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オンキョー M-77

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ひびきがちょっと重めだなというのが、ひと通りきいての印象だ。ひびきが重めであるために、たとえばそのレコードにおさめられている音楽がリズムの切れの鋭さを特徴としているものだったりすると、きいていくぶんにぶく感じられるということがある。音像が全体として大きめになるという難点はあるものの、たとえば声などは、声本来のなめらかさをよく示す。そのことからいえるのは、このスピーカーが、力強さ、あるいは輝き、さらには鋭さといったものに対応するより、なめらかさ、まろやかさ、しなやかさといった言葉でいえる音に対してこのましさを発揮するということだ。声といっても、❸のレコードできけるようなオペラ歌手の張りと力にみちた声は、いくぶん金属的になる。おだやかな、そして静かな音楽を、むしろ音量をおさえぎみにしてきく人のためのスピーカーといえようか。

総合採点:6

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(物足りない)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

オンキョー M-77

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 キャビネットの小さい割には、ちょっとびっくりするような重量感──とまでいうといくらか意味が強すぎるが、軽々しさのない、見た目の大きさからは意外なスケールの大きい、たっぷりした量感を聴かせる。中低域に意図的にふくらみを持たせているように聴きとれ、そのためかヴォーカル等では音像がふくらみ気味に、そして置き方などでうまくコントロールしないと音像が大きめに聴こえやすい。へたをすると、重い、鈍い、あるいは、こもった、という傾向の音になりやすいようで、レベルコントロールをいろいろいじってみた。中域を相当に絞り込むほうが、多くのプログラムソースに対してうまいバランスになるように思える。ただ、この音は、ほかで何回か聴いているM77にくらべて少々バランスが違いすぎるように思える。というのは、全体としてわりあいふくらみと量感のある音であることは変りないにしても、高音域がもう少しよく出ているのがM77のふつうの状態だと思うからだ。

総合採点:7

●9項目採点表
音域の広さ:6
バランス:6
質感:7
スケール感:6
ステレオエフェクト:6
耐入力・ダイナミックレンジ:6
音の魅力度:5
組合せ:普通
設置・調整:普通

オンキョー M-77

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 全体の傾向として、鮮烈な音楽・演奏には物足りないが、ソフトな音楽性に持味の生きるスピーカー。ピアノの粒は丸く聴きよいが、ややもったりとして切れ味の鋭さに欠けるといった具合である。その反面、弦楽器はしなやかでよく聴かれる耳ざわりな刺激音が出ない。むしろ、なかなか魅力のある、しっとりした美しさが楽しめた。シルヴィア・シャシュのソプラノはやこもり気味で、リアリティが不足したようだ。ソプラノらしい倍音の再生が十分ではないのか、聴きようになってはメツォのようなクードになる。ジャズではリズムが鈍く、シンバルや張りのあるスネアのスキンに冴えと切れ味の不足が感じられた。ブラスも倍音の冴え、透明感が不十分であった。甘美でソフトな持味を生かす音楽、あるいはそうした音色を嗜好する人々にとっては好ましいスピーカーといえるだろう。つまり、全体のバランスや音色の点でも、滑らかさではかなり優れた水準にあると思えるからだ。生き生きした元気のよさが望まれる。

総合採点:7