Category Archives: デンオン/コロムビア - Page 9

デンオン PMA-701, PMA-501

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デザインを変えてイメージチェンジをした2機種の新製品は、デザイン以上に大変にユニークな機能を備えていることが特長である。この機能は、カートリッジのクロストーク特性をアンプ側で電気的にコントロールするためのPCC(フォノ・クロストーク・キャンセラー)と名付けられたものである。
 一般にカートリッジのクロストークは、中域の条件が良い状態でも、−20dB〜−30dB程度で、アンプ側のフォノ入力からスピーカー端子までのクロストークにくらべて大幅に劣っていることは、よく知られていることである。カートリッジのクロストークの位相特性を調べると位相差が0°付近と180°付近にあることから、左チャンネルから右チャンネルへのクロストークを例にとると、第一に左チャンネルの信号を適当な値で取り出し、極性を反転して右チャンネルに加えれば打消しにより数dB以上の改善が期待できる。第二に、第一の方法により打消すことができないクロストーク分は、信号分との位相差が±90°の成分であり、このためには移相器が有効であろう。
 以上の予想を基本として実験の結果は、周波数によっては10dB以上の改善が見られたとのことで、実際のPCCは、L→R、R→Lの両方でキャンセラーを動作させる必要があり、各チャンネルを2個のツマミで調整することになる。なお、カートリッジのクロストークは、アームへの取付条件までを含めれば、1個毎に異なるために個別の調整が必要で、その目的のために、調整用レコードがアンプに付属している。
 回路構成上の特長は、フォノ入力回路は切替スイッチやシールド線を使用せずイコライザー段に直結とし、入力インピータンス特性を向上させ、併せてそれらによるSN比の低下を防いでいる。また、電源部はデンオンのプリメインアンプとしては、はじめてのパワーアンプのB級増幅部分での左右独立トランスの採用の電圧増幅段、プリアンプ部専用の電源トランスをもつ、3電源トランス方式が使われている。
 PMA701と501の違いは、出力が70W+70Wと50W+50W、機能的には後者には、ハイフィルターがない。
 PCCによ、カートリッジのクロストーク調整は、付属している17cm盤のテストトーンのバンドを使っておこなう。片チャンネルについて、2個のコントロールを交互に調整して、信号が最小になる位置を探せば、調整は完了する。この調整は、割合いに容易であり、PCCスイッチのON・OFFで、クロストークの改善度が確認できる。効果は、かなり大きくPCCのONで、ワーブルトーンの調整信号音は、大幅に減少することが判るはずだ。音質的な変化は、音が全体にスッキリとして、間接音成分的な、あいまいな感じがなくなり、音像の輪郭が、一段とクッキリとして浮かび上がるようになる。このような効果は、ベースとなるアンプのクォリティが充分に高くないと望めないことだけに、新しい2機種のプリメインアンプは、アンプとして、デンオンらしいクォリティの高さがあることを裏付けているわけだ。この結果から予想すれば、もし単体ユニットでPCCが発売されるとしたら、より高級機との組合せで効果がありそうだ。

デンオン DL-103S

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 スピーカーシステムやアンプ関係では、海外製品と国内製品は価格的に格差があり、市場で対等に戦うことはないが、ことカートリッジについては、価格、性能ともにあまり差はなく、他の分野にくらべて海外製品がかなりの占有率をもっている、やや特殊なジャンルである。しかし、発電方式をMC型に限定すれば、海外製品は欧州系のオルトフォンとEMTのみで、現在はこの2社以外にMC型を生産しているメーカーはない。これに対して国内製品は、圧倒的に銘柄が多く、その機種が多く、世界でもっとも多くMC型を生産している。国内製品のMC型は、すでにかなり以前から海外の高級ファンの一部に愛用されている。
 デンオンのMC型は、十字型の独得な磁性体の巻枠を採用した、やや高いインピーダンスをもつタイプだ。発電方式そのものが明解であり、二重カンチレバーによる軽量化を最初から採用している。第一作のDL103は、NHKをはじめ放送業務用に採用され、製品が安定し、信頼度の高さでは群を抜いた、いわば標準カートリッジといえるモデルだ。
 DL103Sは、103を改良し超広帯域化した製品で、最近の質的に向上したディスク再生では、聴感上のSN比が優れた、いかにも近代的カートリッジらしいスッキリと洗練された音を聴くことができる。製品間の違いが少ないため、信頼度が高い新しい世代のカートリッジを代表する文字通りの一流品だ。

デンオン DA-307

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンの新製品は、ダイナミック・ダンピング方式を採用した、スリムなユニバーサル型トーンアームである。
 ダイナミック・ダンピング方式は、簡単にいえば、トーンアームの軸受を中心として、従来は、後のバランス用ウェイトとその軸であるアームの後部をゴムなどのクッションを介してフレキシブルに結合したのと逆に、ヘッドシェルを拭くんだ、アームの前の部分を、回転軸受に近い部分で、フレキシブル結合した方式と考えてよい。
 この方式の採用により、カートリッジの針先コンプライアンスとトーンアーム自体の等価質量で決まる低域共振を効果的にダンプすることができ、レコードの音溝にたいする追従能力が一段と向上している。したがって、オイルダンピング型アームのような追従性不良による低域の混変調歪や一点支持のための使いにくさ、オイル漏れがないというメリットがあり、さらに、プレーヤーキャビネットなどから伝わりやすい振動からカートリッジを保護でき、ハウリングにも強いために、使用するカートリッジの性能を充分に引出し、大音量再生が可能になったとのことである。
 軸受部は、ピボットベアリングとミニアチュアベアリングを採用した高精度、高感度設計で、感度は、水平、垂直ともに0・025g以下である。
 バランス用ウェイトは、太い筒型の後部アームの内部を移動するタイプで、針圧目盛は0・1gステップ、1回転が2・5gになっており、適合カートリッジ自重範囲は、5〜10gである。
 付属するヘッドシェル、PCL−5は、自重約6gのマグネシュウム合金ダイキャスト製で、DL−103を付け、針圧2・5gのときの、アームの等価質量は、20gと発表されている。
 付属機構は、オイルダンプタイプのアームリフターと、マグネチックコントロール方式のインサイドフォースキャンセラーがある。このインサイドフォースキャンセラーは、無接触方式であり、かつ、レコード位置によるインサイドフォースの変化にも対応することができる。また、アームのバランス調整時などでは、インサイドフォースのキャンセル量をコントロールするツマミを引出せば、完全にフリーの状態とすることができる。このタイプは、無接触型のため、クリティカルなカートリッジを使用中にでも、インサイドフォースのキャンセル量を演奏中に細かく調整できるメリットがある。
 このトーンアームは、パールトーンに仕上げてあるが、この仕上げが、従来のデンオンのアームにくらべても、格段に優れており、大変に素晴らしいできである。実用上では、各部の動きは滑らかであるが、独得なメカニズムをもっているために、シェルを交換したときや、アームのバランス調整をするときなどでは、何とはなく、グニャグニャして最初は少し使い難いようだ。

デンオン DL-107, DL-109R, DL-109D, DL103, DL103S

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 デンオンのカートリッジは、SPの頃から業務用として開発され、現在の主力製品であるDL103およびDL103Sも放送を中心とした業務用の使用がほとんどで、製品としての信頼度や安定度が高く、製品間のバラツキがないことがもっとも大きな特長である。
 DL103は、低出力MC型で、AU320トランスを使用する。このカートリッジは定評が高いモデルだけに、安定したオーソドックスな音をもっている。現在のワイドレンジ型カートリッジとくらべれば、やや音の粒子は粗く、聴感上のSN比が気になることもある。聴感上の帯域バランスはナチュラルで過不足がなく、カラリゼイションが少ないために、この音を聴くとやはり業務用の標準カートリッジらしい風格が感じられる。音の輪郭はクリアーだが、線は少し太いタイプである。性質はマジメ型で落着いた印象を受けるが、表情はやや抑えられるようだ。プログラムソースとの適応性が広く、広範囲の使用に安定した音を再生するところが、よくも悪くも特長である。
 DL103Sは、103とくらべて粒立ちが細かく、より色付けが少なく、ワイドレンジ型である。聴感上の帯域バランスは、低域が甘口で、中低域あたりにタップリと間接音成分があってよく響き、中域はやや薄めで、高域はナチュラルによく伸びている。ヴォーカルのニュアンスをよく引き出し、ピアノも少し軽い感じにはなるが、スケール感があってよく響く。音場感はDL103よりも左右に拡がり、前後方向のパースペクティブを聴かせるが、音像はさしてクッキリと前に立つタイプではない。滑らかで歪感が少ない音だが、力感や実在感は、むしろDL103のほうがよい。トランスを使わずヘッドアンプの良質なものを使ったほうが、音の密度が濃くなり、爽やかで鮮度が高い現代型の音になるようだ。最新録音のプログラムソースとワイドレンジ型スピーカーを使う場合には、DL103よりもこの103Sのほうがはるかに結果がよい。
 DL107は、主に業務用として開発されたMM型で、現在の109シリーズのベースとなったモデルである。低域はダンピングが甘く、高域が上昇しているようなバランスをもつために、音のコントラストがクッキリとつき、華やかな感じの音である。
 DL109Dは、4チャンネルシステムに使用するワイドレンジ型のモデルである。粒立ちが細かく滑らかであり、低域が少し甘口であるが、中高域に輝きがあり、ヴォーカルは細かくなるが音像がよく浮び上がり、ピアノはスケールは小さいがクリアーに響く。音場感は広い空間を感じさせるタイプで、音像はクッキリと前に立つ。全体の表情はおだやかで、クォリティもかなり高い音である。
 DL109Rは、109Dとくらべ、粒立ちは少し粗くなるが、低域の腰が強く、音に厚味があり、力強い特長がある。音の輪郭が明瞭で、クッキリと音像は前に立づ。表情が若く活気があるのは109Dより面白い。

デンオン DL-107, DL-109R, DL-109D, DL-103, DL-103S

岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 放送局のレコード再生システムを多く作る専門的業務用機のメーカー、デンオンのブランドをそのまま冠して、同じく業務用に開発されたカートリッジを基本として、市販品を作ってキャリアの長いメーカーだ。その質は、悪かろうわけがない。
 デンオンの場合、たいへんに明確で、はいっている音をくまなく拾いだすというピックアップ本来の働きを音のイメージとしてもっている。やや骨太のところもなきにしもあらずだが、高域のキラキラした鮮やかさが、全体の音のバランスに有効に作用して、デンオンならではのすばらしい音の世界を作る。MC型独特の美しさと共に、ステレオ音像のすばらしく整った様も大いに称賛できる。音質チェック用として、多くの現場でもつかわれており、その用途のために信頼性も高い。つまりデンオンのカートリッジのバラつきの少ないのはおおいに注目すべき特徴だ。
 DL107は、MM型カートリッジとしてデンオンが初めて、安定性と使い易さとを、価格をおさえた形で実現した製品。更にそれがDL109に発展して、帯域は驚く程拡大されて、現代風になった。一般にこうした改良にともなって、出力の低下をきたすのが普通だが、109の場合は逆に出力向上を得ているが改良というよりも、まったくの新種といえるだろう。さらに新しい傾向に即して針圧をやや軽くしたことによって、今まで市販品の平均水準より重い傾向であったのを、補うことになった。107にくらべ幾分か繊細感が加わって全体にフラットレスポンスをはっきり感じさせる。とくに唄において、この109Rの再現性は、国産カートリッジ中でも、もっとも優れたひとつであることをつけ加えておこう。針先を円錐から特殊楕円にした109Dは、帯域を5万HzまでのばしてCD−4対応型としたものだが、超高音はかえってうすい感じとなっている。中域もやや希薄に受けとれるのが少しばかり気になる。
 DL103はデンオンの最も初期からある代表的MCカートリッジだ。やや武骨な、ガッチリした音が、いかにも業務用というイメージを作り、それが103の個性として、多くの人に受けとられている。103の再生水準に関して、それを認めたとしてもこの骨太な音を好みに合わないと思うファンもいるだろう。DL103Sは、103の軽針圧、広帯域型として誕生した。価格的に一躍20%以上上昇だが、再生帯域の方は、かなり伸びているし、それも6万HzというMC型には信じられない広帯域であって、単なる楕円針の成果ではない。聴感的なワイドレンジ化よりも、全帯域をおさえこんでしまったという感じが強くて、特に中音域での、デンオン独特の充実感を少々うすめすぎたのではないかと思われる点が残念である。低域での量感もやや力を欠いて聴えるのはなぜか。どうやらステレオ音像の定位の良さからいうと、103Sも103同様に大変リアルな、きわめて明確かつ率直で、あらゆる音域において高い次元にあるといえよう。ただ、103の演奏楽器のスケール感が乏しい。

デンオン PRA-1000B, POA-1000B

岩崎千明

サウンド No.7(1976年発行)
「岩崎千明のグレート・ハンティング これだけは持ちたいコンポ・ベスト8(アンプ編)」より

 デンオンはこの数年来、高級プリメインアンプでもっとも成功しているブランドだ。昨今話題となっているステレオ右、左のクロストーク特性においても、製品の新型に2電源トランスを用いてアピールしている他のメーカーのような処置は何んらとっていないのだが、実際にはデンオン・ブランドのプリメインアンプのクロストーク特性ほど優れて、2電源の他社製をはるかにしのぐ。ステレオ初期から「ステレオ」用としての基本特性である左右セパレーションを重視しているから当り前であって、何をいまさらというのが、デンオンを作る日本コロムビアのメーカー側の言い分だ。当然である。
 コロムビアの昔の製品に「ステレオ・ブレンド・コントロール」というつまみが付いていたが、左右を混ぜてステレオからモノーラルの間を可変にし、2つのスピーカーの間の拡がりを変えているわけだが、こうしたステレオコントロールを付けるには、始めからステレオのクロストークを十分良くしておかなければならず、それがデンオンアンプのステレオ用としての優秀性を築いてきたのだろう。
 このように基本特性の優秀性はデータの上にはすぐ出てこないけれど、本当のアンプの良さを示すものといえよう。話題になって初めて、ある部分がクローズアップされる。本当に良い製品は、こうした部分的な面が解析されると、すでに手を打ってあって、いつの時代でも優秀性がくずれない。デンオンの新しい管球アンプ1000シリーズは、管球という昔ながらのディバイスを再認識して現代の技術で作り上げた高級品といわれる。つまり、トランジスタ技術を活用した新しい時代の管球アンプなのである。
 だから6GB8という超高性能高能率パワー管を採用し、100ワットという驚くべき出力をとり出し、しかも最新トランジスタアンプ並みの高い電気的特性を保っているだろう。その音は、無機的といるほど透明感があふれ、常識的な管球アンプの生あたたかい音では決してない。プリアンプを含め、いかにもフラット特性の無歪の道のサウンドスペースを創っているといえそうだ。

デンオン SL-71D

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンのフレーヤーシステムでは、DP−3700Fのように、モデルナンバーの頭文字がDPではじまる一連のシリーズが、よく知られているが、今回、発売された、新しいシステムは、モデルナンバーがSL−71Dと付けられていることからもわかるように、異なったシリーズであり、以前のベルトドライブ型プレーヤーMTP−701などの後継機種と考えられる。
 直径33・8cmのアルミダイキャスト製ターンテーブルは、その外周部分が一段落ちになっていて、この部分に、ストロボのパターンが刻まれ、プレーヤーベースの左手前にある大型のネオンランプで照明されるが回転数の確認は、容易なタイプである。
 トーンアームの下側のパネルには、操作部分が集中し、それぞれが単機能でコントロールされる方式である。実効長235mmのS字型のパイプをもつトーンアームは、スタティック・バランス型で、メインウェイトを回転して、0.1gステップで3gまで針圧を印加できる。アームに付属するアクセサリーは、インサイドフォース・キャンセラーとアームリフターがある。アームは、全体が黒で統一してあるために、カーボンファイバー製とも思いやすいが、充分な剛性を得るために、硬質アルマイト加工された結果である。付属カートリッジはJM−16は、MM型で、0.5ミル針付のものだ。
 DD方式のモーターには、アウターローター型、ACサーボモーターを使用しており、回転数の制御は、周波数検出型である。
 本機は、このクラスのプレーヤーとしては、これといって目立つ点が少なく、平均的な印象の製品だ。しかし、いわゆる音のよいプレーヤーという言葉があるが、結果として得られる音質は、かなり高級プレーヤーに匹敵するものがある。全体に、音が引締まり、力強く、とくに、中域の下から低域にかけてこのことが著しい。
 プレーヤーシステムの音の差は、よく問題にされるが、現実に機種間の差は、かなりあり、その程度は、少なくともアンプ以上である。選択にあたって、ヒアリングテストが不可欠である。

デンオン TU-355

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 基本的には、同社のPMA−255と組み合わせるFM専用チューナーである。フロントパネルは、チューナーとしては、横長型のスライドレールダイアルを廃して、2個の大型レベルメーターをもつ、個性型チューナーTU−500をベースにしている。TU−500と比較して変更されたのは、2個のレベルメーターが、フロントパネル左側に並んでセットされた点と、センターチューニングメーターが独立したことだ。
 TU−355のダイアルは、窓の部分こそ小型だが、直径12cmのドラムを採用しており、目盛りの全走行長では、28・3cmと長く、200kHzごとに等間隔目盛りであり見やすいタイプである。ダイアルの回転機構は、ステンレスシャフトと合金軸受の組合わせでフィーリングは、スムーズである。
 2個のレベルメーターは、それぞれ、チューナーの出力レベルを指示するが、左側は信号強度計として兼用している。メーター切替スイッチは、3段切替型で、リアパネルにあるエキスターナル端子からの信号を指示することも可能である。この場合には、フロントパネルにあるエキスターナル・アッテネーターを使い−30dBから+33dBまで、つまり、24・5mVから、34・6Vまでの指示が可能でエキスターナル端子の入力インピーダンスが200kΩ以上あるために、簡易な測定器としても利用できる。
 フロントエンドは、5連バリコン使用で、高周波一段増幅、段間トリプルチューンの同調回路とデュアルMOS・FETの組合わせ、信号系と制御系を二分割した2系統のIF段、PLL採用のMPX部のほか、オーディオアンプは2段直結NF型である。
 このチューナーは、音質的には、TU−500よりも、音の粒立ちがよく比較をすると、ややクリアーで抜けがよい。

デンオン DP-1000

デンオンのターンテーブルDP1000の広告
(オーディオアクセサリー 1号掲載)

DP1000

デンオン S-270MKII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 S170よりもすべての点でスケールが大きく、音に厚みとゆとりが増してきて、S170で感じられた中域のおさえられた傾向も270ではなくなって、前帯域にわたってバランスがいい。VS270以来の改良のつみ重ねが実って、さすがに完成度の高いシステムに仕上ってきている。VSのころはトゥイーターがホーン型だったのをコーン型に替えているが、これは弦楽器やヴォーカル系では、音の鮮明さを失わずにしかもやかましさやクセの少ない、さわやかに目の前に展開するというコーン型の利点が生かされている。反面、ピアノ及び打楽器の系統での立上りの輪郭がわずかながら甘くなるのは止むをえないことなのだろうか。しかし全体として音のバランスの良さは、あらゆるプログラムソースが一応それなりに聴けることから評価できる。あとは、国産スピーカーに共通に望むことだが、音の艶あるいは思わず聴き惚れさせる魅力、またとの彫りの深さや雰囲気などのいずれかの魅力をこれに加えてゆくことだろう。

デンオン S-170MKII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 きわめて大掴みに言えばビクターSX3IIと同じ傾向の音質。しかし細かく聴いてゆけばその性格には対照的といえるほどの違いがあり、その意味でSX3IIと比較しながらの方が説明がしやすい。第一にSX3よりも音の線が細い。たとえばオーケストラ曲で、SX3が音を渾然と溶合させて聴かせるのに対してS170は各パートあるいは各音を分解、あるいは分析的に聴かせる。中域をおさえぎみにバランスをとっているためか、やかましさや圧迫感のない、しかもよくひろがり、耳あたりの柔らかな割には音の鮮度を落さずに、明晰な鳴り方をする。オーケストラでもジャズでも、低音の土台となるベースや低音楽器のファンダメンタル領域の鳴り方では、SX3の方がピッチが低いように聴こえ、シンバルのような楽器でも170の方が帯域が上に寄る感じである。あまり高くない台に乗せ、場合によってはトーンで低音をやや補う方がよいと思う。ただ、このランクにしては聴感上の能率が非常に低いのはデメリットだろう。

デンオン TU-500

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 アマチュアイズムが横溢したチューナーである。意表をついたドラムが多ダイアル、対称的に配置された2個の多用途な指示メーターなど、在来型の枠をこえた構想が楽しい。

デンオン PMA-235

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 外観も音質も、ひとつ前のシリーズの持っていた味の濃さというか個性、悪くいえばアクの強さが消えてバランスのよい自然な音質に仕上っている。穏健型というべきか。

デンオン PMA-300ZA

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 音の品位、繊細さ、わずかに艶を感じさせる音色の魅力など、この価格では抜群の完成度を聴かせる。さすがに緻密さとかスケールの大きさは出にくいが、価格からみて水準以上の音。

デンオン PMA-255

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 PMA500の音質には独特の作られた良さがあったが、500Zの方は必ずしも改良とは思えない。むしろこの255が、500に代わるべき新しい世代の製品だろう。

デンオン DP-3700F

菅野沖彦

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 DDモーターの中では、もっとも聴感上の問題のないのが、ここで使われているDP3000だし、トーンアームDA305もシンプルで安定した動作、高い適応性の優れたもの。

デンオン PMA-700Z

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 700と比較すると確かに音質は改善されている。最も顕著なところは、オーケストラのトゥッティでも、音が固まらずきれいに分離してよく広がるところ。完成度の高い音質。

デンオン DP-1000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 DP3000と実質的な性能はあまり変らずコストダウンした。自作派用のローコストとして、スペースファクターの良さを含めて使いやすい製品のひとつ。

デンオン TU-500

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 この種の製品には類型のないドラム式ダイアル。それで空いたパネルのスペースに、シグナルメーター兼用のVU計をつけるなど、メカ指向のマニアが喜ぶ発想が独特で楽しい。

デンオン S-170MKII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 PMA500などの持っていた生き生きと新鮮な感じの音の魅力が、スピーカーにも生かされたという印象。同系のS270IIや370はもう少し真面目な音だが共に佳作。

デンオン DP-3000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 国産DDの中ではもはやロングセラーのひとつ。それだけに性能の安定している点が安心できる。初期の製品にくらべると最近の方がトルクが増して使いやすくなっている。

デンオン PMA-700Z

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 音楽をのびのびと鳴らすといった印象の鳴り方でスピーカーをドライブする点、デンオンのアンプは他に類のない魅力だ。700Zは広帯域感をより強めて質的にも前進した。

デンオン DP-3700F

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 業務用を基盤とするデンオンならではのシステムである。高級マニュアルシステムとして性能、音質、操作性が優れ、トータルバランスの良さでも抜群の存在である。

デンオン DP-5000F

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 デンオンのDDモーターの、もっとも高価格の一般用製品だ。完璧なサーボは大型トランジスターの採用による。この熱を逃がす放熱器を最近外部に出し厚くなるのも直った。

デンオン DP-1000

岩崎千明

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 さすがDDでオリジナリティの濃いデンオンのモーター。外観も性能もほとんど変えずに、この製品をこの価格で出したところは、珍しく冴えた企画性を発揮したといえよう。