パイオニア PC-330/II, PC-550E/II, PC-1000/II

岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 オーディオの総合的メーカーとしてのパイオニアは、この十数年来、プレーヤーにおいても見事な腕前をふるってきた。本来の専門分野でないのに定評ある企画力のうまさは、プレーヤーシステムでも個々の製品に発揮されてきた。
 ただ、この場合、不思議なことに、プレーヤーのもっとも重要パーツともいえるカートリッジには、良いものはまったくなかったのだ。これは驚くべき事実といえよう。ただのひとつでも評判を得たことはないのに、プレーヤーは売れ続けていたのだから。
 しかし、地道だが試行錯誤のあと、昨年PC1000が発表された。このカートリッジは、メーカーにとって待望のものだったに違いない。パイオニアのカートリッジが初めて絶賛を博したのだ。
 ベリリウム・テーパードパイプという、まだ当時どこのメーカーもなし得なかった技術によるが故に、量産は決して容易なことではなく、だからその良さは、必ずしも多く知られていたわけではないが、このカートリッジに接した者の間で深く静かに評価されているといった風である。
 このPC1000も発表以来一年を経て早くもII型にマイナーチェンジされた。
 鮮やか過ぎるといわれることのあったサウンドイメージをすっかり改め、暖かみさえも感じられるほどで、たとえばヴォーカルの自然な響きに飛躍的な向上を知らされる。一般にこの種の新素材を用いた新しい製品では、新しいサウンド志向を示して、鮮明なクリアーな積極的な音を特徴とする。このPC1000/IIも例外ではなく、そうした傾向のサウンドには違いないが、ごく高い品質レベルでそれらが達成されており、いかにも高級品たる深い陰影を伴っているのがすばらしい。
 PC550/IIは、PC1000/IIをそのままスケールダウンしたような音で、妙にこせこせとしたところがなく、ステレオ感の再現性も充分にもつ。各部分の細かなニュアンスはトップ機種にゆずるが、落ちついた音を感じさせる。
 PC330/IIは、とくにハイファイと感じさせない自然な感じをもたせているが、その低域については好感がもてる。ステレオ音像の再現も極端にくずれることがなく、入門者には使い易い。

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