瀬川冬樹
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
質感は必ずしも上等とはいえないが、つまり本来しっとりと艶やかに鳴って欲しいドイツ・グラモフォンやEMI録音のオーケストラや弦合奏の音でも、いささか乾いた傾向のそっけない音で鳴らしてしまう性質がある。がそれを別として、クラシックからポップスに至るどのテストソースを鳴らしても、ことにかなりの音量で鳴らしても、国産の一部のスピーカーにありがちの、ことさら中〜高域を張り出さしたためにヒステリックな音に聴こえたり、あるいはこれみよがしの店頭効果を狙ったり、または中域から低域にかけてのどこか箱の中にこもるような、要するに音域のどこかに不自然さを感じさせるような要素がほとんど感じられず、すべてのプログラムソースを、ひととおり気持よく聴けるという点は、やはりさすがだと思わせる。とはいっても、アメリカの東海岸で作られるスピーカーの大半がそうであるように、聴感上は高域をおさえこんで丸めてあり(それが聴きやすさの一因でもあるが)、また小型であるだけに低域の量感も十分とはいえない。台はやや高め(約50センチ)で、背面を壁につけるのがよかった。音の艶を補うにはSTS455Eがいいかと思ったが、逆にピカリングXSV3000などのように中域の密度の濃い音でドライブする方が、ことにシェフィールドのダイレクトカットなどのソースで一種説得力のある音が得られた。
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