的には良いのかもしれないが、音楽を音楽らしく味わいたい人間には必ずしも嬉しくない音だ。

マークレビンソン ML-1L

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前のJC2と基本的には同じ製品だが、型番がML1Lと変る以前から、内容にはかなり大幅の改修が加えられて、音質は旧型と一変している。旧JC2の一聴していわゆるハイ・ディフィニション(明瞭度が高い=高解像力)という印象の音よりも、大づかみにはLNP2Lのおだやかな音質に近づいた。というより、音の深味あるいは奥行きの深さと幅の広さではLNPにほんの一息及ばないが、基本的な性格はLNPと紙一重というところにせまって、あくまでも透明ですっきりと品位の高い音質は、両者を比較しないかぎりその差に気がつきにくいだろうと思わせるほど完成度が上っている。ゲインが高いためDL103Sクラスはトランスなしで実用になる。

アキュフェーズ C-220A

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 周到に練り上げられた上質の音であることをまず感じさせる。どんなプログラムソースに対しても、いわゆるメカッぽさや金属質の音を鳴らさずに、しっとりと潤いのある肌ざわりの、上品でエレガントな音を聴かせる。うっすらと薄化粧した感じさえある。音の解像力や切れ込みも十分に良いが、それをあからさまにひけらかさないトロリとした滑らかな味わいが好ましい。内蔵ヘッドアンプは、MC20もDL103Sに対しても良好で、ハイエンドのよく伸びた色あいの美しい音を聴かせた。欲をいえばダイナミックな凄み、そして低音の量感が、それぞれもうひと息増してくるともっと良いが、それにしてもこれはとても良くできたコントロールアンプのひとつといえる。

アキュフェーズ C-200S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 第一印象は輪郭の鮮明な鮮度の高い音。たとえばテストソースの中の「オテロ」冒頭のようにスケールの大きく編成の複雑な曲でも、混濁を生じることなく、ディテールをくっきりと浮き上らせ、声部をはっきりと際立たせて聴かせる。たた、音のコントラストをつよめて表現に抑揚をつけすぎる傾向があるために、楽音の内面よりも輪郭のくまどりの方に耳の注意をひきつけやすい。したがって打楽器系では立上りの鋭い切れ込みのよさが快いが、弦やヴォーカルではいくぶん硬さや冷たさを感じさせる。ただこれはテストの際のマランツ510Mの音との相乗効果もある。M60のようなソフトな肌ざわりのアンプと組み合わせると、適度に音をひきしめて楽しめると思う。

マランツ Model P3600

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 組み合わせて聴いた510Mは、他のすべての試聴にリファレンスにしているわけだが、たとえばシェフィールドのダイレクトカッティング・レコードなどで、ほぼパワーの限界近くまで上げて聴いたとき、コントロールアンプにマーク・レビンソンLNP2Lを組み合わせたときには510Mのピークインジケーターがしばしば点灯するのに、P3600にすると同じような音量まで上げてもインジケーターが点灯しない。ということは、LNPが何か不安定なシグナルを発生しているのか、逆にP3600がDレインジがせまくピーク成分が伸びきらないのか、確認はできないが、そういう違いがあった。しかし、やや光沢を抑えるがおだやかで、質の高い緻密な音は相当の水準だ。

マランツ Model 3250

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 設計はアメリカだが製造は日本マランツが担当しているということだから、一般の輸入品と比較するよりも価格的には国産機との対抗になるが、それにしてもこれは相当によくできたコントロールアンプで、クォリティ的に国産の十数万円台のそれと比較しても全くヒケをとらない。どちらかというとさらっと乾いて小ざっぱりした感じの明るい音だが、バランスも質感もかなりのもので、レインジも広く音が新鮮で、組み合わせた510Mとの相性などP3600よりも良いと感じたほどだった。しいていえば清潔で品の良いすがすがしい反面、もう少しトロリと練り上った味わいが出れば申し分ない。内蔵ヘッドアンプのできばえはまあまあというところ。

ハーマンカードン Citation 17

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前のセパレートアンプ特集号で旧型の♯11と♯16の組合せを聴いたときの印象では、低音域に独特の厚みと力が感じられて、下半身肥大のようなプロポーションで、しかもかなり厚着したような音だと思ったが、改良型にあたる♯17と♯16Aでは、そうした動きの鈍さあるいは重さがすっかり取除かれて、シャープで反応の早い現代ふうの音に変ってきている──と、一聴したときは思ったのだが、どうも基本的には解像力がもうひと息ともなわないところにそれを補うかのようにかなり鋭い音をちりばめたというように、いささかちぐはぐな鳴り方をする。かなり細い感じなので、イコライザーの150Hzのポジションをわずかに増強してみると、バランス的にはこの方が安定した。