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オンキョー Scepter 10

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートは幾分奥まったところからきこえてくる。
❷低音弦の動きにもうひとつきりっとしたところがほしい。
❸フラジオレットの特徴的な音色は示す。
❹ここでのピッチカートは幾分ふくれぎみだ。
❺たっぷりひびくが、ひびきに張りがほしい。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は大きい。ブレンデルの音色は示しえている。
❷音色的な対比はついている。もう少しキメ細かでもいいだろう。
❸室内オーケストラのひびきとしては軽やかさが不足だ。
❹どうしたわけか多少きつめにひびく。
❺各楽器の音色はわかりやすく示してくれる。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶音像が大きく、息づかいを強調ぎみに示す。
❷接近感はあるが、表象が大きくなっている。
❸クラリネットの音色はいいが、とけあい方に問題がある。
❹はった声は、もう少しなめらかにひびいてほしい。
❺各楽器の特徴は示すものの、もう少しとけあってほしい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶音像は大きめである。そのために定位が感じとりにくい。
❷子音がたちにくいためか言葉の鮮明度が幾分不足している。
❸残響をひっぱりすぎているのか、細部をききとりにくい。
❹バリトン、バスが誇張されがちだ。
❺余韻を残しているが、必ずしも効果的とはいえない。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶どちらかといえばポンという低い音の方がきわだってきこえる。
❷ひびきの後方へのひき方はうまくいっている。
❸ひびきが幾分湿りがちなのがおしい。
❹前後のへだたりはとれているが、ひろがりは感じにくい。
❺ピークでひびきにもう少し力がほしい。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶後方でのひびき方はよく感じとれる。
❷ギターの音像が大きめなため、せりだし方が感じとりにくい。
❸もう少しくっきり、輪郭さだかにひびいてもいいだろう。
❹幾分湿ったひびきになっているが、アクセントはつける。
❺ちょっとききとりにくい。他のひびきにうめこまれている。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶暖色系の音のためか、シャープなひびきに不足ぎみだ。
❷サウンドの厚みは感じとれるものの、音像が大きい。
❸ハットシンバルのひびきは、もう少し乾いていた方がいい。
❹ドラムスはかなり大きく感じられる。
❺ヴォーカルがひっこみがちなのはなぜだろう。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像は大きい。スケール感は示すが、力強さがもうひとつだ。
❷指の動きをなまなましくきかせるが、幾分部分拡大的だ。
❸音の消え方は示す。そのためにスケール感が明らかだ。
❹こまかい音の動きに対しての反応は不十分といわざるをえない。
❺音色的には対比がついているが、音像的に問題がある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶左手からのドラムスのつっこみは重厚だ。
❷ブラスの切りこみははなやかだが、力強さがたりない。
❸極端なクローズアップが一応の効果をあげている。
❹音の見通しがよくないために、トランペットがいきない。
❺リズムがもう少しシャープに示されてもいいだろう。

座鬼太鼓座
❶尺八の像は大きく、しかもかなり前にでてくる。
❷音色的には、尺八の特徴をよく伝える。
❸これみよがしにではないが、そのひびきの存在を気づかせる。
❹スケールゆたかなひびきだが、力強さがほしい。
❺ききとれなくはないが、効果的とはいえない。

テストの結果から私の推すスピーカー

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より

 せっかくレコードに、ごくこまかいところまで入っているのだから、それをききたいと思う。きかなければ損だと思う。最近のレコードは、細部を拡大してはきかせてくれない。ききたければききなさい──とでもいうかのように、ピアニッシモはまさにピアニッシモのまま、レコードにおさめられている。だからききては、きこえてくるものを待っていられない。みずから求めて、音をつかまえにいかねばならない。そっくりかえってはいられない。
 しかもききては、欲張りだから、そのごくこまかい部分の音が、上質のひびきできこえてほしいと思う。これはつまり、サウンドのクォリティに対しての要求だ。この件に関しては、残念ながらというべきか、価格が関係する。高価なスピーカーシステムは(そのすべてがそうだというわけではないが)、おおむね、それ相応の質で、きかせてくれる。したがって、どうしても上質のひびきで──ということになれば、かなりの出費を覚悟しなければならない。
 しかし、もう少し手前のところで、スピーカーシステムを考えることもできそうだ。質的なことをひとまず棚にあげて、こまかい音への対応のしかたに的をしぼって考えることだ。そこでうかびあがるスピーカーシステムは、新しいレコードの新しいレコードならではの特徴を、一応はあきらかにする。 価格の下の方からあげていけば、デンオンSC104、パイオニアCS755、デンオンSC107、ダイヤトーンDS50CS、KEFカンタータなどが、その範疇に入る。たとえば、デンオンSC104などは、その価格からしても当然というべきかもしれぬが、真に迫力ある音をきこうとしても、それは不可能だ。ただ、ひびきの細部への対応力といったことでは、かなりのものだ。いかにも再生音じみた、ひびきのひろがりのなさは感じられるが、しかし、新しいレコードをきいているよろこびは、ききてに与えてくれる。
 ゲイルGS401Aは、そのいかにも瀟洒な、スピーカーシステムらしからぬ容姿ともども、今回試聴したものの中で、もっとも心ひかれたものだった。これにしたところで、腰のすわった、力強い音をきかせてくれたわけではなかった。だが、こまかいところまでききとろうとする、ききての、視線という言葉にならっていえば、聴線に、充分にこたえていた。そのすっきりしたひびきは、なかなか魅力的だった。
 フェログラフS1についても、ゲイルとほぼ同じようなことがいえるだろう。ただ、ひびきのキメこまかさということでは、こっちの方が一枚上だった。パイオニアCS955のひびきは、キャラクターとして、個人的には特に好きなものとはいいがたかったが、さまざまな音に対してのあぶなげのない対応のしかたで、ひいでていた。こまかい部分も鮮明で、ききてがひびきにでむいていくかぎり、それにこたえてくれた。
 さらに高価なスピーカーシステムでは、スペンドールBCIII、JBLL300、それにテクニクスSB10000をあげておくことにしよう。いずれも、まったく問題がないというわけではないが、新しいレコードの新しいレコードならではの魅力をひきだしてくれた。
 音楽をきく時に、そんな微細なところにこだわってばかりはいないという主張もあろうかと思うが、いずれにしろ、音楽をきくとは、音をきくことから出発せざるをえないわけで、だとすれば、ききては、いかにかすかな音に対してだろうと、貪欲に、おのれの聴線をひびきの森の中ではいずりまわすべきではないか。

ヤマハ NS-L325

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶弦のピッチカートも木管楽器のフレーズも細めにひびく。
❷あいまいにはならないが、さらにすっきりしてもいいだろう。
❸フラジオレットの効果は示せている。
❹ピッチカートがふくらまないのはいい。主旋律のひびきも豊かだ。
❺クライマックスでは、迫力はあるものの、少しきつくなる。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像はほどほど。ただひびきにもう少し力がほしい。
❷各楽器の音色は、無理なく、示すので、対比はついている。
❸室内オーケストラならではのひびきのさわやかさがある。
❹本来はなにげないフレーズだが、少しきわだたせすぎるようだ。
❺鮮色だが、ひびきの特徴をかなりクローズアップする。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶残響を適度にひろっているが、音像は小さい。
❷子音を強調ぎみに示す。接近感はあきらかだ。
❸クラリネットの音色をよく示すが、ひびきのとけあいはよくない。
❹はった声は、硬くなりがちで、耳ざわりになる。
❺一応きこえるが、エフェクティヴとはいいがたい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶定位はかならずしもすっきりとは示さない。音像は大きめだ。
❷残響をひろいすぎているので、鮮明とはいえない。
❸ひびきに敏捷さがたりず、幾分不鮮明になる。
❹もう少しすっきりきこえてもいいだろう。
❺一応のびてはいるが、すっきりした気配にとぼしい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色対比は充分だが、音場的には、ひろがりがとれない。
❷奥へのひきがかならずしも充分でない。
❸音は、重くなって、ひきずりがちのために、浮遊しない。
❹前後のへだたりは充分とはいえない。
❺しのびこみ方がしぜんでなく、ピークで刺激的になる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶透明感はたりない。ひろがりもとれない。
❷音像は大きく、はりだしてきこえる。
❸他の楽器のひひきにうめこまれがちだ。
❹一応の成果をあげる。かなりめだってひびくからだ。
❺ことさら耳をすまさなくてもきこえてくる。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶きりっとひびかず、幾分かげりがちになる。
❷ひびきの厚みがでにくい。薄味なひびきでとどまる。
❸さわやかにひびくとはいいがたい。
❹乾いた音ではきこえるが、シャープさが不足している。
❺言葉はききとれるが、ひびきにさわやかさがたりない。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶大きな箱の中でひかれているかのようにきこえる。
❷指の動きはききとれるが、特にあざやかとはいえない。
❸消え方は充分とはいいがたく、余韻はとぼしい。
❹力強さは感じられるが、こまかい音の動きが鮮明とはいえない。
❺音色の差はあきらかだが、音像の面で問題がある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶つっこみが弱い。切りこんでくるとはいいがたい。
❷ひびきの目がつみすぎているためか、本来の成果が示されない。
❸おしだすようにして前の方できこえる。
❹後方からはきこえるが、接近感は充分ではない。
❺力強くひびくが、切れ味するどいとはいえない。

座鬼太鼓座
❶一応の距離的なへだたりは感じとれる。
❷脂っほいひびきになってしまっている。
❸きこえなくはないが、かなり耳をすますことが必要だ。
❹力強さは感じられる。しかし大きさは感じとりにくい。
❺ききとれる。かなりめだってききとれる。

サンスイ SP-G300

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートは明るくひびく。木管との音色対比も充分だ。
❷低音弦のひびきに多少の鈍さがあるものの、積極的だ。
❸第1ヴァイオリンによる特徴的な音色は示されている。
❹ヴァイオリンのたっぷりしたひびきがいい。
❺クライマックスで多少ひびきがかたくなる。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は大きめで、ひびきのキメは粗い。
❷音色的な対比は示されるものの、ひびきがかさかさしている。
❸室内オーケストラのひびきの軽やかさが示されない。
❹第1ヴァイオリンによるフレーズが大味になっている。
❺音色の特徴を強調ぎみに示す傾向がある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶音像が大きく、残響を強調する傾向がある。
❷接近感は示すものの、子音が強く、表情を大きくする。
❸クラリネットの音色は示すが、もう少しとけあってもいい。
❹声は全般的にかためだが、はった声は特にかたい。
❺オーケストラのひびきはもう少しとけあってきこえてほしい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶音像は大きい。メンバーの並び方を感じとりにくい。
❷声量をおとすと、さらに言葉のたち方がよわくなる。
❸残響をひきずりすぎるので、言葉の細部がききとりにくい。
❹各声部のからみが明瞭になるためには、キメこまかさが必要だ。
❺ぽつんときれていないが、効果的ではない。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的、音場的対比は充分にとれている。
❷シンプルなメロディーの後へのひき方は好ましい。
❸ひびきに浮遊感はあるが、多少ばらばらになりがちだ。
❹前後のへだたりはかなりたっぷりとれている。
❺ピークでは幾分ごりおし風になって、ひびきが刺激的だ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひびきの後へのひき方はいいが、透明感に不足する。
❷ギターの音像がかなり大きいため、せりだす気配が希薄だ。
❸このひびきは力をもってのびないといけないが、それが不足している。
❹くっきりと浮びあがり、効果をあげる。
❺きこえるが、もう少しキメのこまかさがほしい。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターの音が金属的になりすぎている。
❷サウンドの厚みはでるが、ニュアンスが伝わりにくい。
❸ハットシンバルのひびきの特徴は一応でている。
❹ドラムスはかなり大きく感じられる。シャープさがたりない。
❺バックコーラスはひっこみがちだ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像は大きい。スケール感は示すが、力強さはもう一歩だ。
❷部分拡大的に指の動きをきかせる。
❸音の消え方の示し方は、かなり積極的だ。
❹ひびきに本来の力がないためか、こまかい音の動きがわかりにくい。
❺音像的、音量的に差がありすぎる。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ドラムスのひびきに鋭さがほしい。
❷派手な音色でブラスがつっこんでくる。
❸この場のフルートのひびき方を誇張ぎみに示す。
❹トランペットの接近感は一応示しえている。
❺ふやけていないが、もうひとつめりはりがつかない。

座鬼太鼓座
❶尺八が大きく感じられる。したがって距離感がとれない。
❷尺八独自のひびきが明らかになりにくい。
❸あやふやにではなく、力をもってきこえる。
❹たっぷりとひびき、消え方も示すが、力強さはいま一歩だ。
❺一応きこえて、雰囲気をもたらしえている。

デンオン SC-104

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートはさわやかにひびくが、木管は薄味だ。
❷スタッカートは鮮明で、ひろがりもあるが、ゆたかさに欠ける。
❸特徴的な音色をよく示し、他の楽器とのからみもききとれる。
❹ピッチカートはふくれない。音の動きは鮮明だ。
❺われもにごりもしないが、決して充分とはいえない。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像が小さく、くっきり定位するのがいい。
❷音色的対比は、これみよがしにならず、このましく示される。
❸室内オーケストラのさわやかさが感じとれる音だ。
❹すっきりと、さわやかにきこえる。
❺幾分ひかえめにすぎるが、鮮明にききとれる。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶言葉に残響がつきすぎないので、すっきりきこえる。
❷接近感を、ことさらめかさないで、さわやかに示す。
❸まろやかな音色を傷つけていない。声と楽器のバランスもいい。
❹声はあくまでもまろやかで、硬くならない。
❺ききての側で出むいていってきこうとすれば充分にきかせる。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶メンバーの並び方は、よくわかる。
❷声に多少残響がついているが、不鮮明になっていない。
❸子音のたち方なども過不足なく、細部までよくききとれる。
❹各声部の動きはあいまいになっていない。
❺一応の残響があるので、ポツンと切れてはいない。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的にも、音像的にも、コントラストがついている。
❷ひびきの透明感のあるのがいい。クレッシェンドも自然である。
❸音に軽みがあり、ひきずらず、一応浮遊する。
❹前後のへだたりはとれている。ただ音にもう少し力がほしい。
❺ピークでは力不足を感じる。圧倒的なひびきにはなりえない。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶透明感はある。ただ、ひろがりとんいうことでは、もう一歩だ。
❷ギターの音像がふくらまず、すっきり中央に定位するのがいい。
❸一応の効果はあげるが、ひびきに力がない。
❹そのひびきの特徴を示すが、いかにも薄い。
❺きこえることはきこえるが、ひきたたない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターの音色の特徴はよく示すが、ベースは不足ぎみだ。
❷ひびきの厚みの提示は、かならずしも十全とはいいがたい。
❸すっきりとぬけてくるが、幾分ひびきに力が不足している。
❹ドラムスはシャープだが力感に不足している。声はいい。
❺バックコーラスの効果は示せている。言葉は鮮明だ。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像がふくらみすぎないのはいいが、力強さがない。
❷なまなましく指の音をきかせるが、すごみはない。
❸音の消え方は、ききとりにくいので、スケール感がでない。
❹こまかい動きはわかるが、力強さはない。
❺音色的にはいいが、音像的に差がありすぎる。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶シャープに切れこんでくるが、アタックの強さはない。
❷ブラスに力がないので、浅いひびきにとどまる。
❸一応の効果はあげるが、ひびきが刺激的になっている。
❹へだたりはあまり感じられず、したがって接近感は不足している。
❺ふやけないのはいいが、力がたりない。

座鬼太鼓座
❶尺八が奥にいるのはわかるが、消極的にすぎる。
❷音色的には問題ないが、ひびきにもう少し力がほしい。
❸ききとりにくい。深く沈む音の再生が不得手なためか。
❹スケールの大きさは感じとりにくい。
❺かすかにきこえるが、エフェクティヴではない。

ソニー SS-G7

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートのひびきはいきいきとしていてはえる。
❷スタッカートはたっぷりひびいているが、鋭さは不足ぎみだ。
❸フラジオレットの特徴は明らかになっている。
❹低音弦のピッチカートは、たっぷりして、あいまいにならない。
❺クライマックスでの迫力はなかなかのものだ。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は大きい。ひびきに力のあるのがいい。
❷音色対比は充分だが、ひびきにキメこまかさがほしい。
❸室内オーケストラによるひびきの軽やかさが不足している。
❹このフレーズの特徴は示すが、すこしせりだしすぎる。
❺各楽器の音色は示すものの、キメはあらい。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶セリフの声のまろやかさがたりない。
❷接近感は示すが、プライの声が太くなりすぎる。
❸オーケストラのひびきのとけあい方が充分でない。
❹はった声はかたくなる。もう少しまろやかでもいいだろう。
❺個々のひびきがばらばらになりがちだ。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶音像が大きいので、メンバーの並び方を感じとりにくい。
❷声量をおとすと、さらに言葉がもやっとする。
❸残響を切りおとしされていないので、細部はききとりにくい。
❹バリトン、バスが強調されがちなので各声部のバランスが悪い。
❺一応ひびきはのびているが、効果的とはいえない。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的、音場的なコントラストは充分についている。
❷力をもってシンプルなメロディーがクレッシェンドする。
❸浮遊感はあるものの、音がばらばらにきこえる傾向がある。
❹ひびきのひろがりという点で、多少ものたりないところがある。
❺ふくれあがり方は力があっていいが、ピークでひびきが濁る。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶ひろがりはとれているものの、透明感がとぼしい。
❷ギターの音像は大きめで、さらにくっきりしてもいい。
❸ひびきが充分な効果をあげない。他のひびきにうめこまれがちだ。
❹この音は、かなりきわだってきこえて、アクセントをつける。
❺充分にききとれ、ひびきに変化をもたせている。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶過渡にスケールの大きいひびきで開始される。
❷サウンドの厚みは、多少これみよがしに示される。
❸一応の効果は示すものの、すっきりぬけでてくるとはいえない。
❹ドラムスは、力強いが、シャープとはいいがたい。
❺バックコーラスでは言葉はたつが、とけあわない。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶ペデルセンの音像がきわめて大きい。
❷指の動きは不自然なほどに誇張されて示される。
❸音の尻尾はなまなましく示されている。
❹力強いが、こまかい音の動きが鮮明とはいいがたい。
❺音像的、音量的に差が大きすぎる。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ドラムスはたっぷりひびくが、アタックがシャープとはいえない。
❷ブラスは派手なひびきでつっこんでくる。
❸フルートを大柄なひびきで前面におしだしてくる。
❹音の見通しは悪くないが、トランペットはいきない。
❺リズムは一応の切れを示して、はなやかにまとめる。

座鬼太鼓座
❶尺八がきわだって大きく感じられる。
❷ひびきにかなり艶があり、尺八らしさがとぼしい。
❸力をもった音でくっきりときかせる。
❹大きさは充分に示すが、もうひとつ力強さがほしい。
❺大太鼓の消えていく音とよくバランスしてきこえる。

サンスイ SP-L100

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートは軽くひびく。木管楽器のひびきの性格は不充分。
❷あいまいにならず、ぼけてもいないが、力感にはとぼしい。
❸ヴァイオリンの音が硬くなる。音色面での特徴はとぼしい。
❹第1ヴァイオリンの響きが、乾いている。
❺総奏では響きが刺激的になる傾向がある。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像はふくれぎみの傾向がある。
❷音色的な対比はできているが、響きが乾燥ぎみ。
❸室内オーケストラ的なまとまりはあるが、もう少し湿りがほしい。
❹すっきりときこえるが、他の楽器とさらにとけあってもいい。
❺その音のキャラクターはくっきり示す。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶❷で接近感は示される。ただそれを幾分強調ぎみの傾向がある。声は硬めで、子音が強く感じられる。
❸クラリネットはくっきりきこえるが、とけあい方が不充分。
❹はった声が幾分刺激的になって、とびだしてきこえる。
❺個々の楽器をききわけることはできるが、とけあわない。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶それぞれのメンバーの定位はいい。ただ声は乾いている。
❷鮮明で、子音が幾分強調されている。
❸残響は、むしろおさえられすぎている。
❹各声部のこまかい動きは、かなりはっきりききとれる。
❺ひびきののびやかさがない。そのためにポツンときれる。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶コントラストは充分にとれていて、ひろがりが感じられる。
❷奥ゆきは示されているが、クレッシェンドに自然さがない。
❸一応の浮遊感はあるものの、とびかい方になめらかさがない。
❹個々のひびきの呼応のしかたにちぐはぐなところがある。
❺クライマックスで頭をうってしまって、のびない。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶後方からきこえるが、のびやかさ、透明感に不足している。
❷せりだしてくるものの、もともとの音像が大きい。
❸他のひびきの中に埋没しがちである。
❹多少の強調感をともなって、きわだつ。
❺きこえることはきこえるが、かならずしも効果的とはいえない。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターの音が少し硬すぎるようだ。
❷一応の効果は示されるものの、もう少しベースが積極的でもいい。
❸ハットシンバルの音はぬけでてくるが、薄いひびきにとどまる。
❹ドラムスの音はいいが、声は乾きすぎている。
❺言葉はたつが、声にもう少しなめらかさがほしい。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶スケール感は不足しているが、エネルギーは感じられる。
❷指の走る音はかなりくっきり、なまなましくきこえる。
❸消えていく音は、消極的にしか示さない。
❹ひびきそのものは細身だが、一応こまかい音の動きは示す。
❺コントラストの点で不自然さはない。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶音に力が不足しているので、つっこみに鋭さが足りない。
❷ブラスのつっこみが金属的なひびきに傾きがち。
❸クローズアップの効果は示せている。
❹奥ゆきがとれて、しかも接近感もあきらかだ。
❺幾分ふやけぎみで、そのためにめりはりがつきにくい。

座鬼太鼓座
❶かなり前の方にでてくるので、距離感はとれない。
❷脂っぽさはないが、乾きすぎている。
❸一応きこえるが、きわだってきこえるほどではない。
❹スケール感不足ぎみ。消え方はつたわらない。
❺かすかにきこえる。しかしひびきにもう少し雰囲気がほしい。

試聴テストを終えて

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より

「試聴」は、いつもながらのことだが、非常に疲れる。ひとことでいえば、はなはだしんどい仕事だ。そんなにつらいのなら、しなければいいじゃないかと、自分でも思う。でも、また、やってしまった。しかも、なんたることだ。しぶしぶいやいやではなく、いそいそと「試聴」にのぞみ、終って、気がついてみたら、疲れはてていた。
 そこで考えてみることになる。なにを「試」しに「聴」こうとして、いそいそとしたのか、つまり、「試聴」の目的は、いったいなんだったのか。いそいそとするからには、なんらかのたのしみが期待できたはずだ。そのたのしみとはどのようなたのしみだったのか。
 ふりかえってみて気づいたのは、この場合の「試聴」のたのしみが、その「試聴」の過程にあったということだ。結果として、どのスピーカーが好ましくて、どのスピーカーが好ましくないというようなことはわかる。しかし、だからといって、その、いわゆるよしあしの判断が、「試聴」の目的ではなかった。よしあしは、特に音に関するものとなれば、すくなからず主観が関係する。AがいいといったものをBがよくないというようなことは、ままある。 どうやら、「試聴」のたのしみは、自分をモルモットにするたのしみだったようだ。モルモットは意見をもちえない。ただ、音に対して反応するだけだ。しかし、その場合、モルモットが、いかなるレコードのいかなる部分をつかって、どのような部分にポイントをおいて反応したのかを、示しておく必要があるだろう。そのようにすることは、自分をモルモットとしておいこむのに有効でもあった。
 モルモットのしたことは、モルモットにできることにおのずと限界があるから当然のことだが、はなはだ単純なことだった。すなわち、モルモットがしたのは、ただ、興味の綱をたぐりよせることだけだった。ヴァイオリンのピッチカートが、ちゃんとピッチカートらしくきこえるかな? 少しぼやけているけれど、きこえた。それでは、月のフルートとオーボエのフレーズはどうかな? オーボエの響きがちょっとききとりにくいが、まあまあだろう──、モルモットの反応のしかたは、ざっとそんな具合だった。
「試聴」にあたってのプログラム、つまり興味の綱は、すでに、「試聴」に先だって、できていた。「試聴」しながら恣意的にあれこれレコードをえらぶということはしなかった。
 しかし、そういう方法が今回にかぎってのものとは、いえない。いつも、「試聴」に先だって、興味の綱はつくっておく。ことさらめかしたいい方になってしまうが、それぞれのレコードのそれぞれの部分で、こことこことここ──といったように、いくつかのチェックすべきポイントをもってきいている。そんなことは、あらためていうべきことではなく、当然のことでしかない。
 今回ちがったのは、おおよそどの部分を注意してきいたのかを示せ──という、編集部からの要請もあって、それをあらかじめ示したことだった。ただ、ここでひとことことわっておきたいのは、それそれのレコードで示したチェックポイントは、書きだしやすいものにかぎって、数も、それぞれのレコードについて5つにおさえたということだ。ちょっとお考えいただけば、すぐにもおわかりになることだが、1分そこそこしかきかなかったレコードと4分32秒もきいたレコードで、ひとしく5つずつのチェックすべきところが示してあることのアンバランスがある。
 だから、それは、モルモットがたぐりよせた興味の綱の一部を示しただけのものだ。全部はとても、繁雑になりすぎて、書ききれない。それに、たしかにその部分を注意してきいたのだが、その部分の音の内容についてうまく言葉にできなかったということもなくはなかった。
 しかし、いずれにしろ、編集部の要請にしたがったがゆえに、モルモットはモルモットに徹することができた。当然、その結果、このモルモットが書きつけた言葉には、抽象的な美辞麗句はありえない。しごく乾いた、味もそっけもない、きこえたとかきこえなかったとか、そんな言葉が、まさにメモ風に書きつらねてあるだけだ。今、ためしに数えてみたら、「試聴」の際にとったメモは、ひとつのスピーカーについて、ほぼ3000字ほどある。
 むろん、いくらなんでも、それをそのまま活字にするわけにはいかない。なぜなら、そこには重複があったり、自分にしかわからない暗号風な言葉があったりするからだ。それを幾分整理したのが、別項の「試聴メモ」ということになる。
 ここがこうなら、次のところはどうか──といったように、ということは、別の言葉でいうと、土竜(もぐら)が土に穴をほるようにということになるだろうが、ききつづけた。疲れは当然というべきかもしれない。しかし、反面、たのしかった。モルモットだか土竜だかしらぬが、ともかく試聴者は、せいいっぱいおのれの耳の視線を、音の群れの中にしのびこませた。疲れたのは、耳と、耳が感じとったものを書きつける手だった。およそ頭は疲れなかった。頭は使いようがなかったからだ。
 たとえばヴェルディのオペラ「仮面舞踏会」の前奏曲で、低音弦のピッチカートがどうきこえるかは、はなはだ音楽的な問題だが、そのことについてあれこれいうことを、この際、モルモットは、放棄した。
 それでは、モルモットよ、お前は、木をみて、林をみなかったのか?──という質問があるかもしれない。その質問に答えておこう。たしかに、そうだ。モルモットがみたのは、木であって、林ではなかったかもしれない。しかし、ここでモルモットが選んだレコードは、俗にいわれるオーディオチェック用レコードではなかった。たとえ一部に、いわゆるデモ用レコードとしてつかえそうに思えるものもなくはなかったが、大半は、ことさらに響きの部分拡大をしていない、音楽をきくためのレコードだった。そこでモルモットは、木をみとどけるために、みずから、おのれの耳を、木々のたちならぶ、つまり林をかきわけて、中に入りこまざるをえなかった。なるほど、結果としてみたのは木でしかなかったが、林を意識しての木に対しての、モルモットのモルモットなりの視点だったということができる。
 ここがこうきこえて、あそこがああきこえた──という結果をよせ集めれば、たとえば新聞の写真のように、それなりに顔なり景色なりが浮かびあがってくる。しかし、今回のここでのモルモットは、その作業をおこなわなかった。点が黒いか、灰色か、白いかは、できるかぎり明記したが、それが示す顔なり景色なりについては、ふれなかった。顔の写真を好む人もあるだろうし、景色の写真を好む人もあるだろうから、顔の写真がいいという人に、景色の写真のよさを力説することはしなかった。
 しかし、モルモットには、モルモットなりの感想があった。それは、個々の木が十全であって、しかも林の輪郭がぼけたものはなかったということだ。ということは、部分が十全であって、しかも非音楽的にしかきこえなかったスピーカーはなかったということだ。これがもし、部分拡大されたレコードでの、「試聴」だと、そういはいかないのだろうが、最近の、しかもすぐれたレコードは、極端に部分拡大をこばんでいる。モルモットが、できうるかぎり最新のレコードをえらんだ理由は、そこにある。
 最近のレコードは、ほら、おききなさい、これがコントラバスですよ、これがピッコロですよ──といったようには録音されていない。ききての耳が入りこんでくるのを待っていて、そこまで耳がいたれば、それなりにコントラバスの音なり、ピっ子の音なりをきかせてくれる。そういうレコードで、モルモットは、「試聴」した。そして、むきになって穴をほって、むくわれたこともあり、石ころにばかりぶつかって苦労したこともあったが、たのしかった。

テクニクス SB-10000

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートは、ゆたかに、しかし鮮明にひびく。
❷低音弦のスタッカートは、たっぷりひびくが、切れ味鋭い。
❸さまざまなひびきのとけあい方には無理がなく、好ましい。
❹ここでのピッチカートは、ふやけず、充分な力を示す。
❺クライマックスでのもりあがりは、鮮明で、迫力充分だ。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は中くらいで、くっきりと示される。
❷音色的な特徴がキメ細かく、すっきりと示される。
❸ひびきが大柄にならないよさがいきている。
❹第1ヴァイオリンのフレーズは、さわやかにひびく。
❺さまざまな音色の提示に無理がない。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶音像は小さめで、セリフの声のなまなましさが特徴的だ。
❷表情の拡大がなく、接近感を自然に示す。
❸クラリネットの音色はまろやかで、大変美しい。
❹はった声も自然にのびて、かたくならない。
❺オーケストラと声とのバランスはほぼ十全だ。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶定位はくっきりとして、ひとりひとりを見分けられるほどだ。
❷声量をおとしても言葉が不鮮明になったりしない。
❸残響はかなりひいているが、悪く影響はしていない。
❹ひびきはけっして軽くないが、各声部のからみは明瞭だ。
❺ひびきは自然に、しなやかにのびている。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ふたつの異なる性格のひびきが充分に対比されている。
❷暖色系のひびきながら、後へのひきは充分だ。
❸ひびきは重くなることなく、充分に浮遊している。
❹前後のへだたりが充分で、広々と感じられる。
❺ピークでのひびきの強さと広がりは圧倒的だ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶後方でのほんのかすかなひびきが特徴的だ。
❷ギターの音像はふくれすぎず、音色的特徴をよく示す。
❸くっきりと、あいまいにならず、効果的にひびく。
❹固有の音色的特徴を明らかにしてアクセントをつける。
❺静かに、しかし、あいまいにならず、きこえる。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターのひびきはもとより、それをつつむひびきが明らかだ。
❷サウンドの厚みを示し、その内容も明らかにする。
❸ハットシンバルのひびきはもう少し乾いてもいいだろう。
❹ドラムスの音像はほどほどで、鋭くつっこむ。
❺声の重なりが自然で、言葉もよくたってくる。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶ほどほどの音像で、エネルギー感ゆたかにきかせる。
❷なまなましく、オンの感じを伝えるが、誇張感はない。
❸たっぷりときこえて、不自然さがない。
❹力強く、しかも鮮明さもそこなっていない。
❺サム・ジョーンズの音像はきわめて好ましい。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ドラムスは力感ゆたかだが、ねばらないのがいい。
❷ブラスのつっこみは、きわだって力強い。
❸クローズアップの効果が、いっぱいにひろがる。
❹ひびきにひろがりがあるため、トランペットがいきる。
❺リズムにはずみがあり、生気にとんでいる。

座鬼太鼓座
❶充分に距離がとれているが、あいまいではない。
❷脂っぽさはいささかもなく、きわめて好ましい。
❸不自然にではなく、また誇張感もなく、きこえる。
❹大きさと力強さは、ほとんど圧倒的といってもいい。
❺ごく自然なきこえ方で、充分にアクセントをつけている。

JBL L300

黒田恭一

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートは、生気があって、くっきりとひびく。
❷低音弦のスタッカートは力があって、ひろがりも感じさせる。
❸各々のひびきの特徴をくっきりと示し、とけあい方もいい。
❹ここでのピッチカートは、たっぷりひびいて、しかも鮮明だ。
❺内容を示しつつ、迫力充分にきかせる。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は大きく、ひびきに力がある。
❷個々のひびきの特徴は示すが、キメ細かさが足りない。
❸室内オーケストラのひびきとしては、大柄にすぎるだろう。
❹すっきりときこえるが、ひびきにしんがありすぎる。
❺ひびきの特徴を示し、ばらばらにならない。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶残響をかなりひろっているが、声になまなましさがある。
❷接近感は拡大ぎみに示す。表情はゆたかだ。
❸クラリネットのひびきはきわだつが、声とのバランスはいい。
❹はった声がかたくならず、充分にのびている。
❺オーケストラと声とのバランスは理想的だ。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶音像はふくらみがちなため、定位は必ずしもよくない。
❷声量をおとしても鮮明さがなくなることはない。
❸残響をかなりひろっているが、言葉は充分にたつ。
❹ひびきに軽やかさはないが、各声部のからみあいは明瞭だ。
❺とってつけたようにではなく、自然にのびている。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ふたつのひびきの、音色的、音場的対比は充分だ。
❷後方にひいたひびきの質がよくききとれる。
❸さらに軽やかであってもいいが、浮遊感は示す。
❹力のあるひびきによりながら、ひろがりがある。
❺ふくらみ方は自然で、ピークでの迫力は圧倒的だ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶後方でのひびきには力があるが、透明感をそこねていない。
❷ギターはくっきり示されて、せりだし方をよく示す。
❸ふくらみすぎず、あいまいにならず、きわめて好ましい。
❹ひびきの輝きをよく伝えて、アクセントをつけている。
❺すっきりとこのひびきの本来の姿を伝える。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶12弦ギターのひびきがあいまいにならずくっきりと定位する。
❷ひびきの重なり具合が充分にききとれる。
❸ハットシンバルの音は、乾いて、すっきりとぬけでてくる。
❹ドラムスの音像は大きくならず、シャープに切りこんでくる。
❺声の重なり方が手にとるようによくわかる。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像が巨大になっていないのがいい。充分な力がある。
❷指の動きが、ことさらめかさず示され、なまなましい。
❸音の消え方にも、誇張感がなくていい。
❹こまかい音の動きに対しての反応も好ましい。
❺音像的、音量的、音色的対比は十全だ。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶アタックのシャープさはなかなかのものだ。
❷ブラスの切りこみも、はなやかなひびきで、有効だ。
❸この部分で求められる効果を充分にいかしている。
❹ひびきの目がつみすぎていないので、トランペットの参加が生きる。
❺左でのリズムの刻みはまことに鋭い。

座鬼太鼓座
❶尺八は左奥からすっきりきこえてくる。
❷くっきり示されるものの、ひびきに脂のついていないのがいい。
❸かすかな音できこえて、誇張感はない。
❹充分な力を示し、音の消え方もよく伝える。
❺好ましいきこえ方をして、はなはだ効果的だ。

ソニー SS-G7

ソニーのスピーカーシステムSS-G7の広告
(スイングジャーナル 1977年9月号掲載)

SS-G7

ロジャース LS3/5A

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イギリスのロジャースがBBCの技術協力を得て開発した小型モニター・スピーカーで10cmのウーファーと2cmのドーム・トゥイーターを内蔵する。クロスオーバーは3kHzである。イギリスのスピーカーにはBBCモニターという規格や、そのテクノロジーに準じたものが多いが、いかにも、イギリスらしい端正な落着いたサウンドをもったものが多い。このシステムも、小型ながら誇張のない、大らかな音で、バランスが大変よい。

モニター・オーディオ MA5 seriesIII

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 モニター・オーディオはイギリスのアッセンブル・メーカーで使用ユニットは自社製ではない。この製品もウーファーはKEF製のB200という20cmスピーカーを使い、トゥイーターは、モニター・オーディオ使用にもとずくイソフォン製である。MA5は、オリジナル・II・IIIと改良を重ねられ、その都度音質が洗練されてきた。サイズは中型のブックシェルフ・システムで、聴くほどに滋味に溢れた渋い風格のあるシステムだ。

ダイナコ A-40XL

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 ダイナコはアメリカのハーマンインターナショナル傘下のメーカーで、そのスピーカーはデンマークのスキャンダイナが供給する。A40XLはA25XLと共に、ニューシリーズで伝統的な完全密閉型、アコースティック・サスペンション・システム。構成は、2ウェイで、ウーファーは25.4cm口径コーン、トゥイーターは2.5cm口径のソフト・ドーム・トゥイーターを1.5kHzのクロスオーバーで使っている。代表的なブックシェルフ型の一つ。

スキャンダイナ A-403

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 スキャンダイナは北欧デンマークの製品で、A25というソフト・ドーム・トゥイーターををもったシステムが、ブックシェルフ・スピーカーの代表的存在となった程ヒットした。その後、MKIIとして若干の改良を受け現在に至っているが、このA403は、その上級機種である。25cmウーファー、10cmスコーカー、2.5cmドーム・トゥイーターの3ウェイでエンクロージュアは制動の利いたバスレフ型だ。落着いた風格のある音質の品位は高い。

ウエストレイク・オーディオ TM-2

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのウエストレイク・オーディオがつくるスタジオ・モニターで、使用ユニットは定評あるJBL2215(38cm)2個、スコーカーは同2440ドライバーにトム・ヒドレイ氏の開発したユニークな木製ホーン、トゥイーターは2420という3ウェイ・バスレフ方式のシステムである。剛性の高いエンクロージュアと圧倒的な高出力音圧レベルで、豪華絢爛のアメリカン・サウンドを満喫できる。

ボザーク B410 Moorish

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのボザークは、オール・コーン・スピーカーのマルチ・システムという一貫したポリシーで、クラシックなデザインのエンクロージュアに収めた高級システムをつくっている。その節度ある渋い音色と、品位のの高いクォリティは、高級ファンの中に根強い支持層をもっているようだ。このB410はシリーズ中の最高機種で、〝ザ・コンサート・グランド〟の異名を持つ。計14個のユニットから放射される音は圧巻である。

ヴィソニック David 50

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 西独・ヴィソニックの開発した、超小型本格的スピーカー・システムである。17×10.7×10.3cmという完全密閉型の高密度エンクロージュアに9.8cmウーファーと1.9cmドーム・トゥイーターがつまっている。ムーヴィング・ストロークの大きいウーファーはハイ・コンプライアンスと相俟って、外観から想像できない豊かな低音を再現するし、全帯域にわたって、きわめてエッジ・オブ・サウンドの明確な再生音だ。

ヴァイタヴォックス CN191 ConerHorn

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イギリスのヴァイタヴォックス社は、ほぼ半世紀にわたる歴史を持つメーカーで、プロフェッショナル機器を専門に製造している。したがって同社のスピーカーは、米国アルテック社と相通じ、劇場・ホール用、スタジオ用として高い名声を得ている。このCN191というシステムは複雑なホールデッド・ホーンでしられるクリップシュ氏の設計になるホーン・エンクロージュアに38cmウーファーとホーン・ドライバーを収めた2ウェイである。

スペンドール BCIII

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イギリスのスペンドールは比較的新しいメーカーだが、その製品への信頼度は非常に高い。BBCのモニター・スピーカーの規格にもとづいて開発された同社のシステム中、このBCIIIは、シリーズ中の上級機種で、かなり大型のシステムである。独特なユニット構成で、30cmのプラスティック・コーンをベースにした4ウェイ・4スピーカーである。仕上げの高いエンクロージュアもこのスピーカーの音の美しさの要因だろう。

エレクトロボイス Interface:A

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 アメリカのエレクトロボイス社は、スピーカー、マイクロフォンの専門メーカーで、長い歴史と高度なテクノロジーを持つ名門である。インターフェイスAは、ユニークな構成のシステムで、ウーファー20cmに25cmパッシヴラジエイター、そしてフロントにメタルドーム付の5cm径のトゥイーター、そして背面にも同サイズのトゥイーターを備える。専用イコライザーが用意され、ルーム・アコースティックに対処する。ペアで売られる。

タンノイ Arden

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 名門タンノイが生れ変ったニュー・シリーズ中の最高機種が、このアーデンである。
 伝統的のコアキシャル同軸ユニットHPD385Aは38.5cmウーファーとトゥイーターのカップリングである。この優れたユニットを、フロアー・タイプの大型バスレフ・エンクロージュアに入れたアーデンは、往年のタンノイの伝統が生きた優れた新鋭機といえるだろう。豊かな音は、格調高いタンノイのそれであり、堂々たる再生音を満喫できるもの。

QUAD ESL

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イギリスのクォードは、きわめて主張と個性の強いメーカーで、その製品の種類はきわめて少ない。常にプリアンプ、チューナー、パワーアンプ、スピーカーをその時々に一通りそろえているだけだ。スピーカーは、このESLが唯一のもので、その名の示す通りエレクトロスタティック型である。繊細きわまりない高域の美しさと、優美なデザインが特徴で、ラウドネスさえ望まなければ、最高品位の再生音が得られる。

フェログラフ S1

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イギリス・フェログラフ社は、テープレコーダーでその名を知られたメーカーであるが、同社が開発した傑作スピーカー・システムがこのS1である。ウーファーは楕円型のプラスティック・コーン、スコーカーが10cm口径のコーン型、トゥイーターはドーム型である。エンクロージュアはバスレフ式で、きわめて現代的な美しいプロポーションと仕上げを見せる。すっきりとのびる高域を低域が豊かに支え、大変品の高い再生音が得られる。

タンノイ Cheviot

菅野沖彦

ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より

 イギリスの伝統的なスピーカー・メーカー、タンノイの新しいシリーズ中の中間機種がこのチェビオットである。使用ユニットは、タンノイの伝統的なコアキシャル・2ウェイの全帯域スピーカー・ユニットで、これはこの一つ下のクラスのデヴォンと共通のHPD315Aという31・5cm口径のもの。エンクロージュアがデヴォンより大きく、チェビオットから上が、台座つきのフロアー・タイプとなる。堂々とした重厚な再生音だ。