ニッコーのプリメインアンプTRM300、チューナーFAM300の広告
(スイングジャーナル 1972年4月号掲載)
Monthly Archives: 3月 1972
ニッコー TRM-300, FAM-300
パイオニア SX-717, SX-414
オットー RD-4300
トリオ KX-700
ヤマハ YP-700, NS-310, NS-570
デンオン VS-170, VS-270, VS-560
パイオニア PL-25E, PL-31E
オンキョー E-53A, E-83A MKII, U-4500, U-6000, SCEPTER 100
ヤマハ CA-700, CT-700
アカイ GX-220D
Lo-D HS-350
パイオニア AS-30 + LEB-30, AS-21 + LEB-20
岩崎千明
スイングジャーナル 4月号(1972年3月発行)
「audio in action」より
ステレオ・メーカーが相次いでキットを出した。トリオのアンプ・キット、ラックスの真空管アンナ・キット、さらにパイオニアがスピーカー・システムのキットを市場に送った。この新らしい試みは、不況に関連しての目玉商品としてではなく、週休2日制の声がしばしば聞かれるレジャー時代に即応した新商品としての登場である。
いわゆるホビーとしても、ステレオやオーディオはハイセンスなことこのうえなく、単に高級パズルとしてだけでなく音楽という趣味性の高度な感覚がからんで、現代の、知識層にとって計り切れないほど強くかつ、深い魅力を秘めているといえよう。
キットは、その端的な具体化商品なのである。
パイオニアのスピーカー・キットにはAS30、30センチ低音用3ウェイ、AS22、20センチ低音用2ウェイ(ダイアフラム型高音用)、AS21、20センチ低音用2ウェイの3種類がある。価格はAS30が12、000円、AS22が5、500円、AS21が4、400円となっており、それの専用ボックスが2種類売り出されている。
LEB30 AS30用 12、000円
LEB20 AS21、22用 9、000円
従って、3ウェイ用としては、LEB30とAS30を購入すればよく、価格は24、000円ということになる。この3ウェイに匹敵するパイオニアのシステムはCS−E700で、こちらは35、000円なので、スピーカー・システム・キットの方がなんと1万1千円も安くなることになる。(厳密にいうと、CS−E700の方は高音用ホーンが、マルチセラーになっているので、キットよりも高音域の拡散性がより優れていることは確かだが)。
LEB20とAS22の組合せは、パイオニア・システムCS−E400に匹敵し、レベル・コントロールのないことを除いてまったく同じだが価格はシステムが19、900円なのに対してキットの方は13、500円である。さらにLEB20とAS21の組合せはCS−E350に相当するが箱は、キットの方がひとまわり大きく、低音のスケールは一段と大きい。システムのCS−E350の14、500円に対してキットはLEB20とAS21で13、400円と差は少ないが外観がひとまわり大きい。
さて、今回AS30、3ウェイの大型のキットと、もっとも普及型であるAS21を試作してみた。
キットとしては大へんに工作が楽で穴をあけたり、切ったりする必要は全然なく、箱にスピーカーを取り付けて「ネットワーク」をハンタづけする、というだけの、イージーメイクな、万人向きのキットといえよう。
付属の説明書を頼りに進めれば、少しもまごつくことなしに完成できるが、ハンタづけのウデの確かな方ならおそらく1時間ぐらいで、2個を作り終るであろう。
ハンダづけの未経験な方は、ネットワークとスピーカー端子のハンダづけに苦労するかもしれない。
ハンダづけの要領にちょっとふれておこう。
①ハンダゴテはあまり熱くしすぎてもいけない。糸ハンダをコテ先に押しつけ溶け出して、先にたまるぐらいがちょうどよい。これよりも熱過ぎるとハンダが玉になって下におち、コテ先に付いてくれないから注意。
②コテ先にハンダがよくのったら、導線をからげたハンダづけするべき所におしつけ糸ハンダを、コテ先に触れさせると、端子全体にハンダがよくのってくる。
③そこでつけるべき導線の先までハンダを盛るようにする。ただし、ハンダの量は少ないほどよい。
とこう書くと色々と大へんな手間だが、実際は一箇所ハンタづけするのに3秒ぐらいのものだ。工作に当ってのたったひとつの注意は、中につまっているグラスウールだ。これは眼に入るとチクチクと痛いし腕にでも付着するとチクチクしてなかなかとれない。もともとガラスの細い繊維だからなるべく素肌には触れない方がよいので、そっと扱い、こまかいのが空気中に飛ばぬように注意する。スピーカーをつつんでいた布袋を利用してグラスウール全体をスッポリと被ってしまえば扱いやすい。
さて、スピーカー・ボックスにある端子板に、青白の入力コードをハンダづけする。あせって青白のむきを間違えないよう。+側が青です。ネットワークはスピーカーのボードがかたいのでネジ止めが大ヘンなので、セメダインかボンドを推める。ネジは1本か2本だけでよい。
出来上ってみると苦労のしがいがあったのが嬉しい。
さて、音を出してみよう。もし確実に1工程、1工程確めながらやってあれば信頼できるが、そうでないと、出来てからの心配や苦労が多いもの。
この辺がキット作りのコツともいえる。
く試聴記〉
キットだからと最初はたかをくくっていた。「CS−E700と同じだから社員でさえ買うものがたくさんいるほど。これはスピーカー・メーカーとしてのパイオニアのサービス商品だ。」といったのはスピーカー課長の所次にいる山室氏だが、まさかそのまま受取れるほどのことはあるまいと思ってたのだが。どうしてどうして、大した製品である。キットとはいえ、まさにパイオニアの本格的3ウェイの音だ。つまりCS−E700と変らないといってもよかろう。堂々たる量感あふれる低音、豊かなエネルギーを感じさせる品の良い中音域。輝きに満ちた高音。
パイオニアの良識あるハイファイ・サウンドはジャズのバイタリティを力強く再現してくれる。ヴォリュームを上げた場合の楽器の再現性はバツグンだ。AS21の方はコーン型トゥイーターで歌の生々しさが特筆。全体にソフトタッチのバランスのよい音で、再生のクォリティーは高く、使いよさの点で誰にも推められよう。アトランティックのキース・ジャレットの美しいタッチが力強さに溢れた感じが加わるから不思議だ。
パイオニア SA-80, TX-80
グレース F-8E, F-8L
ティアック A-210, A-220, A-350
ラックス LX77, BOSE 501, 901
オルトフォン SL15E, RS212B
ラックス SQ507X
菅野沖彦
スイングジャーナル 4月号(1972年3月発行)
「SJ選定ベスト・バイ・ステレオ」より
アンプというものは、あらゆる音響機器の中で最もその動作が理論的に解説されていて、しかも、その理論通りとまではいかなくても、それに近い設計生産の可能なものだと考えられている。それはたしかに、電気信号増幅器としてはその通りだろうし、アンプに入ってくる信号は音楽の情報が電気エネルギーに変換された信号であるから電気信号の伝送、増幅という次元で問題を考えることに問題はないし、またそうするより他に現在のところでは方法はないのである。
アンプはその出口に測定器がつながれるのは研究所内のことだけで、オーディオ機器としてのアンプは、必ずスピーカーがつながれる。いかなるアンプといえども、その動作はスピーカーの音としてしか判断されないのである。そのスピーカーというのが、アンプとちがってオーディオ機器の中で、もっとも解析のおくれているもので、その基本的な構造はスピーカーの歴史開闢以来ほとんど変っていないというのだから皮肉といえば皮肉な話しではないか。現代科学の諸分野の中でも特に著しい進歩の花形といってよいエレクトロニクスの領域にあるアンプリファイヤーと、かなり素朴な機械的動作をもった変換器であるスピーカーとのくされ線はいつまで続くのか知れないが、とにかくアンプはスピーカーを鳴らすためにある。したがって、エレクトロニクス技術の粋をこらしたアンプは、これから、その技術の高い水準を、スピーカーというものとのより密接な結びつきにおいて検討され尽されねばならないという考え方もあると思う。もちろん、このことも、識者の間ではよく話題になることなのだが、現実はアンプとスピーカーはバラバラに開発されている。どこかで、本当にスピーカーという不安定な動特性をもった変換器、あるいは、スピーカーという音をもった音声器?の標準(もちろんそのメーカーなりの考え方と感覚で決めたらいい)に対してトータルでもっとも有効に働くアンプを作ってみてくれないだろうか? つまり、そのスピーカーは他のいかなるアンプをつなぐより、そのアンプで鳴らしたほうがよいという実証をしてくれないだろうか。さもなければ、いつまでたっても、アンプとスピーカーの相性というものが存在しながら、それが一向に明確にならない。
このラックスのSQ507Xほど多くのスピーカーをよく鳴らしてくれるアンプも少ないというのが私のここ数ヶ月の試用実感なのである。昨年来いろいろなスピーカーをいろいろなアンプで鳴らす機会を多くもって感じた体験的な実感なのである。もう少し具体的にいうならば、あるスピーカーをいくつかのアンプで鳴らして、多くの場合、一番よいと感じたのが、このアンプで駆動した時であった。しかし、スピーカーによっては必らずしもそうでないという例外があったことも事実で、これが私をしてこんなやっかいなことをいわしめる理由でもある。そして、このアンプは、かなり高級な大型システムを鳴らした時に充分その実力が発揮される。アルテックA7をはじめ、JBLのL101、タンノイのヨークなどでよくそのスピーカーの持味を生かしながら、いずれの場合も、明解な音像の輪郭と透明な質感が心地よく好感のもてるアンプだった。同社のSQ505Xのパワー・アップ・バージョンであり、パネル・フェイスやコントローラーのレイアウトもよく練られていて感触もよい。最新の3段直結回路のイクォライザー・アンプによるプリ部と、これまた全段直結OCLのピュア・コンというパワー部の構成は、現在の高級アンプとしては珍らしくないかもしれないが、この音とパワーがなによりも、このアンプの高性能を実際に感じさせてくれる。入力のDレンジに余裕があって、かなりホットなジャズのソースにも安定している。実際にかなりの価格なアンプの中にもレコードからの入力信号でクリッピングが感じられるのも実在するのだから安心できない。残留ノイズも非常に少いしON、OFF時のいやなショックもない。欲をいうと、この製品、SQ505以来の意匠で嫌味のないすっきりした点は評価するが、決して魅力があるデザインや質感とはいい難い。音に見合った量感と風格が滲みでるような魅力が欲しいと思うのは私だけだろうか。
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