オットー DCA-1201

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 テストレコードの中の「悲愴」のトゥッティの部分など、もしもバランス的におかしなアンプであれば一瞬に馬脚をあらわすのだがこのアンプは、低域から高域までエネルギー的には過不足なく、細かなパートの動きも一応十分に聴かせる。そのことから、物理データはおそらく一応の特性が出ているらしいことが聴きとれるが、しかし、バッハの「モテット」のような合唱曲の場合に、声の重なる部分での音の透明感が損なわれるようなところがあって、極小パワーの部分での音の質感あるいは密度にもうひと息のクォリティが望まれるのではないかと思った。パーカッションやピアノの打鍵での音の腰はしっかりしているが、菅野録音の〝サイド・バイ・サイド〟で八城一夫氏の弾くベーゼンドルファーの打音など、本来もっとしっとりと美しい響きで聴ける筈のところが、どうしてももうひと息、聴き惚れるほどの美しさに練り上がってくれない感じが残念だ。

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