ハイエンドアンプでProject K2 S9500を堪能する

井上卓也

ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」(1993年3月発行)
「ハイエンドアンプでProject K2 S9500を堪能する」より

 当初のセッティング、部屋の音響的処理、試聴などの全プロセスを加えると、ほぼ24時間ほどS9500を聴いたが、デザイン的な制約のある独自な構成の2ウェイシステムとしては使いやすく、モニター的に前に出るJBLの音に、奥深い音場感のプレゼンスと素直に立つ音像などの新しい魅力を加えた、見事なシステムであることを実感できた。
 プロトタイプで聴いた時の、必要帯域内のエネルギーをビシッと聴かせたナローレンジ型の音が印象に鮮明に残るが、最新モデルでは、やや低域の量感重視型と変り、量感はあるが音の芯が甘く、軟調な低域となり、この部分をいかに制御するかがポイントで、ここが使い難いシステムという印象につながっているようだ。しかし、駆動側のアンプを、今回聴くことができたグレードのモデルとすれば、極限を望まなければ、この試聴条件でも、すべて調整範囲にある。
 スピーカーシステムとしては、公称インピーダンスが3Ωであるため、駆動するアンプは低負荷時のパワーリニアリティが要求され、今回の試聴でもアンプとスピーカー間が有機的に結合した音を望むと、8Ω負荷時のパワーが200Wは必要である。また、TV電波の外乱が少ない平均的な場所での條用では、高域のクォリティは明らかに1ランク高くなり、8Ω負荷時100Wあれば、本誌試聴室の200W級よりは、明らかに優れた結果が得られると思う。
 TV電波の外乱による音の劣化は、単一の症状として表われるものではないが、全般的に、電波障害が少ない環境の良い地区で作られる海外製品は、電波対策が施されていないのが普通のようで、かなり中高域以上が乱れ、高域が遮断されたナロ−レンジ型の音となることがほとんどである。
 国内製品は、電波対策は必須条件として設計されるが、非常に強力な電界下では、当然影響は避けられず、音の透明感、鮮度惑をはじめ、音の表情が抑えられ、マットになるのは止むをえないことであろう。
 高級アンプにとり、ウォームアップによる音質、音色などの変化は、現状では必要悪して悠然と存在する事実で、これを避けて通ることは不可能なことと考えたい。
 このウォームアップ期間の変化を、どのようにし、どのように抑えるかは、まったく無関心のメーカーもあり、今後の問題といわざるをえないが、アンプを選択する使用者側でも、どの状態で今アンプが鳴っているかについて無関心であることは、寒心にたえないことである。
 今回は、各アンプとも、試聴数時間以上前に電源を入れプリヒートを行ない、試聴時間はそれぞれ2時間程度を要している。
 各試聴アンプの設置場所、AC100V系の電源の取り方、などの基本的な部分はステレオサウンド試聴室の標準仕様ともいうべきもので、同誌連載中のトリヴィアのリポートとして掲載したものを参照していただきたい。
 接続用ケーブルは、トーレンスCE100スピーカーケーブル、平衡/不平衡(バランス/アンバランス)ケーブルは、オルトフォンの7Nケーブルであり、すべて試聴室常用のケーブルである。
 CDプレーヤーは、アキュフェーズの新製品DP90とDC91の組合せで、これはすべてのアンプに共通に使用したが、出力系の平衡/不平衡は適宜、そのたびにケーブルを差し替えて使い、平衡/不平衡間の干渉を避けている。
 プログラムソースは、1960年代の録音から最新録音にいたる、各ジャンルを用意した。

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