瀬川冬樹
続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「24項・ボーズ901/SERIESIV 独特の理論でつくられている間接音重視型」より
間接照明──光源が直接目に入らないように、一旦、壁面や天井に反射させる照明──は、光が部屋ぜんたいをやわらかく包む。このたとえはすでに6項でも使ったが、アメリカのボストン郊外にあるユニークなメーカー、BOSE(ボーズ)の製品は、それと同じ原理で作られた独特のスピーカーだ。中でもこの901型は、同社を代表するモデルで、すでに四回に亙る改良の手が加えられた最新型だ。実物を目にすれば、エンクロージュアが小さいことが意外に思われるかもしれない。音を聴けばなおさらのことで、この小さなエンクロージュアから、びっくりするほど豊かな低音が朗々と鳴ってくる。それでいて、このエンクロージュアの中には、大型のスピーカーユニットはひとつもついていない。直径10センチ(4インチ)という小型ユニットが全部で9本。すべて同じもので、低音専用とか高音専用とかいう区別のない、いわゆるフルレンジ(全音域)型である。
この9本のユニットのうち、1本だけは正面を向いているが、残りの8本は背面にとりつけられて、それがすべて壁面に反射した間接音で聴き手の耳に達する。言いかえれば、スピーカーユニットから出る音の11%が直接音として、残りの89%が間接音として耳に到達する。これは、このスピーカーの設計者であるドクター・ボーズが、コンサートホールでの音の聴き手に到達する割合を調査して得た結論から抽き出した独特の理論だ。この理論に対して、レコードに録音された音自体にすでにホールの反響音が含まれているのだから、そこからあとの再生装置で反射音をつけ加える必要はないという反論があるが、むしろ901の鳴らす音は、そんな反論に疑いを抱かせるほど、ときとして魅力的だ。
左右二台のスピーカーを、専用スタンドにとりつける。反射音を有効に生かすためには、スピーカーの背面が、極端に音を吸収するような材質や構造であってはいけない。従来までの901型は、この店で、ふすまや障子など吸音面が多い日本の家屋では、なかなかうまくその良さを生かせなかった。しかしTYPEIVに改良されてからのニューモデルは、よほど極端な吸音面でないかぎり、ほとんど問題なく使えるようになっている。
ひとつ大切なことは、このスピーカーは単独でなく、専用のイクォライザーアンプを必ず併用すること。このイクォライザーは、アンプのTAPE OUTとTAPE INの端子のあいだに接続する。そしてイクォライザーアンプのスライド式のツマミを左右に調整しながら、聴感上、低音と高音のバランスの最も良いと思われるポイントを探す。このツマミは、好みに応じて常用してもよいし、一旦調整ののちは固定してもよい。いずれにしてもイクォライザーをON−OFFしてみると、その変化の大きさに驚かされる。スピーカー背面と壁面との距離、そして左右のスピーカーの間隔のとりかたは、部屋の響きや大きさに応じて、聴感上最良の位置を探す。これは901を使いこなす際の大切な作業だ。また、反射音を有効に生かすためには、スピーカー周辺に大きな家具その他ものを置かないことを心がける必要がある。最良点に調整したときのボーズ901の、ひろがりのあるやわらかな響きは独特だ。
スピーカーシステム:BOSE 901 SeriesIV ¥340,000(ステレオペア)
コントロールアンプ:ヤマハ C-2a ¥170,000
パワーアンプ:マランツ Model 510M ¥525,000
チューナー:ヤマハ T-2 ¥130.000
プレーヤーシステム:パイオニア PL-L1 ¥200,000
カートリッジ:オルトフォン Concorde30 ¥29,800
計¥1,394,800
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