早瀬文雄
ステレオサウンド 96号(1990年9月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より
これは同時に聴いたエピキュアと、あらゆる意味で異なる性格を持つ製品だった。
デンマークに大規模なファクトリーを構えるジャモ社は20年の歴史を持ち、ヨーロッパでは高いシェアを誇る大メーカーだ。何しろ年間75万台ものスピーカーシステムを生産しているのだそうで、これには驚く。これまでわが国に本格的な紹介がされていなかったことが不思議なほどだ。
今回、同社の製品中もっとも先端的な内容を持つコンサートVIIが先陣をきって発売されることになった。
一見、なんの変哲もない2ウェイシステムに見える3ウェイ4スピーカー構成のシステムである。
フロントバッフルは特許のNCCボードが採用されているが、これは特殊なプラスチックでフォーム材をサンドイッチした構造をもち、不要共振をダンプしている。
正面から見ると、まず目を引くのが二重になったバスレフのダクトだ。それぞれに違ったチューニングが施され、内部には向かい合せにセットされた二本の20・5cmウーファーが隠されている。この二本のウーファーに位相を反転した信号を加えることにより、プッシュプル動作をさせている。
2・5cmハードドームトゥイーターの上方にあるユニットはミッドレンジ用で16・7cm口径。
システムトータルの音作りは、あくまでも雑共振を抑制し、S/Nを上げることを目指していることが各部の仕上げをみるとわかる。
じっさいに音を出す。とても淡白でくせのない、穏やかな透明感のある響きだ。強調感のない上品な高域とリジットで弾力性があり、しかも十分な重量感を感じさせる低音が鋭いレスポンスで再現されるところが爽快だ。内部定在波をわざと立て、特定帯域を強調するといった小手先のテクニックを弄しておらず、したがってアコースティックなウッドベースやピアノの響きにも汚い付帯音がのらず、実にすっきりしている。
いかにも現代的ハイテクスピーカーらしい音だが、これが時として、情緒感不足のそっけなさとして取られることもあろうが、これは無駄な共振を徹底して減らしたスピーカーに往々にして感じられる第一印象に共通したものだと思う。
しかし、逆に言えば、この純度の高い音に耳が馴染んでくると、他の製品の雑共振が耳につくようにもなる。
本機のパワーにも強く、相当な音量でも音が混濁せず、端正な音像、音場をキープするあたりなどは、あらためて価格を見て感心させられた。コストパフォーマンスという言葉はあまり好きじゃないけれど、これは不気味な価格であり、国際的戦略機種なのかな、とうがった見方をついしてしまう。
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