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ローランドリサーチ MODEL 7SeriesII

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 MODEL5の上級機種だが、音質としては必ずしも上廻るものとは感じられなかった。印象のメモを拾ってみると、鮮度が高い音とは感じられない点と、高域の木目の細かさに不足する点の二点が明記されている。たしかに、一種のキャラクターをもった高域が、しなやかさと滑らかさを損ね、ナローレンジな感じの音にしているようだ。細かな音色のニュアンスへの対応もやや鈍く、楽器の味わいが十分出しきれない印象。力感のある音ではあるが、質的には不満が残るといわざるを得ない。

音質:7.8
価格を考慮した魅力度:7.5

クレル KMA-200MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 200Wモノーラルの、KSA100MKIIよりも二桁も上級の機種だ。それだけに、この音はKSA100MKIIを上廻る。KSA100の印象として述べた魅力に関しては、以前のKMA200の音の記憶がはっきりしていない。透徹な音と呼びたい透明度の高さは、このアンプでは抜群の印象で、抜けのよい快適なサウンドである。これでいっそうの木目の細かさか、いっそのこと艶っぽさの方向での魅力が加われば光り輝く存在となる。それにしても、このクォリティの高さは並ではない。

音質:9.0
価格を考慮した魅力度:8.8

オーディオリサーチ D-250MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 力感のある音は重厚な雰囲気で、厚味のあるリアリティを感じさせる。しかも、音が、一種、くすんだ陰影を感じさせるもので、屈託のない明るさ一辺倒ではない。こういう表情のアンプは少なく、クラシック音楽の重厚な雰囲気や、品位にとって貴重な再現性といえるだろう。毅然と歌う歌手の姿勢がよく再現され格調がある響きである。ただ、高域がやや滑らかさに欠け、音が角張った印象になるのが惜しい。ベースの押し出しが力感に溢れるが、やや柔軟な弾力性に欠けるようだ。

音質:8.7
価格を考慮した魅力度:8.0

フッターマン OTL-3

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 フッターマンのOTL4の上級機種だが、音質的にはOTL4を上廻るものではないという印象である。むしろ、試聴では、音ののぴや、抜けのよさの点で、OTL4のほうに分があると感じられた。とはいうものの、この鮮度の高い音のクォリティは並のものではないが、同じOTLで、これだけ音に違いが出るところが面白い。このアンプの音のほうが、派手だし、高域が賑やかな印象がある。また、ジャズのベースの力や弾みにも、やや物足りないところが感じられた。

音質:9.2
価格を考慮した魅力度:6.5

ジャディス JA80

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 バッハのカンタータでのヴォーカルには少々刺激的な高域が気になったし、弦のアンサンブルも、高域に粗さがあった。またチェンバロの繊細感も十分とはいえず、華麗になる傾向だ。豊かで幅のある中域の響きは大変魅力的で、ベルリオーズの「幻想交響曲」におけるチェロやバスーンの音には艶っぽく豊麗な魅力が感じられた。空間感の再現もよく、音もソリッドでクォリティは高い。高域にしなやかさと滑らかさが実現すると、このアンプは相当なものになりそうである。

音質:8.8
価格を考慮した魅力度:8.8

カウンターポイント SA-4

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 全体に肌ざわりの滑らかで、抜けのよい立体的なふくらみを感じる音の感触を持ち、しかも、ディテールの再現に優れ、細かい音の粒子が明解に豊かに聴きとれる。つまり、優れた物理特性に基づけられた高品位な音である。また、情緒的にも、このアンプのもっている鮮やかでいて、これみよがしな派手な演出のない豊かな音楽表現は満足感の高いものだ。肌ざわりの滑らかさに加え、この暖かさと、彫琢の深い音の陰影は、ブライトな華麗さと相俟って圧倒的な表現力をもっている。

音質:9.8
価格を考慮した魅力度:9.5

ネストロビック α-1

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 全帯域のバランスとしては中域がやや薄く、そのため、高域が派手に聴こえたり、賑やかになったりする傾向をもっている。音色は明るく、屈託のない、熱っぼい表現力があって、質感も緻密だし、力強さもある。バッハのカンタータでのヴァラディ、F=ディスカウ夫妻の声は柔軟なヒューマン・ヴォイスだが、ハーモニックス成分が少々きつく、ヴァイオリン群も派手めな色彩感がつきまとう。大編成オーケストラの複雑多彩な音色の鳴らし分けは細やかで魅力的だが、ここでも高域が気になった。

音質:8.5
価格を考慮した魅力度:8.0

ローランドリサーチ MODEL 5

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 透明感は高く濁りは少ない品位の高い再生音であることを特筆しておく。細かい音もよく再現し、しなやかな質感で聴かせるが、音の厚み、丸み方向での感触と重厚感には欠けるようだ。ステレオ感も水平方向には大きく拡がるが、奥行きの再現が不足し、平板な音場の傾向がある。バッハのカンタータでのフィッシャー=ディスカウの声の厚みと力感がもう一歩だったが、ヴァイオリン群のしなやかさが魅力的だった。ピアノの音色の細かい響きを実によく出したのも印象的であった。

音質:8.5
価格を考慮した魅力度:8.0

マッキントッシュ MC2500

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 残念ながら、MC7270のような高域のきめの細やかさや中域の朗々とした音の印象からすると、こちらは聴き劣りがした。高域に粗さがあり、中域の豊潤さも物足りない。今まで、このアンプにもっていた印象とは違いすぎる。個人的には毎日使っているアンプなので少々戸惑っている。MC7270とも比較試聴したが、こんな差はなかった。しかし、現在、もつとも大きなDレンジに対応し得るハイパワーアンプであることを思うと、第一級の実力を認めざるを得ないだろう。

音質:9.0
価格を考慮した魅力度:9.5

コンラッド・ジョンソン Premier Four

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 バッハの声楽二重奏がやや上ずり気味で、安定度に難があった。ソプラノに刺激的な響きが出たし、バリトンの倍音も少々強調されすぎだ。かなり力強い音を期待したのだが、どこか、なよなよした感じがあり、よくいえばやさしい響きといえなくもないが、少々病的な感じがする。湿度の高い質感で、ひやっとした湿りけが肌に合わないのである。オーケストラの抜けるような響きに霞みがかかったようなニュアンスが漂うし、ジャズのピアノの音は単調で、パンチに欠ける。

音質:8.0
価格を考慮した魅力度:7.5

クレル KSA-100MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 あのきめの細かい、なんとも清々しく、しかも充実した力感に支えられたKSA100の魅力がMKIIになって失われてしまったと感じられる。もちろん、その特色は残っていて、線が細い緻密な解像力をもちながら響きは澄んでいて豊かであり、並のアンプとは一桁も二桁も違う。しかし、あの魅力が一つ薄らいだことは否定できないのである。一歩間違うと危険なぎりぎりの線で踏み止まっていたあの魅力が、安全圏に入り込んでしまったという感じである。つくづく難しいものだと思う。

音質:9.0
価格を考慮した魅力度:9.0

マッキントッシュ MC7270

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 繊細にして豪放磊落、艶っぽく滑らかでいて清々しいという、表現のスケールもダイナミズムも桁違いの優れたアンプだと思う。ほとんどのアンプが細身になるか太めになるか、暖かいか冷たいか、力強いか繊細かという二極分化的傾向をもつものだが、これにはそれがない。そして自然に聴けると物足りないといった反面も残るものだが、これは、さわやかな充実感を感じるだけだ。前作2255をパワーで上廻り、質的にも向上したようである。完成度の高いアンプというのにつきるだろう。

音質:9.8
価格を考慮した魅力度:9.8

パイオニア Exclusive M5

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 緻密で締まった質感は、いかにも高級アンプらしい品位の高さが感じられ好ましい。艶っぽさや濃厚な色あいを排した清澄な音といってよいだろう。それだけに、全体的な印象としては、やや細身で寒色傾向となる場合がある。バッハのカンタータは演奏が毅然として犯し難い品位を獲得した。オーケストラのトゥッティは力強いが、やや鋭角に近い三角形のバランスをもつ。各楽器の音色の鳴らし分けは鋭敏だ。不思議だったのはジャズのピアノの音色が細かい響きに欠け、つるっとしたことだ。

音質:8.8
価格を考慮した魅力度:9.0

フッターマン OTL-4

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 鮮度の高い音で生々しい再現である。繊細な音の分離がメカニカルにならず、質感にはみずみずしいリアリティがある。ppからffへのクレッシェンドの質感とダイナミズムの安定した盛り上がりは素晴らしく、各楽器の特色、特質が生き生きと再現される。それだけに、プログラムソースを美化することはなく、バッハのカンタータの弦は少々耳障りな刺激が感じられ、しなやかさに欠けた。しかし全体にフレッシュなさわやかさとこくのある暖かみを自在に鳴らし分ける能力は高く評価してよい。

音質:9.5
価格を考慮した魅力度:6.5

クレル KSA-50MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 バッハのカンタータにおけるソプラノやバリトンは柔らかい質感で、弦のアンサンブルもソフトタッチのものだ。しかし、ベルリオーズの「幻想」では一転して硬質な響きが強調され、ブラスのffなどややうるさく聴こえた。両者に共通した傾向として、意外に透明感が低く音場が平板になるのが気になった。パワーが小さいほうなので他のクレル製品と同等に述べることはできないが、音質的には小気味なよさに止まるようだ。ジャズのピアノは愛らしいが、輝やき艶っぽさ、そして力感に欠ける。

音質:8.8
価格を考慮した魅力度:8.8

新藤ラボラトリー 300B Single

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 近頃あまり聴いたことのない質の音だ。実にすっきりとした素直な音の質感である。もっとも、筆者は過去、こういう音で育ってきたので、肌合いとして違和感のない音で、むしろ郷愁をそそられるのかもしれない。胎児感覚なのかもしれない。しかし、この屈託のない、鮮度の高い音は、客観的にいって純度の高い音に違いない。どのプログラムソースについてもくどくど表現を要しない、ソースの中身が素直に再現されるという他に例のない音で、難はたった一つ。パワーが不足というのみ。

音質:9.8
価格を考慮した魅力度:9.5

ネイム・オーディオ NAP250

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 この価格帯の中に入るセパレートタイプのパワーアンプとしては、少々、場違いの観をもたざるを得ない。メーカーのコンセプトも、もっと実質的、合理的なところにあるのではないか。作りからも音からも、そう考えざるを得ないアンプである。帯域のナローレンジ感が気になるが、その中ではよくまとまったバランスだと思う。中域がもう少し充実すればさらによいのだが。聴きやすい音で、再生音に対して、ある種の諦観をもった上でのオーディオ製品のように感じられてしまった。

音質:6.5
価格を考慮した魅力度:7.0

マイケルソン&オースチン TVA-1

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 説得力の強い音である。もうどれだけこのアンプを聴いてきたかしれないが、その度に、この熱い音には魅せられてしまうのである。脂ののった、艶と弾力性のある音の質感は透明感も併せもっていて、音像がリアリティをもって迫ってくるし、音場の見透しもよい。こういう音を聴くと、異文化の香りに魅せられていく自分を常に発見することになる。抜けのよい音が、さらに火照りをもっているからたまらない。エキゾティックにしてセクシーなのだ。しかし時として少々疲れる音ではある。

音質:9.8
価格を考慮した魅力度:9.5

オーディオリサーチ D-70

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 ソフトな肌ざわりを感じさせる音は快い。決して力強い響きではないが、きめの細かさが音楽表現の機微をよく伝える。バッハのカンタータでのドゥエットや弦合奏、そしてチェンバロの細やかなニュアンスが小じんまりとした雰囲気で伝わる。大方のアンプではもっと明るくスケールが大きく再現されるのであるが……。ベルリオーズの「幻想」ではこの点でややインパクトが弱い。ジャズでも、個々の楽各の質感のデリカシーはよいのだが、もう一つ力強い表現が欲しかった。

音質:8.0
価格を考慮した魅力度:7.5

ウエスギ UTY-5

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 洗練されたオーディオ製品は、その美しさの方向は「自然」に無限に近づく。このアンプの音にはくどさが全くない。くどい演出がないといったほうが正確かもしれない。歌と弦合奏の分離と調和の鮮やかさにそれが現れている。ソプラノとバリトンの声質の個性を素直に再現して品位の高さを聴かせる。決して大パワーではないがベルリオーズの大編成オーケストラを透明な空間の見透しの中に緻密に再現する能力ももっている。ジャズも実に素直にオリジナルの意図する音の世界を再現した。

音質:9.8
価格を考慮した魅力度:9.5

QUAD 510

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 それほどスケールの大きさはないが、帯域内は実に緻密である。端正さはQUADらしい気品ともいえるもので、さらっとしていてドライではない。人の声の質感には適度なぬくもりを感じさえする。しなやかな弦楽器群、そして繊細なチェンバロのハーモニックスの響きも自然な美しさである。「幻想」のppの細やかさから、トゥッティの分解能の優秀さを示す力感は、ある枠内ではあるけれど十分な実力といえる。欲をいえば、ジャズのピアノにももう一つ粘りが欲しいが……。

音質:8.4
価格を考慮した魅力度:8.5

アキュフェーズ P-500

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 アキュフェーズらしい甘美な音色が、強固な力感による支えによって、きわめて充実した音の世界を展開する。日本のアンプには珍しい個性をもち、かつ、それが普遍性をもつ次元にあるといえるだろう。フィッシャー=ディスカウ夫妻のドゥエットに聴かれる華麗だが暖かい肉付きをもった声質と、弦のアンサンブルの調和が豪華な音の魅力に溢れている。もう少し、さわやかで淡い色彩感が欲しいとも思うが、これは欲張りすぎかもしれない。細やかさと太さのバランスした見事な音だと思う。

音質:9.2
価格を考慮した魅力度:9.5

サンスイ B-2301L

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 質感としてはサンスイのアンプらしいウェットさと暖かさが特色。しかし、これはB2201よりも充実していて、透明度もかなりよく、すべてがプラスになって生きている。グラマラスな豊麗な音の世界。ヴァラディの艶のあるソプラノ、フィッシャー=ディスカウの毅然としたバリトン、共に暖かくヒューマニティ豊かに聴ける。弦もしっとりとして美しい。大オーケストラにはいま一つ鋭い分解能があってもよいが、粘りのある、しなやかな音の豊潤な魅力は印象的だ。骨太のジャズも快感。

音質:9.0
価格を考慮した魅力度:8.5

テクニクス SE-A3MK2

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 デリケートで美しい音のアンプ。しかし、ソプラノとバリトンの二重唱は少々にぎやかで、高域がうるさく神経質になる。ヴァイオリン群にも同じ傾向があって、しっとりした落ち着きがほしい。残響感などはデリケートで美しいのだが、少々全体に線が細く高域が神経質になるのである。そのため、音の感触が肌寒く感じられ、気温に例えると16度Cといった感じ。大編成オーケストラも、pp〜mfぐらいまではよいが、それ以上に熱烈なクレッシエンドがない。厚みと重厚さに欠けるようだ。

音質:7.5
価格を考慮した魅力度:7.5

スタックス DA-100M

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 全体のニュアンスとしてはややくすんだ薄曇りのトーンである。しかしこれはよい意味であって、決して不明瞭という意味ではなく、むしろ陰影に富んでいる。落ち着いてしっとりとしたヴァラディ、F=ディスカウ夫妻のドゥエットが美しい。弦の合奏も細やかでいて派手にならない。ベルリオーズの「幻想」の曲想に合った雰囲気で明るくなりすぎず好ましかった。ただし、中域の量感がやや不足し、全体のエネルギー感に不満がある。ジャズのベースも少々軟弱で、ピアノの打音もボディが薄いほう。

音質:8.0
価格を考慮した魅力度:8.0