ティアック PD-11

井上卓也

ステレオサウンド 72号(1984年9月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 オープンリールやカセットデッキでは、古くからの伝統を誇り、多くのファンに確実にバックアップされているTEACから、同社のCDプレーヤーシステム第一弾作品であるPD11が発売された。
 世界に先駆けて、レーザーピックアップ方式によるPCMディスクプレーヤーを開発した実績をTEACはもっているだけに、レーザーピックアップは音楽信号を読み取るメインビームとトラッキングサーボ専用の2個のサブビームを備えた3ビーム方式を採用。それとともに、ディスクの反りに対応して、フォトダイオード上に結ぶレーザービームの像の形を検出し、この像が常に真円であるように対物レンズを制御し、信号検出レーザービームの焦点を正確に保つ高精度フォーカスサーボにより、情報の読取りは、きわめて正確である。
 音質上重要なフィルターは、デジタルフィルター採用で、サンプリング周波数を2倍とした後にブロードなローパスフィルターを使うタイプで、音楽の雰囲気やニュアンスの表現に重要な超高域を確実に保護しているとのことだ。
 横能面は、タイマースタートやディスク挿入だけのオートスタート、1曲ごとまたはリピート1回ごとのポーズができる3ウェイオートオペレーション機能、23曲までのメモリーとメモリー再生時に自動的に3秒の曲間スペースを設定するほか、メモリー全曲の演奏時間の表示ができるクイックイージープログラミング機能、ディスク全曲、メモリー全曲、A・B間の3ウェイリピート横能、演奏中の曲の頭出しと次の曲の頭出し、音出し低速と高速さらに音無し高速の3モードが使えるミュージックサーチボタンなどの他に、PD11の動作状態が確認できるマルチファンクションディスプレイ、ディスク装着状態を確認できるディスクインジケーターなどが備わっている。なお、外形寸法は、横幅が、346mmのコンパクトサイズである。
 他社でいえば、すでに、第二世代から第三世代の製品に置換えられている現時点で、第一弾製品として登場してきたモデルだけに、総合的にはかなり手憬れた感覚で作られている。最初の製品に見られるトラブルめいたものが存在しないのは、当然の結果とはいえ本機の特徴である。
 音の傾向は、RCAピンコードの種類でかなり大幅に変化を示すタイプだが、基本的には、中高域に適度の華やかさのある軽快な音をもつ製品である。CDのハイクォリティさを引出すというよりは、機能面でのCDの特徴を活かして、フールプルーフにイージーオペレーションで音を楽しむのに適したモデルであろう。実用面では、外部振動の影響を受けやすい傾向をもつために、設置場所はアナログプレーヤーなみに注意することがポイントになる。

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