コーラルのスピーカーシステムStage1、Stage3、Stage5、Stage7、FLAT8S、FLAT10S、スピーカーユニットFLAT8、FLAT10の広告
(ステレオ 1972年12月号掲載)
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コーラル Stage-1, Stage-3, Stage-5, Stage-7, FLAT-8S, FLAT-10S, FLAT-8, FLAT-10
コーラル Stage-5
コーラル BETA-10 + BL-25
岩崎千明
スイングジャーナル 7月号(1972年6月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より
私のいつも使っているスピーカー、JBLのハークネスの後方、300Hzカットのアルテックの旧型マルチセルラ・ホーンの横に、縦長のボックスに入ったこの部屋で唯一の国産スピーカーがもう4年間も居続ける。
これが、コーラルのBeta10だ。バスレフ箱に入ったこのBeta10は発売直後、その鮮やかな力強いサウンドに惚れこんで、手元において以来、JBLのD130がC40バックロード・ホーンの箱に収まるまでは、しばしばマイルスの強烈なミュートや、エヴァンスの鮮麗なタッチを再現していた。
ただ、惜しいかな、鮮烈華麗なその中高音の迫力にくらべ、バスレフ箱に入れた低音は異質であるし、力強さもかなり劣ることを認めざるをえない。つまりBeta10の国産らしからぬジャズ向きの魅力あるサウンドは十分に認めながらも、その音のクォリティーを重低音にいたるまで保つことはバスレフ型では、しょせんかなわぬことを痛感していた。
Beta10のサウンドの原動力は、その強大なマグネットにある。試みに15、500ガウスという強力な磁界に比肩したスピーカーを探してみよう。JBL D130、130Aクラスでさえ12、000ガウス。ボイス・コイル径が大きいからそのままくらべることはできないにしろ、Beta10の方が単位当りでは20%は強力だ。あとは英国製の高級スピーカー、グッドマン・アキシオム80と、このBeta10が範をとったと思われる、ローサー・モデル4ぐらいなものだ。そのどちらも17、000ガウスとBeta10をわずかに上まわるだけである。
ジャズでは、楽器のサウンドそのものが音楽を形成し、そのアタック奏法が重要な要素であるゆえに、それを再現するには強烈なアタックの再生の得意なスピーカーがもっとも好ましい。僕がJBLを愛用するのもそのためだが、Beta10にも同様のことがいえる。
加えて、軽く強靭なコーン紙。中央の拡散用金属柱でサブ・コーンからの高音の指向性の改善も、単にみせかけだけでなく、60度ずれた付近までシンバルの音がよく拡がっている。
ただ、これほど楽器のソロが前に出るスピーカーでありながら、フルコンサート・ピアノのスケールの大きさが、とくに重低域でどうもふやけてしまうのが歯がゆいばかりであった。
ところが正月の休み明け、広告でBeta10用のバックロード・ホーン、BL25の存在を知り、急いでコーラルから、BL25を取りよせてみた。
チック・コリアのソロ・ピアノアルバムを聴いてみたが、Beta10がそのすさまじいまでの迫力を、中高域から低域にまで拡げたことをその時知ったのだった。それはまさにジャズ・ピアノのサウンドである。チック・コリアのちみつにして繊細流麗なタッチ、しかも左手のきらびやかな中に秘めた力強い迫力を、B得る25に収まったBeta10はみごとに再生してくれた。
国産スピーカーと外国製のそれとくらべるまでもなく、国産オーディオ・パーツにはどうもベテラン・マニアを納得させる魅力をもった製品が少ない。国産パーツの優秀性はいやというほど知らされているのに、その中に魅力らしい魅力のない歯がゆさをいつも感じ僕。コーラルはその不満を解消してくれたまれな国産パーツだ。おそらく、この手間のかかる手造りのバックロード・ホーンはあまり商売にプラスをもたらすとは思えないが、これほど魅力に満ちた製品がまた日本市場に出ることを知って嬉しいのである。
このBL25が、Beta10が今後も永く市場に残ることを願い、それをよく認識するマニアの少しでも多からんことを願うのである。
コーラル FLAT-8S, FLAT-10S
コーラル FLAT-8S, FLAT-10S
コーラル BX-Multi1200
瀬川冬樹
ステレオサウンド 16号(1970年9月発行)
特集・「スピーカーシステム最新53機種の試聴テスト」より
これの旧型であるBX1200は前回のときもテストに入っていたが、改良型であるマルチ1200は、音質もバランスも相当に変っている。
一聴すると、やわらかくふくらみのある音質だが、中低域がふくらんで豊かな割には中域がかなり奥に引っこんだバランスで、音が箱の奥の方にこもってしまう感じになる。中高域のレンジはそうせまい方とも思われないが、かなり絞りこんであるためにおとなしく、総体的にぼってり形の代表といった音の作りかただ。
低域はかなりダブついているが、バス・ドラムのようなプログラムを再生してみると、ファンダメンタルが十分に出ているわけではなく、聴感上、うまく豊かに響かせているらしい。中域、低域のよく響く音質のため、饒舌さがあり、中域以上のレベルをやや上げないと、こもりすぎる感じである。
採点表
大編成:★★
小編成:★★
独奏:★★
声楽:★★
音の品位:★★
音のバランス:★★
音域の広さ:★★★
能率:★★★
デザイン:★★★
コストパフォーマンス:★★
コーラル FLAT-5S, FLAT-6S
コーラル BX-1200
コーラル BX-1200
コーラル BX-610
菅野沖彦
ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より
ベルリン・フィルの音が他のオーケストラのように品位のない音になった。全域にわたって制動がきかず、歯切れの悪い、また、高低域のバランスも悪い再生音である。音像がよく立たず、軽く平板な音となり、厚みや深さの再現がまったくなく不十分である。シュワルツコップやアンナ・モッフォのヴォーカルもキャラキャラと上が響くだけで、声の丸味や陰影が不思議にどこかへ消えてなくなる。価格バランスの点でも大きな不満が残る。
コーラル BETA-8, BETA-10
コーラル BETA-10
菅野沖彦
スイングジャーナル 11月号(1968年10月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
コーラル音響といえば日本のオーディオ界では名門である。昔は福洋音響といって、スピーカー専門メーカーとしての信頼度は高かった。数々の名器はちょっと古いアマチュアならば記憶されているだろう。私自身、当時はずい分そのスピーカーのお世話になった。型番はもううろ覚えだが、たしかD650という61/2インチのスピーカーは大いに愛用した。810という8インチもあった。当時はインチでしか呼ばなかったが今でいう16センチ、20センチの全帯域スピーカーであった。トゥイーターもH1いうベスト・セラーがあった。福洋音響は当時のハイ・ファイ界のリーダーとして大いに気を吐いたメーカーだ。そして最近コーラル音響という社名に変更し住友系の強力な資本をバックに大きく雄飛しようという意気込みをもってステレオ綜合メーカーとしての姿勢を打ちだしてきている。
ところで、そのコーラル音響から新しく発売されたユニークなスピーカーがBETA10である。BETAシリーズとして8と10の2機種があるが、主力は10だ。まずユニットを一目見てその強烈なアマチュアイズムに溢れた容姿に目を見はる。白色のコーン紙。輝くデュフィーザー。レンガ色のフレーム。強力なマグネットは透明なプラスチック・カヴァーで被われている。これはマニアの気を惹かずにはおかないスタイリングで、キャラクターこそちがえ、例のグッドマンのAXIOM80のあのカッコよさに一脈通じるものを感じたのは私だけではあるまい。オーディオ製品のような人間の感覚の対象となるものについては、形も音のうちというものであり、この心理はマニアなら必らずといってよいほど持ち合わせている。形はどうでも音がよければという人もいるが、同時に、まったくその反対の人さえいる。コーラルがマニアの気質をよく心得て、細部にまで気をつかって、いかにも手にしたくなるようなスピーカーをつくったことは、今後のこの社の積極的な姿勢を感じさせるに充分で、事実、その後、かなり意欲的なデザインによるアンプも発売されている。
さて、BETA10の音はどうか。それを書く前に、スピーカーというもののあるべき姿にについて述べておかなければなるまい。音響機器中、スピーカーはもっとも定量的に動作状態をチェックしにくい変換器である。つまり、直接空気中に音を放射するものだけに、使われる空間の音響条件は決定的に影響をもたらす。装置半分、部屋半分ということがいわれるが、たしかに部屋が音におよぼす影響はきわめて大きい。これは録音の時のホールとマイクロフォンの関係に似ていて、電気工学と音響工学の接点であるだけにさまざまなファクターを内在しているわけだ。理論的な問題は別として、ある音源に対して最適なマイクロフォンを無数のマイクロフォンの中から選択して使っているというのが現状だが、これは、いかに問題が複雑で、理論や計算通りにいかないかを物語っているものであろう。マイクロフォンは使う人の感覚によって選ばれる。それに似たことがスピーカーにもいえる。スピーカーほど感覚的に選ばれる要素の強いものはない。それだけに選びそこなったら大変で、正しいバランスを逸脱することになる。BETA10こそは、まさにそうした危険性と大きな可能性を秘めたスピーカーであり、たとえてみれば暴れ馬である。その質はきわめて高く大きな可能性を秘めている。しかし、うっかり使うとたちまち蹴飛ばされる。使いこなしたらこれは大変魅力的なスピーカーだ。その点でも、これは完全に高級マニア向の製品で、これを使うには豊富な経験と知識、そしてよくなれた耳がいる。我と思わん方は挑戦する価値がある。こんなに生命感の強く漲ったタッチの鮮やかな音はそうざらにない。
モジュラー・ステレオのすべて
菅野沖彦
スイングジャーナル 8月号(1968年7月発行)
「モジュラー・ステレオのすべて」より
ステレオ装置はこりだしたらきりがない。入りこんだが最後、泥沼の世界だともいわれる。そして、このことはとりもなおさず、楽しく深い趣味の世界と、その醍醐味を暗示している。しかし、ここにもう一つ泥沼にめりこむことを好まないレコード愛好家にとって、便利で、高性能の本格的再生装置をという希望にかなったシステムがある。その名はモジュラー・ステレオ。小さな身体に秘めた底力、場所もとらないし、出費も10万円ていどで、ハイファイが楽しめるというわけだ。モジュラー・ステレオとはなにか? 現在店頭をにぎわしているこの新しいタイプのステレオ装置にスポットをあててみよう。
このところメーカー製ステレオ装置の中でめだって多くなったのがモジュラー・タイプといわれる小型装置である。小型装置というと、17cmそこそこのターンテーブルにプラスティック製の短いアームのついた安価な装置と一緒にされる危険がある、が、これはそれとはちがう。アンプ、プレイヤー部を一つのキャビネットに収めてコンパクトにまとめてあって、しかも本格的なステレオ装置としての機能を犠牲にしてはいない。ターンテーブルの大きさも25cm以上、30cmのものが中心で、トーンアームはほとんどパイプアームの本格派、そしてムービング・マグネット・タイプのカートリッジ(もちろんダイヤ針)を備えている。クリスタルや半導体タイプも一部ある。
アンプ部はFMマルチプレックス・チューナー付の総合アンプで、トランジスタライズドで小型になってはいるものの、パワーは片チャンネルで10ワット以上、中には30ワット+30ワットという大出カのものもある
スピーカーは小型ボックスに16cmか20cmクラスのウーハー(低音用)を基礎に高音用トゥイーターを加えた2ウェイが圧倒的。
これがモジュラー・タイプといわれる装置の特徴ということになるのだが、他のタイプとのはっきりした区別となると、決定的な条件が見つからない。ほぼ同じタイプのものの中にも、アンプとプレイヤー部を独立させたものがあるが、これはどうもモジュラーとは呼ばないらしいのである。
もともとモジュラー・タイプというのは、これといった厳格な規格があるわけではなく、タイプという表現のようにきわめて大ざっばなスタイルの表現語にすぎないようだ。だからメーカーによってはモジュラーという言葉を使わず、ハイイコンパクトステレオとかブックシェルフ・ステレオそして、マイクロセバレート等々……その表現は各社各様である。
モジュラー・タイプの条件
このようなわけで、モジュラー・タイプというのは技術的規格ではなく、デザイン上の問題として考えるべきであろう。そこで、一応、ここに扱うモジュラー・タイプの条件をあげると次のようになる。
①プレイヤーとアンプは一つのケースに組み込まれていること。
②ターンテーブルの直径が小さくても25cmあって、トーン・アームやカートリッジが3グラム以下の針圧で安定にトレースするようなものを備えていること。
③アンプは小型化に有利なトランジスタ式で、やや能率の低いスピーカーを駆動するのに十分なパワー(片チャンネル10ワット以上)のものであること。
④独立した1組のハイ・ファイ・スピーカー・システムを備えていること。
①の条件がモジュラーの最大条件であるが、この条件にはかなってももっと安価な、あまりにも普及型で性能の低いものもあるため②以下の条件を付加しておいた。もともとこのモジュラーという言葉は、単位、基準という意味の単語モジュラールをひねって作ったものだと思うからサイズや性能が同じようでもプレイヤーとアンプが一つにまとまっていないものはこの範ちゅうからはずれるわけだろう。
さて、それでは、実際にこのモジュラー・タイプのステレオはどんな使用目的に適し、再生音はどうで、使い勝手はどうか、ということになるのだが、個々のメーカーの製品によってあまりにも差があって一概にはいえない。具体的にはそれぞれの製品の紹介にゆずるが、中でも共通していえることは、あまりうるさいことをいわなければ、現代人の生活のアクセサリーとしては実に手頃なもので、適度に、メカニカルな興味の対象としても満足させてくれる要素があるし、アクセサリーとしてもデザイン的にハンディにまとまっている。大がかりでとりとめのない化物のような再生装置とちがって、リヴィング・ルームの調和をくずさないし、「これから鳴ってやるから真正面に座って静聴すべし!」といった威嚇的なところがないのもいい。
室内での置き方にもヴァラエティを作りやすいので、小さな部屋でもなんとか収めることもできるという利点はたしかにあるのだが、現実にかなり困ることが一つある。それは、プレイヤーとアンプの一体となった、装置の心臓部の奥行である。これは小さいもので37.4cm、大きいものでは50cmちかいものまである。これは本格的な大型ターンテーブルをそなえ、長いトーン・アームをつけさらにアンプが組込まれているところからくる必要寸法で、これを小さくしては本来の機能面で性能が低下する。そこで、実際に一般の家で幅はともかく、これだけの奥行をもった手頃な棚があるだろうか? 蓋を開けると後方へさらに5cmぐらい出るから棚の奥行は42〜55cmを必要とする。また、本体はフラットで背丈が低いから別に脚が用意されているものでなければ床へジカに置くわけにはいかない。そうかといって上蓋を開けてレコードを演奏するものだから高い整理ダンスなどの上に置いては使えない。机の上などが最適だが、大抵の机は、これを置いてしまうとスペースは残り少く机としての機能は死ぬ。このへんが実際の住宅事情にもう一つぴったりこないところのようで、買ったはいいが意外に置き場所に苦労するということになりかねない。前もってこのことを念頭に入れて置き場所をよく考えてから購入する必要がある。
肝心の音は、良い装置、悪い装置がいろいろ入り乱れて店頭にあるから、よく聴いて判断しなければならない。大きさから想像する音よりはかなり良いのに驚ろかされるだろう。これがモジュラーの特長である。
各メーカーのモジュラー・ステレオ製品
●サンヨー
オットー1 DC-434カスタム 125,000円
オットー2 DC-534デラックス 84,900円
サンヨーの意欲的製品で、モジュラーのブームをつくった代表製品といってよい。オットー1より2のほうがスピーカーも小さく、アンプも小型、価格も安い。しかし音のバランスは2が、スケールの大きな音では1のほうが上のようである。
●ナショナル
メカニシア1 SC-120 110,000円
メカニシア2 SC-130 85,000円
メカニシア3 SC-125R 120,000円
ナショナルのモジュラーの3機種は、いずれも音のまとまりのいいもので、どちらかというと派手な音。
2、1、3の順に価格が高くなる。メカニシア3は話題のソリッドステイト・カートリッジを採用している。回転速度自動切替方式というレコードをのせるだけで33と45の回転が変るというアイディア豊富な新機構もあるが、45RPM盤などの演奏にはかえって不便。キャビネット、メカの仕上など三機種ともに美しい
●ビクター MSL-8 88,500円
初の半導体カートリッジ採用のモジュラー。大変聴きよい、快よい音で、音づくりのうまさはさすがである。デザイン、仕上もこのタイプ中最高のものだと思う。
●コロムビア CMS-100 129,800円
モジュラーの高級品。大変ぜいたくな設計で、マニア向けの製品だといえる。しかし、ここまでくると、いっそ大型装置のほうに気が傾く。各部の仕様はプロ級である。
●シャープ
白馬 GS-5500 64,800円
白馬 デラックスGS-5600 84,500円
GS-5500はモジュラーの中では普及型で、カートリッジがセラミック。それなりにうまくまとめられた音で、音楽を聴き流すのにはまったく不満がない。GS-5600はモジュラーとしては標準品。つまり本格派だ。軽いタッチの美しい音色はやや人工的に過ぎるのが惜しい。
●トリオ MT-35 81,00円
MT-55 89,900円
この二機種はスピーカー・システムが共通である。歯切れのよいシャープな音はやや刺戟的。しかしプレイヤー、アンプの本体は、さすがに専門メーカーらしい手馴れた仕上げでまとめられている。ホワイト・ブロンズ仕上の丈夫な脚が別売りされている。
●パイオニア C-600 104,900円
デザイン、仕上が大変よく、もっともユニークな製品。プレイヤー部は優秀で信頼性が十分。ソフトな音はやや迫力に欠ける。音に厚味がたりないのが人によっては物足りないだろう。
●コーラル VS-3000 73,800円
唯一のオートチェンジャーつきモジュラーで、音楽をBGM的に聴き流すのがねらいだろう。音はやや鈍重だが、それだけに難がない。耳障りな音ではないので楽しめる。
以上寸評は、各社のショールームで製品をみた印象をメモしたのだが大きく分けて二つの行き方があるのが感じられた。一つは小型装置としての音づくりを意識的にまとめたもの、他はオーソドックスに各パーツの性能に頼って全体のまとめということを意識的にはしていない傾向の製品である。前者を一般的とすれば、後者はマニア向きということになるだろう。前者の代表としてサンヨー、ビクターの製品が特に印象に残ったし、後者に属するものではトリオ、パイオニアの製品がよかった。
コーラル VS-3000A
モジュラー型再生装置
菅野沖彦
スイングジャーナル 12月号(1967年11月発行)
「SJオーディオ・コーナー 特集/ステレオ装置読本」より
モジュラー型再生装置
再生装置を生活の中にとけこませること、これは、家庭での音楽のあり方のひとつのパターンである。音楽は生活の中で趣味としてだけ存在するものではあるまい。時には照明やインテリア・デザインなどとともに生活環境を味つけし、豊かにし、私たちの情緒を明るく、また、楽しく、そして安定させるのに役立つ。BGMのあり方についてはいろいろ意見もあろう。あんなに音楽を安売りして、年がら年中ばらまかれては音楽に対する私たちの感情がいつのまにか麻痺してしまうという人もある。たしかに、音というのは、意志によって聴くまいとしても耳から入ってきてしまうために、それを望まない人にとっては大変迷惑な話である。しかし、家庭生活に音楽が豊かに溢れるということを私は好む。そして、ホテルやレストランでの押しつけがましい与えられ方とちがい、自分の家で自由に選択して、時と場合によって好みに合った音楽を流すのだから、何んら不都合はない。
こうした再生装置の使い方に最も適したものがモジュラー・タイプである。そして、これは特にデザイン、機能からモジュラー・タイプを眺めた時にいえることで、音質本位に見ると、姿、形に似合わないスケールの大きい本格的な再生音が得られるものもある。つまり、モジュラー・タイプと一口にいっても、さらに一つ一つの製品について詳しく調べてみるといろいろな考え方によって製造されているものがある。
モジュラー・タイプの大きな特長は、プレイヤーとアンプ部が一つのユニットに(モジュール化)まとめられているということで、しかも、かなりコンパクトに、フラットなコンポジションになっている。ちょうど従来のプレイヤーだけ独立したものと同じ程度の容積にアンプまで組込まれている。そして、左右スピーカー・システムはセパレートとして部屋の条件に応じて配置のバリエーションは大幅に処理できる。ただ、ここでお断りしておかなければならないことは、小型ならばすべてモジュラー・タイプと呼んでいるわけではないということ。用語上の問題をとやかくいうと面倒なことになるが、今、この業界でモジュラーと呼んでいるものは、小型高級器のことで、2〜3万円の普及器は指さない。大ざっばには5万円以上の製品で、使用パーツ(アーム、カートリッジ、モーターなど)が本格派としての条件をそなえているものを意味すると考えていいだろう。
モジュラーに限ったことではないが、メーカーの完成品を選ぶにあたって必要なことは、メーカー完成品というものは、入口のカートリッジから出口のスピーカーに至るオーバー・オールでバランスがとられているものだから、後日、どこか一部を交換してクォリティの向上を計ることは大変むずかしいということを知っておくことだ。したがって性来機械いじりが好きで、再生装置に興味をもち、あれこれ自分でいじり廻わしそうな気がする人は敬遠したほうがいい。反対に機械に弱く、音楽が大好き、部屋に美しく調和させた再生装置を欲しいといった方には、下手な組合わせ方でマニア気取りになるよりも、専門メーカーが十分検討してまとめあげた完成品がいい。
本格的なスケールの大きな音を望む方には、パイオニアのC−600、コロムビアCNS−100、トリオNT−55、オットー1カスタムなどがいい。特にC600、オットー1などはよくまとまった万能的な装置である。NT−55は高音の切れ味のよいシャーブな快音が得られジャズ・ファンにおすすめできる。やや予算も少なめで、生活の伴奏として大らかに楽しもうという向きには、トリオNT−35、ビクターMSL−8、コーラルVS−3300、ナショナル・メカニシア2、シャープ白馬などと豊富な機種がある。VS−3300はモジュラー・ホワイトと称しオール・ホワイト仕上げのユニークな製品で、これからの再生装置のデザインを家具的に一歩っっこんだ美しいもの。
コーラル 8TX-70, 10TX-70
コーラル VS-5000
コーラル A-1000
瀬川冬樹
ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より
ちょっとしたはずみで周期の遅い低域発振を起こして、スピーカーのコーンが大きくフラフラとゆれはじめるのは問題だと思った。コーラルの二機種ともこの稽古ヴかあったのだから、偶然の故障とはちがうだろう。
音質は大味で、高域の刺激的な音のとりきれない、いわゆるトランジスター的カラーの残ったもの。
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