Category Archives: カートリッジ - Page 19

スペックス SD-909, SDT-77

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 スペックスからは、MC型のSD−909である。このカートリッジは、共振を防ぐために、カートリッジのボディに、航空機用の軽合金を使い、共振点の異なる2つの材質が共振を打ち消す構造である。
 振動系は、78・5%PCパーマロイを使った巻枠に巻いたコイル、つまり発電系と、カンチレバーの振動支点が一致するワンポイント支持方式を採用し、温度変化にたいして一定のダンピング係数を保つために、異なった性質の材料を2枚合わせてプッシュプル方式を採用している。
 SD−909は、MC型で、精密な作業をおこなうために、少数生産でつくられ、一日に21個しかつくれないとのことだ。
 SD−909などの低出力MC型カートリッジの昇圧用トランスとして、スペックスでは、SDT−77が用意されている。このトランスは、SDT−180newのトランス本体をベースとし、より使いやすくよりスペースをとらない小型にするために、かずかずの改良が加えられている。
 この種の昇圧トランスは、入力インピーダンスのマッチングを、切替によっておこなうのが一般的であるが、ここでは、切替不要の独得のトランス設計により、2〜50Ωのインピーダンス範囲では、切替なしで使用できるとのことである。
 SD−909を、SDT−77をペアにして使ってみる。従来からも、スペックスのMC型カートリッジは、音色が明るく、力強い音を特長としていたが、SD−909は、この系統を受継ぎながら、さらに、音の密度が高くなり太い線も表現できるMC型としてユニークであると思う。

サテン M-18E

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サテンのカートリッジは、もっとも古いモノーラル用のモデルであるM−1以来、独自のポリシーのもとに、鉄芯を使用せず、ステップアップトランスも不要な、高出力MC型一途に、製品を送り出している。
 最近では、久しぶりに沈黙を破って、M−117を発表したが、今回の新製品、M−18は、M−117をベースとして発展させたモデルではなく、逆に、M−117のプロトタイプとして、M−117に先だって開発されたモデルである。
 サテンのムービングコイルは、三角形に巻かれているために、いわゆる、オムスビ型をしたスパイラル巻きであるが、M−18、M、117ともにダ円形のスパイラル巻に変更され、コイルが磁束を切る有効率が1/3から1/2に増し、M−117でも、質量は1/2と半減している。
 新シリーズは、カンチレバーの支持方法が、従来のテンションワイヤーによるものから、二枚の板バネとテンションワイヤーを組み合わせたタイプに変わり、カンチレバーは、二枚の板バネとテンションワイヤーの中心線の交点を支点として支持されるため支点は厳密に一点である。これにより、従来は不可避であったカンチレバーの軸方向まわりの回転運動がなくなったことが、新しい支持方式の大きなメリットである。また、コイルを保持し、カンチレバーの動きをコイルに伝えるアーマチュアも、大幅な改良が加えられ、50μの厚みのベリリュウム銅でつくったアーマチュアとコイルとの結合部がループ状になっており、電磁制動が有効に使えるタイプになっている。
 サテンのMC型は、針交換が可能なことも、忘れてはならない特長である。新シリーズは、交換針を本体に取付ける方法が、従来のバネによるものから、MC型が必要とする磁石の磁力によって交換針を保持する方式に変わった。
 M−18は、M−117の高級機であるために、精度が一段と高まり、ムービングコイルが、さらに軽量化されている。M−18シリーズは、4モデルあり、0.5ミル針付のM−18、ダ円針付のM−18E、0.1×2.5ミル・コニック針付のM−18Xと、コニック針付で、カンチレバーにベリリュウムを使ったM−18BXがある。
 試聴したのは、M−18シリーズのスタンダードとも考えられる、M−18Eである。MM型では、負荷抵抗による音の変化は、ほぼ、常識となっているが、MC型でも、変わり方が異なるとはいえ、負荷抵抗によって、音量が変化し、出力電圧も変化する。サテンでは、負荷抵抗として30Ω〜300Ωを推奨しているが、50kΩでも可とのこともあって試聴は、一般のカートリッジと同様に50kΩでおこなうことにした。
 M−18Eで、もっとも大きな特長は、聴感上のSN比がよく、スクラッチノイズが、他のカートリッジとくらべて、明らかに異なった性質のものであることだ。M−18の音は、文字で表現することは難しく、周波数帯域とか、バランスといった聴き方をするかぎり、ナチュラルであり、問題にすべき点は見出せない。ただ、いい方を変えれば、いわゆるレコードらしくない音であり、例えば、未処理のオリジナルテープの音と似ているといってもよい。他のカートリッジであれば、レコード以後のことだけを考えていればよいが、M−18Eでは、レコード以前の、いわば、オーディオファンにとっては見てはならぬ領域を見てしまったような錯覚をさえ感じる。この音は、誰しも、素晴らしい音として認めるが、使う人によって好むか好まざるかはわかれるだろう。

エクセル ES-70S typeII, ES-70SH typeII, ES-70E typeII, ES-70EX typeII, ES-70EX, ES-801

エクセルのカートリッジES-70S typeII、ES-70SH typeII、ES-70E typeII、ES-70EX typeII、ES-70EX、トーンアームES-801の広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

ES801

ソナス Blue Label, Red Label, Green Label, セシルワッツ DISC PREENER, DUST BUG, Hi-Fi PRASTAT MK4

ソナスのカートリッジBlue Label、Red Label、Green Label、セシルワッツのレコードクリーナーDISC PREENER、DUST BUG、Hi-Fi PRASTAT MK4の広告(輸入元:今井商事)
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

Watts

ダイナベクター OMC-38

ダイナベクターのカートリッジOMC38の広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

OMC38

テクニクス EPA-101L, EPA-102L, EPA-121L, PLUSARM-101T, PLUSARM-102T, PLUSARM-121T, EPC-205C-II, EPC-205C-IIL, EPC-205C-IIH, EPC-405C, EPC-440C

テクニクスのトーンアームEPA101L、EPA102L、EPA121L、PLUSARM101T、PLUSARM102T、PLUSARM121T、カートリッジEPC205C-II、EPC205C-IIL、EPC205C-IIH、EPC405C、EPC440Cの広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

Technics

オーディオクラフト AC-10E

オーディオクラフトのカートリッジAC10Eの広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

AC10E

ピカリング XUV/4500Q, OA3, ミルティ Pixall, ゼロスタット ZEROSTAT

ピカリングのカートリッジXUV/4500Q、ヘッドフォンOA3、ピクソールのレコードクリーナーPixall、ゼロスタットのレコードクリーナーZEROSTATの広告(輸入元:東志)
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

TOSY

サウンド STO-140, STC-11

サウンドのトーンアームSTO140、カートリッジSTC11の広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

STO140

グレース F-8E, F-9E, G-714

グレースのカートリッジF8E、F9E、トーンアームG714の広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

F9

サテン M-18BX

サテンのカートリッジM18BXの広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

サテン

ビクター Z-1, Z-1E

ビクターのカートリッジZ1、Z1Eの広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

ビクター1

オーディオテクニカ AT-15E/G

オーディオテクニカのカートリッジAT15E/Gの広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

オーディオテクニカ

コーラル 666-EX, 777-EX, 777-E, 777-S

コーラルのカートリッジ666EX、777EX、777E、777Sの広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

コーラル

グレース F-9E

岩崎千明

スイングジャーナル 7月号(1975年6月発行)
「ベスト・バイ・コンポーネントとステレオ・システム紹介」より

 グレースはグレース・ケリーのグレースと同じ綴り、などというと年が判っちゃうかな?。グレースのグレースは高尚とかいうが、実はグレイからもじられたグレースというのが多分本当だろう。
 グレイというのは、昨年来、日本市場にも再度10何年ぶりにお目見えした超豪華プレイヤーについていたアームのブランド名だ。しかし再度と知っているオールド・マニアにとっては、グレイはオイルダンプド・アームの本家としてモノーラル時代に世界を圧した業務用アームの老舗である。この誇りあるのれんの重さは当時にあっては並ぶべきものが全くなかったほどだった。
 やがてステレオ期になって、軽針圧カートリッジ時代に入るとぷっつりと姿を消して、その名も絶えてしまったのが本家の米国グレイ社であった。マイクロトラックというブランド名の重量級プレイヤーについている武骨なオイルダンプ・アームは、まぎれもなくグレイ社の製品であったのを懐かしむ者もいたはずだ。本家のグレイが落ちぶれたのに対して日本のグレースは、ステレオになるやMM型カートリッジの秀作F5、F6とヒットを送りさらに400シリーズから発展した500シリーズの軽量級パイプ・アームが市場を長い期間独占していた。
 こうした成功は決して僥倖によるものではなくて、ひとつの製品を土台にしてその改良を絶えず行ない、さらにその集積を次の新製品とする、という偉大なる努力を間断なく続けてきた結果のF9シリーズは、それらの技術的姿勢の賜物というべきだろう。だからこのF9も決して他社のように新製品のための新型ではない。技術の積み重ねが得た止むに止まれずに出てきた新製品なのである。
 F9はMM型メカニズムとして従来のF8と全く異るというわけではないが、その磁気回路とコイルとの組合せによって成立する構造は従来のF8には盛り切れなくなって達した新機構ということができる。それは、しばしばいわれるように、シュアーV15がタイプIIIになって新らたなるメカとなったことと共通しているといえようか。だから wv9は、よくシュアーのV15IIIと比較されることもあるが、その違いはF9の基本的特性が素晴らしくのび切ったハイエンドを秘めているのに対してV15タイプIIIは必ずしも数万ヘルツまで帯域が確保されているとはいい難い。それどころか最近多くなったCD4ディスクへの対応という点ではV15タイプIIIはもっとも弱い立場にあるともいわれる。F9のデーターにみるフラットな再生ぶりは、類がないものだ。

プロ志向に徹したマニア・ライクなシステム
 こうした技術データーの優秀性はそのまま音の上にもはっきりと感じとることができ、澄み切った音は今までになく透明で、しかも従来のような線の細さがF9になってすっかり改められ、力強さを加えていることだ。これは中高域における1dB以内とはいえレベル・ダウンがなくなったことが大きなプラスとなっているのだろう。つまり、解像度はよいが繊細すぎるといわれた点の改善である。
 こうした音色上の改良点は、そのまま再生上の水準を大きく引き上げることとなりF9になって海外製品との比較や組合せが、心おきなく可能となったのは大きな収穫だろう。
 このF9を生かすべき組合せは、この透明感と無個性といいたくなるほどのクセのない再生ぶりを生かすことだ。そのために選んだのが、これまた音の直接音表現で名をはせるテクニクスのアンプである。
 テクニクスはこうした面での再生を高いポテンシャルで実現する点、国産高級アンプ中でも無類の製品だ。かつてはSU3500で価格の割高なことがマイナスとならなかったロングセラー・アンプであることは有名だ。日進月歩の今日3500は3年を迎えて、今でも第一級なのだから。この3500以来テクニクスのアンプの優秀性はひとつの伝鋭となったくらいで、その最新作9200セパレート型アンプ、 引き続いての9400プリメイン・アンプと、どれをとっても透明そのものの再生ぶりがメカニックなプロフェッショナル・デザインと共にユーザーに強い印象を与え、多くのテクニクス・アンプの支持者を生むことになったのだ。
 プロ志向にあこがれるのはベテラン・マニアだけでなく若いファンとて同じなのだ。
 さて、このF9プラス、テクニクス・アンプとプロフェッショナル志向の強くなった組合せは、プレイヤーにデンオンの新型、コストパーフォーマンスの高いDP1700を選ぶのは妥当だろう。このアームはデンオンのプロ用直系で、F9にとってグレース・ブランドのオリジナルと同様好ましい動作が期待できよう。
 またスピーカー・システムに関してもプロフェッショナル志向という点で、サンスイのモニター・シリーズを選ぶのはごく自然な成り行き、結着といえるだろう。ここではモニター2115、つまりLE8Tのプロ用ユニットを収めたやや小型のブックシェルフ型だ。さらに大型の10インチ2120も考えられる。しかし、ただ一本でできるだけ良質の再生ということからは、この2115こそもっとも妥当なセレクトといってよい。
 このシステムで再生したラフ・テスト盤のフォノグラムの最新作「ザ・ドラム・セッション」の端正きわまりない再生ぶり、底知れぬ力に満ちたドラムのアタックと4人の個性的なサウンドと、その奏法のおりなす生々しい展開は試聴室をスタジオの現場と化してしまうほどであった。そのスケール感と定位の良きは、F9の基本的性能の良さを立証するものに他ならないといえよう。
 このシステムから流れ出るサウンドは.なぜか聴き手を引き込むようなサウンドであり、しばらくはSJ試聴室でだだただ興奮!

オルトフォン SL15MKII

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 名作SPUをより広帯域化、フラットな周波数特性を、はっきり意図した現代版MC型。デリケートな表現力と、豊かな低域の響きとで今やオルトフォンMC型の主力製品だ。

AKG PU3E

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 この上のPU4Eがあるが、中~高域がおとなしいよりもかすかに鈍い、あるいは曇った印象で、少しクセはあっても3Eの切れこみの良さの方が、総合的にみて好きだ。

オルトフォン SPU-GT/E

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 製品のバラつきも少ないとは言えず、むかしのSPUと最近のとではずいぶん音質も変っているが、それにしてもこの音はほかのカートリッジからは絶対に聴くことができない。

オルトフォン SL15Q

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 SL15がマークIIに変った当初は、変に高域のギスギスと骨ばった音で驚いたが、最近の製品は音のバランスも改善され、歪感の少ない細身の音質でSPUと別の魅力を聴かせる。

シュアー M75ED TypeII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 楕円針がついたことと、振動系の調整が少し違うことでM75Gよりも音のキメの細かさが増している。製造中止になった旧型V15/IIのニュアンスをわずかに残している。

シュアー M75G TypeII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 改まった鑑賞用というよりむしろイージーリスニング用として、トレースの良いこと、音のバランスの良いこと、価格にくらべて音に適度の魅力もあることなどを評価する。

EMT TSD15

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 このカートリッジの音質を本当に生かすには、専用のアームとトランスをなるべく併用することが望ましい。一方では、スピーカーのレベル調整さえ、やり直す必要がある。

エレクトロアクースティック STS455E

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 以前のシリーズよりも音色はやや冷たく硬質な方向になり、この音を金属的と形容する人もある。万能型ではない。この上に555、655とあるが455の方が使いやすく安定。

B&O MMC4000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 SP15の高域の冷気を感じさせる味わいも捨て難いが、総合的な音のバランスで、やはり新型のMMC4000の方が優れている。実に自然でくせのない音質。

デッカ Mark V/e

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 高域の線の細く鋭い音色はB&OのSP15と一脈通じる部分もあるが、華やかさと渋さの入り混じった独特の音質は他のカートリッジからは聴けない個性だろう。