菅野沖彦
オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 CDプレーヤー/D/Aコンバーター篇」より
アンプの専門メーカーとして高級アンプを中心にエレクトロニクスとアコースティックの接点を追求している同社の最高級CDプレーヤーが、このDP80L+DC81Lというセパレート型のシステムである。オリジナルモデルは86年に発売され、88年にLシリーズとなった。CDというプログラムソースとそのプレーヤーにアキュフェーズが大きな関心をもち、自社のオリジナリティで電子回路を組み、メカニズムは他社の優れたものを買ってアッセンブルするという作られ方である。トランスポートとD/Aコンバーターを含むプロセッサー部を分離したセパレート型を早期に採用し、互いのインターフェアランスを避けて、よりピュアな音を実現するというこのタイプは今でこそ珍しくもないし、D/Aコンバーター単体のコンポーネントも多数あるが、86年当時にこのセパレート型で完成商品とした同社の姿勢は、他メーカーへの大きな刺激となったものである。エレクトロニクスでの大きな特徴は、D/AコンバーターにICを使わずディスクリートで構成したことである。これにより、一台一台調整を施してわずかな誤差もなくし、音質の高品位化を実現する考え方である。初めに書いたようにエレクトロニクスとアコースティックの関連についての蓄積をもつ同社として、CDプレーヤーをだまって看過することができなかったのだと思われるが、そのポイントがD/Aコンバーターにあったといえるだろう。事実、その後D/Aコンバーターの変遷は各社ともにCDプレーヤーの改良のポイントとなったが、ディスクリートにこだわるのはここだけである。チップは経済性に優れる1ビット型が全盛となっているが、これは20ビットのディスクリートを特徴とするもので、明晰な全帯域にわたる質感の統一とリファレンス的な端正なバランスは、今のところ1ビット型では得られない精緻さがある。一流品は頑固さがつきものだし、挑戦的であってほしい。
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