井上卓也
ステレオサウンド 68号(1983年9月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より
このところ、オンキョーで高級スピーカーシステムを、3機種同時開発中という噂が流れていた。その第一弾として登場した製品が、このモニター2000であり、続いて20万円前後と50万円前後の高級横が発表されるようである。
従来から同社のスピーカーシステムは、振動板の新素材として、中域以上にマグネシュウム合金を代表とする物理特性の優秀な材料を導入し、熟成に努めていたが、低域用は、紙からポリプロピレン系への置換が目立った。この材料は、かなり優れた物性値をもつが、国内の使用では最適比重範囲を特許で押えられているために、本来の性能を活かした設計が行えない難点が存在していたことは否めない事実だ。
この点を打破すべくオンキョーが新しく採用した振動板材料は、ピュア・クロスカーボンと名付けられた素材である。基本構想は、高剛性で軽量というカーボン繊維の特徴を活かし、内部損失の不足をコーンの成型時に使うバインダーでコントロールをするというものである。カーボン繊維は、平織り状であり、ウーファーコーン用としては、これを3枚、角度を30度づつずらせて(キャップ部分は、45度、2層)バインダーで成型してある。
カーボン繊維を振動板に使うための最重要ポイントは、繊維を接合するバインダーであり、現状ではエポキシ系樹脂以外にはなく、適度に内容損失があり樹脂固有の附帯音を抑えたバインダーを開発できるかが鍵を握っていることになる。
新振動板採用の34cmウーファーは、φ200×φ95×25tの38cm級ユニットに匹敵する大型磁石採用で14150ガウスの磁束密度をもつ。中域は、100μ厚、直径65mmマグネシュウム合金ドームと100mmコーンの複合型振動板で、マグネット寸法φ140×φ75×17tを使用し、振動板面積を増して能率を確保する設計であり、高域は、40μ厚マグネシュウム合金、口径25mmのドーム型、マグネット寸法φ90×φ45×15tで18250ガウスの磁束密度をもつ。
エンクロージュアは、裏板28mm厚アピトン合板、それ以外は25mm厚パーティクルボードを使い、裏板にポートをもつ変型バスレフ型だ。なお、レベル調整ツマミは小型で、バッフル面の平滑化を計るためプッシュ構造で調整時に飛出す特殊型だ。
モニター2000は、低域を重視した製品だけに、セッティングには入念の注意が必要だ。堅めのコンクリートブロックを2段積みとしフェルトを敷いて間隔を調整する。この製品の特徴は、柔らかく豊かな低域をベースとし、しなやかで、のぴのある中域から高域がバランスしたキレイな音にある。ハードドーム独特の硬質さがなく、むしろソフトドーム的な傾向が加わっていることがユニークだ。低域重視設計のため安定度の高いことが大変に好ましい製品だ。
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