「柳沢氏の再生装置について」

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
特集・「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」より

 柳沢氏のスピーカーシステムは、マルチアンプでドライブされている。使用ユニットは、アルテックが中心で、ウーファーが38cm型の416A、スコーカーが804Aドライバーユニットと511Bセクトラルホーンのコンビ、トゥイーターはパイオニアのリボン型ユニットPT−R7である。
 ウーファーの416Aは、現在の416−8Aの前身で、ボイスコイルのインピーダンスが16Ωであることをのぞいて性能は変わらない。エンクロージュアは大型のバスレフ型620Aで、もともとアルテックの最新の同軸型全域ユニット604−8G用であるため、416Aの取付けはかなり苦労されたようだ。というのは、フレーム構造が、416Aはバッフル板の後から取付けるタイプであるが、604−8Gは前面から取付けるタイプと、異なっている。そこで、416A用ガスケットを利用して前面からの取付けを可能としたとのことだ。
 ドライバーユニットの804Aは耳慣れないモデルであるが、806Aの前身であり同等の性能をつものと考えられる。柳沢氏は、このユニットのダイアフラムを一度シンビオテック・タイプの16Ω特註品に交換し、さらに現用しているものは、高域レスポンスが改善された最新型の604−8Gに採用されているタイプに置き換えてある。
 セクトラルホーンの511Bは、現在ではマットブラック塗装に変わっているが、古くから愛用されているために、鮮やかなメタリック調のアルテックグリーンに塗られ、ホーン内部の仕上げも入念に工作がされていて、とても同じモデルとは思われないほどに印象がちがっている。このホーンは、視覚的な面とホーンの共鳴音を避けるために、木製のケースに入れてダンプしてある。
 アンプ系は、コントロールアンプがマランツの管球タイプ♯7である。チャンネルデバイダーはソニーTA−4300Fで、クロスオーバー周波数は8kHzと600Hz、スロープは18dB/oct.である。パワーアンプ群は、高音用がパイオニアEXCLUSIVE M4、中音用にマッキントッシュMC2105、低音用はモノ構成の管球タイプである♯9×2である。
 プレーヤーシステムは全部で3系統あるが、メインシステムにつながれるのはトーレンスTD124に柳沢氏自作のトーンアームとオルトフォンSPU−Aの組合せと、ガラード301にFR FR−54とオルトフォンSPU−Aのコンビの2台である。もう1系統はラックスPD121にFR FR−54とシュアーV15/IIIを取付けたシステムである。
 テープデッキはルボックスHS77、チューナーはマランツ♯10Bがメインだ。
 その他のアンプにはマッキントッシュC26、マランツ♯15、チューナーではマッキントッシュMR77と、パイオニアEXCLUSIVE F3がある。
 いずれ中音用アンプをマランツ♯15に置き換えて、マッキントッシュのラインナップを独立させ、ラックスのプレーヤーと組み合わせて、試聴用などのスピーカーをドライブするために使いたいとのことである。
 柳沢氏の音は、アルテックを使いながら、いわゆるアルテックサウンドは異なった音にまで発展させている点に特徴がある。

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