ヴァイタヴォックス CN191 ConerHorn

井上卓也

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド別冊・1994年春発行)
「世界の一流品 スピーカーシステム篇」より

 モノーラル時代のスピーカーシステムでは、コーナー型エンクロージュアの採用がそれ自体でトップモデルを象徴していた。JBL・ハーツフィールド、EV・パトリシアン600/800、タンノイ・オートグラフなど、これらはオーディオを語るには欠かせない存在であり、その伝統を今日まで伝えている世界唯一のモデルが、このヴァイタヴォックスCN191である。低域用クリプッシュK型ホーンを駆動するユニットは、7・5Ω仕様のフェライト磁石型AK157。高音用ホーンは初期のCN157から77年にセクトラル型のCN481に変り、ドライバーユニットはアルニコ磁石型S2採用だが、高域はフェライト型S3のほうが伸びている。ネットワークは、’73年に素子にカバーが掛かった型に変更された。
 床と左右壁面を利用してホーンの延長部とするコーナー型Kホーンは、低域の再生効率が高く、重厚で力強い低音を聴かせる。ホーンの改良により中〜高城はホーン鳴きが抑えられ、大口径ドライバーならではの余裕のあるマッシヴな音が楽しめる。
 全体に音色は抑え気味で、聴感上のfレンジは、現在ではややナロウレンジに感じられる。しかし、その分だけ再生帯域内の密度感や力感は現在では異例な存在で、CD復刻盤ではなく古い時代の名曲名演奏をアナログディスクで聴くときに、このCN191は実に見事な形容し難い優れた音を聴かせる。まさしく、かけがえのない存在というほかはない。
使いこなしポイント
 コーナー型だけに部屋の長手方向の壁面を利用するのが標準的な設置方法。だが最適な聴取位置の選択は完全を目指せば予想よりも難しく、部屋の残響コントロールも、床、壁面とも充分に剛性があり、デッドに過ぎないことが必要条件。駆動するパワーアンプは、出力トランスをもつマッキントッシュやA級パワーアンプが好ましく、マッチングトランス使用も一案か。

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