Category Archives: 海外ブランド - Page 64

SAE Mark 2500

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 一年前自家用に購入して以後も、目ぼしい製品とは常に比較してきたが、今日まで、音のダイナミックな表現力の深さ、低音の豊かさ、独得の色っぽい艶と滑らかさなど、いまだこれに勝るアンプはないと思う。日頃鳴らす音量は0・3W以下だが、そういうレベルでも音に歪っぽさが少しもなく、危なげない充実した音で楽しませてくれる。こういうパワーなら、換気に留意すればファンはOFFにして使っても大丈夫のようだ。

GAS Thaedra

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ユニークなネイミングもさることながら、あらゆる点でオリジナリティに溢れた個性的製品である。マーク・レビンソン同様、これも、ガスの社長、ジム・ボンジョルノ氏との対話のできるパースナリティである。DCサーボループ・アンプという最新の回路設計に、よく練られたサウンドの輝きが感じられ、豊かで、弾力性のあるグラマラスなサウンドである。デザインも個性的であるが、見るほどに味が感じられる。

スキャンダイナ A25MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 デンマークのスキャンダイナA25MKIIのオリジナルは、ダイナコA25としてヒットした、2ウェイ・ブックシェルフ・システムである。ソフトドーム・トゥイーターを使って成功したシステムの元祖のような製品だが、MKIIになって、未だ、その陰は薄れることがない。自然で、よく楽器の特長を生かす再生音、音の溶け合いがよく、ハーモニーが美しく生きるシステムとして高く評価できるものだ。

QUAD 33

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーディオの本質をふまえた確かな製品となると、英国のQUADは絶対にかかせない存在だろう。きわめて寡作なこの会社の唯一のプリアンプである33は、ソリッドステート化以来ずっとロングセラーを続けているモデルで、その卓抜なデザインと完成度の高い音色でかけがえがない。最先端をゆくような音では決してないのだが、同社のパワーアンプと組み合わせて最良の結果を得るのは、結局のところ、この33に行きついてしまう。

GAS Ampzilla II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 一聴して重量感と暖かみを感じさせる腰の坐りのいい、素晴らしく安定感のある音質が特長。総体に音の芯をしっかり鳴らすため、ことに高音域でも線が細くなったり弱々しくなったりせずに、悠々たる落ち着きをみせる。コンストラクションは飾り気を排したいかにも実質本位という感じで、機能に徹した作り方。

アルテック A5

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 アメリカのアルテックの代表的製品。ユニークな、フロントホーンをもったエンクロージュアには38cm口径ウーファーがおさめられ、上を500Hz以上をホーン・ドライバーが受持つ。ユニットは総てむき出しのまま。本来は、大劇場用の強力システムだが、家庭手も、優れた再生音が得られる。独特な風格あるもの。

ロジャース LS3/5A

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 超小型の、ポータブル用モニターシステムで、英BBC放送のモニター用に採用されていることは、型番からも明らかである。本来の特長を活かすためには、低域をコントロールしてあるQUADの405パワーアンプなどがドライブ用に必要であり、しかも、1m以内の近接位置で聴かなければならない。ヘッドフォン的な聴き方だけに、組み合わせコンポーネントは高品質が要求され、さもなければ、見えるような臨場感は得られない。

AGI Model 511

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 パネルフェイスは流行の薄型ではないが、機能は単純化され、トーンコントロール、フィルターはもたない。増幅系は整然としたプリントボード上に配置され、視覚的にも美しく、見るからに現代アンプらしい応答性の速い音がしそうな雰囲気が感じられる。ともかく、ダイレクトなサウンドは大変に快適である。

スキャンダイナ A-403

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 スピーカーシステムの中級機の価格帯では、一時のように海外製品の存在が目立たなくなっている。スキャンダイナのシステムも同じことで、トータルバランスが優れていることは認められても、魅力とは感じられなくなっている。これの解答とも思われるのがA403であり、構成が3ウェイ化されたことにより、中域のエネルギーが大幅に改善され、システムとしては飛躍的に向上した音となっている。注目したいシステムである。

ガラード 401

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 もう10年になる古いオーソドックスな製品であり、機能や技術的特長では、現在の国産ターンテーブルとは比較にならない。オーソドックスなリムドライヴ型として現存する数少ないターンテーブルの一つとして貴重な存在。しかし実用性能では不満のないものだし、仕上げや雰囲気ではこれを上廻る新製品は少ない。

B&W DM5

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 B&Wが自社製ユニットを小型システムに採用した最新の製品である。このシステムは、英国的といわれるサウンドから、よりインターナショナルなサウンドに変わったのが、B&Wのシステムとして際立っており、活気にとんだ、伸びやかな音を聴かせることでは、最近の海外製品中でもとくに目立つ存在である。

タンノイ Arden

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 従来のレクタンギュラー・ヨークの後継機種に相当する、英タンノイ社製のトップモデルである。使用ユニットがHPDタイプになり、とくに低域レスポンスの改善がおこなわれているため、いわゆるタンノイファンに好まれたサウンドと変化が感じられるが、より近代的な方向に発展しているのは明らかである。コンシューマー用としては量感タップリの低域は、実用レベルでは利点であり、制動を効かせるアンプ選びがポイントだ。

マークレビンソン LNP-2L

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 アメリカのマーク・レビンソンのセンセイショナルなプリアンプ。思う存分、自分の意志と力を製品に生かし、自分の名を冠して、それを売るというスピリットは日本のメーカーにはない魅力。最高級のパーツを使った大変高価な製品だが、さすがに、製作者と直接対話が可能なほど生命のある作品である。

B&W DM4/II

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 英国のスピーカーメーカーとしては、かなりユニークな存在であるB&Wの製品としては、いわば、中級機のランクに置かれたシステムである。構成は、20cmウーファーをベースとした、2ウェイ方式にスーパートゥイーターを加えたタイプであり、トゥイーターに、定評が高い、セレッション製のHF1300/IIを採用している点に注意したい。比較的に低い位置で聴いたときの、おだやかだがプレゼンスのある拡がりが好ましい。

タンノイ Eaton

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 使用ユニットHPD295Aは、30cm口径のHPD315Aと同じ磁気回路を備えた、シリーズ中最も注目すべき製品。エンクロージュアが小型で、同軸ユニット採用であるだけに、音像の定位は抜群であり、比較的に近い距離で聴くステレオフォニックなプレゼンスは、他のシステムにはない魅力である。

ヴァイタヴォックス CN191 Corner Horn

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 いまの私には、これを鳴らす理想的なコーナーを整えるという条件を満たすことができないからあきらめているが、せめていつかは、この豊潤で渋い光沢のある独特の音質をわがものにしてみたいという夢を持っている。いまやこれだけが、現行製品の中で良き時代を残した最後の生き残りなのだから。

スタントン 681EEE

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ダブルE(EE)までのスタントンの音は、腰が強いのがとりえの反面やや鈍いところがあったが、トリプルE(EEE)になってカンチレバーが細く軽量になってからは、現代の繊細なレコーディングにも適応し、本来の腰の強いしっかりした音がひとつの特徴として生かされはじめた。ポップス系に一聴の価値。

セレッション UL6

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ローボーイ型プロポーションをもつ小型なシステムである。構成は、セレッションの伝統を感じさせる、いわゆるドロンコーンを使った2ウェイ方式だが、このシステムの音色は、かなり明るく軽やかである。小型システムの弱点である許容入力は、かなり大きく、のびやかに飽和感のない音を聞かせるあたりは、新しいスピーカーらしい魅力である。

アルテック A5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 会議室や中程度のホール、またはそれ以上の広い会場で、できるだけ無理せずに楽しめる音を鳴らしたいというような条件があれば、アルテックを必ずしも好きでない私でも、A5あたりを第一にあげる。以前これを使ってコンサートツアーを組んで大成功を収めたことがある。私自身は家庭用とは考えていない。

オルトフォン VMS20E

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オルトフォンがMC型以外で最も成功した製品。専用のM型シェルと組み合わせるのが最もよいようだが、中〜低域の独特の厚みと、高域の適度の艶がうまくバランスして、ややくすんだ色調の渋い音質は魅力的だ。針圧の変化にややデリケートで、1g近辺で多少の調整が必要。出力が大きい点は使いやすく便利。

デュアル 1249

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 すでに有名な西独製のオートマチックプレーヤーである。メカニカルな動作だが、故障も少なく信頼性が高い。ダイナミックバランスのトーンアームは、見た眼には決して優れたパフォーマンスが感じられまいが、実際使ってみると、期待以上のパフォーマンスが得られる。いい機種なのである。

B&O MMC4000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ひとつ前のSP15の方が、クセもあったかわりに、あの高域の冷たい艶はゾクッとくるほどの魅力だった。MMCシリーズになってからは、周波数特性をフラットにつくるテクニックを確立したらしく、却って凡庸な印象になっているが、しかし渋いながら良い味わいを持っているところがさすが。

ルボックス HS77 MK4

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 何よりもハンディで小型、軽量であることが嬉しい。オプションのパワーアンプを組み込めばあとはスピーカーを加えるだけでオーディオシステムとしても使えるのはヨーロッパ製品ならではのことであり、いかにも38cm・2トラックらしい、ややアンペックス的な力強い音は38cmならではのスケール感である。

エンパイア 698

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 技術的データをあげれば、今や国産の高級ターンテーブルとは比較にならない。しかし、伝統的に、がっしりとしたメカニズムをもつ、エンパイアの製品だけあって、オーソドックスなベルトドライヴは、信頼性の高いもの。ダイナミックバランスのトーンアームも武骨だし、決して洗練されたデザインではないが、いかにもユニークで、オリジナリティがある。単にオールドスタイルへの憧れを超えた何かが必要なのだ。

タンノイ Devon

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 外形はEatonよりほんのひとまわり大きいだけだが、ユニットが12インチ型になっているせいか、音のスケールが大きくなり、低音の量感も増し、そのためかEatonよりも高域を素直に延ばしているので総体のバランスははるかによく、モニター的な聴き方・使い方にも十分に耐えるクォリティを持っている。