岩崎千明
スイングジャーナル 1月号(1971年12月発行)
「SJ推選ベスト・バイ・ステレオ」より
ここで今さら、JBLセンチュリーのよさをうんぬんするまでもなく、すでにオーディオ誌やレコード雑誌において、多くの評論家諸氏の圧倒的な賛辞を一身にあつめたこのスピーカー・システムは、JBLの傑作である。
JBLのシステムを大別するとランサー・シリーズと呼ばれる系統の製品と、従来からのユニットを主力とした組合せシステムの2系統がある。
ランサー・シリーズは、いわゆるLEシリーズのユニットを中心として組み合わせたものをもってスタートしたが、ジム・ランシングという創始者の名をもじったランサーというこの名称からも分る通り、JBLの家庭用システムの主力を形成している。これに対して従来からの高能率型ユニットを組み合わせたシステムは業務用および高級マニア向けともいえよう。ランサー・シリーズによってJBLはメーカーの姿勢とその狙う需要層とを大きくかえたともいえる。
つまり業務用にも準じる超高級システムを少量生産するメーカーから、大きく基模を拡大して、家庭用音楽システムのメーカーと変革をとげたのであった。その尖兵として、いみじくも槍騎兵ランサーと名付けたシステムが登場したわけである。
このランサー・シリーズには、すでに傑作中の傑作といわれたランサー77を始め、ローコスト型44、さらに現在の米国の市場で驚異的な売行きをみせているランサー99があり、その最高ランクが例の101である。ランサー・シリーズの成功が、JBLをしてこの延長上の製品をつぎつぎと発売させるきっかけとなったのはいうまでもない。
このセンチュリーも、新時代のスピーカー・システムとして、指向性の一段の改善ということを加えた新型のランサー系のシステムである。センチュリーを含めランサー系のシステムのもっとも大きな特長は、このシリーズ独特ともいい得る、まるでそよ風を思わせる超低音の豊かな息づかいである。この超低音は、ブックシェルフ型といわれる寸法的な極端な制限を受ける現代の家庭用システムとしては、まったく信じられぬくらいの低域に達する低音限界レンジのためである。このfレンジは、さすがのARのオリジナル・システムさえもしのぐほどで、これがJBLランサー・シリーズの華麗なサウンドの大きな根底ともなっているわけだ。
もっともこの超低音とよくバランスする高音のすばらしい伸び、ずばぬけた指向特性は、豊かな低音エネルギーをよりひきたたせているし、さらにJBLの従来からの音楽に対する良識の現われともいうべき中音部の豊かさも失われることなく、ランサーの大きな魅力となっているのはいうまでもない。このように豊かな音響エネルギーに加えて広いfレンジとがJBLの現代的志向であるのは当然で、その成果のひとつの頂点として、ここにあげるセンチュリーの存在の意義とそれに対する賛辞の集中とがあるのである。
指向性の改善に登場したフォーム・ラバー・ネットは、このセンチュリーの外観的な最大の特長で、カラーがチョコレート、オレンジ、ライト・ブルーとあり、サウンドともどもその風格に現代性をガッチリと植えつけて、モダンなスタイルを作る。
最近、私はこのセンチュリーを愛用のエレクトロボイス社エアリーズと並べ、比較使用したがJBLセンチュリーの一段と解像力を上まわるのを知らされ豊かさにおいてひけをとらぬエアリーズより、現代的サウンドをJBLセンチュリーから感じとった。
このJBLシステムをより以上生かすのには、手元にあった8万円台の国産アンプが好適であった。それはラックス507Xでありトリオ7002で、これに準じた高出力のトランジスター・アンプが欲しい。ただ、案に相違して手元の管球アンプよりこれらの石のアンプが優れていたのが興味ぶかかった。
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