ビクター SX-55N

瀬川冬樹

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より

 ビクターの口ぐせの音の「立上り」と「響き」という、その「響き」の方をより多く感じさせる音だ。国産にありがちの押し殺したように表情の固いスピーカーのあとでこれを聴くと、どこかほっとして、音楽にはこういう弾んだ表情があるのがほんとうだと思える。その意味で音楽の本質の一面をたしかにとらえた、手馴れた作り方といえる。しかしその「響き」も、ときとして少々響きすぎるというか、総体に音を重く引きずるような粘った鳴り方をする面を持っている。そういう音は本来は暗い傾向になりがちだが、おそらく聴かせないためだろう、中~高域に明るく華やぐような色あいが加えてあって、音の重さを救っている。こうした華やぎは、ポップス系のにぎやかなリズム楽器には一種楽しい彩りを添えるが、クラシックのオーケストラの斉奏などでは、多少はしゃぎすぎる傾向を示す。
 そこでレベルコントロールをHIGH、MIDともメーカー指定の位置(最大位置=ここが時計の針で12時の位置になっている)から少しずつ(10時ぐらいまで)絞ってみた。この方が音に落ち着きが出て良いように思う。低音に関しては、台を高さ(約50cm)にした方が、粘りがとれて音が軽やかになる。アンプやカートリッジの差には敏感な方だから、本来の性格の良い面を生かすにはシュアーやエンパイア系のカートリッジや、ヤマハのアンプのような明るい音の組合せがいい。

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