Category Archives: アナログプレーヤー関係 - Page 32

シュアー M75G TypeII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 このもうひとつ下にM75Bというのがあるが、B型の音はかなりラフで反応が鈍いのに対して、75Gになると音は一変してやわらかくよく広がる雰囲気を鳴らしはじめる。その意味でこれをベストバイとするわけ。次の針交換の際に、交換針の変更で最高クラスの75EDIIに生れ変らせることができる点も楽しみ。

エレクトロ・アクースティック STS255-17

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 STS155−17にくらべると、高域の音色がコントロールされて、音のバランスがずいぶん違ってきこえる。この差は好みの問題、あるいは主として鳴らす音楽のジャンルの問題だが、255の方がややクラシック向きに高域に艶を乗せて鳴らす。ただし、輸入品でこの価格では、品位を論じるのはまだ無理。

オルトフォン SPU-G

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オルトフォンのMC型カートリッジとしてきわめて寿命の長いSPU−Gシリーズには、楕円針つきのSPU−G/Eとコニカル針つきのSPU−Gの二種類あり、それぞれトランス内蔵のモデルもある。このSPUシリーズは、現在でも日本のオーディオファンに親しまれている魅力あるカートリッジである。

アントレー EC-1

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 国産の新しいメーカーで、デビューしたての製品である。発電方式はMC型で、音質は、外国製カートリッジのようなニュアンスをもったバランスのよいもの。物理特性の誇示だけが表へ出てこないで、音楽に必要なバランスコントロールがおこなわれている。ただ、デザインや仕上りが内容に追いつかず物足りない。

オーディオクラフト AC-10E

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーディオクラフトのシェルつきカートリッジで、発電方式はMM型である。このカートリッジの音は、国産には珍しい味わいをもっていて、いたずらに周波数レンジの広さの誇示が感じられず、充実したサウンドである。高域に肉付があり、無機的な音の多い国産品の中では、ユニークな存在としてあげられる。

シュアー M75G TypeII

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 シュアーの製品の中で、この75シリーズの寿命は、もうかなり長い。その価格からしても、シュアーとしては普及品の上ぐらいにランクされる製品だが、シュアーらしいバランスのよさと、どこか、感覚に快感として感じられる巧みな魅力のポイントを持たせた好製品である。トレース能力も高く、安心して使える。

ビクター UA-7045

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 クォーツロックのDD型フォノモーターであるTT−101と、本来は組み合わせて使うべく開発された、スタティックバランス型のトーンアームである。デザインは、オーソドックスに機能を優先しており、特別にデザイン的に処理された印象が少ない点が、かえってこのアームの魅力である。回転軸受の上部の同軸上にあるインサイドフォースキャンセラー、ロック可能なアームレスト、アームリフターなど機能は標準的である。

エレクトロ・アクースティック STS255-17

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 155−17の上級機で、可聴帯域のバランスは155同様、きわめてバランスのとれたものだ。特性的には155と大きな違いはないが、こちらのほうが一段とニュアンスの再生に繊細さを持っている。そして、柔らかい、プレゼンスの豊かさが加わって、一つ透明感でも上の製品であることがわかる。手堅い中級品。

ビクター TT-101

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 高級フォノモーターのトップをきって登場したこのモデルは、リジッドなプレーヤベースとUA−7045アームを組み合わせたシステムとしての音の良さで注目を集めた製品である。ディジタル表示の回転数、1Hzステップの微調整機能など、最新の水晶制御フォノモーターらしいアクセサリーが大変に楽しい。

エレクトロ・アクースティック STS155-17

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 エレクトロアクースティックのシリーズ中で最下位にあるのがこの製品だが、さすがにMM型の元祖だけあって、実にまとまりのいい音を出し、トレース能力も、決して安物のそれではない。さすがに、高域ののびや繊細感は無理だが、音楽に必要な帯域でのクォリティは高い。品位の高い普及品である。

エンパイア 4000D/III

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 いわゆるベスト・バイの意味からは、価格的に逸脱するが、他では得られないトーンキャラクターをとれば、ベスト・バイともいってよいだろう。トータルのシステムのクォリティにより音が大幅に変化する傾向が著しい。このカートリッジが、シャープさと柔らかく陰影の色を濃く鳴らせば、かなりのシステムである。

オーディオテクニカ AT-3M

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーディオテクニカのモノーラル専用カートリッジで、モノーラル用のカートリッジが少ない現在、貴重な存在なので取上げた。オーソドックスなMM型で、ステレオカートリッジのモノーラルレコード再生では得られない安定した音質が得られる。モノーラルレコード愛好者は是非一個揃えられるとよい。

フィデリティ・リサーチ FR-1MK3

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 繊細で細やかな音をもち、いかにも鉄芯がないMC型らしいカートリッジだったFR−1E以来、改良がくわえられるたびに、音の密度が濃くなっているのがわかる。おだやかで完成度が高く、風格のある音と思われやすいが、最新のヘッドアンプとの組合せでは、中域のエネルギーが強く、ダイナミックで鋭角的な音を聴かせ、このカートリッジがもっているパフォーマンスの奥深さを感じることができよう。趣味性の濃い製品だ。

ピカリング XSV/3000

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 アメリカ・ピカリング社は、カートリッジ専門メーカーとして、長い経験と、かなり大きなスケールのメーカーだ。発売機種もかなり多く、シュアーと並んで、アメリカの代表的カートリッジである。この製品は、ワイドレンジ・シリーズの2チャンネルヴァージョンで、CD−4用の高域特性のワイド化の技術を、一般ステレオレコードにフィードバックしたもので、さすがに再生音の美しさを感じる。一味魅力をもった優秀品。

デンオン DL-103S

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 DL−103をベースに近代カートリッジらしい広帯域化をはかったこのモデルは、当初はネガティブな評価もあったが、ディスク側、アンプ、スピーカーなどクォリティが上昇するにつれて、本来の性能の高さが発揮されるようになった。いわゆるスタンダードカートリッジとしての信頼性の高さは、DL−103ゆずりで製品の安定度は抜群である。優れたヘッドアンプと組み合わせると、いかにも広帯域型で鮮度が高い音である。

パイオニア PC-1000/II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ベリリウムカンチレバーで話題を呼んだ製品。きわめてクリアーな再生音を特長とする。透明な、明確な音像の輪郭がすがすがしい。しかし反面、暗い陰影のニュアンスを明るく、厳格なきつい線で再現してしまう嫌いもある。これは、このカートリッジの個性であるから、音の好み、音楽の特質に合わせて使いこなすと、抜群の解像力をもったリアリティ豊かな音の世界が拡がる。あいまいさが全くないのだ。

グレース F-8L’10

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 カートリッジ、トーンアームの老舗としての伝統を誇るグレースの象徴としての役割を果してきた、F−8L発売10周年を期して発売された珍しい製品である。これを意味して型番の末尾に10がつけられているが、さすがに現代カートリッジらしく、多くのF8シリーズとは一線を画した反応が速く、鮮度が高い音をもっている。とかく高価になりがちのカートリッジのなかでは、その価格もリーゾナブルであり信頼度も十分に高い。

オルトフォン MC20

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 SPUシリーズをプロトタイプとして発展してきたオルトフォンの最新モデルである。構造面では、カンチレバーが二重構造の軽量型に変更され、専用のヘッドアンプをもつ点では、かなり現代的であり、音も、SPUの個性豊かなサウンドから、より現代的なスムーズなものに変わっている。

オーディオテクニカ AT-14E

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 テクニカのVM型カートリッジは、カッティングヘッドのムーヴメントと再生のそれを基本的に一致させることによって、忠実なリプロダクションを得ようとするアイデアによる。時間をかけてリファインされてきた新しいシリーズは、VM型のよさである明解なセパレーションと、明確な音像の定位感は、今や、位相差や残響時間による、ほのかなプレゼンスの味わいも再生できるまでになった。

テクニクス SL-01

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 とかく高性能なプレーヤーシステムは、外形寸法的にも大型となりやすく、実用面で制約を受けることがあるが、このSL−01は、コンパクトにシステム化されたプレーヤーシステムならではの魅力を備えていることが特長である。滑らかで誇張感がなく、クォリティの高い音は、繊細なニュアンスの再生に相応しく高級カートリッジを組合せたい。

テクニクス EPC-100C

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 技術的に攻め抜いた製品でその作りの緻密さも恐ろしく手がこんでいる。HPFのヨーク一つの加工を見ても超精密加工の極みといってよい。音質の聴感的コントロールは、意識的に排除されているようだが、ここまでくると、両者の一致点らしきものが見え、従来のテクニクスのカートリッジより音楽の生命感がある。

ビクター QL-7R

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 コンプリートなプレーヤーシステムにビクターが水晶制御のDD型フォノモーターを採用した最初の製品であり、ユーザー側からみても、かなり魅力的なモデルである。充実した中域をベースとしてナチュラルなバランスの良さをもち、安定した音の良いプレーヤーシステムとして完成度が高い製品である。

エレクトロ・アクースティック STS155-17

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 輸入カートリッジで8700円というウソのような価格。むろんこういう廉価版だけに、音に繊細さや品位を高望みしても無理だが、国産ではなかなか得がたいヴァイタリティある線の太い、大づかみなバランスの良い鳴り方は、もっと注目を集めていい特徴。ローコストプレーヤーに加えてみると面白い。

オーディオテクニカ AT-3M

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 いまや数少ないモノーラルLP専用のカートリッジとして貴重な存在。針先がステレオの音溝を傷めないよう水平垂直、360度方向にコンプライアンスを持っているので、ステレオレコードをモノ再生するにもいい。音質も音楽性に富む優秀なもの。SP用の交換針に差しかえられる点も点も周到な配慮だ。

テクニクス EPC-100C

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 モノ時代からMMカートリッジの研究を続けてきたテクニクスが、いわば集大成の形で世に問う高精度のMM型。実に歪感の少ないクリアーな音。トレーシングも全く安定。交換針を完全にボディにネジ止めし、ヘッドシェルと一体化するという理想的な構造の実現で、従来のMMの枠を大きく超えた高品位の音質だ。