Category Archives: スピーカーシステム - Page 31

スペンドール BCII(組合せ)

瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第13項・スペンドールBCIIというスピーカー 組合せを例にとって(その1)」より

 できるだけ正確な音を再生する、いわゆるアキュレイトサウンドの中にも、演奏者がすぐ目の前に立っているような、感じで音を聴かせるスピーカーと、良いホールのほどよい席で音楽を鑑賞する感じのスピーカーとがあることを3項で説明した。
 ごく大まかな分け方をすれば、アメリカのスピーカーには、楽器が目の前で鳴る感じで音を再生するタイプが比較的多い。これに対して、イギリスのスピーカーは、概して、コンサートプレゼンスという言葉で説明される、上質のコンサートホールのほどよい席で楽しむ感じで音を聴かせる。そういう感じを説明するのに最適のスピーカーのひとつが、ここでとりあげるスペンドールのBCIIというスピーカーだ。3項でもすでに書いたことのくりかえしになるが、目の前で演奏される感じか、コンサートホールで聴く感じか、という問題は、レコードの録音をとる段階ですでに決められてしまうのだが、しかし仮に、非常に生々しく録音されたレコードをかけたときでも、このBCIIというスピーカーで再生すると、スピーカーの向う側にあたかも広い空間が展開したかのようなイメージで、やわらかくひろがる、たっぷりした響きを聴かせる。
 だからといって、このスピーカーがプログラムソースの音を〝変形〟してしまうのかというとそうではない。レコードの録音のとりかたの相対的なちがい──眼前で鳴る生々しい感じか、コンサートホールの響きをともなった録音か──は十分に聴き分けられる。けれど、このスピーカーなどは、厳密な意味では、正確な音の再生と快い音の再生との中間に位置する、いわばクリエイティヴサウンドとアキュレイトサウンドの中間的性格、といえないこともない。
 ところでこのスペンドールというのは、イギリスの、非常に小規模のメーカーだが、自社のスピーカーを鳴らすためのアンプも生産している。型番をD40といい、写真でみるように、音量調整(ボリュウム)のツマミと、電源スイッチを兼ねたバランス調整、それにプログラムセレクターの三つのツマミしかついていない。出力も40ワット(×2)と、こんにちの水準からみて決して大きくない。
 けれど、BCIIというスピーカーが、もともと楽器を目の前で演奏するような感じを求めているわけではないから、家庭でレコードを観賞するためには、この出力は十分すぎるほどだ。そのことよりこのアンプは、BCIIの持っている音の性格をとてもよく生かして、決してスケールは大きくないが、とても魅力的な音を聴かせてくれる。これはまさに、大げさなことを嫌うイギリス人好みの端的にあらわれた組合せだから、レコードプレーヤーもまた、西独DUAL(デュアル)のCS721という、小柄なオートマチックを選んでみた。カートリッジは同じ西独のエラック(エレクトロアクースティック)STS455E。このカートリッジは、BCIIの音ととてもよく合う。

スピーカーシステム:スペンドール BCII ¥115,000×2
プリメインアンプ:スペンドール D40 ¥165,000
プレーヤーシステム:デュアル CS-721 ¥99.800
カートリッジ:エレクトロアクースティック STS455E ¥29,900
計¥524,700

テクニクス SB-8000

瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第19項・リニアフェイズを流行らせた元祖 テクニクスの最新型SB8000」より

 日本を代表するスピーカー、というと、ヤマハNS1000Mと並んでもうひとつ、テクニクスのSB7000、通称テクニクス・セブンをあげなくてはならないだろう。まるで雛壇のように並んだ独特のスピーカーユニットの配列は、テクニクスの主張するリニアフェイズの理論によって、低・中・高の三つに分れた音源の位相(この用語の意味は、ここでは説明しない)を、いかによく揃えるか、という観点から生まれた形である。この考え方自体は決してテクニクスだけの独創ではないにしても、スピーカーの位相を明確に解明し、具体的な製品で示したのはごく早い時期であり、その後、前述のKEF105など、ヨーロッパ各国のスピーカーにもこの考えにもとづいた製品が各種出現している。
 SB7000は、これまでのブックシェルフとかフロアータイプという分類にはちょっと入りきらない独特の形で、またその音質を生かすためにも、多くの場合、リスニングルームの床上に直接置いたのでは、低音がこもったり過剰になったりしてぐあいがよくない。部屋の音響特性によってケースバイケースだが、十数センチないし四十センチ以上までの、頑丈な台に乗せて、聴いてみて最もバランスの良い高さを選ぶ必要がある。背面や側面も周囲の壁から適度に(五十センチ以上)離し、周囲に何も置かず広くあける必要がある点は、前述のヤマハや、すでに出たスペンドールやKEFその他、この種のアキュレイトサウンド系のスピーカーに共通の注意事項だ。
 ところで、ごく最近発表されたこの上のクラスのSB8000は、7000にくらべて音がはるかに緻密でしかもみずみずしい。価格の差以上に音のグレイドは向上している。低音が引締まっているので、7000ほど高い台を必要とせず、部屋の音響特性によっては何も台に乗せずにそのまま床の上に置いても大丈夫だ。元祖という点ではSB7000だが、その完成度という点ではむしろSB8000のほうが(もちろん、この間に5年以上の歳月が流れているのだから当然とはいえ)格段に優れていると思う。したがって、これから購入するのであればSB8000のほうがおすすめできる。
 ヤマハにもテクニクスにも共通にいえることは、概して国産のスピーカーは、音の味つけを極度に嫌うために、その組合せも、アンプやカートリッジに、できるだけ音の素直で、むしろ味の薄い製品を持ってこないとむずかしい。
 アンプには、同じテクニクスの、ごく新しいプリメイン、V10をあげよう。とくにこのパワーアンプ部は、ニュークラスAと称する新しい回路で、とても透明感のある美しい音質だ。チューナー、プレーヤー、カートリッジとも、同じテクニクスで揃える。
 さて、ここから先はかなりオーディオマニア向けの話だが、プリメインアンプV10は、パワーアンプ部分の性能が非常に良いので、これを流用して、プリアンプだけ単体のもっとグレイドの高いものを追加すると、さらにいっそう音のグレイドが上がる。たとえばオンキョーP307、ヤマハC2a、アキュフェーズC230などがその一例。

スピーカーシステム:テクニクス SB-8000 ¥150,000×2
プリメインアンプ:テクニクス SU-V10 ¥198,000
チューナー:テクニクス ST-8077T ¥45,800
プレーヤーシステム:テクニクス SL-1400MK2 ¥95.000
カートリッジ:テクニクス 100C MK2 ¥65,000
計¥703,800

JBL 4343(部屋について)

瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第12項・JBL4343にはどんなリスニングルームが必要か どういう環境条件が最低限必要か」より

 JBL4343をもとに、四通りの組合せを作ってみた。それぞれの関連説明からすでに想像のつくように、ひとつのスピーカーをもとにしても、組合せの答えはひとつに限らない。そのスピーカーの、どういう面を、どう生かすか、という設問に応じて、組合せは、極端にいえば無限と言えるほどの答えがある。もしも私以外の人が組合せを作れば、私の思いもつかない答えだって出てくるだろう。組合せとはそういうものだ。
           ※
 このように再生装置が一式揃ったところで、もっと切実な問題が出てくる。それは、この装置を設置し、鳴らすための部屋──いわゆるリスニングルーム──の条件、という問題だ。4343ほどのスピーカーになれば、よほどきちんとした、広い、できることなら音響的にもある程度配慮された、専用のリスニングルームが必要……なのだろうか。
 そういう部屋が確保できるなら、それにこしたことはない。そういう、専用のリスニングルームのありかた、考え方については別項でくわしく述べるが、ここでまずひとつの結論を書けば、たとえJBL4343だからといって、なにも特別な部屋が必要なのではない。たとえ六畳でもいい。実際、私自身もほんの少し前まで、この4343を(厳密にいえば4343の前身4341)、八畳弱ほどのスペースで聴いていた。
 繰り返して言うが、専用の(できれば広い、音の良い)部屋があるにこしたことはない。しかし、スピーカーを鳴らすのに、次に示す最低条件が確保できれば、意外に狭いスペースでも、音楽は十分に楽しめる。
 その必要条件とは──
㈰ 左右のスピーカーを、約2・5ないし3メートルの間隔にひろげてスピーカーの中心から中心まで)設置できるだけの、部屋の四方の壁面のうちどこか一方の壁面を確保する。できれば壁面の幅に対してシンメトリーにスピーカーが置けること。
㈪ 左右のスピーカーの間隔を一辺として正三角形を描き、その頂点に聴き手の坐る場所を確保する。ここが最適のリスニングポジション。必ず左右から等距離であること。
 部屋が十分に広く、音響的な条件の整っている場合は別として、必ずしも広くない部屋で、もしもできるかぎり良い音を聴きたいと考えたら、まず最低限度、右の二つの条件──スピーカーの最適設置場所と聴き手の最良の位置──を確保することが必要だ。そしてこの条件は、最低限度四畳半で確保できる。六畳ならまあまあ。八畳ならもう十分。むろんそれ以上なら言うことはない。
           ※
 つけ加えるまでもないことだが、部屋の音響的な処理──とくに、内外の音を遮断して、外部からの騒音に邪魔されず、また自分の楽しんでいる音で外に迷惑をかけないためのいわゆる遮音対策や、音質を向上させるための室内の音の反射・吸音の処理──については、条件の許すかぎりの対策が必要だ。そのことについてくわしくは、「ステレオサウンド」本誌に連載中の〝私のリスニングルーム〟を参照されたい。

ヤマハ NS-100M

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 オーソドックスなブックシェルフ型スピーカーシステムであるNS1000に対して、そのエンクロージュア仕上げを、ブラックのモニター仕上げとしたNS1000Mは、業務用機器的な性格が強い製品としては、国内初のブックシェルフ型システムであり、その性能と音質の優れていることでは発売以来高い評価を保ち、いわば日本を代表するブックシェルフ型システムである。このNS1000Mでスタートを切ったMシリーズには、その後ブックシェルフ型システムとミニスピーカーシステムの中間的な外形寸法を採用したNS10Mが発売され、外形寸法、価格帯ともに従来にないコンセプトによるものとして性能、音質をも含めて注目され、新しい需要を換起して、ここに新しいマーケットを築き、その後各社から同様な製品が続いて開発される契機を作った。
 今回発売されたNS100Mは、Mシリーズの第3弾製品で、外形寸法的にはNS10Mよりワンサイズ大きいが、製品としての性格は、NS1000Mに近く、小型サイズの外形寸法のなかに高度な性能、音質を凝縮して作られた、いわば高密度設計の小型ブックシェルフ型システムである。
 ユニット構成は、20cmウーファーにソフトドーム型のスコーカーとトゥイーターを組み合わせた3ウェイ型である。
 ウーファーは、外国産の針葉樹系材料を旧来の和紙系統の技術を加味して独自のシート製法により作られた白いコーンに特長があり、4種類の粘弾性体を塗布したロールエッジ、大型ダンパーと直径5・2cmのクラフト紙ボビンに銅平角線を巻いたボイスコイルが組み合わされ、磁気回路は、110φ−60φ−15tの大型フェライト磁石とセンターポールに銅キャップを装着した低歪磁気回路を使っている。
 スコーカーとトゥイーターは、NS690以来の伝統をもつエッジ一体成形のソフトドーム型で、繊維には7種類のコーティング材を混合して、表と蓑の両面から50μ厚で塗布し、熟圧成型で仕上げ振動板とし、スコーカー、トウイーターともに同上塗布剤を使用している特長がある。
 スコーカーは、口径5・5cmで100φ−50φ−15tのフェライト磁石を使う大型磁気回路と、空気穴のついたガラス繊維を素材としたFRPシートボビンに銅平角線ボイスコイル使用で、f0は400Hz。
 トゥイーターは、口径3cmで、鋼クラッドアルミ線をエッジワイズ巻としたボイスコイルは振動板直付けで、70φ−32φ−15tのフェライト磁石採用である。
 エンクロージュアは、三方流れ留め組み採用の完全密閉型。ネットワークは、低歪設計の音質重視型で中音高音レベル調整付。
 NS100Mは、スムーズな周波数帯域と各ユニットの調和のとれた音色に特長がある。音場空間は十分に拡がり、定位は明確で声のナチュラルさは見事である。

ヤマハ NS-1000M(組合せ)

瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第18項・こんにちの日本を代表するヤマハのNS1000M」より

 この辺でそろそろ、わが日本のスピーカーについて研究してみる。私自身は国産のスピーカー全般をあまり高く評価しないものだから、日本のメーカーやオーディオ界から、舶来主義者みたいに言われているが、しかしアンプ類は十二分に評価しているし、事実、国際市場でも、日本のアンプやその他のパーツは高く評価されながら、スピーカーだけは、いまひとつ良く言われないということは、周知の事実なのだ。
 そうした中で、ヤマハのNS1000M(モニター)は、スウェーデンの放送局でモニター用として正式に採用されるなど、いわば国際的な市民権を獲得した国産最初のスピーカーと言ってよい。またわが国でも、発売後すでに5年を経てなお、人気がおとろえないという実績が、スピーカーの良さを裏づける。このスピーカーは,とくに一〜二年以上ていねいに鳴らしているうちに、次第に音がこなれて滑らかさを増してきて、いっそう評価が高くなるということもロングセラーの秘密のひとつかもしれない。
 難をいえば、黒の半艶のいささか素気ない塗装に、金網をかぶった低・中・高音の三つのユニットのむき出しの、機能本位といえば体裁がいいがいささか挑発的ともいえるデザイン。ただ、それを嫌う人のためには、MのつかないNS1000という、渋いデザインの製品もあることをつけ加えておく。音質はわずかに異なり、M型よりも少々おっとりしている。
 いずれにしてもNS1000(M)は、大別するとアキュレイトサウンドのグループに入れることができる。そして、いままでに例にあげた中では、KEFやスペンドールよりもJBLの鮮烈な鳴り方のほうに近い。したがって、コンサートプレゼンスよりは楽器を眼前にリアルに展開するタイプ。
 ブックシェルフ型、といってもやや大ぶりだし、重量もかなりあるから、本棚等に収めるわけにゆかないし、その性能を生かすためにも、周囲にあまりものを置かず、周辺を広くあけて、三十センチ前後のしっかりしたスタンドに乗せ、タテ位置で使うのが標準的な鳴らしかただ。その点はスペンドールなどの置きかたと共通点がある。
 音量は相当に──楽器のナマの音量程度までも──上げることが可能だが、かなり鳴らし込んだ後でないと、少々やかましい感じがなくなりにくい。
          ※
 さて、NS1000Mう生かす組合せだが、なぜかこのスピーカーは、味の濃い音のアンプやカートリッジを拒む傾向があって、どちらかといえばサラッとした感じの素直な音で統一したほうがいいらしい。で、いろいろやってみると、アンプ(チューナー)は、同じヤマハがやはりよく合う。ほかにというなら、ラックスかテクニクスの系統だろう。また、カートリッジはここ数年来、ヤマハ自身が、アンプ、スピーカーの音ぎめに、シュアーをひとつの標準に採用しているので、やはりV15タイプIVはひとつあげておく。やや高価な組合せと、スピーカーの能力を生かすに必要最低のラインと、ふたとおり示しておく。

スピーカーシステム:ヤマハ NS-1000M ¥108,000×2
コントロールアンプ:ヤマハ C-2a ¥170,000
パワーアンプ:ヤマハ B-3 ¥200,000
チューナー:ヤマハ T-2 ¥130,000
プレーヤーシステム:ヤマハ YP-D10 ¥128.000
カートリッジ:シュアー V15 TypeIV ¥39,800
計¥883,800

スピーカーシステム:ヤマハ NS-1000M ¥108,000×2
プリメインアンプ:ヤマハ CA-2000 ¥158,000
チューナー:ヤマハ T-1 ¥60,000
ターンテーブル:ラックス PD-441 ¥125.000
トーンアーム:SME 3009/SeriesIII ¥74,000
カートリッジ:スタントン 881S ¥62,000
計¥695,000

KEF Model 103

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 いかにも英国の代表的スピーカーの音という感じの、輪郭の明快なサウンドが得られる2ウェイシステムだ。私の感覚ではちょっと小骨っぽいという印象だがそれだけ芯がしっかりしているともいえるわけで、むだなたるみのないすっきりとした端正な音が聴かれる。英国のオーケストラのサウンドにも共通するものといえる。

セレッション UL6

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 先ほどの分類からすれば後者に当る。本格的ホーンシステムの小型版のような音をもっている。ユニークな設計がなされたもので、音にもたつきがない。

アルテック Mantaray Horn + 817A System

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 大容積のホールなどで鳴らすべきシステムである。いかにもアルテックらしい本当の意味でのパブリックアドレスシステムといえよう。

UREI Model 813

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 武骨なスタジオモニターながら実に堂々たるアメリカンサウンドを聴かせてくれる。アルテックの音には違いないが、高域の歪感のなさは、確かにリファインされたモデルといってよい。

ロックウッド Major

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 タンノイの38cmHPD385Aを使ったシステムながら、オリジナル・タンノイとは一味違った雰囲気を再現する。より明快に音が立ち、低域も引き締っている。タンノイユニットの優秀さがマニアライクに仕上げられたシステムだ。

ヴァイタヴォックス Bitone Major

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

一種独特な雰囲気をもっている。同社を代表するスピーカーの一つだけに、相当高度なところで聴き手の嗜好と可能性を問われる、本格的大型フロアーシステムである。

JBL L300

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社の3ウェイモニタースピーカー4333Aに相当するユニット構成をもつシステムだけに、本格的なJBLシステムの良さを十分にもった、ワイドレンジな、優秀なスピーカーの代表といってよい。

トリオ LS-202

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トリオのスピーカーシステムは、完全密閉型全盛時代にも軽量級コーンを採用するなど、かなり独自の構想による開発をおこない、オリジナリティの豊かな点に特長があるが、今回発売された新製品は、コーン型ユニットで構成する25cmウーファー使用の3ウェイシステムである。
 ウーファーは、アコーディオンエッジと新開発のホットプレス製法によるコーン紙を使用し、10cmスコーカーは、センターサポート方式、4cmトゥイーターは、特殊制動剤使用によるエッジレス型となっているところが特長である。
 バッフルボードは、ユニット間の振動による機械的なクロストークを避ける目的でスコーカーとトゥイーターはサブバッフルにウーファーからの振動を抑えて固定する2層構造・分離型と名付けられた特殊な構造を採用し、ネットワーク関係からの電気的クロストークはコイルの独立配置などでユニット間の干渉を防止している。
 LS202は、各ユニットの固有の共鳴音が巧みにコントロールされ、システムとしてのつながりは、レスポンス的にも音色的にもスムーズである。聴感上での周波数レスポンスは、とくにワイド型ではないが滑らかに伸びており、クリアーでシャープな音を聴かせる魅力がある。

マッキントッシュ XR7

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 マルチウェイ・マルチユニットの行き方をしたスピーカーとして、地味ながら聴くほどによさのわかるスピーカーといえる。優れた指向性と平均したエネルギーバランスの良さが素晴らしい。

ダイヤトーン DS-25BMKII

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 数多くの機種を揃えているダイヤトーンのスピーカーシステムのなかでも、2ウェイ構成で、バスレフ型エンクロージュアを採用したタイプは、放送用モニターとして高い評価を得ている2S305以来の伝統的な同社の基本路線を踏襲したシステムである。DS25Bは、この路線のもっとも小型なブックシェルフ型システムであったが、今回、細部にいたるまで改良がくわえられて、MKIIとしてフレッシュアップされた。
 外形寸法、ユニット構成などはDS25Bを受継いでいるのは当然のことながら、外観上での大きな変化は、バッフルボード面でのユニット配置が、音像定位の明確化を計ったため左右対称型となり、各ユニットの仕上げが、メタリック調を強くした明るくシャープな感覚になったこと。細部では、トゥイーターのレベル調整が従来の3段切替から−方向に一段多くなった4段切替になったことであろう。
 25cmウーファーは、中域のレスポンスを改良するためにメカニカルフィルター装備であり、新設計による5cmコーン型トゥイーターは、ダイヤトーン独自のオリフィス構造とフレーム共振を低減する剛性が高い新しいフレームと、センターキャップに高域レスポンスを伸ばす目的のチタンドームを採用した点に特長がある。また、ネットワークは、伝送ロスを抑えた低歪コア入りコイル、要所要所にはメタライズドポリエステルフィルムコンデンサーを選択して使用しており、歪特性の改善をポイントにしている。
 MKIIとなって、スピーカーシステムの性質は従来のモニター的なタイプから一段とバーサタイルなタイプに変ったようだ。音色は明るくなり、ステレオフォニックな音場感の、とくに前後方向の再現がナチュラルになり、中高域のキャラクターが抑えられて、この帯域の音が滑らかで透明になったのがDS25Bとの比較で明瞭に聴きとれる。

Lo-D HS-430

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 今回発売されたHS430は、既発売のオールメタル振動板採用の3ウェイシステムHS630につづく、同じ構想の新製品である。
 ユニット構成は、全部のユニットにメタル振動板を採用した3ウェイ方式で、30cm口径のウーファーL3001は、昭和48年に同社最初のメタルコーン採用のフロアー型システムHS1500のウーファーL301をべ−スとしたユニットである。そのため、コーン形状、外径、エッジ幅は同一だが、コーンの構造が変更され軽質量化が計られている。L301では、100μのアルミ合金箔を2枚使用し、その間に発泡材を使用していたが、今回は200μの1枚の単板メタルコーンとしたために強度は約8倍になり、質量は約8g軽く、能率は約4dB向上している。しかし、低い周波数では、逆にツリガネ振動を発生しやすくなるため、大型のメタルセンターキャップを装着し剛性を高めて解決している。また、エッジはゴムコーティングのギャザードエッジ。チタンのボイスコイルボビンとコーンの接合部にはブチルゴム系のメカニカルフィルターを取付け、メタルコーンの高域共振のピークを電気的なピークコントロールを使わずにメカニカルにコントロールしている特長がある。
 5・5cm口径のメタルコーン型スコーカーM5501は、ウーファー同様のメタルコーンとギャザードエッジ採用で最低共振周波数280Hz、14、000ガウスの磁束密度をもつ磁気回路を使用している。2・5cm口径チタン振動板採用のドーム型トゥイーターH2501は、アルミダイキャスト製フレームと耐熱性ボイスコイル採用の高耐入力設計によるものだ。
 エンクロージュアは、バッフルボードにカラ松材を主とした針葉樹の3層構造パーチクルボードを使用したバスレフ型で、マホガニー調仕上げである。ネットワークは12dB型、中音と高音に6dB連続可変型レベルコントロール付で、コイルはフェライトボビンに巻いた低抵抗型を、コンデンサーは重要な部分にはメタライズドポリエステルフィルム型を使用している。
 HS430は、聴感上でナチュラルに伸びた周波数レスポンスをもち、音色は明るく、各ユニット間のつながりは十分にスムーズである。音の粒子は細かく緻密であり、この価格帯のシステムとしてはクォリティが高く、従来の製品よりも音の表現が一段とダイナミックになったのが特長である。

トリオ LS-202

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 今までの同社のスピーカーとは全く開発の姿勢が変り、抜けのいい力のある豊かな弾力性に富んだ低音を再生する25cmウーファーをベースにした、スケールの大きな再生音の得られる3ウェイブックシェルフの最新作。大音量再生に十分応えることができるワイドレンジ型だ。

デンオン SC-104/II

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 ピアレスのユニットを採用した最初の製品のマイナーチェンジモデルである。25cmウーファーをベースにした3ウェイモデルだが、ロングライフを続けているだけあってまとまりやバランスが一層よくなって、実にナチュラルな音の出方をする。

ラックス MS-10

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックスといえば、現在に至るまで管球式のアンプを作りつづけるアンプ専業メーカーというイメージが強いが、創業以来50年をこすキャリアを誇るだけにプレーヤーシステムやスピーカーシステムの分野でも独自な発想に基づいた製品をタイムリーに開発し、つねに話題を提供してきたことを知る人も多いことであろう。
 今回発売されたMS10は、昨年の全日本オーディオフェアに展示された一連のスピーカーシステムのなかから最初に製品化されたものと考えられる小型ブックシェルフ型である。トールボーイ型のプロポーションをもつエンクロージュアは、箱の後面に複数個の小孔をあけエンクロージュア内部の空気圧をコントロールするマルチベントチューニング方式と名付けられたタイプで、密閉型ほどウーファーのコーンに圧力がかからず、バスレフ型のように共振点をもたずコーンの動きの非対称性がない特長をもつとのことだ。材料はハイダンプド硬質パーチクル板で内部には吸音とパーチクル板の振動を抑える目的で粘弾質含有発泡吸音材スーパーシールが貼付けられ不要輻射を低減している。
 ユニット構成は2ウェイ型で、20cmウーファーは、コーン材料にアラミド系繊維のネットに化学処理を施し加熱成型をした新素材を採用し、エッジはポリウレタンフォーム、ダンパーはコーンと同じ素材、フレームはアルミダイキャスト製バーアーム型と数多くの特長をもつ。2・5cm口径のポリエステルフィルムドーム振動板使用のトゥイーターは、ウーファーとのつながりを重視した素材選択の結果選ばれたもので広帯域、高耐入力設計によるものである。
 ネットワークは、景近その使用部品が注目されているところだが、ここでは低域側、高域側ともに18dB/oct型が採用され、ユニット相互間の干渉を少なくするため補正回路を設け、クロスオーバー周波数付近のマスキング効果の発生を防いでいる。素子のコイルは低損失型、コンデンサーはメタライズドフィルム型を使い、レベルコントロールは付属していない、いわゆる固定型である。なお、スピーカー端子は太いコードでも確実に接続できるリード挿入式の大型ターミナルである。
 MS10のもっとも大きな特長は、アラミド系繊維をウーファーコーンに導入したことにある。各種のプラスティック系の材料を応用した例は国内製品には珍しいが、英国系のスピーカーシステムには比較的多く使用されているようだ。新材料を採用したためか、MS10は音色が軽く明るいタイプで、音の反応が速い特長がある。聴感上での帯域バランスは、小型ブックシェルフ型のつねで、やや高域に偏ったタイプで、セッティング場所を選び、バランスを補正した後にさらにアンプ側のトーンコントロールで補正するのがオーソドックスな使用法だ。MS10には粒立ちが細かく滑らかなアンプがマッチする。

ビクター SX-3III

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 トゥイーターはソフトドームを使った、ブックシェルフ型の代表といっていいロングライフのものだけあって、リニアリティもよく、本格的な再生にも小音量で鳴らすにもいいスピーカーだ。音のタッチに明確な実感がある。

ラックス MS-10

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 新たにスピーカー開発に乗り出した同社の第一作で、アラミド系コーンの20cmウーファーと2・5cmドーム型トゥイーターを組み合わせた2ウェイシステムである。この価格とこのサイズ(W25×H54×D26cm)の中では比較的オーソドックスなリプロダクションが可能であり、すっきりとした歪みの少ない音とスケールの大きな再生音が得られる本格派だ。

セレッション Ditton 11

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社独自のABR(ドロンコーン)をもたない密閉型の2ウェイシステム。小型ながら明快な音楽表現力をもっていることが特徴だ。

ブラウン L100

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 西独ブラウンのスピーカーは、あくまで家庭内での音楽再生ということを基本に開発され、その範囲内での巧みな音のまとめ方がなされている。このL100もそういう意味で、相当主張の強い音だが音楽が説得力をもって生き生きと鳴るスピーカーシステムである。

ソニー SS-5GX

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 小型だがハイパワー再生が可能な設計がなされているだけあって、迫力あるサウンドが楽しめる。音の自然な響きという点では少々メカニックな感じもしなくもないが、精緻な音であることは確かだ。

ビクター S-05

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 リボン型トゥイーターを採用した3ウェイシステムだが、SX7IIに共通する透明度の高い音が魅力。品位が高く表現力の大きなスピーカーだ。