Category Archives: 海外ブランド - Page 15

ソナス・ファベール Minima

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 アコースティックな楽器がもつ音色感の変化に対する描きわけに、独特の緻密さがあり、しかもその色一つ一つにある種の強さが感じられる点が、総じて淡白な国産スピーカーにはない魅力である。濡れたような質感と艶は、クリアカラーの吹きつけ塗装をしたみたいな光沢をつけ、この点が好みの別れるところかもしれない。エンクロージュアの作りのよさが、響きのよさに正しく反映されており、弦やピアノをよく歌わせてくれる。低域の量感はミニマムだが、不思議によく歌う性格の明るさに助けられ、音楽を楽しく聴かせててくれる。ディティールの描写力もあり、あいまいな音楽性という言葉で、情報量という絶対的物理量を誤魔化さない真面目さも併せもっている。

プロアック Response2

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 高級システムには、専用スタンドは不可欠な存在であるが、ここではターゲットオーディオ製のスタンドに組み合わせての試聴となった。
 基本的には、音が柔らかいタイプではあるが、抑え気味の低域と、硬質で線をクリアーに描く高域が合さった、個性の強い音である。ただ、硬く強度が十分ののエンクロージュアと柔らかいウーファーコーン、それに個性の強いスタンドの組合せを考えると、当然の結果と納得できる。
 プログラムソースとの対応は、スピーカーの個性が強く、ひとつの音の姿、形として聴かせるもの。今回の試聴用CDプレーヤーとアンプは、このシステムにとっては最も好ましくない組合せの典型といった音である。

スペンドール SP2/2

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 しっとりとしなやかで軽く、雰囲気の良い音を聴かせるシステムである。
 聴感上の帯域バランスは、柔らかくしなやかな低域をベースにしながら、やや中域を抑えた、少し線の細い適度にスパイシーな伸びのある高域がバランスを保つといった、2ウェイシステムの典型的なまとまり方である。
 試聴はビクターのスタンドを流用したため、ややスピーカーが高い位置になり、中低域の残響成分をたっぷりと聴かせるあたりのエネルギーが少ない。音場感はスピーカーの奥深く距離感をもって広がるタイプで、音像は小さい。プログラムソースに対しては、雰囲気良くキレイに聴かせるタイプであり、巧みな仕上げだ。

推薦

インフィニティ Modulus

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 ローインピーダンスでハイパワーアンプでないと鳴らないという風評だったが、常識的な音量で聴くかぎり、とくに破綻をみせることはなかった。というより、僕はこのスピーカーはやや音量をしぼって、しんと静まりかえったプライベートな空間で楽しむべき存在だと聴けた。なにしろ麻薬的に音がやわらかであり、ハイエンドが繊細なのだ。これほど傷つきやすく損なわれやすい個性は昨今めずらしく貴重だ。うっかりすると寝ぼけた音と誤解されそうなほど、音の輪郭、エッジは淡くあやうい。けだるくアンニュイな、まるで陽炎のような音の漂いにそっと耳をそばだて、やわらかな空気に浮ぶような浮遊感に遊ぶのも、またひとつの行き方だと納得させられる。

チャリオ HiperX

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 独特の軽快さと華やかさをもった、アンバランスの魅力とでもいえる不思議な個性と雰囲気をもったユニークなシステムである。
 聴感上での帯域バランスは、やや腰高で膨らみのある低域から中低域は線が細く、華やかな印象の高域にやや偏った音を聴かせる。ただしこれは、分厚いソリッド材採用のエンクロージュアの響きの良さに助けられたもので、このシステムの大変に興味深いところでもある。
 この帯域バランスは、左右スピーカーの角度を過剰に内側に向けその交点の外側で聴くといった、古くから欧州系で使われる設置方法をとれば、自然な帯域バランスと見事なプレゼンスが楽しめる設計なのだろう。

推薦

セクエラ Metronome7 MK II

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 海外製品としては比較的個性が少なく、ストレートな音を聴かせる特徴がある。
 聴感上での帯域バランスは、ややナローレンジではあるが、中域の量ともども巧みにコントロールされている印象がある。国内製品の場合とは少し異なるが、正確に反応を示し、音として聴かせる面は大変に興味深いところである。
 プログラムソースに対しては、適応性の広いメリットも注目したいところである。やや淡白な表現ではあるが、ヴォーカルのサ行、カ行の発音のまとまり、キース・ジャレットの雰囲気をマクロ的に描き出す、聴かせどころを抑えた音作りの巧みさは、この曲ならどう聴かしてくれるか? という楽しさがある。

プロアック Response 2

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 サイズやユニット構成からすると割高感もあるだろう。しかし近年の注目株だけに、かなり手なれた作り手の存在を感じさせる、したたかな製品だ。モニター的な分解能の高さと耳あたりの良さを両立させ、上品によくのびた高域と、類型他製品に散見する、ポリプロピレンくさい響きをよくコントロールした低域が、巧妙にバランスしている。各楽器の音像サイズが、音程で不自然に小さくなったり肥大したりもせず、演奏のデリケートな陰影感を端正に提示するあたり、価格を納得させるものがある。
 ソフトドーム型のトゥイーターは、一見、スペンドールそっくりだが、随分と鳴り方が違うものだ。

ワーフェデール Coleridge

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 音の輪郭の線を太くクッキリと描きながら、硬質な音として納得させるだけの説得力を持った個性的なスピーカーである。
 聴感上の帯域バランスは、とくに問題を意識させない安定したバランスであり、とくに中域の薄さが感じられない点が、このシステムの特徴である。硬く、やや乾いた面もあるが、とくに目立つ固有音や付帯音がなく、十分にコントロールされているため、ヴォーカルでのサ行、カ行の発音や息つぎの音も不自然とならない。楽器の演奏される空間の再現能力なども、サッパリとしたプレゼンで聴かせるだけの力を持っている。しかし、ジャズなどのプログラムソースには、反応の速さ、過渡的な音の再生といった点にやや不満が残る。

ワディア System 2000(WT2000 + 2000SH)

菅野沖彦

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 DSPによるデコーディングコンピューターでCD再生に大きな反響を呼んでいるワディア・デジタル・コーポレーション。ウィスコンシン州ハドソン市にあるこのコンピュータ技術集団は、現在までに俗にD/Aコンバーターと呼ばれるデジタルプロセッサーだけを作ってきた。同じDSPによるデジタル/アナログのプロセッサーを作るクレルが、CDプレーヤーとしてディスクトランスポートも同時に発売したのとは対照的だ。それは、クレルがオーディオメーカーを母体としてスタートしたのに対して、ワディアの方はコンピューター技術集団を母体としていることによる。デジタルテクノロジーというハイテクノロジーの産物であるCDプレーヤーだが、その実、プレーヤーのメカニズムの音への影響は大きく、ディスクトランスポートの諸々の機械特性は年々重要視されている。つまり、ある意味では、ローテクといってもよいオーソドックスなメカニズムをおろそかにしてハイテクのエレクトロニクスだけに頼っていては高品位な音の再生は難しいことがわかってきたわけだ。したがって、エレクトロニクスに並はずれた高度な技術をもって臨んだワディアとしては、それにバランスしたクォリティのメカニズムを作る体質が自社に備わっていないことを十分知っての上の慎重さであったと私は見ていた。ワディアのハイテクは今さら説明するまでもないが、〝フレンチカーブ〟と称する独特のデコーディングアルゴリズムのソフトウェアで駆動される高精度コンピューターによる信号処理に加え、昨年末にはさらに、これにラグラジアンとスプライン、ポリノミアルという2つの多項式を重畳したプログラムを実現し、ソフトウェアのヴァージョンアップを果し〝デジマスター〟という商標で発売している。その高い演算速度のDSP処理はただ単に数学理論に優れた技術成果だけではなく、多くの困難な機構設計技術の成果の結果でもある。
 また今回さらに、アナログ回路の出力バッファーアンプに〝スレッジハンマー〟と称されるモジュールがグレードアップ用に用意され、試聴に際してはこのモジュールが組み込まれた、現在のところトップに位置する状態のものを聴くこととなった。
 ワディアの製品が、その一つ一つのパーツ、ディバイス、基板、シャーシ構造に桁はずれの高品位ぶりを見せるのは、決して高級品のための高級指向ではないのであって、材料、機械加工の全ては性能を得るための必然なのである。
 2000SHの筐体は、アルミのムク材から削り出した航空機用コンピューター規格と同級のハイグレードなものだが、これを見ても、同社が安易にプレーヤーメカニズムに自ら手を出すはずがない……というのが私の観測であった。
 ワディアWT2000は、このような状況の中で登場したわけであるが、実は、このメカニズムをエソテリックのP2を原器とするものである。例の大型テーパードクランパーでCDを圧着して回転する高安定度を誇るメカニズムで、レゾナンスや耐振性に配慮のいき届いた好設計であり、精度の高い仕上がりでもある。P1をオリジナルとするP2は、すでに本誌でも度々紹介され、現在最も優れたCDプレーヤーメカニズムの一つとして定評のあるものだ。コンピューター技術集団にとって、この開発はリスキーだし一朝一夕にいくものではない。ティアックからこれを買うことにしたのは、(一般のOEM供給のメカからすると目の玉が飛び出るほど高価なはずだが……)卓見である。
 P2を元に、さらに機械的制動を施し、ワディア仕様のエレクトロニクス設計を加えたものだが、最大の特徴は次の二点といえるだろう。まずはドライブ系と制御系の独立した二電源トランスを外に出しセパレート仕様としたこと。そして、これが最大の特徴だが、ワディア独自のプロ規格STターミナルによってAT&T社製の高精度高効率の50Mbits/S、850nm波長グラスファイバー出力素子の光出力を取り出せることである。従来は、この光入力専用に作られたデコーディングコンピューター/2000側に通常のEIAJ光出力を変換するトランスミッター(デジリンク30)を必要としたが、WT2000を使う場合は直接、2000SHに入力できることになる。試聴はこの状態でおこなった。
 そのサウンドの素晴らしさは、圧倒的であったというほかはない。広がりと奥行きが一回りスケールを増し、細部のディテールは一段と明晰さを増した。楽音の感触の自然なことは、同社のDACの魅力であったが、このプレーヤーの使用で、さらに緻密で繊細になる。かつてこんなに肌ざわりのよいCDの音を聴いたことがない。ウィーンフィルのしなやかで艶と輝きに満ちたあの音が、こまやかな音のひだの陰までもが聴けるかのようで、まるで宝石箱をひっくり返したような美音の饗宴に呆然とさせられた。この空間感の透明さと深々とした暖かいプールエフェクトを明らかに並のCDプレーヤーとは、異次元の音響的境地であり、音楽世界であった。

インフィニティ Modulus

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 本機は、サラッとしたクォリティの高い音と、見通しの良い清澄な印象のプレゼンスを持った音場感、そして小さくクリアーな音像定位を聴かせるスピーカーシステムである。
 聴感上の帯域バランスは、基本的には広帯域指向型のまとまり方で、低域と高域バランスは、音色、リニアリティ、SN比などで十分に追い込んで作られたようだ。とくにローレベルでの再生能力は聴きどころで、ヴォーカルの声を抑えたところの表現の素直さ、モーツァルトのヴァイオリンの弦と弓が当たる瞬間の音などを、かなりリアルに聴かせる。システムとしてのSN比が非常に高く、音場感は見事である。

特選

アコースティックエナジー AE2

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 超重量級の内部をダンピングした鉄製スタンドと組み合わせた、ダブルウーファー採用の91dBの出力音圧レベルを誇る2ウェイのスピーカーシステムである。
 基本的には、柔らかくしなやかで、雰囲気のよい音を持っているが、音量が上がるに従って、加速度的に音のエッジがクリアになり、一種のダイナミックエキスパンダーのような力強い音に変るのが、このシステムの音のキャラクターである。
 聴感上の帯域バランスはナチュラルタイプで、柔らかい低域と線が細くシャープな高域は、低音量時の音からすれば、システム自体は素直で、かなり質的にも高いものがあるように思われる。

BOSE Model 501SE

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 ボーズ独自の3点セット方式の本機は、設置方法で結果が大きく変る。今回は左右スピーカーをチャリオ用のスタンド上に、ベースボックスはダクトを上にして左右の中央に置くセッティングである。
 聴感上のバランスは、低域から中低域にかけては少しディップ気味のバランスである。しかし、固有の付帯音が少なく、小口径フルレンジユニットならではの活き活きとした音離れの良い音は、柔らかく深みのある低域に支えられて、力強く豊かだ。予想よりもしっとりとした音を聴かせるのは、木製スタンドとアンプ系のバックアップが大きく効いているようである。ソースにはしなやかに対応し、音楽の外側をしっかりと掴んで聴かせるマクロ的な魅力は大きい。

特選

アカペラ Fidelio

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 専用スタンドの背が高く、音が上方から降りてくるような感じだが、それにしてもよくひろがる雰囲気の良い音だ。声のもつエネルギー感がやや薄くなるものの、これがむしろ僕にとってはよい方向に作用して、春の霞たなびく、といった独特のエコー感とあいまって、情緒的でしっとりしたニュアンスが堪能できる。ふっくらした低域の支えも充分で、うっすらと甘い弦の艶や、弾力性のあるピアノの質感は、素直な自然さが感じられ、わざとらしさがない。ドイツにもこんなにマイルドな音があるのだと、越境的に変化するオーディオの個性より、やはり作る人の個性の差の方が大きくなりつつある、昨今のオーディオ界を暗示する象徴的な作品。

JBL XPL90

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 ややスケールは小さいが、ほどよくメタリックなスッキリとした、明るく、伸びやかな音を聴かせるスピーカーシステムである。
 聴感上の帯域バランスは、やや腰高で柔らかく、反応の速そうな低域と、輝かしくシャープな高域が、2点バランスを保つという、いかにも2ウェイらしいまとまり方である。ただし、低域の量感はミニマムのレベルにあるため、聴き方を変えれば、いわゆるモニター的な印象を抱かせるところが興味深い点だ。プログラムソースとの対応はかなりしなやかに適応性を示す一方、しっかり自分の音としてまとめて聴かせるタイプである。本機は楽しい音を聴かせる魅力を備えているが、組み合わせるアンプ選びはそれなりに難しそうだ。

推薦

ネイム・オーディオ Nac63, Nac72, Nap90, Nap140, Hi-Cap

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 1974年、ジュリアン・ベリカーという一人のオーディオマニアの手によって設立されたネイムオーディオ社は、現在英国のソールズベリーに64名のスタッフを擁する工場を持つに至っている。
 かつてコンパクトでこざっぱりしたデザインを持つプリメインアンプのNAIT2を目にした時、新鮮な驚きを覚えたことを思い出す。スリムなアルミ引き抜き材を使った堅牢なシャーシは、新しいプリアンプ/NAC62及びNAC72にも継承されている。目をひくのはフロントパネルのネイムのロゴで、バックライトによって文字の厚み部分が鮮やかなグリーンで照明され、文字そのものが黒いパネルから薄く浮き上がったように見える。ファンクションの文字が同様に見えるとなおよかったのだが、残念ながらブラックのままなので、逆にこの部分はかなり見にくく、しっかりと光りをあてたいと、何が何処にあるのかさっぱりわからない。
 入力はフォノ(MM、MC、およびリンKarmaとTroika専用のモジュールがある)、AUX(入力感度調整可能)、テープ(NAC72はテープ二系統)、チューナーの4回路をもち、一般的なRCAピンプラグではなく、以前のクォードの製品のようにDINプラグを採用している。
 プリアンプは両者とも内部にパワーサプライを装備していないため、実際の使用にあたっては、今回同時にご紹介するパワーアンプ/NAP90およびNAP140から専用の接続ケーブルで電源の供給を受ける。これは4ピンのDINプラグを持つケーブルでシグナルラインもその中に含まれ、電源と音楽信号は同一ケーブル内に同居する格好である。
 一方、オプションの電源ユニットHI-CAPを追加すれば、より一般的なプリアンプとしても使用可能だ。
 さて、価格順にNAC62とNAP90のペア、次にNAC72とNAP140、そして最後にプリアンプを単体電源のHI-CAPで駆動した音を順番に聴いていった。スピーカーは本誌リファレンスのJBL4344とはせず、この組合せでより一般的なものとして考えられる製品を選んで行なった。
 やや硬質の質感をもつ真面目な音作りで洒落た感じというよりは、見た目のとおり沈思黙考型の響きとでもいいたくなるような、無駄な光沢感を抑制した地味な印象を受ける。上級機ではさすがにスケール感の拡大を示し、音像にも立体感が徐々につきはじめる。別電源の使用では、さらに音場の広がりがぐっと奥行きを増し、このクラスとしては標準的なまとまりを見せてくれた。

エレクトロボイス Sentry30

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 低域抑えた、やや音の粒子が粗い硬質な音の聴かれるシステムである。試聴には、ビクター・SX500II用のスタンドを流用したため、音軸が聴取位置と合わない面もあるようで、むしろ、壁面にピッタリとつけたセッティングをして、このシステムの持っている全域型シングルコーン的メリットを活かせる方向がいいと思われる。
 聴感上での帯域バランスは、低域のレスポンスが抑えられ、エネルギー的にも余裕がないために、直接音成分が多く聴かれ、カ行やサ行の発音が乾き、ザラツキ気味になりやすく、それは4種類の試聴用プログラムソースに共通の結果である。聴取位置がSS試聴室左側奥のため、定在波による影響と考えても、不可解な音である。

ミッション 781

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 音の輪郭の線を太く描き出し、一種独特の抑えの効いた個性の強い音を聴かせるスピーカーである。
 聴感上での帯域バランスは、やや重く暗い印象の低域と金属的な輝きのある中高域がコントラストを保つタイプである。全体としては、ややナローレンジであるが、中域のエネルギーを抑えた2ウェイならではのまとまり方だ。
 プログラムソースに対しては、このスピーカー独自の個性が強く、積極的に使いこなす場合には、組み合わせるアンプの選択が最大のポイントとなりそうだ。その意味では、今回試聴に使ったアンプは、スピーカーの個性とは対極をなすもので、水と油の印象がつきまとい、残念な結果となった。

NHT Model 1

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 鈍いスピーカーでは、とってつけたように人工的なエコー感でべったりとおおわれたようになる録音でも、嫌味なく再生しうる透明感がある。
 音の輪郭は硬質だが線が細いために固いという印象にはならず、むしろ繊細でやわらかなイメージをつくっている。声には、淡白さともいえる微妙なニュアンスもでかかっていた。
 音像の実体感を強調するより、全体の響きの綺麗さをねらっているようで、たとえば、シンバルのアタック感は弱まるが、パッと水面に石を投げ込んだ時にひろがる波紋のように、ディスパーションをとても爽やかに表現していた。サックスの響きは、やや上品すぎるか。

アコースティックエナジー AE2

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 プロアック同様、イギリスの注目株。顔つきは正反対で、真っ黒けでそっけないが、音は見かけによらず無骨さは微塵もない。一見スタティックな面があるや、とおもわせるほど、響きに定着感のよさがあり、ブレたり浮き上ったりしない、安定した音像定位が得られる。情緒的な色艶をやや抑制するが、各楽器のまわりには曖昧なもやつきがなく、すっきりと広がる響きのディスパーションパターンが綺麗に再現された。やわらかい音はやわらかく、硬い音は硬く、きちんと描き分けることのできる数少ないスピーカーで、どちらかに偏る傾向もない。
 ニュートラルなモニターとして有用。家庭用としても見た目を気にしなければ特選。

NHT Model 1

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 本機は軽量級の柔らかい、それなりに反応の速いしなやかな音を聴くことのできるスピーカーシステムである。
 基本的には、やや腰高な柔らかい低域と滑らかではあるが適度にスパイシーな輝きのある高域が魅力で、薄味な面はあるが聴きやすい音が特徴であろう。
 プログラムソースに対しては、少し距離感を隔ててスピーカーの奥に音場が広がる。また、音の輪郭を細く滑らかに聴かせ、直接音成分よりも間接音成分を多く引き出す傾向があるため、クリティカルな表現よりも、それなりに、軽く聴くための音にまとめてあるのがメリットといえる。しかし、組合せのアンプの選択は、意外に苦労させられそうな印象である。

推薦

スペンドール SP2/2

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 やや箱の響きが重いと感じる。特に中低域から低域にかけてややボンつくようなこもり感が、どうしても気になってしまう。たぶん試聴で使用した置き台との相性、あるいはアンプやCDプレーヤーとのマッチングが致命的に悪かったのかもしれない。弦も響きがドライで、ピアノも左手の低い音域がかぶり気味になる。アタックののびも頭打ちで平板なのだ。こんなはずはない。高域はトランジェントがやや穏やかに過ぎ、このクラスとしてはディティールの再現性がもう少しあってもいいのではないか、の不満ばかりだ。本機そのものが不調だったのかもしれず、不本意な結果だった。しかし、これは純粋に僕の嗜好と生理的にミスマッチだったのかもしれない。

AKG K1000

菅野沖彦

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 オーストラリアのAKGは、ヘッドフォンやカートリッジ、そしてマイクロフォンで世界中で高い評価を得ているトップブランドである。音楽の国オーストリア、特にウィーンやザルツブルグで、馴染みの深いこの国の香り高い文化がAKG以外には音の面ではあまり知られていないのはむしろ淋しい気がする。事実、このブランド以外の音響メーカーなきに等しいようで、私の音楽やオーディオの知人たちに聞いても、彼らが挙げるブランドはたいていドイツかスイスのものだ。オーストリアで使われているオーディオ機器は日本製品かアメリカ製品、そして、イギリス製がヨーロッパ製なのである。つまり、オーストリアではヨーロッパ製でよいのであって、ことさら、オーストリア製に対するこだわりはない。ヨーロッパの中でも、それほど独自な音の美感覚や音楽性をもっているウィーンのことだから、その感覚や伝統がオーディオに生きてきたら、さぞ魅力的なものが生まれるに違いない……と思うのは私だけだろうか? 彼らにとってオーディオ機器は機械であって、音の美にかかわるものとは思っていないようにさえ考えられる。しかし、何人かのウィーン在住のオーディオマニアを知っているが、彼らはオーディオ機器の音の美しさや魅力を単に機械の物理特性の問題だけでは考えていない。
 ところで、AKGは今までにもヘッドフォンには意欲的な開発性をもち続けてきたが、今回のK1000はあえて前置きに長々と書いたように、オーストリア製にふさわしい製品で、その美しい音の質感は、決してスピーカーからは聴くことのできないものだ。特に弦楽器の倍音の自然さとそこからくる独特な艶と輝きをもつ、濡れたような音の感触は、従来の変換器からは聴き得ない生々しさといってもよいだろう。こうして聴くと、CDソフトには実に自然な音が入っていることも再認識できるであろう。生の楽器だけが聴かせる艶っぽさを聴くことのできる音響機器は、ヘッドフォンしかない(特に高域において)と思っていたが、この製品はさらにその印象を強めるものだった。
 デザインは、内部的にも外観的にも大変ユニークなものである。NdFeマグネットをラジアルに配したオープン型磁気回路と、16〜17世紀のヴァイオリン製作者達に使われたニスの薄膜塗装を施した4層レイヤーのダイアフラムをユニットとした完全なオープン型ヘッドフォンだ。電極にも磁気回路にも通気性が阻はばまれることがないため、キャビティによる音色やレゾナンスが極めて少ないことが、この音の自然さに貢献しているのであろう。本来ヘッドフォンは、スピーカーに対してクローズド型でこそ性能を発揮するものともいえるが、このK1000は、そうした観念を完全に打ち破る、新しいヒアリングシステムとしてのジャンルをつくっている。A級パワーアンプのスピーカー端子に接続して聴くことが推奨されていることからも、独特なコンセプトがわかる。

エレクトロボイス Sentry30

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 低域を比較的たっぷり聴かせる英国系のスピーカーに比べると、この引き締った中低域からローエンドにかけてのニュアンスは、量的に不足感をいだきやすい。しかし、よく聴いてみると、張りのつよい明快な表現で音像の立体感をくっきりとマクロ的に押し出し、サックスの実体感はサイズを忘れさせる。シンバルのアタックにも凝縮されたエネルギー感が乗る。反面、弦の繊細感がややドライのタッチになるが、音楽そのものに求心力をつけてくれるために、ムードに流れず、のめり込んで聴く、といった聴き方には、ジャンルを超えた適応性を持つかもしれない。しなやかで柔らかな音や、透明感に富んだ洗練された音を求める人には、やや不向き。

メリオワ The Melior One

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 カナダのミュージアテックス・オーディオ社より、同社の〝マイトナー〟及び〝メリオア〟ブランドのCDプレーヤー、アンプにひき続き、メリオワ・ブランドから新たにスピーカーシステム/メリオアOneが登場した。
 一見エレクトロスタティック型のように見えるがこれは平面振動板を持った完全なるダイナミック型スピーカーである。
 平面振動板というと、かつての国産スピーカーで大流行したような、分割振動を抑制した剛性の高いダイアフラムに、ハイコンプライアンスエッジを組み合わせたユニットを思い出す。しかし、メリオアOneに採用されているユニットは全くその対極に位置するような構成をもっている。
 薄いダイアフラムの素材は、マーチン・ローガンの一連のスピーカーと似たようなマイラーフィルムの透明な膜で、パリッとしたある程度の硬さを持ったものだ。しかもエッジ部分はリジッドに固定されていて、一定のテンションで、ピンと張られ、膜の中心に貫通固定されたボイスコイルが前後にピストンモーションするようになっている。メーカー側はそのために自然な球面波が作られると説明してもいる。球面波になぜこだわるのかというと、平面波では、音像が遠のきがちになり、距離感がやや曖昧になる傾向があるからだ。
 正面から見て、ダイアフラムの反対側には、一辺が1cm程度の格子上に組んだスリットがあり、そのスリット上に薄いフェルトを貼付することで、ピーク性の音が出ないようにコントロールしている。
 どうやらメリオアOneは、ダイアフラムが分割振動することを積極的に音造りに活かしたアプローチがされているらしく、特に低域の音像が陽炎的な浮遊感をともない、オーケストラの再現に独特な広がりをつけてくれるのだ。
 事実は定かではないが、音の印象からすると、この水面のごとくフラットなマイラー膜は、分割共振を起こし、ユニット正面からも逆相成分の音を少なからず放射しているように聴ける。そのことが広がり感を演出しているらしいのだ。
 そうした、やや特殊な面もあるとはいえ、バロック系の古楽器オーケストラなどでも高弦群の定位は綺麗だし、音の漂いには、独特の浮遊感がついて楽しい。フルレンジユニットでネットワークを持たないが故の鮮度感もある。さらっとした軽やかな繊細感はないが、響きにある種の緊迫感がつく点もいいと思う。
 スピーカーのインピーダンスが過度に下がることがないから、大袈裟なパワーアンプを用意しなくても鳴ってくれる。ソースを選ぶ使いにくさはあるが、貴重な個性をもった製品であり、高価格ではあるが、一聴に値するスピーカーではないかと思った。

チャリオ HiperX

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 同じイタリアながらソナースファベルともずいぶんちがって、これは相当にアクの強い響きを持った製品。なにしろ、中高域におそろしくテンションの高い張出しのようなものがあって、かん高い感じの鳴り方をする。個人的にはもっとも苦手とする音だ。およそ繊細という表現からはほど遠い、不太くて硬質な線で音像をたくましく描き出す。エージングによってどれほどの変化があるか興味のあるところだ。はたしてこの音が、ひよわな音が嫌いな人にも好まれるのものなのかどうか、僕にはよくわからない。インフィニティの対極にある、押し出しの強さを持った好事家向きの超個性的サウンド。エンクロージュアとスタンドの仕上げは絶品だ。