ヤマハ B-5

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 見るからに美しく、すっきりと、しかも落着きと重味を感じさせる質の高さが、外観に滲み出ている。ブラック・フィニッシュの色調仕上げもキメが細かく、好ましい質感で仕上げられている。オブジェとしてみても美しく、B6と並べて楽しめる。オーソドックスな完成度の高いアンプである。240W+240Wのパワーも、独立パワーアンプとして本格派で、内部のコンストラクションも整然としていて質が高い。

音質の絶対評価:8.5

ヤマハ B-6

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 実にユニークでオリジナリティに溢れたパワーアンプである。こういう製品を作るヤマハに拍手をおくりたい。決して使いやすくもないし、必然性があるとも思えないが、フリーな感覚があってもよい。ピラミッド型、しかも、コンパクトで、200W+200Wのパワーをもつ。魅力的だ。多少内容に不満があっても、技術的興味とデザインのユニークさにカバーされて、愛着をおぼえる製品である。

音質の絶対評価:7

ヤマハ C-2a

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 仕上げも作りも立派な緻密な製品で、ブラックフィニッシュながら、スマートな印象を受ける。デリカシーのあるアンプ。MCヘッドアンプ内蔵DCアンプ構成の先進的なプリアンプだが、外観にも音にも気張ったところがなく、大人の雰囲気をもっている。こういう製品はロングライフになり得るだろう。コントロール類も使いやすく、感触も洗練されている。地味だが落ち着いた風格を感じさせる次元の高い完成度をもっている。

音質の絶対評価:8

ヤマハ C-6

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 A級ピュアカレント・サーボアンプ方式を採用したヤマハの新しいコンセプトによる製品で、デザインも、それなりに若返ったイメージである。豊富なファンクションをもったフル機能のコントローラーとしてユティテリティは大きい。全体にブラック仕上げは美しいが、品位と格調はそれほど高くない。価格からしても、独立型プリアンプの普及型であり、その限りにおいてはよく出来ている製品だ。

音質の絶対評価:6.5

テクニクス Technics A1 (SE-A1)

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 もう4年前に発売になったテクニクス・アンプの旗艦としての存在。出力は350W+350W(8Ω)で、スピーカーは4系統使える。独特な、クラスA+と称する回路で、A級、AB級の中間的な動作でノッチング歪のない設計。さすがに、その堂々たる体躯で貫禄充分だが、雄々しさやヒューマンな暖かみのあるものではない。どちらかというと端整で、少々冷たい感触を受ける。悪くいえば、やや陰湿なのである。

音質の絶対評価:8

テクニクス Technics A3 (SE-A3)

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 200W+200WのニュークラスAアンプで、スピーカー切替は2系統と、A+Bの3点。ローレベルの読みやすい大型パワーメーターを装備、これがパネルフェイスの基本となっている。テクニクス・アンプに共通の、日本的ともいえる、さっぱりしたデザインイメージが、どこか音と共通するニュアンスを持っている。決して重厚感や、強い個性的主張のあるほうではない。この辺がよきにつけあしきにつけ印象の薄い原因。

音質の絶対評価:7.5

テクニクス Technics A5 (SE-A5)

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 120W+120W(8Ω)のパワーアンプで、スイッチ切替で30W+30Wにパワーを押え、メーター・イルミネーションを消して省エネ使用ができる。スピーカー切替2系統。テクニクスのパワーアンプの中では最も新しく、普及タイプともいえるが、総合的に完成度が高い。ただし、ややスピーカーを選ぶ傾向があるようだ。大型のパワーメーターはVU的な動きでピーク指示はしない。デザインセンス、仕上げは中の上。

音質の絶対評価:8.5 

テクニクス Technics A2 (SU-A2)

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 超弩級のプリアンプである。一目見ただけでは、とても理解し切れないコントローラーが所狭しと並んでいる。ここまで出来るぞという姿勢の表現だから、こうなるのも仕方なかろう。それにしても凄いプリアンプを作ったものだ。値段も重量(38kg強)も世界有数のプリアンプである。こうなると批評の埒外で、ただ圧倒されるのみ。一度のみこんで整理してみると意外に使いやすいのだが、使いこなすチャンスは滅多にない。

音質絶対評価:7.5

テクニクス Technics A4 (SU-A4)

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 一目でポジションがよくわかるという理由は理解できなくないのだが、この縦長のツマミには抵抗を感じてしまう。使いやすさでは文句ないが、バラバラと互いにそっぽを向いている様は美しくない。サブパネルを閉じれば、すっきりと必要なものだけがメインパネルにあるという合理性に、音楽機器としての情緒性もブレンドしてほしいところ。パネルとツマミの色のバランスも成功しているとはいえない。貫禄が不足だ。

音質の絶対評価:7

テクニクス Technics A6 (SU-A6)

菅野沖彦

’81世界の最新セパレートアンプ総テスト(ステレオサウンド特別増刊・1981年夏発行)
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」より

 すっきり、さっぱりといえばよい表現になる。どうも、こういう厚みや暖かさにかける機械は個人的には好きになれないのである。プリアンプというものは、レコード音楽の演奏にあたって、プレーヤーとともに直接、手で操作する機会の多いものだけに、もっと夢のある、楽しさを感じさせてくれるものであって欲しいのだ。こういう生硬なフィーリングは音楽をプレイする心情とはうらはらなのである。悪趣味よりはずっとよいが……。

音質の絶対評価:8

マッキントッシュ MC2500

菅野沖彦

ステレオサウンド 58号(1981年3月発行)
特集・「第3回《THE STATE OF THE ART 至上のコンポーネント》賞選定」より

 マッキントッシュのMC2500は、同社の最新・最高の製品として、昨年(一九八〇年)発売された、超弩級アンプである。このアンプのパワーは、片チャンネル500Wという公称値で、実測では600Wオーバーという強力さである。しかもそれが、単にパワーの大きさにとどまらず、ローレベルからのリニアリティや、音の緻密さ、繊細感が瑞々しい雰囲気の再現とともに第一級の品位をもっているのである。
 MC2500は、今から約13年前に、マッキントッシュのパワーアンプの最高峰として君臨した、MC3500のピュア・ディグリーである。管球式のモノーラルアンプで350Wのパワーを誇ったこのアンプは一九六八年の発売で、20Hz〜20kHzのバンドウィズス、0・15%の歪みをフルパワーまで保証された、まさに当時の王者各のアンプであった。もちろん、同社の伝家の宝刀であるアウトプット・トランスフォーマーの特別に巨大なものが使われ、1Ω〜64Ωまでものインピーダンス・マッチングが得られる代物に目を見はったものだ。これとほぼ同形のシャーシにトランジスター式ステレオアンプとして構成された製品が、MC2300であって、この製品の登場とともに、MC3500は、その位置をトランジスター式ハイパワーアンプに譲り渡すことになった。
 MC2300は、300W+300Wのパワーで、トランジスター式ながら、依然としてアウトプット・トランスをもち、信頼性と安定性に充分な配慮がなされている点は、他のマッキントッシュアンプ同様である。このアンプの登場によって、マッキントッシュの全製品が、トランジスター化されたわけだが、一九七三年というこの時期は、大変遅い転換であり、同社の信頼性を第一に考える慎重な姿勢が現われているといえるだろう。
 以来、7年目に登場したが、このMC2500であって、80年代の幕開けに、MC3500の孫に当るMC2500が、マッキントッシュ艦隊の旗艦となったわけだ。3代にわたって、共通のデザイン・イメージをもつ、こトップモデルは、内容もまた、脈々と流れるマッキントッシュのアンプ作りの一貫した技術個セプトとノウハウの上に実現したものであって、この姿一つとっても、マッキントッシュが、いかに信頼性の高い筋金入りのメーカーであるかが理解できるであろう。創立以来35年、同社は、現在アメリカで、真の意味での独立企業として、最も古い伝統と、新しいテクノロジーをもち、積極的に開発とマーケティングに取り組んでいるメーカーの数少ない一つである。多くのアメリカのオーディオメーカーが、経済的に独立できず、古いメーカーは、ただ伝統の上にあぐらをかき、まるで老人のような体質になってしまったり、あるいは経験不足の新しいメーカーが、やたらに新しいテクノロジーだけを振りかざし、信頼性のない素人づくりのような製品を馬鹿げた高い値段で売ってみたりする中で、マッキントッシュ社は、確かな手応えの高級機器を、プロの名に恥じない完成度をもってわれわれに提示してくれるメーカーとして、今や貴重な存在なのだ。
 MC2500は、そうした同社の代表製品にふさわしい充実したもので、500Wオーバーのパワー、モーラルでは1kWを超える大出力を、高効率で得、しかも20Hz〜20kHzにわたって0・02%の歪みを保証している。118万円という価格は決して安くはないが、因みに、他の同級アンプの内容、価格と比較してみるならば、これが破格といってよい安さであることもわかるだろう。ましてや、一度このアンプを目前にして、使ってみるならば、もうお金にかえられない喜びと、充実の気持に満たされるはずだ。MC3500、MC2300と、常にその時代の最高のパワーアンプの後継にふさわしく、あらゆる点で、現代最高のパワーアンプの風格に満ちている。

アキュフェーズ C-7

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 RET入力完全対称型プッシュプルA級DC構成のヘッドアンプ。聴感上でのf特は最新アンプにありがちなワイドレンジ志向ではなく、ナチュラルな帯域バランスが特長。MC20IIでは、整然とした凝縮した緻密な音が聴かれ真面目な表現が目立つ。ロッシーニは、少し表情に硬さがあり、ドボルザークは、整理された音が少し遠くに広がる。峰純子は重い低域と穏やかな丁寧な歌い方となり音質は少しソフトにまとまる。
 DL305にすると、音色は暖色系で柔らかくスムーズでキメ細かさが出てくる。ロッシーニは気軽に楽しめ、ドボルザークは少しスケールが小さくキレイにまとまる。キャラクターは少なく手堅く音を美しく聴かせる点が特長で、長時間聴いても疲れない音質。

アントレー EC-20

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 MCカートリッジ専門メーカーのアントレーからは、先号で紹介したシェル一体型のトップモデルEC30が発売されたが、これに続いてまたもや新製品EC20が発売になった。EC20のリポートの前に、EC30でその後わかった点を、この欄をかりて報告しておきたい。EC30は、MC型カートリッジが広帯域で繊細な音というイメージが強いなかに、力強く、パワフルな音をもつ製品として印象が強いが、力強く音をいきいきと聴かせる反面、MC型らしい彫りの深いシャープな分解能が不足気味であると思う。この点は、その後連続して使う間に、徐々に生硬さが解消して、フレキシビリティとシャープさが出てくるようだ。メーカーに問合せた結果でも、約10時間ほど使うとエージングができて本来の調子になるとのことで、EC30を使用中の読者は、しばらくエージングして使っていただきたい。MC型カートリッジのエージングの例は、オルトフォンSPUシリーズなどではいわば常識化されている。最初は音が硬く荒々しいが、使う間にスムーズさが出てきてSPU独特の音になる。そして、絶好調の時期が来たら、そろそろ針交換の時期が来たなということでスペアを用意しておくというのが愛用者の共通パターンだ。
 さて、新製品のEC20は、アントレー初のカンチレバーにサファイアパイプを採用したモデルだ。ムクの棒に較べて50%軽いサファイアパイプカンチレバーは、剛性が高く、音の伝搬速度が速い利点をもつが反面、硬度が高いだけに狂信が発生しやすい欠点をもつ。これを解決するために、EC20ではアルミパイプをサファイアパイプの基部にインサートしステップド・テーパード状としてQダンプをおこない高域共振を抑え、この固有音がつきやすい宝石系カンチレバーのデメリットを解決している。
 磁気回路はサマリウム・コバルト磁石、コイル巻枠は2mm角スーパーパーマロイ使用で3Ω、0・25mVの高出力を得ている。
 EC20は、ナチュラルな帯域バランスと、明るくダイレクトな音が特長。宝石系カンチレバー特有の固有音の発生や逆に過制動の印象はなく、芯が強く活気があり、ダイナミックな音を聴かせる。針圧はアームにより微調整が必要。アームはオイルダンプ型より通常型が性質とマッチした。

エレクトロボイス Sentry100

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より

 このシステムは、エレクトロボイス社が放送局及びスタジオモニターシステムとして小型、高能率それに周波数特性が軸上で3dBダウンのポイントが低域で45Hz、高域で18kHzを目標に開発した新製品。
 ユニット構成は、20cm口径ウーファーとスーパードーム型と名付けられたトゥイーターの2ウェイ型で、クロスオーバー周波数は2kHzにとられている。ユニット関係では、放送局用コンソールのあまりハイパワーでないパワーアンプでも、例えばロックンロールのディスクジョッキーが要求するパワーを得るために高能率が要求され、300〜2000Hzで91dBが得られているが、この値は米国では高能率の部類に入るようすである。また、テープデッキの早送り、巻戻し時のキューイングでトゥイーターを破損しないように、ドーム型トゥイーターの許容入力は、通常のタイプの約5倍の25Wに耐える設計である。
 システムとしての許容入力は、長時間の使用では30W、10ミリセコンドの短時間なら300Wと発表されている。インピーダンスは6Ωとあるから、全般に能率を上げるためにインピーダンスをかなり下げる設計が広く採用されている昨今では、むしろ平均的な値といえよう。ちなみに、5万円以下の国内製品ブックシェルフ型では公称インピーダンスが8Ωで、実際の最低インピーダンスが4Ω以下というシステムも存在している。最低インピーダンスを知らぬユーザーが8Ωと信じて比較試聴をすれば、このようなシステムは見掛け上で高能率と思いやすいことに注意すべきである。
 このセントリー100で注目したいのは、場所的にモニタースピーカーを任意の位置にセットし難い放送局などのスタジオ使用状態に合わせるために、別売のSRB7ラックマウント兼ウォールマウントキットがある。これを使えば、19サイズのラックに前面から取付け可能だということだ。
 エンクロージュアも業務用を考慮して外装はマットブラックのビニール仕上げだ。
 セントリー100の豊かでやや制動の効いた低域をベースに、少し薄い中域、スムーズな高域という典型的2ウェイバランスの音だ。音色は低域が重く粘りがあり、高域は適度に明るい。モニターとしては穏やかな音で長時間の試聴でも疲れないタイプ。

マイクロ SX-8000

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 マイクロが専門メーカーらしいマニアックなターンテーブルの製品に徹したポリシーをとって生み出した最高級品がこれ。20kgのステンレス製ターンテーブルを糸あるいはベルトで駆動するが、駆動モーター部とターンテーブルアッセンブリーはセパレート型。重いターンテーブルのシャフトはエアーで負担を軽くし、ノイズも軽減し耐久性を確保している。ハウリング対策さえ解決すれば、このターンテーブルならではの澄んで確固たる音が聴ける。

タンノイ Autograph

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 デュアル・コンセントリックK3808ユニットは別名スーパーレッドモニターと呼ばれる38cm口径の同軸型2ウェイである。これを、複雑な折り曲げホーンの大型エンクロージュアに収めたもので、オリジナルは、タンノイの創設者、G・R・ファウンテン氏のサイン(オートグラフ)を刻印してモデル名とした名器。これを日本の優れた木工技術で復元したものが、現在のオートグラフ。高次元の楽器的魅力に溢れた風格あるサウンド。

マッキントッシュ XRT20

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 24個のトゥイーター・アレイをもつ、3ウェイ27ユニット構成というユニークなシステム。緻密な計算と周到な測定技術によって開発された抜群の指向特性によるステレオフォニックな音場再現、驚異的なリニアリティによるDレンジの大きなハイパワードライブ、広帯域の平坦な周波数特性など、物理特性でも最高水準のものだが、その音の品位の高さ、自然な楽器の質感や色彩感の再生は群を抜く、実に高貴な音だ。

30万円以上の価格帯の特徴(カセットデッキ)

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 30万円以上の価格帯は、100万円以上のセパレートアンプや、同様な価格のプレーヤーシステム以上に、まったくのスペシャリティ的な製品が存在するところで、特別にカセットデッキに興味がないかぎり、実質的に持つことの喜び以外には、ディスクファンには関係のないプライスゾーンである。しかし、このクラスの超高級国内製品ともなると、各種テープに対するチューニングは全てデッキ側で自動的に調整され、テープ間のf特的な特長はなくなり、本来のキャラクターが引出せるほか、走行系、アンプ系ともに非常に高度なものを備えるため、これがあのカセットテープの音かと驚嘆するような見事なサウンドが得られる。ノーマルテープでさえ、中級機程度のメタルテープの音とは比較できない優れた音質を聴かせる。
 海外製品は、これに比較してカセットの範囲内での個性的なサウンドとユニークな機能が特長で、ひと味ちがった楽しさがある。

マッキントッシュ C32

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 アメリカのマッキントッシュ社のプリアンプ中の最高機種である。多機能なコントロールマスターであり、5分割のイクォライザー、エキスパンダー、ヘッドフォン用パワーアンプなどをもつ。デザイン、仕上げの美しさ、高級感は最高峰で、オーディオファンの夢を実現したといえるだろう。そしてまた、音の素晴らしさ、操作類のプロ機器なみの配慮による円滑さなど、目に見えないところにこそ周到な作りがなされている。

40万円以上の価格帯の特徴(プレーヤーシステム)

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 40万円以上のプレーヤーシステムは、まったくのスペシャリティ製品の存在する価格帯で、その上限も350万円を超すとなると、「ベストバイ」としての選出自体が、いささか問題となるのではないだろうか。
 このランクの製品は、基本的に、コンシュマー用の超高級モデルと、本来はスタジオや放送用の業務用モデルの2種類がある。さらに、20〜40万円の価格帯でも述べたように、アームレスシステム、それも超重量級のターンテーブルを糸またはベルト駆動するシステムに、ユニバーサル型や専用アームを取付けて組合わせるタイプも、この価格帯では考慮する必要がある。業務用は完全にフル装備で、イコライザーアンプも備え、基本的に変更はできないのに対して、コンシュマー用はかなりフレキシブルであり、アームレス型なら複数個のトーンアームの使用、ターンテーブルを追加しての二重駆動など発展の可能性は大きい。

スレッショルド STASIS 1

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 比較的新しいメーカーながら、スレッショルド社は堅実な製品づくりで信頼性が高い。技術的な内容とデザイン、創りの入念さなどがよくバランスしている最高級品である。中でも、このステイシス1は、同社のパワーアンプ中で最高の製品で、世界的レベルでみても堂々たる存在。200Wのモノーラルアンプで、実に大胆に物量を投入して最新のテクノロジーと合体させている。密度の高い、こくのある音は音楽の品位をきちんと出す。

100万円以上の価格帯の特徴(パワーアンプ)

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 全面的に海外製品の占める分野である。このクラスも、コントロールアンプのスーパーマニア製品の項で述べたことが共通していえる。パワーアンプの場合には、パワーで差が出るというのがコントロールアンプより誰にでも理解のいくところだが、かといって、実際にすべての100万円以上のアンプが超出力であるとは限らない。マーク・レビンソンのML2Lのように、モノーラルで25Wというものもある。これを2台そろえれば、198万円だ。ステイシス1は200懦夫るあるが358万円にもなる。同じパワーでステイシス2は半値以下の113万円である。マッキントッシュのMC2500は500Wのパワーで118万円。このように、パワーと価格も全く無関係というのが現実である。メーカーの実情と力などによっての価格水準も変わってくることも加わって、その価値判断は実に複雑な様相を呈することになる。これが趣味の世界というものなのかもしれない。

EMT 930st

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 プロ用のプレーヤーシステムとして特殊な存在だが、EMTとしては927Dstに比べて、コンベンショナルな放送局用である。TSD15カートリッジ専用で、トーンアームは同社の929を使っている。アイドラードライブの3スピードというオーソドックスなターンテーブルの信頼性と性能、音質の品位は高い。イクォライザーアンプを内蔵し、出力はラインレベル/インピーダンスで取出せるようになっている。

JBL 4333B

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 C50SM、4320、4333と続くJBLスタジオモニターの正統派のラインを受継ぐ最新作。低音は独自の構造のフェライト磁気回路の採用で、従来の4333Aと較べ、エネルギーバランスが格段に優れ、システムとしての性質も大人っぽく完成度を高めた。使用するアンプ系は、並の製品では低域に破綻を生じやすく、本来の性能を引出せない。システムとしてのまとまりの良さは4343B以上で、さすがにプロ用モニターだ。

ナカミチ Nakamichi 1000ZXL

菅野沖彦

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 カセットデッキの最高峰といってよい、ナカミチらしい力作である。マイク/ライン録音にあらゆる面から対処し、テープへのバイアス、イクォライザー、レベルは、マイコンにより全自動化されている。マニュアルでは、イクォライザー2段、バイアス3段切換えだ。録音15曲のコーディング、再生30曲のメモリー選曲、タイマー、ピッチコントロールなど至れり尽くせりの高性能デッキで、まさにカセットのリファレンスにふさわしい。