瀬川冬樹
ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
B&WのDM4/II、それにJRの149とくらべるとほんのわずかに価格が張るが、ユーザーサイドからみれば、やはり比較の対象としたい興味のある製品だろう。まして兄貴分のBCIIの出来栄えのよさが先例としてあるのだから、このSA1にある種の期待を抱いて試聴にのぞむのはとうぜんだ。まず総体のバランスだが、いかにも「ミニモニター」の愛称を持つだけに、帯域の両端の存在を意識させるような誇張がなくごく自然だ。つまりトゥイーターによくあるハイエンドのピーク性の共振音や、エンクロージュアまたはウーファーの設計不良によるこもりのような欠点は全く耳につかない。どちらかといえば(イギリスのスピーカーにはめずらしく)中音域に密度を持たせてあって、内声部の音域、ことにフィッシャー=ディスカウやキングズ・シンガーズのような男声の音域でも、薄手にならず実体感をよく出すところがみごとだ。ただし、バルバラのような女声の場合に、声の表情がやや硬くなるような傾向があって、BCIIよりも少々生真面目さを感じさせる。また、パワーを上げると中〜高域で多少硬い音がしたり、低域でのこもりがわずかに感じられ、どちらかといえばおさえかげんの音量で楽しむスピーカーだと思った。台はあまり低くせず(約50センチ)、背面を壁につける方がバランスが良い。
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