井上卓也
ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
「BEST PRODUCTS」より
CD時代のオンリーCDプリメインアンプを特徴として、アンプのサンスイから、AU−D707XCDディケードが新発売された。このアンプのもつ意味を簡単にいえば、MC型MM型対応のフォノイコライザーを省略し、CDプレーヤーに代表される、ハイレベルの高クォリティなプログラム専用のシンプル・イズ・ペスト的考え方に徹底した設計ということができる。
CDプレーヤーが普及するにつれ、CDプレーヤー自体の問題点であるデジタル系のノイズや高周波の不要噂射が、筐体やAC電源を介して、アナログディスクの再生系に影響を与え、音が混濁し、鮮度感を大幅に損うことが次第に認識されるようになっているが、逆に、アナログディスク用のフォノイコライザーアンプが、プリメインアンプの筐体内で、フラットアンプやトーンコントロールアンプなどに影響を与え、CDならではの圧倒的な情報量や鮮度感、反応のシャープさを損っているのも事実で、最近のようにアナログディスクを使わずCD専用の使い方が増えると、このフォノイコライザーの妨害は無視しかねる問題だ。
ちなみに、CD専用の使い方の場合に、フォノ入力に、最近では少なくなったが、入力をショートするショートプラグ(シールド線をプラグの近くで切り、芯線と外被を結んで作ることもできる)を挿して、再びCDの音を聴いてみれば、結果は明瞭だ。高域が素直に伸び、爽やかで、透明感のある音に変わっているはずだ。これは、注意して聴かなくても容易に判かる差だ。
これを徹底して追求すると、フォノイコライザーアンプを取り外すことになるわけだ。因果関係は明瞭で、問題点はないが、フォノイコライザーアンプを省くことには慣例的に決断を要求されることになる。
その他の変更点は、信号系が基板経由から信号ケーブルに、ヒートシンクと電源コードの強化、4連ボリュウムとアルミ・ムク削り出しツマミ採用、ランプのDC点灯化などの他、入力系の8系統化などがあり、かなり手作業の必要な高性能化である。
CDダイレクト時には、専用ボリュウム経由で信号は、ツインダイヤモンドXバランスアンプに、他のアンプをバイパスして送られるため、約10dBのゲイン差があり、通常使用レベルでの音量差を少なくする特殊カーブを採用している。なお、CDダイレクト時には、ボリュウムツマミの12時位置にオレンジ色のパイロットランプがつく。
基本的にCD直接、チューナーetc、TAPEとADAPTORの4系統の入力系があり、それぞれで音質や音色、音場感などが変わるが、変化が問題ではなく、この変化を利用して使うのがユーザー側の、素直な対応というべきであろう。CD直接が、たしかにナチュラルで色付けは少ないが、少し内省的ソフトさがある音だ。平均的な要求の場合には、アダプター入力やテープ1/2も適度に輪郭がつき楽しめる。
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