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ビクター SEA-70

ビクターのグラフィックイコライザーSEA70の広告
(スイングジャーナル 1980年7月号掲載)

SEA70

ビクター QL-Y5

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 Y7とシリーズをなす最新のセミオートプレーヤー。トーンアームは、電子式ダイナミックバランス型で、針圧、アンチスケート、ダンピングは独立した調整ツマミで電気的にコントロールできるのが最大の特長。伸び伸びとした力強い音は、聴いていて大変に心地よい。

ビクター Zero-3

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 ビクターZERO3は、小型3ウェイシステムの成功作で、ZERO5をそのままスケールダウンしたような外観をもつ。しかし、内容は負けず劣らず、むしろ部分的改善が生きていることがわかる。大変緻密な再生音で、かつ全体に聴き手を魅了する美しい色彩感が効果的だ。このクラス(1本5万円未満)のスピーカーとしては、きわめて高い完成度と優れた個性的魅力をもつ。

ビクター SX-7II

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 ビクターSX7IIは、オリジナルから5年以上経ち、その間、リファインを続けて現在に至る完成度の高い製品だ。30cm口径ウーファーをベースに、スコーカー、トゥイーターにソフトドームを使った3ウェイ構成で、密閉型エンクロージュアはかなりの大型である。透明度の高い中域から高域にかけての再生能力は高いし、低音の明解な響きも立派である。

ビクター SX-3III

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 ビクターSX3IIIは、改良を重ねてきたロングセラーの製品で、25cmウーファーとソフトドーム・トゥイーターという構成は、オリジナルから一貫して変らない。ユニークな外観もそのままで、根強い人気を持っている。豊かな低域、中高域のしたたかな再現能力は、現在でも立派な現役システムとして評価できるものだ。

ビクター MC-101E

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 三層構造のマイクロコイルを針先位置に近接して取付けたダイレクトカップル方式の高出力MC。力強く、アクティブな音が楽しめる。

ビクター KD-A55

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 2モーター・フルロジック操作系のメカニズムを採用した最初のメタル対応機として好評を得たA5のグレイドアップモデルである。すでにA5と同等の性能を4万円台のA33でビクターは実現しているだけに、このA55では、リモート操作、自動選曲、メモリー停止と再生、スーパーANRSを加え、機能面を格段に向上した点に注目したい。

ビクター Zero-3

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 Zero3は、新シリーズとして最初に登場したZero5、平面振動板採用の4ウェイ構成のZero7に続く、第3弾の製品である。基本構成は、上級機種のZero5を受け継いだ25cmウーファー使用の3ウェイ型であり、4万円台の価格帯に最初にリボン型トゥイーターを採用したシステムであることが注目される。
 ウーファーは、振動板面積の25%を占めるエッジの悪影響を避ける目的で、ユニークなシールデッドエッジ採用に特長がある。新開発アルファーコーンは、周辺部の強度を高めるリブ構造。マグネットはストロンチウムフェライト磁石採用である。口径7cmコーン型スコーカーは、紙の両面に無電解金属メッキをしたメインコーンとセンタードームにチタンを使った複合型で、紙と金属の利点を併せもつタイプだ。トゥイーターは、独自のダイナフラット・リボン型で、振動板は10μ厚ポリイミドフィルム面に15μ厚のアルミ箔を融着し、ストロンチウムコバルト磁石閉回路方式磁気回路と組み合わされ、振動板前面にはショートホーンが付く。エンクロージュアはバスレフ型、左右対称のユニット配置だ。
 本機は小型ながら低域レスポンスが伸び、分解能が優れた中域とキャラクターが抑えられ透明感のある高域が巧みなバランスを保ち、この価格帯として抜群のクォリティであり、上下指向性も大変によい。

ビクター Zero-5

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ひびきの質は、むしろ重めだ。そのためにひびきの輪郭は、くっきりと示される。そのくっきりと示される輪郭が、おしだされるように示される傾向がある。❷のレコードでの強打されるピアノの音、あるいは❸のレコードでの低音弦の動きのあいまいさのない提示は、このスピーカーのもちあじが発揮されたためのものといえよう。ただ、❶のレコードでは、ききてとしては、どうしても音場感の面でひろがりがほしいところだが、その点での提示では、このスピーカーは、あまり得意でないようだ。それで、いくぶん全体におしつまったというか、せせこましいきこえ方がする。同じことは、❸のレコードについてもいえて、オーケストラのひびきがもう少しひろびろと示されてもよさそうだが、そうはならない。しかし、個々の音の基本エネルギーは、このランクのスピーカーとしては、せいいっぱい示そうとしている。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(物足りない)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

ビクター SX-7II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 たいそう質の良い音がする。ことにバランスが良い。たいていの国産は、クラシックのシンフォニー等でどうしてもコンサートホールで聴くあの自然な柔らかい響きの美しさが出にくいのだが(輸入品は、ほんの安ものでもそこが鳴らせるというのに)、SX7IIは国産として、妙な話しだが例外的と言いたいほどで、ブルックナーを鳴らしてみてもようやく国産で聴ける音にめぐりあえたという感じすらある。弦のユニゾン、ヴァイオリンのソロ、そして総奏の響きのよさ。極上の音を望むのはまだ無理としても、ふとテストする姿勢をくずしてしばらく聴き続けたい気持を起させるというのは、それだけでも十分に良いスピーカーと断言していい。大切なことは、この音でポップスやロックや歌謡曲を聴いても、やはり十分に上質の音楽が味わえるという点だ。柔らかい音だがふやけていない。こういう音は、組合せでことさら嫌う音の製品が少なく、それぞれの音の特長をうまく生かす。

総合採点:9

●9項目採点表
音域の広さ:8
バランス:8
質感:8
スケール感:8
ステレオエフェクト:8
耐入力・ダイナミックレンジ:7
音の魅力度:7
組合せ:普通
設置・調整:普通

ビクター SX-7II

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 独特の透明感・プレゼンスのよさは私が高く評価していたものだが、今回の試聴ではそれが目立っては感じられなかった。どういうわけだか判然としない。試聴条件のためか、この製品について特にそうなのか、あるいは他製品との相対的な印象でそうなったのか……。試聴感は決して悪いものではなかったが、思っていたほどよくなかったというのが正直な感想である。しかし、全体のバランスといい明解な音像再現能力といい、良い点はたくさんある。かなり大音量再生を試みても安定した力感を楽しめるという能力の大きさは、やはり優れたスピーカーだと思う。ただ、外国製品の優れたものと比較せざるを得ない今回の試聴条件では、音色の再現能力に限界があって、もっと瑞々しくほれぼれするような音であるべき演奏の魅力が、十二分には発揮されない嫌いがあった。レコード音楽愛好家としては、それがたとえスピーカー固有のものだとしても、そこから聴こえる演奏と一体化した音色の音楽的愉悦感を否定できるものではない。

総合採点:9

ビクター Zero-5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 独特のトゥイーターの音色を、やや意識させる傾向に強調してあって、たとえばブルックナーの交響曲でも、また逆にベラフォンテの古い実況録音盤のような場合でも、つまりかなり傾向の異なるプログラムソースのいずれの場合でも、一種キラキラした固有の音色が聴きとれる。たとえばシンバルはシンシンというような感じ、そして弦の場合でもヴァイオリンの上音でときたまシリンというような感じのやや金属性の音がつきまとう。トゥイーターレベルを0から−3までのあいだで調整すると、この傾向はいくぶんおさえることはできるが、エラックの新型のような中〜高域のきつめのカートリッジでは、どうもうまくない。中音域以下では、たとえばキングズ・シンガーズのバリトン、バスの声域で、置き方をよく調整しないと、やや風呂場的響きに近くなりやすい。総じて味つけの濃い、わりあい個性の強いスピーカーだと思った。

総合採点:7

●9項目採点表
音域の広さ:7
バランス:6
質感:6
スケール感:7
ステレオエフェクト:6
耐入力・ダイナミックレンジ:7
音の魅力度:5
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:普通

ビクター Zero-5

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 30cmコーンスピーカーをウーファーとして、スコーカーに10cmコーン、トゥイーターにはリボン型を配した3ユニット構成の3ウェイシステムである。エンクロージュアは、ブックシェルフタイプのバスレフ型だ。なかなかよくまとまった、明るい音色をもったシステムである。ヴァイオリンで、トゥイーターの高音域が、やや異質なキャラクターを鳴らしたが、これは、大方の音楽でハイエンドの味つけとして生きる場合が多く欠点とはいえないとも思う。バランスがよくとれているし、各ユニットの音色も、ほんのり甘美で、暖かく、音楽を無機的に冷たくすることが決してない。編成の大きなオーケストラのトゥッティも、テクスチュアもよく緻密に再現するし、プレゼンスの豊かな、ソノリティに量感もある。ジャズも、かなりのハイレベル再生でも安定し迫力も満たされるし、個々の楽器の特質や、演奏表現もまず、不足はない。これで、音楽の品位に負けなければ文句なしだが、この甘美な音色はどちらかというとポピュラー系向きだ。

総合採点:8

ビクター SX-7II

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 くっきりと音の輪郭を提示することをまず心がけたスピーカーといえるかもしれない。したがって、サウンドの微妙な表情は、感じとりにくい。❷のレコードでの、うたうグルダの、なかばかすれた声は、まろやかに、つまりあたりまえのものにきこえてしまう。しかしその反面、たとえば❸のレコードでのティンパニの音とか低音弦のひびきとかの、ひとことでいえばエネルギー感の必要な音への対応は、なかなか見事だ。ただ、そういう強い音への対応のこのましさは、多分、個々のサウンドへのさらにシャープな反応が可能になったときに、よりはえるということはいえるにちがいない。その鋭敏さということでいくぶん不足するところがあるので、❶のレコードできける音楽などは、もったりした印象のものにならざるをえなくなる。その点が改善されればさらにアトラクティヴなスピーカーになるだろう。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(物足りない)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

ビクター M-7050

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

スイッチング歪みとクロスオーバー歪みを解消する目的で、パワー段の可変バイアス方式とドライバー段の改善を含めたスーパーAクラス増幅方式採用のパワーアンプの第1弾製品。

ビクター R-5000

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

シンセサイザーチューナー付レシーバーに、メタル対応フルロジック操作のデッキをビルトインした非常に魅力的な新世代の到来を感じさせる製品。薄型デザインと10万円を割る価格も見逃せない。

ビクター A-X3

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

ビクターのスーパーAクラス増幅方式を採用したプリメインアンプでは、もっともローコストな価格帯におかれた第3弾製品。スイッチング歪とクロスオーバー歪を追放した透明な高域が美しい。

ビクター Zero-7

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

ユニークな卵型エンクロージュアと平面振動板ユニット採用の標準スピーカーを開発した技術をブックシェルフ型に導入した平面振動板ユニットとリボントゥイーターの4ウェイシステム。シャープで繊細な音が聴かれる。

ビクター S-W300

井上卓也

コンポーネントステレオの世界──1980(ステレオサウンド別冊 1979年12月21日発行)
「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」より

キュービックなユニークなデザインにまとめられたスーパーウーファー。30cmユニット前面にはフィルター兼プロテクター板があり背面には38cmパッシブラジエーター付。想像以上の重低音の魅力だ。

ビクター QL-Y7

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクター初の電子制御トーンアームを採用したセミオートプレーヤーシステムである。トーンアームは、軸受部の右側面に垂直方向のセンサーとリニアモーター、水平軸受の延長部にセンサーとリニアモーターを備えた純電子制御型で、アームの上昇、下降、盤面上の左右送り、オートリターン、リジェクトの他、ゼロバランス調整後は針圧調整、インサイドフォースとダンピング量が独立した3個のツマミで針圧対応型で調整できるが、当然、任意の個別調整も可能だ。
 プレーヤーベースはローズウッド仕上げの無共振ソリッド材積層構造で、高さ調整可能なドーム型インシュレーター付。モーターは、コッギングがなく滑らかな回転が得られる高トルク・コアレス構造の偏平型DCモーターで、サーボ系全体の信頼性を従来の約30倍向上させたダブル・クォーツロック方式と、コアレスモーターのトルクの低いデメリットを改善するプッシュプルドライブ方式に特長がある。ターンテーブルは重量2kgのアルミダイキャスト製で、ターンテーブルのつり鐘振動と固有共振を抑える目的で亜鉛ダイキャストを複合した無共振構造を採用している。演奏中に単独コントロールできる針圧、ダンピング調整は、聴感上の最適値を求める場合に有効に動作をする。情報量が多く、表情も豊かで高品位な音である。

ビクター M-7050

菅野沖彦

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか(下)最新セパレートアンプ25機種のテストリポート」より

 よくまとまったアンプだ。シェリングのヴァイオリンの音色も妥当だし、美しさの中に、時折、垣間見せる毅然とした一種の厳しさも出る。鮮烈な高音域も冴えるし、丸味のあるソースでは柔らかい響きもその通り再生する優等生。ジャズの力強さも大丈夫。

ビクター Zero-7

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 昨年、ビクター音響技術研究所で技術発表された回転楕円体エンクロージュア採用でマルチアンプ駆動、平面振動板ユニットの3ウェイ構成の標準スピーカーシステムの開発技術を導入し開発された、ビクター初の平面振動板ユニット採用の4ウェイシステムである。
 32cmウーファーは、円錐型の発泡レジンを振動板とするタイプで、外観上はエッジが見えず、細いスリットの奥にロール型のエッジがあるのが特長。スコーカー、トゥイーターも同じ構造の平面振動板採用であり、スーパートゥイーターは新設計のダイナフラット・リボン型で、ダイアフラム前方にサマリウムコバルト磁石があり、後方に閉回路のストロンチウム・フェライト磁石を配した強力な磁気回路採用で、100kHzまでのレスポンスがあり、ダイアフラム前面には能率向上のため、指向性が優れた短いホーンが付いている。
 エンクロージュアはバスレフ型、低歪高耐入力設計で、70μ厚基板使用のネットワーク、無酸素銅線使用の内部配線、新開発の接点や端子の異種金属を排除した6ステップL型音質重視のアッテネーター、フェイズモアレ法によりmm単位で検討されたユニット配置などに特長がある。
 表情豊かな低域ベースのスッキリとワイドレンジ型のバランスで、音色は明るく軽く整理された音場感が特長。

ビクター MC-101E

井上卓也

ステレオサウンド 53号(1979年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 針先位置に近接して超小型のプリンテッドコイルを取付けた独自のダイレクトカップル方式MC型MC1、MC2に続く、同じ発電方式で高出力型とした新製品である。高出力化のため、従来のマイクロコイルと同質量で3層構造とした多層化コイルは、一層ごとの巻数がMC1の2倍以上あり、パターンはLSIより細かい。多層化の副次的なメリットで適度な内部損失が持たせられるため、一層型では必要な制動用シリコングリスが不要である。リードワイヤーもマイクロコイル同様にフィルム面にリード線を形成し、軽量化と信頼性を向上している。磁気回路も改良が加えられ、コイルパターンの変更とともに、1・3mVの高出力を実現している。
 サラリとした淡白なキャラクターで音色は明るく軽く、細部をクリアーに引出す。帯域はナチュラルに伸びダイレクトにMCの魅力が聴けるのが特長。

ビクター A-X5

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 ビクター独自のスーパーAを組み込んだアンプの中の中クラスの製品。同価格帯のアンプと聴き比べてみると、このアンプはなかなか個性的な音を聴かせてくれる。
音質 まず音に適度の厚みがある。同じ価格帯にあるLo-Dあるいはオンキョーの音というのは、どちらかといえば中域から高域の方に個性があるのに対して、ビクターはそれよりも中低域に厚みのあるようなものを感じさせる。音に重量感があり、一種ぶ厚い響きを聴かせる。言い換えれば、音がうわずる傾向が比較的少ないので、その意味ではかなり音量を上げてもカン高さ、あるいは金属質の音がしない。その点では聴きやすい音といってもいいと思う。それから、音が大変元気だ。抑えつけられた感じがしない。音全体の感じはそういうところだが、すべてのプログラム・ソースを聴いてみると、最近の新しいアンプ、例えばこの同価格帯でいうとオンキョーのA817などに代表されるような音の透明感、歪みの少なさ、ということを念頭において聴くと、透明感の点で、いささか物足りなさを感じさせる。あるいは逆に、そういうことを意識的に感じさせないようにコントロールした音なのかというように思う。つまり高域をスッと伸ばしたという音ではなくて、ほどよくまるめて聴きやすく作ったという印象がなくはない。
 特にそれは、テスト・ソースとして使った『サンチェスの子供たち』のオーバーチュアの部分にいえる。なにかもうひとつスカッとヌケきれないようなところがあり、爽快感に乏しい。そこがこのアンプの性格であり、何かを望みたくなる部分でもある。
 それからもう一つ、『春の祭典』のフォルティッシモの部分などでどことなくつかみが荒いというか、非常にかすかではあるが、音のなめらかさを欠く。いったんそこに気づいてしまうと、すべてのプログラム・ソースに何となくそういう印象を持つ。そこがちょっと首をひねったところだ。
MCヘッドアンプ オルトフォンのMC20MKIIの場合ゲインはかろうじていっぱい、ノイズは割合に少ない方なので、いっぱいにして使えなくはない。デンオン103Dの場合はもちろん十分。特にMMの標準的なカートリッジをつないだ場合と、デンオン103DでMCポジションにした場合と、ボリュームの位置が大変近い。これは大変いいことだ。MCヘッドアンプはデンオンあたりを基準にしてゲイン設定がなされているということがわかる。ただ、このMCヘッドアンプ自体の音というのは少し抜けがよくないというか、ちょっとこもるという感じがして、MC自体の持っているすっきりした切れ込みの良さというのを、必ずしも生かしているとはいいがたい。もっと気持よく抜けてほしいと思う。
トーン&ラウドネス トーン・コントロールはオン、オフしても、基本的に持っている音質はほとんど変わらない。極めてわずかに変わるとは言えるが、これはごく音のマニア的な聴き方で、普通に聴いているぶんには、変わらないといっていいと思う。トーン・コントロールの効き方はごく普通で、やや抑え気味だが、とてもきれいな効き方をする。
 それに対してラウドネス・コントロールはやや強調気味。かなり音がふくらむ感じで効く。
ヘッドホン ヘッドホン端子での出力はスピーカーをつないだ時よりも、ややレベル的に落ちる感じ。これは一般的傾向だが、ほかのアンプと比べると、ヘッドホン端子で聴いた時の音が、ことアンプ基本的に持っている音よりも、音の鮮度あるいは迫力、繊細感など、いろいろな意味で、音質が落ちるような気がする。
 もう少しヘッドホン端子にきちんとした音が出てきてもいいのではないかという印象を持った。

ビクター A-X3

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 このビクターA-X3も前号の試聴の中に入っており、これも価格の割にはなかなかいい音だという印象を持っていたアンプだが、今回のテストでも、やはり大づかみの印象は変らなかった。
音質 このアンプはビクターの新しいアンプのセールス・ポイントであるスーパーA、つまりAクラスの新しい動作方式を回路に取り入れたアンプの中での一番下のランク。そのAクラスという謳い文句に対する期待を裏切らないような、とてもみずみずしいフレッシュな音が聴ける。チャック・マンジョーネの「サンチェスの子供たち」のオーバーチュアの部分は、かなりパーカッションの力強さを要求されるところだが、このアンプはローコストとしては、かなり聴きごたえのある音を聴かせてくれた。これはおそらく、前回の試聴記の時にも書いたことだと思うが、このアンプは低域が少し重量感を持って聴こえてくる。これがこのアンプの持っているひとつの性格かな、という気がする。
 言い換えれば、このアンプがそういう期待を抱かせるような、まず大づかみにいっていい音がするから、ついこちらが五万三千円という比較的安い価格を忘れて過大な期待を持ってしまうわけで、五万三千円という価格を考えると、むしろこれはよく出来たアンプといって差し支えないと思う。
MCヘッドアンプ このアンプもMCヘッドアンプが内蔵されているが、オルトフォンMC20MKIIとデンオンDL103D両方試してみると、これはやはり……と言わざるを得ない。オルトフォンの場合には、多少ゲインが不足する。ボリュームをよほど上げないと、十分な音量が楽しめない。しかも当然のことだが、そこまでボリュームを上げると、ややヘッドアンプのノイズが耳障りになる。結果からいうと、オルトフォンはつないで聴けなくはないという程度だ。これは仕方がないことだと思う。
 ただオルトフォンをつないだ時のMCヘッドアンプの音質は、こういう価格帯としては意外に悪くない。それからDL103Dの方は、もちろんこれはゲインも十分だし、大体MMのカートリッジの平均的なものをつないだ時のボリュームの位置が同じなので、このアンプは、デンオンの103Dあたりを想定して、MCヘッドアンプのゲインを設定しているのだろうな、というように思う。
 ところでMMカートリッジの方は、他のアンプのところと同じように、エラックの794Eを一番多く使った。このアンプはエラックの持っている中域から高域のシャープな音の部分が、プログラム・ソースによっては多少きついという表現の方に近くなるようなところがある。それはこのアンプが持っている性格かもしれない。割合に細かいところにこだわらないで、大づかみにポンと勘どころをつかんで出してくれるという点で、作り方がうまいなという印象がした。
トーン&ラウドネス そのほかのファンクションだが、トーン・コントロールの効き方は割合に抑え気味。あまり極端に効かないという感じだ。ただ、トーン・コントロールのトーンオフが付いている。トーンオフしても、トーン・コントロールのフラットの状態での音があまり変わらないので、これはなかなか設計がよくできていると思う。
 ラウドネス・コントロールの方は、トーン・コントロールと同様に、軽く効き、あまり音を強調しないタイプだ。
 このアンプで一つ感心したのは、ボリュームの・コントロールのツマミを回した時の感触の良さだ。いくらか重く、粘りがあり、しかも精密感のある動きをする。よくこういう感触が出せたなと思う。
ヘッドホン ヘッドホン端子での音、これはなかなかうまいバランスだ。スピーカーで聴いた時とヘッドホンで聴いた時の音量感が割合に合っており、そのへんはよく検討されている。