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オーディオテクニカ AT-1005

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 テクニカの初期の専用アーム1001に初めて接したとき、ユニークなデザインとシンプルなメカニカルな美しさに驚いたが、そのポリシーがこの新型にも脈打っている。英国デッカと同じ伝統のアームをスライドするリング・ウェートによる針圧加圧方式は、目盛が大きく使いやすい。新型ではオフセット角のついたシェルと同じだけずらせ、アームを支える理想的な軸受け方式で、これは国産ではFR24しかなく、この価格では画期的といえる。

トリオ V-45

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 プレイヤーを発売した時から、最高級カートリッジということで、MC型を採用しているのは、やはり清張殿著しいメーカーのセンスだ。一般の音楽ファンにも使いやすい針先交換の簡単な機構は、サテンとほほ同じものだが、便利で、愛用者の立場をよく知っているといえよう。性能もMC型独特の多くの利点は少しも損なわれていない。

ソニー VC-8E

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 ESシリーズのカートリッジとしてユニークな機構と使いやすさと保守の優れたMC型を採用している。大よその機構はサテンのMC型とよく似ており、音色も近い。針先交換の容易な点からも一般マニア向けだ。

ビクター MD-1009E

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 IM型とはっきりと打出している所に、ビクターの音響メーカーとしてただならぬ気鋭を感じられる。というのは、今日のカートリッジの方向が、理論的にこのIM型の方向に進んでいくであろうことは大方の予想される所で、これをはばかることなく強調する点に、老舗でありながらそのすさまじいほどのヴァイタリティを感じられ、そしてこれには称賛を贈りたい。製品は、はっきりいって原型とみられるADCのそれにいま一歩と思われるが、その完成もごく近い時期であろう。

スタックス CPS-40

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 米国ウェザースのコンデンサー型が、カタログからなくなった今日、海外にも類をみなくなったコンデンサー型カートリッジとしての存在は貴重で、しかも、これがまったくこの社のオリジナルであることは、日本のHi−Fi業界の誇りといえよう。その再生音の生々しさという点では、ちょっと比べる製品を知らないが、反面、或る種の例えばオーケストラなどのプログラムで迫力に欠けるのは何が理由か。この種の変換方式の根本的な欠陥かもしれない。とはいうものの歌、室内楽などにおけるプレゼンスは、本当に息をのむほどである。

ラスター L-1

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 こんど同社から初めて発表されたMM型カートリッジである。価格の点から考慮すると、たいへん良くまとまっている。経済的に装置をまとめたい向きには、同社のアームと組み合わせると最適だろう。

スペックス SD-700A

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 国産Hi−Fi製品は総じて、低域の貧困をしばしば指摘される。カートリッジには特にこの傾向が著しい。音楽の基本ともいうべき、低域から中低息の音、この社の製品は、この音域で圧倒的に強味を発揮する。豊かでダンピングの効いた迫力。それでいて、高音域のこまやかさもいささかも失っていない。根っからの音楽ファンにきわめて多くの愛好者がいることが、この社のカートリッジの優秀性を示そう。

東京サウンド SMC-4

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 モノーラルの初期に、C2というバリレラ型の金字塔ともいうべきカートリッジを堕していた技術的センスは、この社のMCにさん然と光っている。原形ともみられるオルトフォンをもしのぐ中音の分解能のよさは、特に賛えられよう。SMC4は、3型の高域特性にさらに繊細さを加味し、帯域の広さを感じる。あまりこの社の方針からか宣伝もせず、地味な存在だけに随分損をしている優秀製品だ。

サテン M6-45, M7-45, M6-8C, M7-8C, M8-45E

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 オリジナリティという点では、HiFi業界の中で、サテンがまずその最右翼であろう。そしてこの点からも、もっとも将来性あるメーカーといい得るのである。
 MC型ながら針交換の簡単なこと、そして、それにもまして出力電圧がMM型と殆ど変らず、使いやすい点も特筆できる。8Eシリーズになって、針先のきゃしゃだった点も改められ、音の分解能の一層飛躍したことも特筆できる。よく誤っていわれるように、この機構では音がMM型とMC型の中間……というのは、おそらくその機構からの先入観によるものであろう。オルトフォンをやや引締めたような低域と、きめのこまかい超高音は、海外、国産を問わず第一級だ。

ニート V-50, V-15, V-60

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 ニートが再び息吹きを始めた。海外にまでその名をとどろかした、この分野における日本のトップ・メーカーだったニート。そして再起にふさわしい新機構のMC型と、IM型の2品種をひっさげて返り咲いた。このメーカーらしく仕上げのよさと、魅力あふれるデザインは伝統だ。残念ながらまだこの音質には接していないが、潜在ファンならずとも期待してよかろう。

ナガオカ NM-33

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 この所、針先チップのメーカーからのカートリッジがつぎつぎに発売されている。この中でも特に量産体制の万全なのがこのナガオカだ。そして、これは製品の質のそろっていることを意味し、この点こそ、市販製品の大きな格づけとなる。つまりナガオカはカートリッジでの分野で新進ながら筋金入りなのである。だからこそ今度の33、また次に控える44シリーズが、低価格ながら好評なのだろう。

マイクロ MC-4000/5

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 オーディオテクニカと共に、量産体制の整っているこのメーカーが、いよいよMC型を発売した。この点で、日本のカートリッジが海外に大きく飛躍することを感じないわけにはいかない。このメーカーらしく、そのコイル・アッセンブリーをそっくり交換してしまうという針交換の機構もさすがだ。その音色の繊細かつ、広帯域の点は、従来の市販MC型をもしのぐほどで、ダンピングの効いた超低域、音楽的バランスの良さなどは、今までのMM型専門だったこのメーカーのイメージを変えてしまう。おそらく、このシリーズは一個一個が高度の技術による仕上げを経ているに違いない。量産ラインを誇るメーカーのMC型という点で、MC型でしばしば問題な製品の質の均一性はまず絶対であろう。そしてこの点こそMC型製品の最大のウイーク・ポイントであり、このメーカーの腕のみせ所であろう。

グレース F-8L

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 国産最初のMC型ステレオ・カートリッジを出したのがこのグレースだった。その後、MC型の品質管理とアフター・サービスの困難な点に量産製品として限界あることに気付き、研究を続けながらも、製品としてはいち早くすべてをMM型にした所など、このメーカーの良識だ。サービスの万全なことはHiFi業界でも有名で、また一度製品化するや、そのモデルに最新技術を投入して、常に品質向上を目指す点も、手堅い良心を感ずる。
 放送業務用として、NHK技術と開発したのがF8D。これを軽針圧化したのがF8L。音のよく似ていた米国シュア社の新型V15IIと共に、カートリッジの質はえむえむとかMCとかで決められないことを如実に示して、この社の技術が理論的にも将来の行き方につながることが判ろうというもの。F7にくらべ力強い低音域、おとなしいがずばぬけた高域の延び、そしてすぐれた分解能は特筆できよう。

フィデリティ・リサーチ FR-1

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 今や、あまりにも有名な、トップ・グレードのコイル型カートリッジ。普通のMC型がコイルの巻芯に鉄片やマグネットを用いているのに対し、これは空芯なので、理論的にも完全なMC型。もっとも、それだから音が良いというよりもこの社の製品のすべてにいえる、きわめて密度の高い工作と技術が、このずばぬけた高性能を生んでいるのであろう。最近HiFiパーツにハンド・メイクのクラフトマン・シップが見直されているが、FRの製品、特にこのMC型カートリッジこそ、その良い現れといえるのではなかろうか。製品は、ひとつひとつが高度の熟練技術者によって仕上げられているといった感じで、メーカーの良心が、使用にひしひしと感じられる。透明な音という言葉はこのカートリッジのためにあるといえよう。願わくば、TRヘッド・アンプより安定して経済的なはずのマッチング・トランスを早く出して欲しい。

デンオン DL-103

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 デンオンのムービング・コイル型として、プロやベテランのマニアに支持の多かった国産MC型のはしりだったのが、デンオンを吸収したコロムビアによって、さらにグレード・アップされて、103として発表された。放送局用という目的から、2・5gと最近流行の軽針圧ではない。しかし、オルトフォンの新型を思わせる音色と、BTS規格の特性は、まさに標準カートリッジの貫禄十分といえよう。

オーディオテクニカ AT-7

岩崎千明

ステレオサウンド 2号(1967年3月発行)
「プレーヤー・システム・パーツガイド」より

 オーディオテクニカの久しぶりの新型ということで、ファンの期待も大きくまた、それを裏切ることのない優れた出来と、早くも好評を伝えられる。広帯域ながら、少々繊細すぎるといわれるAT5から一歩前進して、低音域の力強さも加わり、海外新型カートリッジを思わせる音色を、ユニークな円型アルミのデザインに秘めて、魅力をそそる。ミニマム・マスの2重カンチレバー、スーパーパーマロイ・ヨークとMK5B協力マグネット使用により、コイルの巻数が少ないロー・インピーダンスながら、出力が従来とあまり変らない。……などの特長がある。最近、トランジスタ・アンプの流行に伴って、フォノの入力インピーダンスが問題とされてきたが、ロー・インピーダンスほど、高音域の音色の変化などの影響を受け難いので、この点からもトランジスタ万能時代にふさわしいといえる。

オルトフォン S15, シュアーV15 TypeII, ADC ADC10E

岩崎千明

スイングジャーナル 3月号(1967年2月発行)
「話題の輸入カートリッジ/SJオーディオ・コーナー オーバーシーズ・セクション」より

 最近の高級ハイファイ・マニアの話題の中心は、2つの輸入カートリッジに集まっている。
 すでにお知らせしたオルトフォンS15M、もうひとつは、シュアV15マークIIの2製品がこれだ。

■オルトフォンS15
 カートリッジは、その名の如く挿換えが可能である。オーディオ技術にくわしくない音楽マニアも高級ピックアップを使っているのなら、簡単に交換することができる唯一のハイ・ファイ・パーツである。
 そして、これによって装置のグレードの向上も期待できる。しかも、レコードをかけるごとに、眼につくカートリッジであれば、買気をそそられることも十分ある。というわけで、マニアならカートリッジへの関心は特に浅からぬものといえる。
 ところで、話題の2つのカートリッジに眼をそそごう。まずオルトフォンだ。
 代理商店が、ソニーから日本楽器に移ったのは昨年後半だが、とたんに、マニアにぐっと身近かになったのがこのオルトフォン。
 高教マグネット型カートリッジを大きく分けると3つに分類できる。
 ①ムービング・コイル型
 ②ムービング・マグネット型
 ③ムービング・アイアン型
 ①の代表的製品が、オルトフォンのカートリッジである。ムービング・コイル型は針先に続いた部分にコイルがあり、この針先の動きに応じてコイルがレコード音溝の振動通りに動いてくれる。このためコイルはごく軽く小さく作られている。
 コイルが小さいため出力は微弱で、そのままアンプに接続して使えるものは、サテン音響製品以外は皆無。オルトフォンの場合も、トランスを用いて、出力電圧をアンプに合わせるようになっている。
 カートリッジそのものの出力はオルトフォンでは0.2mV前後、これをトランスによって10mV近くまで上げている。
 オルトフォンのカートリッジの最大の特長は、このマッチング用トランスがカートリッジの中に内蔵されているT型というのがある点だ。必要ない場合はついてない型を選べばよい。この価格の差は2千円程度である。
 新型オルトフォンはS15MとトランスつきのS15MTの2種がある。
 トランスつきのS15MTが一般向といえる。
 このS15の評判になっているもうひとつの理由は、日本楽器から2万円で発売されているという点であろう。米国内で89ドルという高価なS15が日本では2万円、つまり60ドル(換算)程度で求められるのは、高級ファンにとって、大きな魅力といえよう。
 オルトフォンのカートリッジは、従来から日本のファンの間でシュア・V15と並び、あるいはこれをしのぐほど最高のランクを与えられている。
 ちょっと厚ぼったい音だが、すなおな再生は比類ないほどで、ちょっと聞くとなにかすっきりしないにも関らず、音の分離のよさやまとまりのよさはさすが世界一という称号を与えたくなるのも当然といえるほど。
 S15になって、このオルトフォンの音は高音がさらにのびて、スッキリした音になったことが明瞭だ。

■シュアV15II
 最近のアメリカのオーディオやハイファイ・ステレオ雑誌は毎号のように、カートリッジの追随性に関する記事を見かけることができる。
 新着のハイ・フィデリティ誌にはシュア社のチーフ・エンジニアの記した4ページものが出ていた。
 これはレコードの音溝を、完全にトレースするにはどのようなカートリッジがよいかということを、根本的に研究して得た新らしい結論を展開したものだが、当然、この技術にのっとって、シュア社の最高級カートリッジV15が改良され、マークIIとなったことが判る。マークIIは、別名スーパー・トラックともいわれ音溝の追随性のすぐれていることを示している。
 外観も、今までのシャープな角型から、やや流れるような線を取り入れて、スマートな外観を示している。
 ムービング・マグネット型という、それまでなかった新らしい型を、50年代に開発したシュア社は、ダイネティックという名でこのカートリッジを普及させた。ステレオ期に入るや、この型がきわめてすぐれたものであることがはっきりしてきた。
 ステレオ用として、左右の音の分離や、軽針圧用として優れた性能を示して、それまでの他のあらゆる型式をはるかに越える優秀な製品が、つぎつぎに発表された。M3、M7などがこれで、シュア社はステレオ用カートリッジでは全米きってのトップメーカーとなってしまったのである。さらにM44/5、V15が出るや、ヨーロッパの多くのセットに採用され世界的なカートリッジとなった。
 超高域に、ちょっときらびやかな響を持ち、豊かな低音と張りのある中低音が特長といえよう。
 このV15の新型では、高音域のきらびやかさがぐっと減ってスッキリし、超高音まで十分音がのびたのが一聴して判る。
 V15はやっと市販されるが、価格は従来のV15が26000円だったのに対して、28000円となっている。
 S15M、V15IIに共通して高音域ののびが認められるが、この点こそ、新らしいハイファイ期の条件ともいえそうである。しかしこの点すでに先駆者的カートリッジがあるのを見落してはならない、

■ADCの新型
 ADCオーディオ・ダイナミック・カンパニーがこのメーカーだ。50年代の終りにADCが、モデル1を発表して以来62年まではハイ・コンプライアンスというだけで注目をひくほどの製品ではなかった。
 しかし、シュア社とムービング・マグネットMM型の特許問題を争ってADCは、MM型でないカートリッジを発表した。
 これがムービング・アイアン型。ADCではインデュースド・マグネットIM型といっている。
 マグネットを本体にうめこんでしまって鉄分だけを音溝の振動に従って動かそうというのがこれだ。
 振動部は、長いマグネットがついていないので、ごく小さく、ADCでも宣伝するように、いままでのどのカートリッジの振動部分より1/3以下というほど。
 従って、高音ののびは抜群で、音のすなおさも驚くほど。くせがない音ということばがぴったりだ。レコードのよい悪いがはっきり出てしまうので、かえって使い方がむつかしいといわれるのもこのためだ。
 最初の製品は針先半径が普通のカートリッジの0.5ミルより細く0.4ミルなのでポイント4と呼ばれた。
 その改良普及型が660だ。これが標準品種。
 そのあと高級品として一昨年の暮、ダエン針つきの10Eが発表された。0.5gr〜1grという超軽針圧と神経質なほどせんさいな音で、音の分能能力やステレオの分離はちょっと比類がない。
 最近は、チェンジャー用のCGタイプが770として改良されている。針圧は2〜5gr。(国内未発売)660は本国ではダ円針つきのみとなって39・5ドル。日本では、0.7ミルの針つきで8900円。
 10Eは本国で59・5ドルだが日本では23000円。
 米国ではさらに昨年秋から220が新型として出ており、これは日本では発売されそうもないが、9ドル50セントという超安価が眼を引く。ハイファイ入門者用として宣伝されている。
 ポイント4は、米国ではすでに姿を消したが、日本では、高級マニアの間で好評といわれ、12000円で発売されている。