JBL 4343

菅野沖彦

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 JBL社のことについては、D44000パラゴンや4350のところで述べたのでここでは省略するが、この4343も、4350と同様にプロフェッショナルシリーズのスタジオモニタースピーカーである。そして、JBLのスピーカーシステム開発の基本的思想に貫かれ、ここでもやはり4ウェイ構成が採用されている。
 ユニット構成は4ウェイ4スピーカーで、ここでは低域用ウーファーは38cm口径のユニット一本となっており、300Hz以下の音域を受け持たせている。300Hz〜1、250Hzの音域を受け持つミッドバスユニットは25cm口径のコーン型、1、250Hz〜9、500Hzの音域を受け持つトゥイーターは2420ドライバーにエクスポーネンシャルホーンと音響レンズの組合せ、9、500Hz以上の音域は2405ホーン型スーパートゥイーターに受け持たせている。これらのユニットはすべてアルニコ㈸マグネットを採用し、ボイスコイルにはエッジワイズ巻きのリボンボイスコイルが採用され、厳格なプロフェッショナル規格に基づいてつくられたものである。特に中低音域を受け持つミッドバスユニットは、この4343のために新しく開発されたもので、磁束密度10、000ガウス、重量2・9kgの強力なマグネットアッセンブリーを持っており、この4343の音質の向上に大きく寄与しているのである。ミッドバスユニットを省略すれば、当然3ウェイのスピーカーシステムになるわけだが、それが4333Aというスピーカーシステムになり、さらにトゥイーターを省略したものが4331Aと考えてよい。つまり、この4343で使用されている各ユニットは、お互いに非常に広い再生周波数帯域をもち、実際に受け持っている帯域以上の帯域を十分に再生することが可能な、優れたユニットなのである。その優れた四本のユニットを、最もそのユニットが能力を発揮することのできる音域別に4ウェイに分割し、全帯域の再生音の密度を高めようとしているところが、いかにも緻密なサウンドを再生するJBLらしいスピーカーのつくり方であり、設計思想だと思うのである。
 そういう意味で、この4343は非常に緻密な音を聴かせてくれるスピーカーなのである。とにかくきちっと帯城内に音が埋まり切っているという感じの再生音で、どこかにピーク・ディップがあるようには感じられない。このスピーカーは、まさに現在のスピーカーシステムの最高水準の再生クォリティを示してくれる製品だと思う。さらに、家庭内でも使い得るぎりぎりの大きさにまとめられており、実際にスタジオの中で使うということになれば、4350ぐらいの大きさになると相当の制約を受けることになり、この大きさはその意味でも手頃なものといえるだろう。W105・1×H63・5×D43・5cm、内容積159ℓという、比較的奥行きの浅いエンクロージュアに収められているわけだが、エンクロージュアの大きさをぎりぎりのところで制限しながら、これだけスケールの大きな豊かな音を再生させることに成功しているということは、やはり現代を代表するスピーカーの一つといってもよいと思うのである。
 この4343のもう一つの特徴は、内蔵のクロスオーバーネットワークを使用して鳴らせることの他に、二台のパワーアンプによるバイアンプリファイアードライブが可能なことである。4350の場合と同様に、本来ならばこのバイアンプリファイアードライブで再生すべきなのかもしれないが、しかし、とりあえずは内蔵ネットワークを使って一台のパワーアンプで鳴らしても、相当ハイクォリティな音が再生できるのである。そういう意味からいえば、上級機種の4350よりは使いやすいといえるし、その4350とともにこの4343も〝ステート・オブ・ジ・アート〟に選ばれたというのは、十分に納得できることなのである。

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