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マッキントッシュ C32

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 同社のプリアンプの最高峰がこの製品だ。はっきりいって、エキスパンダーは余計なもので、このアンプを使う人たちの音への要求と、この機能はちぐはぐだと思う。これは日本人とは異なる発想としか思えない。しかしこれをスイッチ・オフして使わないとしても、このアンプの魅力は、いささかも損なわれない。C29とはひと味違った楽音のニュアンスが、ここには聴ける。29同様、大人の風格と、王者の貫禄をもったプリアンプ。

音質の絶対評価:10

マッキントッシュ C32

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 アメリカのマッキントッシュ社のプリアンプ中の最高機種である。多機能なコントロールマスターであり、5分割のイクォライザー、エキスパンダー、ヘッドフォン用パワーアンプなどをもつ。デザイン、仕上げの美しさ、高級感は最高峰で、オーディオファンの夢を実現したといえるだろう。そしてまた、音の素晴らしさ、操作類のプロ機器なみの配慮による円滑さなど、目に見えないところにこそ周到な作りがなされている。

マッキントッシュ C32

菅野沖彦

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 マッキントッシュ社は、一九四六年に創立以来、アンプリファイアーの王者としてこの世界に君臨してきたメーカーである。それも、当時としては大変にユニークな低歪率のトランスの特許を獲得し、それを前面に打ち出した製品を開発してきただけではなく、アンプリファイアーというものを、オーディオの好きな人たちに、その物としての芸術的な香りさえも感じさせるほどの素晴らしいデザインと高い仕上げで見せてくれたメーカーとして、マランツと並んでオーディオ史上に燦然たる不滅の輝きをもつ名門なのである。
 その名門マッキントッシュの最新の最高級コントロールアンプが、このC32である。マッキントッシュといえば歴史の長いメーカーだが、いまだにパワーアンプには頑強に出力トランスを搭載しているということから、ついつい古いメーカーのイメージ、あるいは古い技術というように最近では思われている。しかし、これは大変な誤解である。マッキントッシュの技術開発は、常に前向きの姿勢で行なわれ、常にその時点での最新のテクノロジーを追求しているのである。ただ、いまアメリカにおいては新しいメーカーが雨後のタケノコのように生まれつつあり、そして新しい製品を発表しているわけであるが、そうしたメーカー間の兢争ということでみれば、確かにマッキントッシュは古いといって押しのけるには都合がいい。しかし、だからといってそれを鵜呑みにすることは、私は非常に浅はかなマッキントッシュに対する理解だと思うのである。
 私の理解する限り、マッキントッシュのテクノロジーは、最新メーカーの若いエンジニアのテクノロジーに比べて、いささかも古いとは思わない。むしろ、マッキントッシュは、商品として世に送り出すときに、技術の新しさだけを売物にして、あるいは製品に神話を結びつけて売る、などということをしないメーカーなのである。お客様に対して、音楽を聴く上において豊かな満足感の得られる、そして完成度の高い美しい製品を提供するという姿勢をもっているのだと思うのである。そういう意味で、私はどうも最近のマッキントッシュに対する理解は、少し付和雷同型の人たちによって過小評価されつつあるような気がするのである。
 このC32にしても、使用されているパーツ、素子、ディバイスなどは、選り抜かれた新しいものが使われているのである。回路にしても従来からの伝統は踏襲しているが、歪率ひとつとっても確実に従来のモデルから一ケタ減らしているのだ。したがって、決してテクノロジーのニューウェーブに立ちおくれているものではないと思うのである。
 そして、このC32のもっている魅力は、マッキントッシュ伝統の美しい、しかもユニークなグラスイルミネーションのりパネルデザイン、音の重厚な風格 そしてさらに洗練された透明感が加わった音にあるのである。
 最近のマッキントッシュは、このコントロールアンプC32のあとに、従来のC26の後継機種ともいえるコントロールアンプC27を発表したが、最新のテクノロジーを駆使したアンプシリーズをまとめようとしているようである。このC32は、そのニューシリーズのコントロールアンプにふさわしく、従来のマッキントッシュのアンプにあった重厚な音に、非常に透明度の高い、スムーズな美しい輝きが加わった製品である。そういう意味で、音の点からいっても、独特なイルミネーションパネルの重厚なデザインや仕上げからみても、私は現在のコントロールアンプの最高峰として、このC32は、当然〝ステート・オブ・ジ・アート〟に選ばれるものであろうと思うのである。
 実際に音を聴いてみても、自分の家に持ち込んでもうずいぶん長い間使っているが、実際に使ってみても、製品を手にしてみても、現在の数多くのコントロールアンプリファイアーの中で、このC32はやはり最高のコントロールアンプというに値する製品ではないかと私は思うのである。

マッキントッシュ C32

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

磨き抜かれた伝統技術とサウンドが高次元で一致した製品。

マッキントッシュ C32

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音のひと粒ひと粒が、一種豪華な味わいのブリリアントな力に支えられているという感じがする。旧マッキントッシュでは、音をおおづかみにとらえて細部にこだわらないこせこせしない良さの反面、ディテールをいくらか塗りつぶして不鮮明にする弱点があったが、C32はさすがにこんにちの最新のソリッドステートらしく、反応がシャープでディテールもよく再現する。いかにも血色の良い享楽的でゴージャスな音で、これを耳にした後ではマーク・レビンソンがどこか禁欲的で貧血症にすら聴こえかねない。ただ個人的にはこういう音を毎日の常用として身辺に置こうという気持にならない。あまりにも積極的に音を彩るので、おそらく飽食してしまいそうだから。

マッキントッシュ C32

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、♯510Mのソリッドでやや硬質なキャラクターを巧みにカバーして、豊かでしなやかなクォリティの高い音になる。
 聴感上での周波数レンジはナチュラルに伸びきっており、充分にローエンドまでのびた低域をベースとして、緻密で粒立ちが適度にクッキリとして芯がある中域、ハイエンドが少し抑えられた高域と、安定感のあるバランスを保っている。音色は明るく、好ましい重さがあり、音への反応もアクティブで、活気が充分にある。ストレートな音の表現力も見事で、エネルギー感はタップリとある。ステレオフォニックな音場感の広がりは、従来より一段と優れ、音像もシャープである。

マッキントッシュ C32 + MC2205

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 C28やMC2105までの製品とくらべると、デザイン上からもツマミやメーターまわりに太いふちどりがアクセントとして加わったことが、音質の傾向をも象徴している。たとえばマークレビンソンなら、面相(毛筆)か細書きのペンで慎重に繊細に描写するであろうところも、マッキントッシュの手にかかると、もっと大胆に、いくぶん荒々しく大掴みに、太い線でこってりと描き出す。従前のシリーズよりはディテールもはるかによく浮き彫りする解像力が加わったが、その描線はコンテかパステルの質感のようで、味わいも濃いが反面どこまで細部を描き込んで行っても、輪郭がどこかケバ立ってペン書きのような繊細さには至らない。だが色彩感はこちらの方がはるかに豊かだ。この豊かさは旧型以来のマッキントッシュの伝統だが、新型ではそこにいっそうの輝きと鮮度の高さ、そして華麗で豪華な味わいが増してきた。この濃い味を毎日の食卓で飽食しないなら、かなり器の大きな人というべきだろう。