トリオのスピーカーシステムKL3060、KL4060、KL5060、KL7060の広告
(ステレオ 1970年4月号掲載)
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トリオ ST-5700 (IDS5700)
トリオ KL-4060, KL-5060, KL-7060
トリオ KX-7010, TT-5066
トリオ KL-4060, KL-5060, KL-7060
トリオ MA-5100, KR-5080
ティアック LS-30, LS-80
トリオ ST-5700 (IDS5700)
トリオ KL-63, KR-33, MX-1000
トリオ KL-5060
菅野沖彦
スイングジャーナル 1月号(1969年12月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
トリオが、新しく発売したスピーカー・システムKL5060は、同社の音響専門メーカーとしての面目を発揮した充実した製品である。このスピーカー・システムから、トリオの音に新しい時代が来たことをはっきりと感じることができる。KL5060は中型のシステムとして、もっとも競争の激しい位置にランクされる製品であるが、この音なら堂々と他製品と対抗し、その多くを凌ぐはずだ。きわめて明解な音の陰影の再現、よくのびきった低域から高域、歪の少い明るく透明な音色は、プログラム・ソースの持つ豊かな情報量を再現するに十分な物理特性をもつことを証明すると同時に、私たちの心と肌に快よい豊かな音楽を伝えてくれる個性をもっている。スピーカー・システムが音響機器の中で、ソフト・ウェアーとしての性格がもっとも強いものであることは、これまてにも折あるごとに述べてきた。スピーカー・システムこそは、そのメーカーの音への感性の現れである。スピーカー・システムを買うことは、そのメーカーの音への共感に他ならない、良い音のスヒーカーをつくるには、メーカー自身が、卓抜な審美眼を持つと同時に、これを具現できる音響技術をもっていなければならないのである。それが意識されようと、されまいと、システムの制作者が確固たる音の美学をもっていなければ、良い音のスピーカー・システムは出来ないはずなのである。そこが音響技術が、単に物理学や電子工学の領域で律しきれないところなのである。良い音とは何か? という、きわめて困難な問題へのメーカーの解答は、そのメーカーの出すスピーカー・システムだといってもよいかもしれない。
KL5060は、4スピーカーの3ウェイ・システムで、30cmウーハー、16cmスコーカー、2つのホーン・トゥイーターから構成されている。エンクロージュアは密閉型とパス・レフ型の中間をいくような、ダンプされたパイプ・ダクトをもつもので、吸音材がつめられたチユーニング・ポートをもっている。600Hzと6、000Hzのクロス・オーバーをもつネットワークが組み込まれているが、マルチ・チャンネル・アンプ用の独立端子も勿論備えている。見るからに剛性の高いコーン紙はロール・エッジとハイ・コンプライアンス・ダンパーで支持され適度なエア・ダンプと相挨って、きわめて明解な音程再現と、明るく力強い低音を再生する。音楽の基礎になる低音域は絶対におろそかには出来ず、ただ重々しい純な低音が量的に出ていてもなにもならない。このウーハーの中域も質がよく、スコーカーとの連りもスムースである。16cmのコーン・スコーカーは、かなり浅い包角をもち素直で質が高い。欲をいうとトゥイーターにやや気になる音色があるが、2本使っているためにエネルギー的には余裕があり、相当なハイ・パワーでも安定している。
これら3種類のユニットのまとめこそ、トリオの腕ならぬ、耳の聴きどころであるが、既に書いたようにバランス的にも、音色的にも美しく調整されている。従来の同社のスピーカーからは想像できないほど大さな変視で、音が前へ豊かな表現力をもって鳴る。能率は同様の他製品と比して決して高いほうではない。
前面は金属製の格子グリルだが、これはもう一つユニークな雰囲気が欲しい気もする
ソニー・ロリンズの太く油ののったテナー、エルビン・ジョーンズの鋭いスティック・ワーク、そして、日野皓正のブラッシーなトランペットのハイ・ノートなどハードでエネルギッシュなサウンドも充実した響きだし、ソフトな味いのコンボやヴォーカルにも魅力的な音を聴かせてくれた。
トリオ ST-6700 (IDS6700)
トリオ KL-61, KL-63, KL-91, KR-33, KR-44, KR-77, PC-100, PC-250, PC-350
トリオ KL-63, KR-33
トリオ ST-5500
トリオ KL-91, KA-6000, M-6000, F-6000, KC-6000, KT-7000, PC-400, TT-50
トリオ KL-61, KL-63, KL-91, KR-33, KR-44, KR-77, KR-100, KR-170, PC-100, PC-250, PC-300, PC-350, PC-400, TT-10, TT-20
トリオ KA-6000
菅野沖彦
スイングジャーナル 8月号(1969年7月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より
市販アンプのほとんどがソリッド・ステート化された今日だが、その全製品をトランジスタ一本化にもっとも早くふみ切ったのがトリオである。現在でこそ、トランジスタそのものの特性もよくなり、回路的にも安定したものが珍らしくなくなったが、トリオがそれにふみきった時点での勇気は大変なものだった。つまり同社はトランジスタ・アンプには最も豊富な経験をもったメーカーといえるのである。このKA6000は同社のアンプ群の中での代表的な高級品だが、昨年秋の発売以来、高い信頼性と万能の機能、ユニークで美しいデザインが好評で、今や国産プリ・メイン・アンプの代表といってもよい地位を確保している。
KA6000の特長は片チャンネルの実効出力70Wという力強さに支えられた圧倒的な信頼感と細かい配慮にもとずく使いよさにある。
アンプにはプレイヤーやテープ・デッキ、そしてチューナーなどというプログラムを接続するわけだが、そうした入力回路の設計はユティリティの豊富なほど使いよい。
2系統のフォノ入力端子は、1つが低インピーダンス(低出力)のMC系カートリッジ用に設計され、専用トランスやヘッドアンプを必要としない便利なものだし、そのほかのライン入力端子も3回路あって十分な活用ができる。プリ・アンプ部とメイン・アンプ部の切離しも可能で今はやりのチャンネル・アンプ・システムへの発展も可能であるが、欲をいうと、この部分のメイン・アンプの入力感度がやや低い。しかし、一般のアンプと混用して使っても決定的な欠陥とはならないし、同社の製品同志でまとめる限りは全く問題はない。
フロント・パネルはポイントになるボリューム・コントロールを大胆に大きくし、デザイン上のアクセントとすると同時に使いよさの点でも意味をもっている。高、低のトーンコントロールはステップ式でdB目盛の確度の高いものがトーン・デフィート・スイッチと同じブロックに並べられてあり、このスイッチによってトーン・キャンセル、高、低それぞれを独立させて働かせるようにも配慮されている。この辺はいかにマニア好みだし、使いこめば大変便利なものだ。スピーカー端子は2回路あり、2組のシステムを単独に、あるいは同時に鳴らすことができる。ラウドネス・コントロール、高域、低域のカット・フィルター、−20dBのミューティング・スイッチがパネルの右上部に鍵盤型のスイッチでまとめられ使いやすく、また見た目にもスマートである。入力切換のパイロットがブルーに輝やきフォーン・ジャックを中心に左右にシンメトリックに3つずつ並び、使い手の楽しさを助長してくれているのも魅力。
このような外面的な特徴はともかくとして、肝心の音だが、私は、この製品を初めにも書いたように、安定した大出カドライヴ・アンプの最右翼に置くことをためらわない。国産同機種アンプを同時比較した結果でもそれは確認できた。ジャズのように、きわめて強力な衝撃的な入力には絶対腰くだけのしない堂々たる再生が可能であるし、ソリッドで輝やきのある音質もジャズ・ファンの期待に十分応えるものと思う。出力の点でも、また、価格的にも、相当パワーに余裕のあるスピーカー・システムとの共用が望ましく、本格的ジャズ・オーディオ・マニアの間で好評なもの当然のことだと思う。デザイン的に統一された同社のKT7000チューナーとのコンビでは最高のFM受信再生が可能であり、相当な高額商品だが、その支出に十分見合った結果は保証してよいと思う。
トリオ KT-7000
岩崎千明
スイングジャーナル 6月号(1969年5月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
本放送をきっかけに「絢爛たるFM放送時代」がやってくる。
音楽ファンにとってFM放送はレコード以上のミュージック・ソースですらある。ある意味というのは、レコードのように金を出してそれを買う必要がない点と放送局用の標準仕様のレコード・プレイヤーや高級テープメカニズムによって演奏される点できわめて品位の高い「音」をそなえているところにある。
FM放送の高水準の音質をそのまま再現することは多くの点でたいへんむずかしい問題を含んでいる。ただ従来はメーカーがそれをほおかぶりしてきたに過ぎない。それというのもFMの音が本質的にすぐれていたため、多くの点でイージーに妥協して設計された受信回路によってもかなり優れた再生を期待できえたのであり、それがFM放送の良い音だと思われていたすべてであった。
たとえば高域のfレンジの広さを考えてみよう。放送で聞いたローチのシンバルとくらべ、同じレコードの音の方がずっと鮮かであるのが常であった。そして、これは局側て放送波になるまでの多くの過程をへたことに起因するのと思いこまれていた。これはなにも技術を知らない者だけでなく、高い技術的知識を持ったオーディオ・マニアでさえそう信じていたのてある。
トリオからKT7000の予告があったとき、私はその技術的すべてが信じられなかった。その実物をみるまで、予告されたクリスタル・フィルター+ICという回路は、あくまでも宣伝のメリットであるにすぎないだろうとたかをくっていた。’68年代に入ってから米国のレシーバーの多くにICが採用されてきたが、それはICの良さを発揮するというよりも、あくまて宣伝上のうたい文句であったことからそう思っていたのである。ICによってトランジスターと比べものにならぬほど高い増幅度を得ることができるのは確かだが、それはいままでの回路常識によっては本当の良さを発揮できず、集中同調回路、または理想的なクリスタ・ルフィルターと併用してこそ本当にすぐれた回路構成ができることを私は知っていたのである。そして、その通りの理想的構成をKT7000はそなえていた。KT7000を初めて見たのは内輪の発表会ではあったが、その後メーカーを訪ずれた際、その全貌をじっくりみせてもらうことができた。
その技術的レベルの高さ! ここにはまぎれもなく世界最高水準のFM受信回路が秘められていた。それもクリスタル・フィルター+ICのIF回路だけでなく、いたるところ、チューナー・フロント・エンドにもマルチアダプター回路にも新しい技術が、周到な準備を棟重ねた上でのきめこまかい配慮によってびっしリと織りこまれていることを確かめたのであった。
この高い技術に支えられたKT7000の優秀さは、ほどなく行なわれたオーディオ各誌の市販チューナー鳴き合せでもいかんなく発揮された。国産中はおろか、はるかに高価な海外製品とくらべても一歩も譲るところなく、それに上まわる結果を示し、米国市場において、もっとも多量のFMチューナーを提供してきた実績を持つトリオの真価を発揮したのである。
私の耳によって確かめた優秀さの実際をひとつだけ記しておこう。
ステレオ放送の初め片チャンネルからのみ音を出す準備の音だしの際、音のでていないはずのもう一方のチャンネルの音量だけあげて聞いてみる。KT7000の以外のチューナーの多くは、もれた音が歪っぼく聞けるのに、KT7000ては優れたセパレーションがもれを極端に少なく押え、その音はいささかも歪ぽい感じを受けない。これはIF特性、マルチ回路全体の優れた位相特性のたまものであり、KT7000によってそれが初めて実現されたといえるのである。
6万円近い高価な価格も、技術とその音を聞けば、お買徳品てあることは間達いなく、ベスト・セラーになるだろう。
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