瀬川冬樹
ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より
TA3650でも感じたことだが、ソニーのアンプは新しいシリーズになってから路線を変更しはじめたように思う。どういうプログラムソースでも音にいじけたところがなく、朗々とたっぷりした響きで豊かに鳴る。ナマの楽器の持っている一種の明るい自在な響きを、このアンプはよく掴まえて聴かせる。音楽のファンダメンタルの領域でいかにも音が充実しているので、音がやせたり細くなったりしない。ただ3650のところでも書いたように、弦の高域など繊細であるべき音をいくらか太目に表現する傾向があるが、音に新鮮さとしなやかな表情があるために、音の太いことが聴き手にあまり不満を感じさせない。JBL系のスピーカーで合唱曲など聴くと、押しつけがましさがないとはいえないが、総体に長所の方が多く、よくできたアンプといってよさそうだ。この価格帯ではパワーが少なめだが、聴感上の音量を相当上げてもパワー不足という感じはしなかった。
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