Category Archives: トリオ/ケンウッド/ケンクラフト - Page 4

トリオ KH-92

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 構造的には国産のフラットダイナミック型という点で、また価格的にも前出のヤマハHP1、ビクターHP−D50、フォステクスT50などが比較の対象になりそうだ。フォステクスのところでもそのことを書いたが、こうして4機種をくらべると、ヤマハが最も中庸で、ビクターは高低両端をやや強調し、フォステクスは中高域強調型であるのに対して、トリオはそうした音のバランス面でいうとビクターとフォステクスの折衷型、つまり高低両端も十分に伸ばしながら中〜高域にも張りを持たせたくっきり型の音といえる。したがって、音像が適度に艶を持って、くっきりと張り出しながらステレオの空間的なひろがりもほどよく再現し、聴いていてかなり楽しめる。これも本体が重い方である割には、パッドの面積の大きいためか、実際ほど重さを感じさせず、かけ心地はまあまあだが、ヘッドバンドとユニットの結合部分がゆるすぎて、簡単にずり落ちてくるのはいただけない。

トリオ KT-8000

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最高級機種KT9700の内容を中級機で実現した注目すべき新製品である。7連バリコン使用のフロントエンド、IF帯域の2段切替とダブルコンバージョン方式によるパルスカウント方式の超低歪FM検波回路の採用が最大のポイントである。MPX部は、クリーンサブキャリアー方式によるパイロットキャンセラー付。

トリオ L-05M

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 前回発表されたパワーアンプL07Mは、スピーカーとパワーアンプ間のコードを短縮し、業務用に見られるスピーカーとパワーアンプの一体化がテーマであったが、今回のL05Mでは、過渡応答の徹底的改善をテーマとし、いわゆるハイスピード化を狙った製品である。出力段に高域特性が優れたEBTを採用し、モノ構成のDCアンプとしているため、DC領域までの動特性を含めた低域特性に見合う高域特性を得ている。単なる広帯域化でなくアンプの音質改善を主眼としたトランジェント特性を重視した結果とのことだ。

トリオ LS-707

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 弟分のLS505も、正攻法でまでめに作られた佳作だったが、さすがにフロアータイプになると音のスケール感がずっと豊かになり、質感も上等になってくる。すべてのプログラムソースを通じて、505よりも帯域内での出しゃばりがよくおさえられ、完成度が上っていることを納得させられる。興味深かったのは、いろいろと設置条件を変えてテストしているあいだに、約20分ほど鳴らし込んでから本調子が出てくることに気がついた。鳴らしはじめはどうにも表情が硬くバランスも悪い。どのスピーカーにもそうした傾向はあるのだが、LS707はことにそれが顕著だった。単純な切り換え比較では見落とすところだろう。もうひとつ補足の必要のあるのは部屋の音響条件のととのえかただ。本誌の試聴室は、前回のテストから改装されて以前より残響時間が短めになったものの、いわゆるデッドではないが、LS707は、この部屋にウレタンフォームの大きなロールを数巻入れてデッドに仕上げた上で、ブロックの台の上に乗せ、背面は壁に近づけるが左右になるべく開いて設置するという方法で、前記の試聴結果を得た。ライブな部屋では音がこもる傾向があった。アンプはあまり選り好みしないが、カートリッジは455Eの傾向よりも4000DIIIの系統で、プログラムソースはポップス系の方が納得できた。

トリオ LS-707

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートのひびきは薄く、遠くにきこえる。音に力がほしい。
❷もう少しくっきりひびきのりんかくがついてもいいだろう。
❸ひろがりをたっぷりと感じさせて、それぞれの音色を明示する。
❹低音弦のピッチカートがふくらみすぎる
❺一応迫力ははやかに示すが、もう少しひびきに力がほしい。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は、きわめて大きくふくらむ。
❷音色的な対比はなされているが、不自然なところがある。
❸ひびきそのものにキメ細かさがほしい。
❹特徴をきわだたせはするが、誇張感がある。
❺右とほぼ同じことがいえる。ひびきにしなやかさがほしい。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶残響の非常に多い部屋ではなしているようにきこえる。
❷接近感がもう少しあきらかになってもいいだろう。
❸クラリネットの音像がかなり大きい。声も前にはりだす。
❹はった声はニュアンスにとぼしいものとなる。
❺くっきり提示するがいくぶんこれみよがしだ。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶右端のバスがせりだしがちで、定位があいまいになる。
❷ひびきが全体にひきずりだかちで、言葉のたち方が弱い。
❸残響を拡大するため、鮮明さの点で不足だ。
❹吸う息を誇張ぎみに示す傾向がなくもない。
❺一応はのびているが、自然なのびとはいいがたい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンという高い音はいいが、ポンという低い音に力がほしい。
❷ひっそりとしのびこむべきところが、そうはなっていない。
❸音がバラバラにきこえる傾向がなくもない。
❹シンセサイザーの特徴的なひびきが示されにくい。
❺ひびきは横にひろがり、ピークはメタリックになる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶このひびきは、もう少し透明に、ひっそりとひびいてほしい。
❷ギターの音像は大きく、横にひろがりつつ、前にせりだす。
❸ひびきそのものに力が不足ぎみなので、実在感がとぼしい。
❹くっきりとひびき、ききのがしようがないほどだ。
❺これもまた、かなりきわだってきこえる。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ベースのひびきが強調されて、12減ギターの特徴をききとりにくい。
❷音の厚みということでいえば、いくぶんものたりない。
❸ひびきが湿っていないのは、このましい。
❹ドラムスの音像はかなり大きく、ひびきはひきずりがちだ。
❺バック・コーラスがもう少しとけあってきこえてもいいだろう。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶ダブルベースの大きさを感じさせる。
❷指を弦の上をはしらせている音には誇張感がある。
❸弦をはじいた後の音の尻尾は示すものの、ひびきの力がもうひとつだ。
❹細かい音に対しての反応がもう少しシャープでもいい。
❺音像差の点でいくぶん不自然なところがある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびきが横にひろがり、リズムの切れが甘い。
❷ブラスの中央からのつっこみは、刺激的なひびきになりがちだ。
❸ひびきとして拡大されがちだが、前にせりださない。
❹後方へのひきは充分だが、見通しはつきにくい。
❺もう少し軽いひびきで、鋭く反応してもいいだろう。

座鬼太鼓座
❶尺八は奥の方でひびくものの、入れものの中でひびいているかのようだ。
❷ひびきに乾きがあり、尺八らしさが感じられる。
❸ききとることができるが、音の輪郭ははっきりしにくい。
❹大太鼓の音の消え方を伝えるが、スケールゆたかとはいいがたい。
❺ききとれる。ここで求められる一応の効果はあげる。

トリオ KP-7700

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このモデルは、重量級ターンテーブルにより機械的な慣性を利用して滑らかな回転を得ておき、これにクォーツロック制御をかけて総合的な特性を向上しようとしている点は、ラックスの新モデルと同様な構想である。しかし、ダイレクトドライブ用のモーターに20極30スロットDCモーターを使用し、サーボ検出部は磁気的、機械的積分方式ともいえる180スロット3層ギアを使い、さらにターンテーブルの回転速度をそのまま電圧に変換する速度電圧方式としているのが特長だ。この方式は、回転数・周波数・電圧とも3段階に変換する従来方式よりも損失が少なく、クォーツPLL回転の応答を早くできる利点がある。
 その他、10mm直径のスピンドル、電子ブレーキ機構、ヘルムホルツ共鳴箱を利用したターンテーブルシート、デュアルサスペンション型インシュレーターなどを備えている。

トリオ LS-505

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートがよわい。オーボエの音がしめっている。
❷スタッカートがひきずりがちだ。もう少しすっきりしてもいい。
❸フラジオレットの特徴がききとりにくい。
❹ヴァイオリンの音にもう少しつやがほしい。
❺クライマックスでは、硬くなり、刺激的になる。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶音像はほどほどだが、ピアノの音にもう少し力がほしい。
❷音色的対比は充分だが、ひびきにもう少しキメこまかさがほしい。
❸ひびきの柄が大きくなりすぎないのはいいが、さわやかさは不足。
❹くっきり示すが、ひびきが粗くなっている。
❺ひびきの特徴はよく示すが、魅力にとぼしい。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶音像はほどほどだが、表情を部分拡大的に示す。
❷接近感は示す。ただ、子音がめだちすぎる。
❸クラリネットの音はまろやかだが、とけあい方に問題がある。
❹はった声は、極端に硬くなり、かなりききにくい。
❺ひびきが平面になるので、効果的にはならない。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶残響を多くとりすぎているので、定位はあいまいになる。
❷声量をおとすと、さらに言葉がききとりにくくなる。
❸鮮明さということで、かなり問題がある。
❹ひびきに敏捷さが不足しているために明瞭にならない。
❺ひびきはかなりのびるが、雰囲気をたかめてはいない。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的対比がもうひとつはっきりしない。
❷クレッシェンドの効果は一応示されている。
❸音は浮いてきこえるが、もう少し透明でもいいだろう。
❹空間がせまく感じられる。前後のへだたりはあまりない。
❺ピークで音が硬くなり、刺激音になる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶かなり前の方できこえる。ひろがりも充分とはいえない。
❷ギターも、中央に定位するが、前の方にせりだしている。
❸きこえるが、他の楽器によるひびきにうめこまれている。
❹弱くしかひびかない。もう少しすっきりきこえてもいいだろう。
❺ききとるのが、大変にむずかしい。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターのひびきと特徴をききとりにくい。
❷ツイン・ギターによるひびきの厚みが希薄だ。
❸きこえてはくるが、本来のさわやかさに不足している。
❹ドラムスのひびきはいいが、つっこみが弱い。
❺言葉のたち方がもうひとつすっきりするといいのだが。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像はかなり大きい。大きな箱の中でひびいているかのようだ。
❷指の動きをきわだたせて示すようなことはない。
❸音が尾をひいて消えていく感じが伝わりにくい。
❹音の反応にシャープさがないので、こまかい動きがでにくい。
❺ふたりの奏者の音像的な差がありすぎる。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶一応の力は感じさせるが、切れがにぶい。
❷ブラスのひびきがはなやかなのはいい。
❸この部分のひびきの特徴をきわだたせる。
❹トランペットは、かなり前の方からきこえる。
❺もう一歩ふみこんだ強いアタックがほしい。

座鬼太鼓座
❶尺八はかなり前の方からきこえる。
❷脂っぽくなっているわけではないが、ひびきの特徴がでにくい。
❸耳をすましても、ききとりにくい。
❹きわめて消極的にしか、大太鼓の迫力を示さない。
❺一応示すが、必ずしも効果的とはいえない。

トリオ LS-505

瀬川冬樹

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より

 トリオはスピーカーずいぶん古くから市販しているが、ふりかえってみると、その音は二つの極を往ったりきたりして、音の方向づけには多少の迷いがあるようにみえる。ある時期には思い切り手綱をゆるめてよく弾みよく響く音を作るかと思うと、今回のLS505のように、抑制の利いた音を作る。低音から高音までの音の質やバランスは、かなり周到に検討されたように思えて、レベルコントロールの指定の位置のままで、クラシックからポピュラーまで、破綻なくよくつながっている。しかし音の表情をかなり抑えていて、総体につや消しのマットな質感を感じさせる。ただ、ハイパワーを加えると中音域がやや硬く張る傾向がわずかに聴きとれる。ホーン型トゥイーターの質がきわめてよいせいか、スクラッチノイズやヒス性のノイズがとても静かで耳につきにくい。むしろもう少しレベルを上げてもいいくらいだが、3段切替のスイッチで+3では少し上げすぎのようでその中間が欲しく思われる。総体に音の豊かさや弾みがもっと欲しいので、台は低め(約20cm)にして、背面を壁に近づけて左右に大きく広げて置くと、かなり量感も出て渋いながら良い感じが出てくる。アンプやカートリッジは、あまりまじめな音は避けて、455Eや4500Q、それにKA7300Dなどのような、表情の豊かでやや味の濃い組合せの方がいいだろう。

トリオ LS-77

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ローコストのスピーカーは、破綻のなさよりもどこか一ヵ所、その製品でなくては聴けない聴きどころを持たせるべきだというのが私の主張だ。ややハードだが鮮明な音の輪郭。そして小型ながら豊かに弾む低音。音の品位という面では、クラシックの弦のしなやかさを望むのは高望みで、ポップス系に特長を発揮する。

トリオ KA-7700D

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 プリメインアンプに左右チャンネル独立2電源方式とDCアンプ構成を最初に導入したトリオ製品のなかでは、新しいモデルだけに、その完成度の高さの点では上級モデルをしのぐものがある。とかくDCアンプ構成では、音が柔らかくなりやすいが、このモデルの直線的な音の表現はユニークとも思われる。

トリオ L-07M

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 最近のハイパワーアンプが、ダイナミッククロストーク特性の改善のため、モノーラルアンプを2台連結したような構成が増えているが、それならいっそトリオのように、モノーラルコンストラクションをとった方がすっきりしている。ダイナミックでしかも空間のひろがりを細部まで実に魅力的に鳴らす秀作。

トリオ L-07C

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 はじめて見たとき、この外観は試作品かと思ったほどで、デザインに関しては評価以前の論外といいたいが、その内容と音質は本格的な高級プリアンプで、ことに鳴らし込むにつれて音のデリカシーにいっそうの艶を加えながらダイナミックにステレオのプレゼンスを展開する音質の良さは特筆ものだ。それだけに、このデザインは一日も早く何とかしてもらいたい。いくら音が抜群でも、この形では目の前に置くだけで不愉快だ。

トリオ L-07C

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 この製品は、ローインピーダンスの出力を長く延長し、スピーカーに直結に近い状態でパワーアンプを使うというコンセプションにより開発されたもので、大変練りに練って設計された力作として高く評価したい。音質は、他のパワーアンプと接続して使っても、レコードをありのまま再生するといったフィデリティの高さを感じる。その反面、少々趣に乏しくニュアンス不足でもある。しかし、明らかに水準を上廻る優秀製品だ。

トリオ LS-505

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 このシステムは、大口径軽量コーン紙採用のウーファーをベースとした3ウェイ方式であり、トゥイーターにリングダイヤフラムを使ったホーン型ユニットが採用され、低域との音色上のバランスを巧みにコントロールしているのが、システムとしての完成度を一段と高めているようだ。

トリオ KA-7300D

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 コストパフォーマンスがはなやかに喧伝されていたころ開発されたKA7300も、今年になってマイナーチェンジされ、しかもDCアンプ化された。このKA7300Dは内容が充実していて、実質的に高く評価していい製品だ。がっちりした明確な音像イメージの再現が力感に溢れ、より大きなパワーを感じさせる。

トリオ KT-7700

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 標準的チューナーといってよい製品。チューナーに関して高い信頼性をもつトリオの製品らしく、ある機会にテストしたとき、このチューナーのSN比のよさ、音質のよさを実感させられた。これよりはるかに値段の高い、高級チューナーで、劣るものがいくつもあったといっておこう。

トリオ KA-7100D

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トリオのシリーズ中、新しい中級製品で、豊かな内容を盛り込みながら、価格は安く、お買徳なアンプである。回路的な特長は多くあるが、一言にしていえば、高級アンプの内容を、合理的にコストダウンで実現したといえるものだ。鮮明な音像は、よく引締り、無駄な甘さがなく、よりパワーの大きなアンプを感じさせる立派な音である。デザインは風格がないが、これは求める方が無理な値段であろう。

トリオ KA-9300

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トリオのプリメインアンプの最高級モデルである。DCアンプで左右2電源独立型。そんなことより、このアンプの、きわめて充実したダンピングのきいたサウンドの魅力は一味違う。ただ、気になるのは、どうも音がふくらみ過ぎの感があって、もう少し輪郭がきりっと鮮やかになれば文句なしであろう。

トリオ LS-505

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 かなり、個性をもった音で、好みの分れる製品だと思う。とにかく、前へ前へ音が張り出してくるので、欲求不満はない。しかし、決して貴品のある音ではないのである。このあたり、好みの音楽によって評価が分れると思うのだ。肉質の、弾力性に富んだ音は、血の通った魅力だが、センスと品位の高さがもう一つ。

トリオ KA-7700D

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トリオのプリメインアンプの中での上級機種で、お家芸の左右独立電源、DCアンプの新機種である。艶ののった力のある再生音は、従来のやや弾力性の勝った音を一段と引き締め充実した実感を与えることになった。スピーカーを十分コントロールするといった感じで甘く鳴らさない。引き締めるのである。

トリオ KT-9700

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 FMチューナーでは、キャリアを誇るトリオのトップモデルである。さすがにこのモデルのもつ性能は、FMチューナーのトップランクにあり、機能面を標準的に抑えたため、このコストで開発できたと思われる。内部のコンストラクション見ても、同価格帯の機種と比較して、はるかに充実したものがあり、音質面でも放送局側の送り出しプログラムソースのクォリティの差が、明確に感じとれるのは性能の裏付けである。

トリオ LS-505

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 過去一シリーズごとに暗中模索していた印象のトリオも、LS505で新生面を切り開いたと思う。真面目なとりくみかたがそのまま音に出てしまったような印象はあるにしても、基本から洗い直したという真剣さが、音のクォリティの良さとして聴きとれる。これを土台とした今後の新製品がいっそう期待できる。

トリオ KP-7300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 質実剛健という表現を使いたくなる製品で、実用に徹した、いささか素気ない武骨な印象が損をしているが、ターンテーブルとアームおよびキャビネットという主要パーツを音質重視で検討したというだけあって、うわついたところのない再生音はこの価格で出色。好みのカートリッジを加えた方が良さがわかると思う。

トリオ LS-77

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 マニア好みの企画性の光る、興味深いシステムである。コアキシャルの2ウェイスピーカーに可変ダンピングのパッシブラジエーターつまりドロンコーンという構成で、ホワイトコーンも目に鮮やかに、きわめて効果的な新鮮で若々しい音がする。これこそ、たくまずして若者向きといえるシステムだろう。

トリオ KT-9700

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 KA9300とペアになるべき製品だが、これ単体で評価しても、現代のチューナーとして考えられる最新のテクノロジーをよく消化して、S/N比のよい鮮度の高く安定な受信で、FMのプログラムの良否をよく鳴らし分ける。音の傾向は、9300と同系統の、やや硬質で輪郭の鮮明な印象。反面、音のやわらかさやふくらみや豊かさという面では、たとえばパイオニアのF3あたりの方に軍配が上がるが、この辺りは好みの問題だ。