Category Archives: 国内ブランド - Page 99

マランツ Marantz 4GII

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 マランツのスピーカー群の中での最小のシステムがこの4Gだが、私がもっとも好きなマランツ・スピーカーがこれだ。20cm口径ウーファーと、4.5cm口径のトゥイーターはコーン型という、なんの変哲もないシステムだが、小さいスケールながら楽器の質感をとてもよく出してくれる数少ない小型システムだと思う。

CEC DD-8200

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 カセットデッキは、オリジナルのフラット型から、最近ではその製品の大半がコンポーネント型と呼ばれる、コントロール部分とカセット収納部が前面パネルにある垂直型となり、大きく姿が変化しているが、ことプレーヤーシステムでは、ディスクを水平に置く必要があり、操作系は、一部を前面に置いた例もあるが、基本はトッププレートに操作系を置くのが通常である。
 プレーヤー専門メーカーとして、もっとも長いキャリアをもつCECからの新製品は、プレーヤーシステムのすべての操作系をプレーヤーベースの前面に置く、タテ型構成のユニークなDD8200である。
 ターンテーブルは外径31cm、重量1・5kgあり、DCサーボモーター、ダイレクトドライブ方式である。トーンアームはS字型スタティックバランス型で、ラテラルバランサーとアンチスケート機構が付属し、カートリッジはV型マグネットをもつMM型で、針先は0・6ミルコニカル針付だ。
 このシステムはセミオート機で、オートリターン、オートカット動作ができるが、オート動作でアームがレストに戻ったときにアームを上昇、下降させる前面のキューイングレバーが自動的にUPの状態となり、針先を保護する機構をもつ点が目立つ。
 タテ型操作系をもつこのシステムは、プレーヤーを高い位置に置く場合の利点をもつと思うが、さらに発展してフルオート機になればよりユニークな存在となるだろう。

コーラル CX-3

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 安価なシステムとしては、きわめて入念につくられていて、アイデアもよく、高く評価したいもの。20cm口径のウーファーと6.5cm口径のコーントゥイーターの2ウェイというオーソドックスな構成だが、トゥイーターの角度は、可変式となっている。明るく抜けのいい音は、響きが美しく魅力的である。

サンスイ LM-022

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 011の上級機がこの022で、基本的には、ウーファーが4cm直径が大きくなったのと、それにともないエンクロージュアが大きくなっただけで、このシリーズの特長であるリニアー・モーション・トゥイーターには変りがない。011より低域は豊かに出るのも当然で、トゥイーターとのつながりもよい。

サンスイ LM-011

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 LMシリーズは三機種あり、この011はその中での最小のもの。LMは、リニアー・モーションをとってつけられたもので、独特の構造のリニアリティの高いトゥイーターが特長である。小径のウーファーは16・5CMで、トゥイーターとのつながりは理想的。のびのびとした明るい音を再生する傑作である。

サンスイ SR-838, SR-636

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイからは、さきに自社開発の水晶制御フォノモーターを使ったプレーヤーシステムSR929が発売されているが、今回、これに続くシリーズ製品として、水晶制御型フォノモーター採用のシステムSR838とPLLサーボ型フォノモーター採用のSR636が発売された。
 この二機種の製品は、基本的にはフォノモーターの制御方式、ターンテーブルが異なるのみで、発表された特性上の差は少ない。モーターはDC型20極ブラシレス方式で、制御用にシャフトに取り付けたストロボスコープ上に480本のスリットを持つ円板と、発光ダイオードとフォトトランジスターを組み合わせ、回転数に比例したパルスを発生する光電型ジェネレーターが組み込まれている。SR838はこれあ水晶発振によるPLL制御方式とし、SR636はCR発振によるPLL制御方式として使っている。なお、ワウ・フラッター特性を向上するため、シャフトはセンターレス精密仕上げ、焼入れを施した特殊ステンレス鋼を、スラント軸受部は二硫化モリブデン配合の66ナイロン材を使用している。
 トーンアームはスタティックバランス型だが、軸受部分がSR929の一点支持方式ではなく、横方向のスパンを広くとった方式に変わっている。このタイプはピボット部分の遊びに対しねじれ方向の影響が少ない利点があり、アームの支点部分に重量を集中し音質を向上するために、上下方向の回転軸には85gの重量をもつ真鍮製のシリンダーが採用されている。アームベースは亜鉛ダイキャスト製でプレーヤーベースと確実に固定するために、裏側に厚さ4mm、重量250gの大型ワッシャーが、SR838では2枚、SR636では1枚使用されているのが目立つ。パイプアームは内部の空洞にテフロン系のダンプ材が採用され、ヘッドシェル取付部分のコネクターはSR929同様にテーパ材で取付けたときの機械的強度が高い。また、付属カートリッジは角型マグネットを持つMM型で、音像定位を明確にするために薄いダンパーを採用してあるとのことだ。
 プレーヤーベースは40mm厚のソリッド材使用のピアノ仕上げで、ステンレスのスプリングと緩衝ゴムを組み合わせた新開発のインシュレーターが付属し、ダストカバーは厚さ4mm、重量1・4kgのサイド・フィルムゲート式のアクリル製である。ターンテーブルは、デザインは異なるが、ともに外径318mmのダイキャスト製で、レコードとの接触面積を大きくするために内側に向かって350分の1の勾配が付いている。
 ともにプレーヤーシステム基本から忠実に製作されているため低域から中域にかけて粒立ちがクリアで緻密さがあり、とかくこのクラスのシステムでは使い難いエンパイアやピカリングの高級モデルの本来の音を素直に引き出すだけの十分のクォリティの高さがある。音の良いプレーヤーを目指した成果が聴きとれる製品である。

デンオン DL-103S

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 MC型のカートリッジとしては内外を問わず最も周波数特性のよくコントロールされた製品といってよいだろう。それだけに、いかにも色づけの少ない、しかし103と違って明らかにワイドレンジ型ならではのデリケートで軽快な音質は、質の高い優秀なもの。ただ、ヘッドアンプまたはトランスによって、少々素気なさすぎる音になってしまうことがある。これで音楽を鑑賞するというよりも、どうも研究分析用といった趣がある。

グレース F-8L’10

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 国産のMMカートリッジでは最も歴史の古いメーカーのひとつだが、F8シリーズは同社の看板製品。その発売10周年を記念して開発したのがこのカートリッジというわけだが、さすがロングセラーを現代の技術で改良しただけのことはあって、中庸を得た安定な音質が、とくに好みに片寄りのない良さ。

テクニクス SL-01

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 モーターはSP20がベースになっているようだが、プレーヤーとして必要最小限にコンパクト化し、しかも操作機能の整理も扱いやすさを十分に考慮した設計は成功している。ただ、全体をまっ黒に仕上げた点は賛成しかねて、できることなら、もう一機種、明るい仕上げのモデルを併売してくれるとうれしい。またそれだけの価値は十分あると思う。

ダイヤトーン DP-EC2

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新しい時代のオートプレーヤーを象徴するような電子制御方式のプレーヤーを発売し、プレーヤー部門で一躍熱い視線を集めたダイヤトーンから、基本性能を同じくし、一部の機能を簡略化して、第2弾製品としてDP−EC2が発売された。
 EC1と比較すると、このタイプの特長である光線を使うレコード外形寸法の自動選択が、30cm盤と17cm盤の2種類となり、これに連動していた回転数自動選択がなくなり、マニュアル切替になっている。この他、リピートの動作状態が一部変更になっているが実質的な変化ではない。
 このEC2は、オート動作時にはスタートボタンを押して動作させるが、このボタンを押しつづければレコード外周以内はアームの移動速度が遅くなり、ボタンを放した位置で盤面に降下する。また、演奏中にストップダンを押せばアームはリターンするが、オートランプが消えるまで押しつづければアームはアップした位置で止まったままとなり、スタートボタンをワンタッチで押せば再び盤面に降下する。なお、ターンテーブル上にレコードがない場合にスタートボタンを押してもアームは最内周まで移動し降下することなくレストに復帰する動作などは、すべてEC1と同様であり、反応が速く機敏に動作をおこなう。
 他の基本的部分は、ターンテーブルゴムシートだけが新しいタイプとなっているが、それ以外の変更はない。

ビクター QL-7R

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 TT101と81でビクターはDDモーターに新しい分野を開拓したが、それをクォーツ化し、極力ローコスト化した裏には、B61Rや7045などのプレーヤーやアームに対する以前からの並々ならぬ研究が土台になっているのだろう。見た目もよく、扱いやすく質の良い、バランスのとれた製品として、安心してすすめられる。

ヤマハ NS-1000M

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 鮮明──というより尖鋭といいたい解像力の良さ。ことに打楽器のディテールがシャープに、張りつめたような迫力で鳴る。反面、弦楽器や女声がいくらか金属的に聴こえるところが、長期間鳴らし込んだらどう変化するか興味深かった。最近になって、ある愛好家が相当の期間鳴らし込んだものを聴く機会があった。本質的な尖鋭さ、硬さ、という性格までは変わらないが、それを弱点という必要のない程度まで、よくこなれて鳴っていた。

トリオ KT-9700

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 KA9300とペアになるべき製品だが、これ単体で評価しても、現代のチューナーとして考えられる最新のテクノロジーをよく消化して、S/N比のよい鮮度の高く安定な受信で、FMのプログラムの良否をよく鳴らし分ける。音の傾向は、9300と同系統の、やや硬質で輪郭の鮮明な印象。反面、音のやわらかさやふくらみや豊かさという面では、たとえばパイオニアのF3あたりの方に軍配が上がるが、この辺りは好みの問題だ。

テクニクス SB-7000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オペラやシンフォニーのレコードの場合に、音場の奥行きとひろがりを眼前に繊細に展開して聴かせる。国産でこういうエフェクトを良く出すスピーカーは意外なほど少ない。音のバランスも良好だが、床や壁面からそれを十数センチ以上離して設置しないと、音がぼけたり低音肥大症的に成ったりするので、使用上ややコツが必要。音の品位にいっそうの磨きがかかれば、第一級のスピーカーに成長するだろう。

パイオニア XLC-1850

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 クォーツロック方式のDD型ターンテーブルが高級機で実用化されて以来、パイオニアではいち早くこのタイプのDD型モーターを採用したプレーヤーシステムを中級機の価格帯で発表し、より多くのユーザーが新しい方式の魅力を味わえるようになったが、その後もフルオートプレーヤーシステムのクォーツロック方式化をおこない、今回アームレスタイプのプレーヤーシステムにクォーツロック方式を導入した、新型XLC1850を発表した。
ターンテーブルは直径320mm、重量1・8kgのアルミダイキャスト製であり、回転数制御は水晶発振器の出力波形とモーター回転子に組み込んだ周波数発電機からの出力波形を位相比較するクォーツPLL方式で、モーターに逆方向電流を流し、停止寸前に供給電源を切る純電子式ブレーキが付属している。
 クォーツロック時には表示ランプが点灯し、ロックをOFFにすると大型の速度表示メーターの目盛が照明され、ロック表示ランプが消える。一般のストロボによる表示でない点がこのモデルの特長であり、目盛は331/3回転、45回転ともに±6%間であり、変化量は多いタイプである。
 アーム取付板にはほとんどの14インチ型アームが取付可能であり、SME3009用の加工済専用ボードとアルミプレートが付属している。プレーヤーベースは、外周部が二重構造の4・7kgの重量がある。

パイオニア Exclusive M4

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 公称の50W(×2)に対して、実測はどうも70Wぐらい出るものが殆どらしく、ふつうの家庭で聴くかぎりはAクラスゆえのパワー不足ということはあまりない。このアンプならではの弱音また滑らかで、ややウェットだがきわめて質の高い音は貴重だ。大型の良いスピーカーほど良さのわかる音といえる。換気ファンは回転音がじゃまにならないようによくおさえられているが、深夜ひっそり楽しむには、置き場所にくふうしたい。

デンオン DL-103S

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 国産のMC型カートリッジとして最も伝統のあるデンオンのDL103がリファインされたモデルである。ケースの色も黒から白に変り、振動系のハイコンプライアンス化が進められ、より軽針圧が指定される。帯域は、103より拡がり、音質的には軽いタッチを増した。プレゼンスの再現では、103Sのほうが上である。しかし、音像のマッシヴな充実感では103に歩がある。いずれにしても国産の第一級である。

ビクター JP-S7

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 かなり大型、横長のプロポーションながら、ヴァーティカルスライドのグラフィックイクォライザーが装備されているから、高さもかなりのものだ。決してオリジナリティとして評価できる純粋なものではないが、充分個性的で好ましい。音質はウォームで豊か、血の通った音であり、機能は文句なく豊富だ。

テクニクス SL-01

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 テクニクスお家芸のハイパフォーマンス・ダイレクトドライヴ・ターンテーブル。コンパクトにまとめられ、さりげないところがよい。黒を基調にしたフィニッシュも、精密機械のイメージを表現する。持つものへの満足感では、もう一つリファインを要求したいところだが、これだけの性能が秘められていると思うと、奥ゆかしい魅力を覚える。

ダイヤトーン DA-A15

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 DA-A100でハイパワーアンプに自信をつけたダイヤトーンの、第二作の一連のシリーズの中で、弱音の美しさでややA10が勝るが、ハイパワーアンプ時の音の充実感ではA15が総合的にやはり優秀。プリアンプを前面につけると一体型のようになるコンストラクションのアイデアは秀抜。やふがっしり型の音だが、安定度の高い動作は、さすがプロ用機器できたえられた成果が実っているという印象。パワーに比べて割安。

パイオニア C-21

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 シンプルな機能に徹した、どちらかというとイクォライザーアンプに近い製品で、外観はコンパクトなフラットタイプである。すっきりとしたデザインにふさわしい、すがすがしいサウンドが、いかにもパイオニアの製品らしい快い肌ざわりを感じさせる。C3とは対照的なバリエーションである。

ビクター QL-7R

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 クォーツロックサーボ・ターンテーブルと、ジンバルサポート回転機構の高性能トーンアームというハイパフォーマンスなユニットを、堅実で、よくコントロールされたプレーヤーベースに装着した内容の充実した製品。プレーヤーシステムとして現在要求される性能を高い水準で満足させている。価格は、その割に安いから、当然お買徳。

ヤマハ C-2

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 B2と組み合わせた音はいささかハードでさっけなく、必ずしも私の好みではないが、C2単体を別のパワーアンプと組み合わせみると、緻密で質の高い、ヤマハ独特のエレガントな明るさを持った、なかなか魅力的な音質であることがわかる。コントロールアンプとしての機能も、音楽を楽しむに必要かつ十分で、みごとなデザインと共に、完成度の高い製品といってよいと思う。個人的にはもう一歩音楽に肉迫した感じが欲しいが。

ヤマハ CA-X11

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ヤマハのプリメインアンプは、完全に新モデルに変わり、価格帯の幅が従来より一段と広くなったが、新モデルのトップをきって発表されたCA−X1が、内容を新しくし、グレイドアップして、CA−X11に発展し発売されることになった。
 改良されたポイントは、特性的にはSN比で10dB、チャンネルセパレーションで5dB、パワーが12%といすれも向上し、機能的にはイコライザーアンプの出力を直接パワーアンプに送り込むメインダイレクトスイッチ、サブソニックフィルターをイコライザーに組み込んだためのハイフィルターの新設、ターンオーバー2段切替の高音、低音トーンコントロール、レンジ切替可能となったパワーメーターの大型化などがある。まて、上級機種と同様にボリュウムとバランスコントロールが同軸型となった点も見逃せない。結果からみれば同社でもいているようにこのCA−X11は、CA−R1化されたCA−X1なのである。
 回路面では座部ソニックフィルター内蔵の3石構成のイコライザーアンプ、初段が差動増幅の3石構成のCR−NF方式のヤマハ型トーンコントロールアンプ、初段にデュアルトランジスター差動増幅を使った純コンプリメンタリーOCL方式のパワーアンプが、そのラインアップである。
 本機の音は、X1にくらべ大幅にクォリティが上がった緻密さと滑らかさが感じられ、より伸びやかなレスポンスをもつ。

トリオ KT-9700

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 トリオらしいチューナー技術のリファインされた傑作である。いたずらに技術を誇示する方向ではなく、地味に内容の充実に向けて、最新の、そして、豊かな技術を盛り込んでつくられたチューナーだ。その音質のクリアーさは、FMの音を再認識させるほどであり、本当の意味での高級チューナーというものは、これをもって標準とするに足る。いかにもチューナーらしい平凡なデザインだが嫌味がなく楽しめる。