Category Archives: 海外ブランド - Page 18

フッターマン OTL-4

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 鮮度の高い音で生々しい再現である。繊細な音の分離がメカニカルにならず、質感にはみずみずしいリアリティがある。ppからffへのクレッシェンドの質感とダイナミズムの安定した盛り上がりは素晴らしく、各楽器の特色、特質が生き生きと再現される。それだけに、プログラムソースを美化することはなく、バッハのカンタータの弦は少々耳障りな刺激が感じられ、しなやかさに欠けた。しかし全体にフレッシュなさわやかさとこくのある暖かみを自在に鳴らし分ける能力は高く評価してよい。

音質:9.5
価格を考慮した魅力度:6.5

フッターマン OTL-4

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 サラッとした、非常に素直な音をもつアンプだ。基本的にワイドレンジ型で、パワーも小さいために、緻密さが不足気味だが、充分に使い込めば解決できそうだ。音の表情は、しなやか。フレキシビリティが独得の魅力で、カラーレーションが少ないのは、管球OTLらしさである。農民カンタータは少し表現が新しすぎる印象になり、幻想は軽快さはあるが、ベーシックな厚みは不足気味。基本的には、全体に雰囲気優先に音を聴かせる傾向をもつが、使い込めば、一段と魅力は引き出せそう。

音質:9.0
価格を考慮した魅力度:9.3

クレル KSA-50MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 バッハのカンタータにおけるソプラノやバリトンは柔らかい質感で、弦のアンサンブルもソフトタッチのものだ。しかし、ベルリオーズの「幻想」では一転して硬質な響きが強調され、ブラスのffなどややうるさく聴こえた。両者に共通した傾向として、意外に透明感が低く音場が平板になるのが気になった。パワーが小さいほうなので他のクレル製品と同等に述べることはできないが、音質的には小気味なよさに止まるようだ。ジャズのピアノは愛らしいが、輝やき艶っぽさ、そして力感に欠ける。

音質:8.8
価格を考慮した魅力度:8.8

クレル KSA-50MKII

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 ナチュラルな反応を示す、素直な音のアンプである。聴感上の帯域バランスは、安定感があり、さして広帯域ではないが、作為的な音が聴かれないのが特徴。音の粒子は、300Bの後に聴くと粗く感じられるが、水準以上のものがあり、適度に伸びやかで、雰囲気よい音を聴かせるのは、50W+50Wというパワーステージの素直さが出ているようだ。試聴では、少し音の薄さが残るが、コード類の選択で簡単にクリアーできるだろう。完成度はMKIIで上がったが、少し鮮度感は不足か。

音質:8.7
価格を考慮した魅力度:8.7

ネイム・オーディオ NAP250

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 この価格帯の中に入るセパレートタイプのパワーアンプとしては、少々、場違いの観をもたざるを得ない。メーカーのコンセプトも、もっと実質的、合理的なところにあるのではないか。作りからも音からも、そう考えざるを得ないアンプである。帯域のナローレンジ感が気になるが、その中ではよくまとまったバランスだと思う。中域がもう少し充実すればさらによいのだが。聴きやすい音で、再生音に対して、ある種の諦観をもった上でのオーディオ製品のように感じられてしまった。

音質:6.5
価格を考慮した魅力度:7.0

ネイム・オーディオ NAP250

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 ややナローレンジな帯域バランスと、硬質に縮小したスケールで、音を聴かせるアンプである。リン/LK2と同様にアースをとると、音は変化するが、変化幅はこちらの方が少なく、表情に少ししなやかさが加わり、まとまりが良くなる印象だ。プログラムソースとの対応は、アンプの個性が強く、ひとつの独自の音として聴かせるタイプ。その意味では、情報量は少ないが、巧みに作った聴きどころをおさえた音である。CDをどのように聴くかが選択の分岐点になる。

音質:8.2
価格を考慮した魅力度:8.6

マイケルソン&オースチン TVA-1

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 説得力の強い音である。もうどれだけこのアンプを聴いてきたかしれないが、その度に、この熱い音には魅せられてしまうのである。脂ののった、艶と弾力性のある音の質感は透明感も併せもっていて、音像がリアリティをもって迫ってくるし、音場の見透しもよい。こういう音を聴くと、異文化の香りに魅せられていく自分を常に発見することになる。抜けのよい音が、さらに火照りをもっているからたまらない。エキゾティックにしてセクシーなのだ。しかし時として少々疲れる音ではある。

音質:9.8
価格を考慮した魅力度:9.5

マイケルソン&オースチン TVA-1

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 柔らかい低域と、少し硬質な高域が、独特のバランスを保ち、程よく湿りのある、黒のベルベットの質感を思わせるような艶やかさが特徴である。音場感的なプレゼンスは左右方向の拡がり、前後の奥行きを水準以上に聴かせるが、スピーカー中央が充実した、いわば3点モノ的な独特のプレゼンスがユニークである。プログラムソースとの対応は、雰囲気よく、それらしいプレゼンスで聴かせる。個性型の反応が面白い。減点法には弱いが、これならではのオーディオ的魅力は大したものだ。

音質:8.6
価格を考慮した魅力度:9.5

オーディオリサーチ D-70

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 ソフトな肌ざわりを感じさせる音は快い。決して力強い響きではないが、きめの細かさが音楽表現の機微をよく伝える。バッハのカンタータでのドゥエットや弦合奏、そしてチェンバロの細やかなニュアンスが小じんまりとした雰囲気で伝わる。大方のアンプではもっと明るくスケールが大きく再現されるのであるが……。ベルリオーズの「幻想」ではこの点でややインパクトが弱い。ジャズでも、個々の楽各の質感のデリカシーはよいのだが、もう一つ力強い表現が欲しかった。

音質:8.0
価格を考慮した魅力度:7.5

オーディオリサーチ D-70

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 基本的には、ゆったりとした安定感のある、良い意味での油っこさを適度にもつ音が特徴のアンプである。帯域バランスはナチュラルで、音色は少し暗い面があるが、本来はもっと明るいはずだ。プログラムソースとの対応はかなりナチュラルで、今回の試聴のように、音質対策をしたピンコードやSPコードを使わなければ、よりこのアンプの魅力が引き出せたはずだ。このクラスの管球アンプとしては、UTY5、TVA1との対比が非常に興味深く、それぞれに使い込みたい製品である。

音質:8.5
価格を考慮した魅力度:9.3

QUAD 510

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 それほどスケールの大きさはないが、帯域内は実に緻密である。端正さはQUADらしい気品ともいえるもので、さらっとしていてドライではない。人の声の質感には適度なぬくもりを感じさえする。しなやかな弦楽器群、そして繊細なチェンバロのハーモニックスの響きも自然な美しさである。「幻想」のppの細やかさから、トゥッティの分解能の優秀さを示す力感は、ある枠内ではあるけれど十分な実力といえる。欲をいえば、ジャズのピアノにももう一つ粘りが欲しいが……。

音質:8.4
価格を考慮した魅力度:8.5

QUAD 510

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 音の輪郭をクッキリと、エッジを立てて聴かせる硬質な魅力のある音が特徴である。基本的には、適度にアクセントをつけて音を聴かせる個性的なアナログらしいまとまりをもつのが魅力だろう。音場感的な拡がりは、このクラスの水準に留まるが、音像はカッチリとまとまり、輪郭のシャープさが特徴。農民カンタータは硬質で、クッキリとした音を聴かせ、幻想は骨組みをシッカリと聴かせるが、ゆとりは少なく、レコード的な音にまとまる。サイド・バイ・サイドは少し整理しすぎか。

音質:8.4
価格を考慮した魅力度:8.8

カウンターポイント SA-12

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 ひろびろとしたレンジ感をもち、屈託なく鳴りきる快い再生音である。きめの細かい繊細な高音域が瑞々しい雰囲気と、鮮度の高い音の印象を与え弦合奏の美しさは特筆に値する。歌も自然で、細かい唱法の機微もよく聴きとれる分解能のよさを持っている。大編成のオーケストラの音色の分離識別、全体の溶け合いもよくバランスし、空間再現性も優れている。俗にいう抜けのよい音で、ジャズのリズミカルな動き、ピアノの絶妙なタッチの変化による音色の鳴らし分けも優秀だ。冴えている。

音質:9.0
価格を考慮した魅力度:8.5

カウンターポイント SA-12

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 ナチュラルな帯域バランスと、滑らかさとクッキリさが両立したプレゼンスの良さが特徴である。全体に音のまとまりは小さく、箱庭的であるが、むしろ良い意味でのカセット的といった性質が面白い。農民カンタータは、少しナローレンジ的なまとまりで、全体に演奏のテンポが速く感じられ、やや狭い場所の演奏となる。幻想は一見スッキリ型でまとまり良く聴かせるが、スケールが小さい。サイド・バイ・サイドは曇り空の雰囲気だ。聴かせどころをおさえたアンプ。

音質:8.1
価格を考慮した魅力度:8.5

ロバートソンオーディオ 4010

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 よく楽器を識別して再生する、濁りと誇張のない音。ソプラノ、バリトンの音色の特徴が素直に再現され、歌い手の声質に忠実だ。弦合奏も分離よく、しかも調和もとれて快い。音像のエッジは明確でシャープだが、全体に音の質感が冷たくなることはない。ベルリオーズの「幻想」ではオーケストラのスケール感もよく出るし、空間の見透しが利いて気持ちのよい響きだ。音色はやや明るさが勝つほうだ。ジャズのベースはよく弾み、リズムが生き生きと躍動的。力と豊かさがあり重くない。

音質:8.5
価格を考慮した魅力度:8.0

ロバートソンオーディオ 4010

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 全体に音を整理し、スッキリと小さく、まとまりよく聴かせる個性型の音が特徴のアンプだ。聴感上の帯域バランスは、ハイエンドとローエンドをシャープにカットしたような端正なバランスをもち、低域の量感、伸びやかさはミニマムではあるが、芯のクッキリした点が特徴だ。中低域は、量感は水準だが、柔らかく、プログラムソースによっては、少し線が太く感じられる。基本的には、従来の海外製品にない珍しい個性をもつユニークさが特徴だが、まとまりが良く、安定感がある。

音質:7.9
価格を考慮した魅力度:8.5

ハフラー DH-500

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 そこそこの力感をもって効果的に派手めな再生音を聴かせるが、質感が薄手である。バッハのカンタータにおけるソプラノは美しく華麗だが、少々キラキラと人工的な色彩感がつき過ぎるし、バリトンの声の幅と重さが十分ではない。弦合奏も音が少し薄いので、高域が浮き気味で安定感に乏しいのである。ベルリオーズの「幻想」では相当に華麗な効果が盛り上がり、輝かしいイメージだが、やはり、ソリッドネスの不足、帯域バランス上の中低域不足が出て迫力として不十分。

音質:6.8
価格を考慮した魅力度:6.8

ハフラー DH-500

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 まとまりの良さが最大の魅力のアンプであるが、今回の試聴では、全体にスケールが小さくなり、音色の明るさ、表情の伸びやかさが出ず、柔らかく、聴きやすい音の範疇に留まっているのが残念だ。農民カンタータは中高域にキャラクターがあり、声は全体に鼻声になり、音源が遠く感じられる。幻想は抜けが悪く、コンサートホールの拡がりを感じさせる響きが薄く、ディフィニッションが不足気味であり、音像がクリアーに立たない。信号ケーブルなどを選択して鳴らしたい印象だ。

音質:7.7
価格を考慮した魅力度:8.3

メリディアン MPA

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 第一印象として感じられるのは、質感の木目の細かさである。帯域が広くてもそれを感じさせないのか、逆に狭くても、ワイドレンジに感じさせるのか? つまり、人為的な物理特性を感じさせない自然な音をもったアンプだと思う。粒子の細かさは印象的だが、しかし、滑らかで粒子を感じさせないほどには細かくないとも言える。個性のある魅力的な音ということになるだろう。なにを聴いても、この質感で聴かせながら、嫌味として気にならないという個性派アンプといえるだろう。

音質:8.5
価格を考慮した魅力度:8.5

メリディアン MPA

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 個性的な音を特徴とするヨーロッパ系のアンプのなかでは、キャラクターが少なく、現代のオーディオシステムのなかでのアンプの占める位置付けを心得たような雰囲気のあるサウンドが、このアンプの進んでいる点である。ナチュラルな帯域バランスと中庸を心得た素直な音場感の再現性、音像定位感など、基本特性を押えたアンプらしい音を聴かせるあたりは、欧州系アンプのなかで、新鮮ささえ感じさせる魅力だ。音色に少し暗い面があり、低域が少しゴリッとするのは、試聴条件ゆえか。

音質:8.1
価格を考慮した魅力度:8.8

QUAD 405-2

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 一言でいえば、端正な音である。ぜい肉のないスリムな感じの締まった音で、それだけに、ソプラノなどはやや硬質に響く。フィッシャー=ディスカウのバリトンも、やせ気味な印象はある。しかし決して、フラットでウェットなだらしなさが聴かれないので、気品がある。幻想交響曲のオーケストラの質感も緻密で、明晰な分解能に支えられソリッドである。ブラスの切れ味も鋭い力感のあるものだ。ジャズはやや硬質でドライな印象だが、切れこみのよい力のある音が演奏の躍動感を伝える。

音質:8.0
価格を考慮した魅力度:8.0

QUAD 405-2

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 パワーアンプ単体で、CDをプログラムソースとして聴く、といういつもと違った条件で聴いても、QUADは、あくまでQUADという音を聴かせる点は、非常に個性派のアンプの実証である。聴感上の帯域バランスは、少しナローレンジ型で、やや硬質で、適度に音に輪郭を付けて聴かせるため、安定感はあるが、ステレオフォニックなプレゼンスは、音像ともどもアナログディスク的にまとまる。上手に使えば魅力の引出せそうな音だが、JBL4344との相性の悪い好例。

音質:8.3
価格を考慮した魅力度:8.9

リン LK2

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 こまやかな質感が魅力的で、はなやかな味わいのある音を聴かせてくれる。弦の音の質感もしっとりしていて、適度な鮮やかさを聴かせるし、ヴォーカルもうるささのない自然な感じで聴ける。チェロの響きが明るく、しなやかで、生気のある表現がよく生きていた。金管は華麗で効果的で緻密感のある快い音である。60Wのパワーとは思えないスピーカーのドライブ能力をもつているが、決してスケールの大きい音とはいえない。単体パワーアンプとして新しく異端児的な存在に注目。

音質:7.8
価格を考慮した魅力度:7.8

リン LK2

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 柔らかく細やかで、滑らかさのある音を聴かせるが、音の細部が聴きとりにくく、とくに低域の質感のあいまいさが安定度を欠き、いわばカセットデッキ的に聴きやすいが、プログラムソースの特徴が再生できず、音場感的な情報量の不足が気になる音だ。ここで筐体のアースを完全にとり、再び音を聴く。この変化は、当然のことながら、聴感上のSN比が改善され、一転して適度に硬質さのあるスッキリと見通しのよい音になる。力強さは望めぬが、ローレベルの音は一種の魅力だ。

音質:8.0
価格を考慮した魅力度:8.8

カーヴァー M-200t

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 おだやかで、安定した聴きよい音のアンプである。どちらかというと中域に印象がいくナローレンジの感じで、ハイエンド、ローエンド共に物足りなさは残る。どことなく冴えた感覚が生まれない欲求不満気味の再生音ともいえる。それだけに破綻はなく、どんなプログラムソースにも妥当な再生を聴かせてくれる使いよさがある。これでレンジの広さと、音の鮮度が加われば、価格的にも安く、合理的で堅実な製品として魅力が出てくるのだが、このままでは音楽の美しさが不十分だ。

音質:6.8
価格を考慮した魅力度:6.5