Category Archives: アンプ関係 - Page 53

SAE Mark 2100L

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 マクロ的に音や音楽を外側から、枠取りを大きく掴んで聴かせるコントロールアンプである。聴感上での周波数レンジは、現在の水準からすれば少しナローレンジ型で、バランス的には低域に厚みがあり、中域も量的にタップリあるが、少し粒立ちが甘くなる。音の表情はかなり豊かで伸びやかさはあるが、細部をクリアーに引き出せず、ある種の力で押し切るタイプで、音楽と対峙して聴き込むファンには、大柄で反応が鈍い面があり、不満を感じるかもしれない。いわば、音楽ファン用というよりは、高級PA的なキャラクターともいえよう。音場感は左右には充分広がるが、パースペクティブは抑え気味で、音像は前に出るタイプである。

QUAD 33

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 現在の水準からしても、かなりオーソドックスにまとまった音である。
 聴感上での周波数レンジは、さしてナローレンジ型を意識させない程度に伸びており、バランス的にはローエンドが抑えられ、低域はやや厚み不足ではあるが、芯のしっかりした適度のソリッドさがある。中域は安定し、高域は少し粗粒子型で硬質さがあり、立ち上がりは甘く、ハイエンドがなだらかに下降している。
 音の表情はおっとりしているが落ちつきがあり、ほどよくプログラムソースをまとめる特長があるが、反応は遅いタイプで機敏さはない。音場感はやや狭く、音像はふくらみ気味で、輪郭の線が甘い。

マッキントッシュ C32

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、♯510Mのソリッドでやや硬質なキャラクターを巧みにカバーして、豊かでしなやかなクォリティの高い音になる。
 聴感上での周波数レンジはナチュラルに伸びきっており、充分にローエンドまでのびた低域をベースとして、緻密で粒立ちが適度にクッキリとして芯がある中域、ハイエンドが少し抑えられた高域と、安定感のあるバランスを保っている。音色は明るく、好ましい重さがあり、音への反応もアクティブで、活気が充分にある。ストレートな音の表現力も見事で、エネルギー感はタップリとある。ステレオフォニックな音場感の広がりは、従来より一段と優れ、音像もシャープである。

マークレビンソン LNP-2L

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンス用コントロールアンプとして数多くのパワーアンプの試聴用に使用して、その役目をほぼ完全に果したこと自体だけでも、このLNP2Lの群を抜く優れた性能と音質を物語るに充分なものがある。
 スッキリと伸びた周波数レンジをもち、全帯域にわたり、音色が明るく適度の重さがあり、音の密度が濃く、格調の高い都会的に洗練された音である。バランス的には中高域が少し硬質であるが、これはこのモデルがユニークな発想のデッキ用録音・再生アンプとして開発されたという、コンセプトの違いが、独得の硬質さをもつディスクをプログラムソースとすると相乗的に働くためで、アンプとしての正確さを示していると思う。

マークレビンソン ML-1L

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lと比較をすると、全体に軽くやや薄い音であり、低域の緻密さ、厚みも少し不足する。しかし、中域が量的に充分あり、音の密度が薄くないのは大きな特長である。
 ゲイン切替をハイとすると音は全体に引き締り、シャープさが出てくる。また、左右チャンネル独立のバランスコントロールの位置によっても音が変化し、マキシマムの+5dBの位置がもっともクリアーに抜けた、緻密で爽やかな音になる。ゲイン切替をローとし、バランスを0dBとすると、もっともLNP2Lの音に近くなるが、低域はより柔らかく、軟調気味である。音場感的には空間がよく広がり、音像もクリアーに立つタイプだ。

マランツ Model P3600

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 標準モデルの♯3600とくらべると、聴感上での周波数レスポンスはよりフラット型であり、中域の密度が高く、ソリッドで引き締り、硬質で粒立ちがよく、キリッとしたメリットがあるのは大きい。
 バランス的には、現代のワイドレンジ化されたコントロールアンプの水準から見れば、ローエンドとハイエンドを抑えた印象があるが、帯域は充分に広い。音色は明るく、適度のソリッドさと、豊かな柔らかさがある。
 音の表情は伸びやかでナチュラルであり、ストレートな表現力、基本的なクォリティの高さでも充分である。ステレオフォニックな音場感はよく広がり、空間の広さを感じさせる。音像は標準的で、やや距離感がある。

マランツ Model 3250

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 現代アンプらしい、しなやかさと表情の細やかさがある、ワイドレンジ型のコントロールアンプである。
 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、♯P3600よりも反応が早く、音の粒子が細やかで、プレゼンスの豊かな音になる。バランス的には、低域は柔らかく豊かで、音色が明るく軽く、中域はやや薄いが、適度に鮮度が高く、粒立ちが滑らかであり、音のニュアンスをかなりナチュラルに引き出す。高域はスッキリと伸び切り、細やかである。ステレオフォニックな音場感は、左右には充分に広がり、、前後方向のパースペクティブをもよく聴かせる。音像は少し奥にスッキリと定位をする。

ハーマンカードン Citation 17

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、オリジナルの♯16Aとの場合よりもマッチングが良いとはいえない。聴感上での周波数レンジはナローレンジ型で、バランス的には低域の量感は出るも、軟調で音色が重く暗くなり、ダンピングがかなり甘い。中域は粒立ちが甘く、中高域は予想よりも高質さが出てくる。
 全体におだやかでゆとりはあるが、反応が遅く、音楽のテンポが遅くなったように感じられる。今一歩、反応のシャープさが欲しい。
 ステレオフォニックな音場感は、標準的には広がるが、空間の広がりが少し狭く感じられ、音像は甘いタイプである。

オンキョー Integra P-303

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mと組み合わせると、音が全体に爽やかで、適度のコントラストが付いたフレッシュな音になる。やや間接音成分が多く、中域の密度の薄さは残るが、中域のエネルギー感もあり、クォリティ的にもセパレートアンプらしさが充分に感じられる。バランス的には、中域から中低域にかけて、エネルギー感的に不足ぎみの部分があり、厚み、力強さがわずかに抑えられる印象がある。
 付属のMC型用ヘッドアンプは、MC20で、柔らかく間接音がタップリとした、まるく甘い音となり、103Sでは、トランスよりも鮮度が高く、細部のディテールをかなりスッキリと引き出して聴かせる。

ラックス 5C50

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音の粒子は、全帯域にわたって滑らかで、細かくよく磨かれている。聴感上の周波数レンジは充分に伸びているが、表情がおだやかで、やや間接的な表現をするために、クリアーに伸びた印象とはならない。
 音はやや薄いタイプで、音場感は左右によく広がるが、前後方向のパースペクティブは抑えられ、音場は、左右のスピーカー間の奥に引っ込んで広がる。リニアイコライザーをアップティルトにすると、スケールは小さいが反応の早い、キレイな音になる。4000D/IIIや881Sなどのハイインピーダンス型カートリッジでは、負荷抵抗を100kΩとすると、クリアーさ、シャープさが増して、音の鮮度感が高まる。

ハフラー DH101

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプとしては、いわゆるセパレート型アンプらしい性能とクォリティを狙った製品ではなく、限定された範囲内での性能、クォリティをベースとして、音楽を楽しむためのアンプとして開発されたアンプという印象の音である。
 聴感上での周波数レンジはナローレンジ型であるが、聴きやすく、柔らかく適度に活気が感じられる、大変に巧妙なバランスが保たれている。「サイド・バイ・サイド3」は、正確さはないがムード的に楽しく聴かせ、テルマ・ヒューストンでは、ヴォーカルを中心として、ダイレクトカッティングとしてではなく、中域ベースの安定した再生をする。この適度に楽しめる音が最大のメリットと思う。

ラックス CL32

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おとなしく、滑らかな音のコントロールアンプである。聴感上での周波数レンジは、ややナローレンジ型ではあるが、ソフトで磨かれた音をもつために、狭さは感じられず、かなりナチュラルに伸びた印象となる。
 全体に、間接音成分を豊かにつけて、響きのよい音を聴かせる傾向があり、低域は甘さがあるが、トータルとしては安定型のバランスとなり、落着いた印象を聴くものに与える。中域は、予想よりもエネルギー感があり、このあたりはワイドレンジ型でない、このアンプのメリットであろう。ステレオフォニックな音場感は、音源が遠く感じられ、スピーカー間のかなり奥に広がるタイプで、音像は少し大きくまとまる傾向がある。

GAS Thaedra II

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、オリジナルなペアよりも音の表情が素気なくなり、押出しはよいのだが、力にまかせて音を出すような印象となる。とくに中域から中高域にかけての帯域が硬調となり、厚さが感じられない、やや細い、薄い印象となる。
 聴感上での周波数レンジは、オリジナルなペアよりもフラット型となり、音色もソリッドとなるために、オーディオ的にはかなりクォリティが高く、エネルギー感もタップリとあるが、音の表現が単調となり、独得の陰影の色濃い、ダイナミックな魅力はもはや感じられない。結果としてはマッチングの悪さが感じられるペアである。

ラックス C-12

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 全体に音をスケール小さく、箱庭のようにキレイに縮小して聴かせるアンプである。
 聴感上の周波数レンジは、かなりスッキリと伸びた印象があり、バランス的には、低域が抑え気味、中域は薄さがある。音色は、全体に軽く、フワッとした明るさを感じるタイプで、小さいながら、音楽のステレオフォニックな音場感を含めたプレゼンスを、かなり正確にきかせる。
 マランツ♯510Mと組み合わせても、M12の場合と決定的な変化は見せず、やや緻密な、シャープさが出てはくるものの、スケールは小さく、250W+250Wのエネルギー感は、ボリュウムを上げなければ得られない。

GAS Thoebe

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 トータルの音のキャラクターは、かなりテァドラIIとよく似ているが、バランス的には、低域の量感が少し抑えられてソリッドな印象となり、全体にスッキリとし、音の反応が少し早くなったように感じられる。
 聴感上での周波数レンジは、割合にフラットレスポンスのナチュラルに伸びたタイプで、音色は明るく、適度のクリアーさがあり、クォリティは高く、やはりこの音はセパレート型アンプならではのものだ。
 音の表情は特に豊かなタイプではないが、国内製品の優等生的なキャラクターから比較すれば、伸びやかで活気があり、ダイナミックである。また、色彩感の豊かな表現力はGASの製品らしい特長であろう。

Lo-D HCA-7500

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おだやかな音をもつコントロールアンプである。聴感上での周波数レンジは、ややナローレンジ型で、バランス的には、低域が安定し、中域の厚みも感じられる。高域は、ハイエンドを少し抑えているが、低域とのバランスはよく保たれている。
 ステレオフォニックな音場感は、少し狭く感じられ、音像の定位と音像の大きさ、輪郭は、セパレート型の平均的と思われる。
 音の表情は、基本的にはマジメなタイプだが、ときにはアクティブさも感じられる。音や音楽をマクロ的に外側から掴んで聴かせるタイプのアンプとして、オーバーオールのバランスは、よくコントロールされており、安定感がある。

ダイヤトーン DA-P15S

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mと組み合わせると、A15DCの場合よりも、全体にソリッドで、引締った音になる。しかし、音が薄く、予想よりもコントラストが付かない。音色は、軽く明るいタイプで、低域は少し柔らかく、中高域に一種の色付けがあり、アクセントをつけている。
 MCカートリッジ用ヘッドアンプは、柔らかく細やかで、音色が明るい。聴感上の周波数レンジは広く、伸びているが、MC20では、スケール感が一段と小さくなり可愛らしい音になる。DL103Sのほうが、ワイドレンジ型で、クッキリと粒立ちがよい鮮度の高い音だ。音像定位もスッキリとし、輪郭がクリアーで表情が若々しくなる。

デンオン PRA-1001

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 PRA1001は、比較的にスタンダードな性格をもっている。聴感上での周波数レンジも適度で、帯域の音色バランスもよくコントロールされ、音色的な違和感は少ない。スケール感も、このクラスのコントロールアンプとして応わしいが、音の鋭角的な切れ込みでは、リファレンスのLNP2Lに一歩譲る。また、中域のエネルギー感も、いま一歩といった印象である。
 音の表情は、かなりマジメ型で、ややパッシブな面がないでもない。♯510Mとの組合せでは、音に伸びやかさがあり、音場感がかなりスッキリと広がるようになる。これは、♯510Mの力強さと緻密さが素直に出ている結果であろう。

GAS Thalia

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 クリアーで反応の早い音をもつコントロールアンプである。
 聴感上での周波数レンジはかなりフラットレスポンス型で、バランス的にはローエンドが抑えられており、中域は米国系のアンプとしてはやや薄いタイプである。音色は明るく軽く、音の粒子は細かく充分に磨かれている。
 音の表情はフレッシュでみずみずしく、キメの細かい鮮鋭さでは、上級機種のテァドラIIやセータよりも明らかに一枚上手である。基本的なクォリティは充分に高く、音の緻密さがあり、この価格帯の国内製品と比較すれば、いきいきとした伸びやかな音をもつ点で出色のコントロールアンプと思う。

DBシステムズ DB-1

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スッキリとしたシャープな音をもつコントロールアンプである。
 このタイプの音は、とかく小柄でエネルギー感がなくなりがちであるが、DB1では、柔らかさと適度の粘りのある弾力性があるために、抑えの効いたグイッと伸びる力感があり、独得の音に抑揚をつけて聴かせる。
 DB6との組合せのときのキャラクターは、コントロールアンプ側にその要素が多くあるようで、中低域あたりの甘さと、粘りのある弾力的なキャラクターは独得のものである。音の伸びは、リファレンスパワーアンプ♯510Mのほうが格段に優れ、鋭角的に、適度のしなやかさをもち、ストレートでエネルギッシュである。

デンオン PRA-1003

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 聴感上の周波数レンジが、ワイドレンジタイプで、反応が早く、鮮度が高い音を聴かせるコントロールアンプである。
 音の厚みと低域の重量感は求められないが、中域が少し薄く、爽やかに伸びた音は、オーディオ的に魅力があり、ステレオフォニックな音場感が広がり、音楽の雰囲気をかなり正確に伝えるのは、このコントロールアンプのメリットである。
 音楽への働きかけは、適度に聴いて楽しい音にするという意味ではなく、色付けが少なく素直にディスクに刻まれた情報量を増幅するという意味で、かなりアクティブといえる。価格的にも10万円を割るクラスにあり、出色のコントロールアンプという感じだ。

ヤマハ C-2 + B-3

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前B2と組み合わせて聴いたC2だが、パワーアンプが変ると総合的にはずいぶんイメージが変って聴こえるものだと思う。少なくともB3の出現によって、C2の本当に良い伴侶が誕生したという感じで、型番の上ではB2の方が本来の組合せかもしれないが、音として聴くかぎりこちらの組合せの方がいい。B2にはどこか硬さがあり、また音の曇りもとりきれない部分があったがB3になって音はすっかりこなれてきて、C2と組み合わせた音は国産の水準を知る最新の標準尺として使いたいと思わせるほど、バランスの面で全く破綻がないしそれが単に無難とかつまらなさでなく、テストソースのひとつひとつに、恰もそうあって欲しい表情と色あいを、しかしほどよく踏み止まったところでそれぞれ与えて楽しませてくれる。当り前でありながら現状ではこの水準の音は決して多いとはいえない。ともかく、どんなレコードをかけても、このアンプの鳴らす音楽の世界に安心して身をまかせておくことができる。

サンスイ CA-2000 + BA-2000

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 少し以前のサンスイのアンプは、強いて類型を探すとビクターに一脈通じるような、いくぶん光沢過剰というか、かなり輝かしい派手な音の傾向があった。プリメインのAU707、607以降、次第に大きく変身を試みて成功しはじめているが、時期的にみるとこのCA2000/BA2000はちょうどその転換期にかかっていたためでもあるのだろう、CA2000には従前のサンスイの音がやや残っているし、BA2000の方は新しいナチュラルな音になってからのサンスイの音が入っている、という感じなので、両者の組合せは、互いに相補うところと、長所を相殺しあうところが微妙に入りまじっているように思える。たとえば音に一種独特の明るい艶が乗って音の表情や輪郭をはっきりさせるところは長所といえるし、反面、曲によって少々カン高い感じになったり、華やぎすぎる傾向が聴きとれたりもする。パワーアンプの方が完成度が高いので、右の傾向はCA2000の方に影響されている。

ビクター EQ-7070 + M-7070

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 3030どうしの組合せのところで書いたようなビクターのアンプの二つの傾向の中の、もうひとつの面といえる、明るく輝いた積極的な響きのよさを持ったアンプといえる。音のひと粒ひと粒が、輪郭をきらめかせて輝く感じで、こういう音はもしも基本的なクォリティの低い、音の質感の十分に磨かれていないアンプで鳴らされたとしたらやりきれないのだが、さすがに7070のクラスになれば、緻密で品位の高い質感のよさに支えられて、この明るく張り出す音は、魅力的な個性といえるレベルにまで仕上っていると思う。たとえば「オテロ」の冒頭のトゥッティや、弦楽四重奏、そしてアメリンクの声などクラシック系ではいくぶん派手やかさが目立つけれど、決して不快ではなく、またポップス系ではヴォーカルなど概して若づくりになる傾向もあるが、ともかくかなり楽しませる音がする。いわば自己主張のつよい聴きようによっては押しつけがましさもある音には違いないが、質の良さで聴かせてしまうアンプだ。

パイオニア Exclusive C3 + Exclusive M4

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たとえば入力に対する応答速度とか解像力という面からみれば、ごく最近の優秀な製品には及ばない。が、ここから鳴ってくる音のニュアンスの豊かな繊細なやさしさは、テストソースの一曲ごとに、ついボリュウムを絞りがたい気持にさせてしまう。そのこと自体がすでにきわめて貴重であることを断わった上で細かなことを言えば、それぞれの単体のところでも書いたように、繊細さの反面の線の弱さ、柔らかさの反面の音の密度の濃さや充実感、などの面でわずかとはいえ不満を感じないとはいえない。本質的にウェットな傾向は、曲によっては気分を沈みがちにさせるようなところがなくもない。ただ、そうした面を持っているにもかかわらず、菅野録音のベーゼンドルファーの音を、脂こさはいくぶん不足ながらかなりの魅力で抽き出したし、シェフィールドのダイレクトカットでさえ、意外に力の支えもあって楽しめた。アラ探しをしようという気持にさせない音の品位とバランスの良さが聴き手を納得させてしまう。