Category Archives: アンプ関係 - Page 10

メリオワ ControlCenter, Poweramp.

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 カナダのモントリオールに本拠をかまえるミュージアテックス・オーディオ社より、〝マイトナー〟シリーズの姉妹機に相当する〝メリオア〟シリーズが登場した。
 コンパクトで美しい仕上げのウッドケースに納められ、シンプルなブラックフェイスのデザイン、その垢抜けして飄々としたところが好みの分かれるところでもあったマイトナーだが、部屋の空気に自然に溶け込む存在感の軽妙さは、またカナダ版クォードともいえそうな雰囲気があった。
 今回発表されたメリオワ/コントロールセンターは、リモートコントロールユニットですべての機能が操作でき、しかも8系統ある入力をユーザのニーズに応じてメモリー可能な機能を有している点が目新しい。しかも、各入力端子ごとに、ボリュウム、バランスのレベルを個別に設定しメモリーできるという画期的なものだ。
 フォノイコライザーはなく、アナログディスクの再生にさいしては、なんらかのイコライザーアンプが必要であるが、近日中には同シリーズのフォノアンプが発売される模様だ。
 全体の仕上げはマイトナー・シリーズに一歩譲るとはいえ、このシンプルなデザインの良さには変りはない。
 試聴は、同時発売のパワーアンプとの組合せで行なったが、一聴して、相当にすっきりとした響きであり、生真面目さを感じさせるやや寒色的な響きで、音楽に真面目に向かい合うといった気分にさせてくれる響きだ。
 こうしたコンセプトの製品にはリラックスした、テンションのやや緩めの響きが多い中にあって、スケールこそやや小ぶりだがこれは辛口で本格派の音といえる。
 そういった点でも、これはかなりクォードを意識した作りではないかという気がしてくる。
 小編成の室内楽曲などでそのよさが発揮され、指揮者の意図や緑音の意図などをぼかさないのである。たとえば、新しい解釈による最近の古楽器オーケストラがもつ響きの端整さや潔癖さ、清潔感といったものに、しっかりとした音の骨格やオーケストラの構成要素をはっきりと描き出すのだ。プリアンプ、パワーアンプとも回路の詳細は不明だが、オーソドックスに真面目に作られた機械という印象が強い。
 ただ、おしむらくは、リモコンユニットのデザインと作りだ。システム全体の作りにそぐわない玩具っぽさがあって残念だ。
 リモコンで操作することが前提である以上、クォードやB&Oのように、その機能、あるいは手に持った時の質感、重さ、操作性に、えもいわれぬ馴染みのよさをもっている製品が既にあり、ぜひともみならってもらいたいものだと感じた。

FMアコースティックス FM610

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

 美しい音だし明るい音だが、それが単純な味わいではないところにこのアンプ独特の特徴があると思う。魅力的な雰囲気なのだ。このアンプを聴くと、アンプの音への美意識が、こちらの心に目覚めてくるような……何かをもっている「ドゥムキー」の演奏が他のアンプでは味わえない表情を聴かせるのである。艶っぽい弦、ピアノの音の弾力性のある独特の質感、音楽の流れや歌い方が実に滑らかで、やさしさを感じさせる。ベートーヴェンの「エロイカ」でもウィーン・フィルらしい、しなやかな艶っぽい弦楽器群の音色の魅力が、かなり本物と同質の色合いや質感で再生される。まろやかで瑞々しい木管、まばゆいばかりに輝かしく、かつ柔軟繊細な美しさを感じさせる金管の響きなど、多彩な音色の変化も敏感に鳴らし分ける能力を持つ。「オラトリオ」の歌手のなんと自然でリアルな声であることか……。暖かい肉声感がよく出るのだ。ヘレン・メリルはしっとりと美化。

スレッショルド SA/4e

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

 透明でキメの細かいサウンドは、いかにもスレッショルドのアンプらしいが、これには暖かさも加わっている。音の質感が大変魅力で、妙な表現で恐縮だが、コリコリとした独特とした歯ざわり、肌ざわりのようなものが感じられる音だ。「ドゥムキー」のピアノは快感のあるタッチで、美しく、本来優れた美音の持ち主であるピアニスト、メナヘム・プレスラーの特質がよく生かされる。ヴァイオリンの音も艶っぽくはないが、芯のしっかりした輝かしい美音だし、チェロも豊潤。ベートーヴェンの「エロイカ」ではヴァイオリン群のffにやや鋭い響きがのるが、度を超してはいない。ウィーン・フィルの艶のある音色は、やや硬質な輝きとして再生される傾向だ。しかし明るく鮮度の高い音は安定していて、トゥッティにも明晰な透明感を失わない。サン=サーンス「オラトリオ」も極上とまではいわないが、第一級のアンプであることが確認できる鳴りっぷり。ヘレン・メリルもよかった。

サンスイ AU-X111MOS Vintage

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
間接音成分が豊かで、柔らかく雰囲気の良い聴きやすさが特徴のアンプである。低域は軟調で一種独特のf特的なウネリ感があり、薄く滑らかな中域とスムーズな高域がバランスを保つが、音の緻密さや密度感は不足した音で、音楽の激しさ、力強さの表現は苦手なタイプの音だ。バスレフ方よりも密閉型にマッチしそうな音である。

テクニクス SU-C5000, SE-A5000

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 テクニクスから新時代のセパレートアンプが登場した。敢えて、新時代と書いたのは、そのプリアンプ/SU-C5000のファンクションが完全に現在のマルチプルソースインプットに対応するものであり、かつその表示のAV/TV、デジタルプロセッサー、VCR、DATなどから受ける印象によるものだ。フォノイコライザーもきちっと備えている万能コントロールアンプであるし、最近特に厳しくなったテクニクス・ブランド使用の製品であるだけに、これには松下電器の意気込みが感じられる。とはいうものの、さすがに大メーカーで、価格設定は比較的低く、プリアンプが20万円パワーアンプが30万円という標準価格になっている。
 ちなみに、松下電器のオーディオ製品のブランドである〝テクニクス〟は、このところ使用基準を非常に厳しくした。もともと、松下がオーディオコンポーネントに本格的に乗り出した時、ナショナル・ブランドでは電球や電気釜、洗濯機などのイメージが強く、オーディオ機器のような趣味の強い商品のイメージに適さないと言う理由から〝テクニクス〟というブランドが創られたのだが、これがポピュラーになりすぎて、ラジカセからカーオーディオ、小型ラジオに至るまで〝テクニクス〟が使われるようになっていた。これを濫用と認めたのであろう。昨年から、ある基準を設け(具体的には不明だが)テクニクス・ブランドを大切に、真に趣味性と高い技術の盛り込まれた製品にだけ使用するということになったのだそうである。広くは、従来から主に海外で使われているブランド〝パナソニック〟を使うことにしたようである。
 とにかく、私の知る限り、去年の新製品では、最高級CDプレーヤーに〝テクニクス〟が使われただけ。今年になって、このプリアンプとパワーアンプに〝テクニクス〟ブランドを発見したわけだが、他のニューフェイスはすべて〝パナソニック〟である。このことからしても、このセパレートアンプのメーカーとしての格付けが明確である。従来のプリアンプ/SU-A200とパワーアンプ/SE-A100の後継機として開発された製品だから、ハイクォリティ・オーディオコンポーネントであることに違いはないが、いかにもAVカラーが強いプリアンプのコンセプトに、ある種の〝こだわり〟で拒否反応のようなものも感じなくはない。つまり〝テクニクス〟がオーディオに限らず、あるレベル以上のものならばAVでもVでも使われるブランドなのだということを告げられたような感じがしたのである。認識不足であったのは私で、勝手に〝テクニクス〟は純粋にオーディオコンポーネントのためのブランドだと思い込んでいたのである。メーカーにとっては、迷惑な誤解ということになるだろうが……。
 SU-C5000は、すでに述べたように豊富な入出力にクラスAA方式を採用し、負荷インピーダンスの変動に安定したAクラス動作の電圧増幅回路が特徴である。電源には、レギュレーションのよいアクティヴサーボ電源の採用により、プリアンプとしての基本性能を確保している。
 SE-A5000は、クラスAAの電圧コントロールと、電流ドライブアンプを左右チャンネル独立とする計4台構成により純度高めている。電源には、電圧用は1個、電流用に2個の独立した3電源方式を備え、トランスには無酸素銅線による完全整列巻線法を採用し、各パーツにも最新の高品位パーツを使い、内部配線も全面的にOCC線材を使っている。パワーアンプの音に大きな影響を与える機械構造についても、電磁的にも振動的にも十分な配慮が見られるものである。現代アンプとしての最先端のテクノロジーと、テクニクスらしい緻密な技術の洗練が随所に見られるアンプで、仕上がりも美しい。
 両者の組合せで試聴した音は、実に精緻なもので、モーツァルトの「ポストホルン・セレナーデ」の第3楽章の弦合奏では、あたかも弦の数が明瞭に見えるような解像力に驚いた。やや響きが明るすぎるのと、軽い雰囲気があるが、透明感や繊細感は抜群である。
 パワーアンプを他のものに替えて試聴してみた結果、この音の性格にはプリアンプの方が支配的であることが感じられた。アーメリングの歌は少々若くなりすぎるし、胸からの力のある発声が物足りないが、きれいなことでは無類といってよい。ボザールの「ドゥムキー・トリオ」も同じように透明で限りなく美しい。あまりにきれいすぎて、現実感に欠けるほどである。中高域に独特の響きがのるためのように思えるが、この音には外国製アンプからは絶対に聴くことのない美と質感を感じる。油彩に対する水彩、動物性蛋白質に対する植物性蛋白質のような対比といったらよいだろうか……。淡くしかし華やいだ風情、あくまでこまやかなマチエール。現代技術の粋にも、こんな個性が宿る。興味深いことだ。

ラックスマン L-570

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
L540の雰囲気よく聴かせる音とは対照的に、小さく凝縮した音を特徴とするアンプだ。低域の質感は軟調傾向であり、予想よりもドライブ感が不足した、きれいでオーディオ的にまとまった音である。音場感は標準より少し狭くまとまり、間接音は抑え気味となる。それぞれの個性が活かされない、相性の悪さが音に出た例だ。

サンスイ AU-X111MOS Vintage

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
柔らかく雰囲気のよい音と、タンノイとしては広帯域型で、中域が少し薄い帯域バランスを聴かせるが、全体の印象としては少し古典的なタイプに聴きとれるところが面白い。音場感は平均的であり、やや遠くに音源のある音像の立ち方だ。プログラムソースは、個性を抑えスムーズに聴かせる傾向があり、中域の独自の硬さが原因だろう。

アキュフェーズ E-405

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
適度にコントラストが付き、プログラムソースの音を正確に再現しようとする真面目なタイプの音である。音のクォリティは高く、音場感は標準的なレベルで間接音成分を抑え気味とした、明快なわかりやすいプレゼンスである。プログラムソースの特徴を整理して自分の音として聴かせるタイプであり、ややリファレンス的な性格の音だ。

ラックスマン L-570

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
スケールは小さく、小柄な音にまとまるが、楽器の編成のあらましはわかる程度の情報量はあり、比較的自然な音場感と奥に引っ込んで定位する小さな音像が特徴。プログラムソースは、小編成の曲で、小さく凝縮してまとまる音の特徴が活かされるが、響きは抑え気味で、音楽に必要な要素を残して整理したイメージの音になる。

マランツ PM-95

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
安定感があり、平均的な要求では、立ち上がりの良い明快で適度にドライブ感のある音と、すっきりとしたプレゼンスが楽しめるスタンダードな音である。A級動作ではローレベルのナチュラルさ、生き生きとした表情の豊かさ、ベール感のないナチュラルなプレゼンスが加わり、これこそ異次元の世界の音というにふさわしい。

アキュフェーズ E-405

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
低域は柔らかく、高域が細身で、ほどよいシャープに特徴がある音だ。表情はしなやかさもあり、ローレベルのこまやかさと、中高域のキャラクターが、このアンプのメリットだろう。表情はおとなしく反応も穏やかであるが、低域はもう少し積極さがほしい。細部はよく出るが、全体のまとまりでは、いまひとつ説得力が必要だろう。

サンスイ AU-α907L Extra

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
演奏会場の豊かなホールトーンを充分に聴かせる音場感情報がたっぷりとある音が特徴。スピーカーとアンプの低域のエネルギーバランスが少し崩れ気味で、本来の安定感のある低音にならない面があり、プログラムソースにより、トータルバランスはかなり変る。「レクイエム」は適度にまとまるが「コリオラン」は雰囲気型で密度不足。

アキュフェーズ E-305

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
比較的スムーズで滑らかな音が楽しめそうな組合せであるが、相性は悪いタイプである。軟調で質感が甘い低域と、高域に向かって下降気味の高域は、穏やかなバランスを聴かせるが、反応が鈍く、プログラムソースの特徴を抑え気味にし、単調な音楽として聴かせる傾向が強い。それぞれの低域の個性の違いがポイントだろう。

サンスイ B-2302 Vintage

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

サンスイが久々にパワーアンプの新製品を出した。従来のB2301Lに代る登場である。
 このB2302は外観こそ今までのアンプに似ているのだが、中味は完全に新製品といってよい新しいアンプであって、大筋での基本を踏襲しながら、細部をつめたというだけでは説明しきれないものだ。大筋での基本というのは、サンスイがアンプ技術の基本に据えているバランス伝送、バランス増幅の回路コンセプトであり、機械構造へのこだわりである。回路と機構という二つの条件は、パワーアンプの本質的な能力を左右する基本であって、人間の体でいえば体質と骨格のようなものだ。今度のアンプは、この体質を改善し骨格をより強固なものにしたこともさることながら、いわば頭脳を鍛え、感性を洗練させるに似た改良を行なっているのである。
 まず、その第一は、パワー素子に新しくサンスイのカスタムメイドによるLAPT23/200WPcトランジスターを採用したことだ。これはすでに同社のプリメインアンプに先行採用されて、その成果が認められるもので、従来のトランジスターより格段と高い遮断周波数特性をもち、非磁性化が施された高リニアな素子である。パワー素子が変ったことだけでも、パワーアンプとしては別物といってよいと思うが、さらに回路構成の各デバイスである抵抗やコンデンサー、線材に至るまで全面的なパーツ変更が行なわれているのである。こうしたことが即、音質改善に連なるならば、アンプの新製品造りは楽なものである。よりよい物理特性をもったパーツが現われたら、その都度差換えていけばよいからだ。
 しかし、現実はそれほど容易ではない。部分変更は危険は少ないが、成果も小さい。新製品としてドラスティックな改善と、その新しい存在の必然性を生むには、より大きな全面変更を誰もが期待するだろう。アンプの性能と音質が、現在の水準のようにいいものになると、開発担当者は大変である。全面的に0から造れば、それなりに違った製品になるのは必至だが、そこにメーカーの一環したアイデンティティをもたせるのはさらに難しい。体質と骨格も維持して、知性と感性をブラッシュアップしてリファインするという、このサンスイの姿勢こそ一番効率もよく、ユーザーのためにもなり、メーカーの姿勢も好感と信頼感をもって迎えられるというわけだ。
 しかし、私としてはあの箱型の筐体とメーター廻りのデザインには若干飽きがきていて、もう少し見た目にも新鮮な魅力を盛り込んで欲しかった。オレンジの出力メーターはスイッチオフできるし、よく見て触ってみると、仕上げ、質感にも大きなクォリティアップが感じられる。各所に手の込んだ防振構造と高剛性化が施されているし、プラグやターミナル類には品位の高い製品が使われている。このアンプのための特製品だけではなく、海外製のパーツも使われているようだ。
 こうして登場してきたB2302の音は、明らかに従来のB2301Lを凌駕していることはもちろん、多くのパワーアンプの中でも存在価値の高い製品に仕上っている。サンスイのアンプで、私がもう一つ気になっていたのは、音がウェットに過ぎることだった。よさでもあったといえるのだが、どちらかというと、繊細さや、明るく、さらっとした清々しさに欠けていた。そういう音楽にも、脂肪ののった艶やかさと重厚な雰囲気で包んで鳴らす傾向をもっていたのである。冷たかったり、乾いた響きになったりするよりはずっとよいのだが、音楽には、ありとあらゆる色合いや質感の音があるわけだから、それぞれ鳴らし分けることが望ましい。すべての音響機器はなんらかの個性をもつので、程度問題なのだが、スピーカーほどではないにしても、アンプにも、支配的な音色や質感がつきまとう。この点、このB2302は一次元上がって音色・質感の鳴らし分けに鋭敏になった。一言にしていえば、より素直になったということだろう。細かな音色もよく鳴らし分けるので、音楽の繊細さが生きて、一段と緻密な再生音になった。
 8アームで480Wのダイナミックパワーを持っている大出力アンプとして、この緻密な音の質感の再現能力は見事である。そして、その力感と音の安定感は旧製品譲りのもので、優れた低域の能力に支えられたバランスのよさは、オーケストラのトゥッティの厚く堂々とした響きに十分発揮される。例えば試聴に使ったラヴェルの「紡ぎ車の踊り」などの多彩な音色の変化と充実した響きには、従来のサンスイのアンプが、ドイツ系の音楽の重厚さに聴かせたウェットさを超えた繊細感がある。また、ボザールの「ドゥムキー・トリオ」の透明でソリッドなピアノと粘っこくならないヴァイオリン。かといって決してドライではなく、演奏姿勢が毅然とした雰囲気を感じさせるような端正ささえ聴取可能になったことは大きな改善だ。優れたパワーアンプである。

マランツ PM-95

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
低域が柔らかく、高域が硬質で独特のホーン型らしいキャラクターを持つスピーカーの特徴を標準的に引き出すアンプである。基本的に無駄な広帯域再生を指向しない安定感の良い音を特徴とするメリットが活かされた鳴り方である。A級動作は音と音の間がきれいに分離して聴ける印象があり、素直でプレゼンスの良さが魅力だ。

FMアコースティックス FM810

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

 同社のFM610より即物的な味わいだが、それだけ忠実が高いともいえるだろう。一言にしていえば、透明で力のある充実した音である。精緻といってよい高音域の解像力、締まって迫力のある低域のドライブ感は、400W強のパワーに支えられた高度な安定感と信頼感をもっている「ドゥムキー」の透徹な響きは美しく、ピアノも輝かしく鋭いタッチが見事に生きるし、ヴァイオリンの芯がしっかりした、きりっとした響きには品位の高さが漂う。それだけに、もう少し脂肪っぽい艶が出れば……とも思うのだが、これはFM610の領域だ。このアンプの特徴は、これだけ解像力の良さと力を持ちながら、妙に明るさ一辺倒にならない点だ。彫琢の深さと陰縁を立体的に聴かせるのである。ウィーン・フィルは少々冷たく硬いが美しい。透明な木管、切れ味のシャープな金管、そして弦は繊細でオーバートーンが明瞭。ヘレン・メリルが少々異質で、極端に知的冷静さになった。

デンオン PRA-2000RG, POA-3000RG

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 デンオンを代表する2000/3000シリーズのセパレート型アンプは発売以来、すでに10年を経たロングセラーを誇るシリーズである。’86年末に発売されたシリーズ3作目にあたる型番末尾にZRのついた従来のモデルが、アナログ時代の集大成を示したものであったことに比較して、デジタル時代のセパレート型アンプとして開発されたモデルが今回の新製品だ。
 コントロールアンプ/PRA2000RGは、従来のZRの基本的デザインを受け継いでいるが、全体に丸みを帯びたデザインが採用され、鏡面研磨仕上げの見事な、リアルウッド・キャビネットがまず印象的である。またボリュウムコントロールのツマミには、南地中海沿岸に育つツツジ科の植物ホワイトヒースの根から造られたパイプ材料のブライヤー材を金属とサンドイッチ構造としたものを使用し、さらに深みのあるゴールド系のパネルフェイスも、従来モデルとはひと味違う雰囲気だ。
 回路構成は、フォノイコライザー部が、出力段にパワーMOS・FETを採用し、最大許容入力500mVのMM型対応のアンプをベースとして、MC型には、LCーOFC巻線の昇圧トランスを採用している。各種入力を受けるフラットアンプは、トーンコントロールアンプを兼ねた設計で、全段にMOS・FETを搭載し、入力には差動増幅、プリドライブと出力のソースフォロワーには、フォノ系と同様なPc30WのパワーMOS・FETを採用している。高入力インピーダンスと低負荷ドライブ能力を両立させた、デジタル時代のフラットアンプといえる内容だ。
 入力のCD2は平衡入力用だが、広帯域LCーOFC巻線トランス受けが特徴であり、フラットアンプの出力を受ける平衡入力段は、ディスクリート構成の新開発インバーテッドΣバランス型アンプである。
 この回路は±47Vの高電圧動作で、独自の無帰還技術を発展させた歪除去回路により、抵歪、高SN比で充分に高いダイナミックレンジを確保している。
 電源部は、整流回路にチョークコイルを使うLCーπ型が特徴で、イコライザー、L/Rフラットアンプ、平衡、出力アンプの4系統に定電圧回路で分割され、フォノイコライザーの電源はフロントパネルのポケット内スイッチでON/OFFして、CD入力時のS/N劣化を防止する設計である。なお、各種リレー表示ランプ用電源はトランスの別巻線から分離され供給される。
 筐体構造に銅板、銅メッキ鉄板、銅メッキネジが全面的に採用されているのは、同社の最新CDプレーヤー/DCD 3500RGと同じ手法である。
 部品関係では、ガラスエポキシ基板、L/R各チャンネルごとに2個のボリュウムを並列使用し接触抵抗を少なくし、高音質化する左右4連ボリュウム採用が今回の改良の主なポイントである。
 POA3000RGステレオパワーアンプは、従来の無帰還方式ピュアダイナミックパワーアンプから、新しく独自に開発された「MOSスーパー・オプティカル・クラスA」と呼ばれる方式を採用している。
 この回路は、ドライバー段の純A級動作領域を従来の10倍程度に拡大し、小・中出力時のクォリティを向上する目的で、2個のパワーMOS・FETをインバーテッド・ダーリントン接続とした回路で、これを支える回路に光素子を採用、主信号系と干渉がないバイアス制御回路からの信号をバイアス回路に光結合で送り制御すると言うハイスピード化を実現している。
 入力系は、不平衡入力が標準で、平衡入力は、平衡↔︎不平衡変換アンプ経由で不平衡入力に入るが、別系統にBTL動作入力として、平衡入力と不平衡入力を独自のインバーテッドΣバランス回路で平衡出力とする系統を備えている。
 筐体関係の外装は、PRA2000RGと共通のブライヤーサンドイッチの入力調整ツマミ、制振処理された天板の放熱スリット、明るい色調に変った出力メーターなどが特徴であり、放熱板取付分、筐体側板の鉄板、焼結合金脚部と底板間などに銅板が制振材として採用されている。
 機能面は、バイワイアリング対応の並列接続されたバナナ対応型と極太コード対応型の異なる2系統の出力端子を持ち、出力メーターのON/OFFなどが備わる。
 なお、電源は左右独立型の設計である。ウォーマップは約40分は必要である。
 MC型入力では、音場感が奥深くフワッと拡がり、音像がソフトで小さい定位感と音の粒子が細かく磨かれた広帯域型の適度にリアリティのある音が聴かれる。CD入力不平衡では、素直な表情の音で、やや芯の弱さが残り、未完成な部分がありそうな音だ。平衡入力は、素直に細部を聴かせ、プログラムの情報量に反応する速さは従来にない魅力となっている。

スレッショルド SA/6e

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

「ドゥムキー」の各楽器の音色の鳴らし分けが鋭敏で、アンプの音色が支配的でないことがわかる。粒立ちが精緻で、イシドア・コーエンのヴァイオリンのよく締まった、硬質だが滑らかな音色が美しい。ある種のアンプのように瑞々しい魅力や、味わい深い雰囲気というようなものはないが、かといって物足りない音ではない。中庸というべきなのかもしれない。ウィーン・フィルも同じ傾向で素直に再現するのだが、ウィーン・フィルらしさ……、つまり、あの、しなやかで艶やかな音、上品な華麗さの再現は若干不十分で、どこかに冷たさが感じられた。淡く明るく鳴りすぎる。くすんだ音色、陰影に乏しいのだろう。サン=サーンスの「オラトリオ」でのアルトが明るすぎるというメモがあるが、この辺も共通した特質と思われる。もう少し含みのある陰影が欲しい……というメモが続いてる。しかし、ヘレン・メリルでは艶とハスキーさのバランスもよくベースも充実。

オーディオリサーチ CLASSIC 150

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

 全体的に中庸をいく音質だと思う。つまりアンプの支配する音色や質感が強くなく、ソースの持つ音の個性をストレートに出すタイプ。それだけに強い魅力のあるアンプではないが、長期間の使用にも飽きのこない素直なアンプだと思う「ドゥムキー」のピアノの丸く輝かしいタッチと弾力的な質感が美しいし、リアリティがあって演奏表現がよく生きる鳴り方だ。暖かい音も、艶のある音も、そしてシャープでドライな質感も、鋭敏に鳴らし分けるので音色の多彩な変化が美しい。ウィーン・フィルの音色的特徴はよく再現され、しなやかな弦楽器群、特にその艶のあるヴァイオリンは素晴らしい。サン=サーンス「オラトリオ」の、各歌手の声の特徴も、適切な音色感で脂ののった滑らかな声質が大変美しいし自然。他のアンプで聴く声よりウェットだが、これが本当かもしれないと思える説得力がある。ジャズもよく弾み表情が生き生きと再現され、楽しい。再認識されたアンプである。

サンスイ AU-α907L Extra

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
タンノイ独自のコリっとした硬質な音の魅力とは異なるが、温故知新的な印象がある音場感たっぷりのプレゼンスの良さ、Dレンジ的な伸びの良さと、独自の音像定位のシャープさが共存した新鮮な感覚の音だ。大編成の曲のfffでも充分に駆動の能力があり、表情もしなやかで豊かだ。プログラムソースの適応性も広く好ましい。

サンスイ AU-X111MOS Vintage

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

JBL XPL200との相性
固有のキャラクターが少なく、素直で、むしろナチュラルな音が聴かれる。柔らかさ、しなやかさが他のアンプにない音の特徴で中域に適度な硬質感があり、巧みにバランスを保つ音として聴かせる。音場感は最低限の情報量で、音像は大きくフワッとソフトにまとまる。スピーカーとアンプの相性の良さを感じさせる好例である。

アキュフェーズ E-305

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
雰囲気のある柔らかく滑らかな音を指向したタイプである。音の粒子は滑らかではあるが、やや粗粒子型で、低域はソフトフォーカス気味の軟調であり、高域は粗い質感の音となりやすいようだ。音の表情は真面目型だが、単調な傾向があり、やや突っ込み不足の傾向がある。バランス的には中域が薄く、音場感は平面的である。

ラックスマン L-570

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

JBL XPL200との相性
L540と比較すると、スピーカーの全帯域に制動がかかり、総合的バランスはかなり自然になる。低域にスピーカーエンクロージュアの箱鳴り的な音が残るが、中域から高域は硬質で、音の芯をクッキリと出す傾向がある。音場感の広がりは最低限度で、ステレオイメージと言うには明らかに情報不足で、音像は相当に肥大型だ。

サンスイ AU-α707L Extra

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

ビクター SX-700との相性
響きが豊かでサロン風なイメージの音を聴かせる。バランス的には中域が薄く、SPのキャラクターを抑えるが、やや実体感は不足気味となる。柔らかい低域と一種の個性的な輝きを潜在的に持つ中高域は、ほどよくバランスを保つ。各プログラムソースを基本的に自分の音として聴かせる傾向が強く、小音量時にも楽しめそうな音だ。

アキュフェーズ E-405

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

JBL XPL200との相性
スピーカーに対するアンプの制動力は、E305と比べ大幅に向上し、とくに中低域を抑える効果は大きい。低域はまだ独特の個性が残るが、帯域バランスはほぼ平均的なレベルとなり、安定した印象が加わって、力強さも相当に聴きとれるようになる。音場感は最低限で左右方向の広がり感はあるが、音像は平面的に横一線型に並ぶ。