Daily Archives: 1970年9月15日 - Page 3

クライスラー CE-1acII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 CE5a同様、スコーカーに新型を採用した改良モデルである。以前の型では、中音の音質がやわらかく素直であるのに対して、ウーファーの音がややこもる感じのバランスだったが、II型では、中音スピーカーが元気よく鳴るようになった結果、総体に音のバランスの点が改良された。トゥイーターも新型のマルチセルラホーンで、やわらかく澄んで、すばらしくよく伸びた高音だ。低音の質もなかなか良く、箱鳴り的な音はよく抑えられて、重低音も割合によく出るが、おそらく中音域あたりだろうが、ポリフォニックな音の場合に、何となく音の粒が粗くなるというのか、楽音につきまとう軽いにごりのような点が(低域と高域が比較的滑らかで美しいだけに)曲によっては気になる場合もあった。

採点表
大編成:★★★★
小編成:★★★★
独奏:★★★
声楽:★★★★
音の品位:★★★★
音のバランス:★★★★
音域の広さ:★★★★
能率:★★
デザイン:★★★★
コストパフォーマンス:★★★★
(特選)

テクニクス SB-500

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 中音および高音のユニットにドーム・タイプを採用した、テクニクス・シリーズの新製品である。黄色をおびたチーク系の外装と粗い織りの白っぽいサラン・ネットが明るい雰囲気で親しめる。左右ペアで7万円近くのスピーカーとなると、一応、サブ・スピーカー的な目的ではなく、相当にグレイドの高い音質を期待したくなるが、この製品の音質はなかなか立派なものだった。まず全域にわたって、音のつながりが非常になめらかである。中低域に起こりやすい箱鳴りがよく抑えられててしかも重低音もよく出る。高音域のレンジもかなりのびているようだ。総体に素直でくせが少なく、抑制がよく利いて余分な音がつきまとわないから、コーラスなどでも音がにごらず、ハーモニィがきれいに溶けあう。低音も高音もよく出るという音ではなく、控えめで、さりげないところがいい。

採点表
大編成:★★★★
小編成:★★★★
独奏:★★★★
声楽:★★★★
音の品位:★★★★
音のバランス:★★★★★
音域の広さ:★★★★★
能率:★★★★
デザイン:★★★★
コストパフォーマンス:★★★★★
(特選)

ダイヤトーン DS-34BII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 中高域が張り出す華やかな音色は、やはり三菱独特の音だ。小型密閉箱の割には重低音の不足感も少なく、バス・ドラムの音など量感をともなってたっぷりと再現される。ソフトムード的なスピーカーからこれに切りかえると、音源がぐんと近接した感じを受ける。こういう音のスピーカーは、アンプやそれ以前のあらゆるアラをさらけ出すから、雑な組み合わせでは粗くきたない音になりやすいので注意が必要だ。これらの点は従来の34Bの性格をそのまま受けついでいるといえる。プライヴェートなテストで、34Bを耳よりずっと高い位置に上げてみたら、非常に素直な抜けのいい音質になって驚いたことがあったが、II型もおそらく同様だろう。音のバランスのとりかた、音域のつながりなど、今回の三菱の三機種の中では最も納得できた製品である。

採点表
大編成:★★★★
小編成:★★★★
独奏:★★★
声楽:★★★
音の品位:★★
音のバランス:★★★★
音域の広さ:★★★★
能率:★★★★
デザイン:★★★
コストパフォーマンス:★★★
(準推薦)

ティアック LS-80

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 一聴した感じでは、これより安いLS360よりも音域などむしろせまいのではないかという印象を受けるが、たとえばバス・ドラムのようなソースでテストしてみても、重低音の出かたなど360とそう変るわけではなく、高域の方も、わりあいナチュラルによくのびて、全体としてそうレンジのせまいというわけではないのだが、中低音域の音質に少々ぼってりしたところがあるのと、中高音域に広い盛り上りが感じられること、それに加えて、LS360のよく鳴りひびく饒舌さがいくぶんおさえられているために、比較するとこちらの方がおとなしい感じを受けるのだろう。しかし、中低域の重さのためか、曲によっては音源がやや遠くにひっ込むような感じを受けることもある。中域をもっと軽やかに、しかもたっぷり充実させたいという感じだ。

採点表
大編成:★★★
小編成:★★★
独奏:★★★
声楽:★★★
音の品位:★★★
音のバランス:★★★
音域の広さ:★★★
能率:★★★
デザイン:★★★
コストパフォーマンス:★★★

(準推薦)

トリオ KL-5060

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 トリオの新シリーズの中では、7060に次いで高級機の部類に入り、4060や3060と基本的には同じ構成をとっているのに、5060以上は、前面に金属の格子とひだをつけた装飾布とを配して、ゴージャスなイメージを出そうとする意図が伺える。この意匠には、明るさとか華やいだ感じとかはないにしても、重厚なイメージが一応成功している。
 さすがに市販品でもこのクラスになると、音の品位がかなり向上する。バランスは良好だし、重低音の量感もそう不満はなくなる。中~高域の独特のツヤのある音質のため、音像の芯がしっかりとして、ボケず、引締って澄んだ印象である。プログラムの種類を問わず、自然でよく広がる。ただ、長い時間聴きこむと、どうしてもまだ音に粗さがわずかに残っていることに気づくが、このクラスとしては、良くできた製品といえる。

採点表
大編成:★★★★
小編成:★★★★
独奏:★★★★
声楽:★★★★
音の品位:★★★★
音のバランス:★★★★
音域の広さ:★★★★
能率:★★★
デザイン:★★★★
コストパフォーマンス:★★★★
(特選)

コーラル BX-Multi1200

瀬川冬樹

ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より

 これの旧型であるBX1200は前回のときもテストに入っていたが、改良型であるマルチ1200は、音質もバランスも相当に変っている。
 一聴すると、やわらかくふくらみのある音質だが、中低域がふくらんで豊かな割には中域がかなり奥に引っこんだバランスで、音が箱の奥の方にこもってしまう感じになる。中高域のレンジはそうせまい方とも思われないが、かなり絞りこんであるためにおとなしく、総体的にぼってり形の代表といった音の作りかただ。
 低域はかなりダブついているが、バス・ドラムのようなプログラムを再生してみると、ファンダメンタルが十分に出ているわけではなく、聴感上、うまく豊かに響かせているらしい。中域、低域のよく響く音質のため、饒舌さがあり、中域以上のレベルをやや上げないと、こもりすぎる感じである。

採点表
大編成:★★
小編成:★★
独奏:★★
声楽:★★
音の品位:★★
音のバランス:★★
音域の広さ:★★★
能率:★★★
デザイン:★★★
コストパフォーマンス:★★